壁抜け男

          5月17日(木)  ソワレ    2B27

 

CAST

デュティユル                     石丸幹二

イザベル                       井料瑠美

部長・検事・刑務所長                  青山明

八百屋・娼婦                      丹靖子

C氏(公務員)・看守1                 小林克人

デュブール医師・警官2・弁護士            喜納兼徳

B氏(公務員)・警官1・囚人・ファシスト         荒木勝

画家                         佐野正幸

M嬢(公務員)                    佐和由梨

A夫人(公務員)・共産主義者               横山幸江

乞食・看守2・裁判長                 須郷裕介

新聞売り                       岩本達典

【演奏】        ピアノ:戸田多佳子        リード:近藤淳

パーカッション:竹島悟史   

 

 バックステージツアーのイベント目当てでとったチケットでしたが迂闊なことにイベントにおける名古屋の熱さをすっかり忘れていたため,見事に定員オーバーをくらいました(爆)。開場が6時で,着いたのがその15分前。あとになって思えばこの時点ですでにだめなんですが,着いた劇場前はもう長蛇の列。先はすでに広場からあふれてました。ダメモトでこっそり並びましたが,当然というか何というか入場した頃には定員オーバーのアナウンスが流れていたという(泣)。ちなみにこの日,ツアーに参加した友人は4時半からもう並んでたそうです。…やっぱそれぐらいの根性いるか…ってかイベントボケでしょうか私。

 客席にはいると演奏者の方々が音の調整中らしく,メロディーのない音楽というかいろいろな音がふわふわ漂ってるような感じですごく新鮮でした。こういう空間もいい感じです。この劇場になってから幕が下りてるのも初めてな気がして心の中でちょっとはしゃいでました(阿呆)。ちなみに来てるはずの友人を捜したところ1階席3列めに発見。むこうにも気付かれたらしく手で合図を送りあってました。…何やってるかな,もう。

 

     第一幕

 郵政局の場面,ひたすら仕事仕事のデュティユルとそれをいいことにさぼりに燃える同僚達とが何とも。ってか公務員,いいのかそれで…。デュティユル,丸めた背中が何ともしょぼくれてていい感じです。帰宅時間になるやいなや即行たたまれてしまう机はびっくりでした。しかしデュティユル,ひとり机押しながら帰っていく背中の哀愁がいいですね。

 街角では住人達がいい味出してます。八百屋のおばさんのソロに大ウケ。それを優しく見守るように聞いてる画家もいい雰囲気です。それに新聞売り…元気ですね!可愛いですね!ありゃ噂にもなるさとひたすら納得いたしました。…住んでみたいかも,あんな街。

 そして,停電をきっかけに壁抜けの力を持ってしまったデュティユルが慌てて医者に駆け込むんですがその医師。デュブール先生,素敵すぎです…。医者のくせにアル中だしなにかとっても胡散臭げだし(笑)。だいたいあの「ユーウツソーウツブンレツフロイトケロイド甲状腺環状線リビドーコンプレックス」って聞くからにでたらめチックな病名は何ですか一体。しかも妙に語呂がいいし。でもって常にアカルくカルいし,非常に楽しませていただきました…退場に至るまで。あの退場も楽しかったです。

 翌日,壁抜けの力を使って新しい部長をノイローゼにさせてしまったデュティユル,部長が自分の目を疑っている間に人事課へ電話をかけているあたり小役人根性の用意周到さがうかがえます。しかもその合間に打つ手紙は部長へ当てつけるかのように前と同じ文体,内容に至っては前よりも内情暴露がエスカレートしてるようなんですが…強くなったってことでしょうか彼も。

 その日街角に警官コンビが出現しますが,彼らも何というか「いいのか,こんなんで…」と思わせてくれる楽しい人々でした。歌詞が何とも言えません。そして常に明後日の方を向いた警官2喜納さん,表情がさらに何とも言えません。なんて素敵なトボケっぷり。しかも街灯をイスがわりに荒木警官と取り合って負けたり,ひょろんと弱っちいのがまた笑いを誘います。その上いい声ですし。ひたすら歌いながら声を伸ばしまくってツッコまれるところも伸びが綺麗でした。いいなぁ。

 その後,デュティユルは自分の存在を恋する人に知ってもらおうと進んで警官に逮捕されるんですがその時もこのコンビ,楽しかったです。はっきりいって信じてないし(まぁこれは当然だと思います),そのあとも腰が引けてるしデュティユルのちょっとした仕草にも過剰反応するし。手錠をかけてのダンスも景気よく振り回されてました。…はしゃぎすぎでしょう,デュティユル。

 そういえばあの金庫,なかなか妙なものが色々入っててたのしかったです。札束や秘密書類は普通としても,グラスセット…?さらにこれは思いっきり年代物の値打ちものと納得するにしても(こじつけだなぁ),ワインってのは一体…。

     第二幕

 刑務所の看守コンビ,またまた職権乱用な歌詞が素敵です。須郷看守はインテリのイヤミだし小林看守もどっかの学校で暴力沙汰起こしそうな体育教師的雰囲気だしと,仕草のひとつひとつにも性格がにじんでるのも楽しいです。しかしこんな刑務所,かえって迷惑だと思うんだけどなぁ。所長さんもお疲れさまです。ホントは音楽に行きたかったというこの所長,ドリーミングな後ろから野太いコールされる姿が哀れです。…看守達も何か表情微妙に呆れてるし。きっと毎日こう愚痴ってるんですね…。

 このコンビに対してうるさいの何のとさんざん文句をつけるデュティユルですが小林看守,一度彼に帽子叩き落とされて以来ひたすら帽子を気にかける姿がナイスでした。でも叩き落とされてたけど(笑)。そしていざデモ隊が彼の釈放を求めてやってくると思いきり慌てている看守達。腰が引けてます。さっきまでの偉そうさは形もありません(デュティユルに対してもなかったけど)。しまいには自分たちも列の後ろについて一緒に退場してしまうんですが,妙にノリノリなのが楽しいです。

 デモ隊が去ったあとひとり残ったM嬢がデュティユルに焦がれる胸の内を歌います。しかしこの彼女,勝手なことばっか歌ってるよなぁと笑ってしまうんですが“とてもそうは見えないでしょうけど”と随所で歌ってるあたり自覚はあるらしいのがまた。ぶりっこ声とドスの利いた声(本音?)の落差もなかなか素敵でした。

 刑務所から脱獄したデュティユルはその足でイザベルの元に向かいます。そんな彼がベランダに潜んでいることも知らず憧れの胸の内を歌うイザベル。怖い旦那が怒鳴っても下りてなんか行かないというのはこれもまた彼女がひとつ壁を抜けたことを表しているんでしょうか。しかし思いの丈をうち明け,一緒に行ってくれと言うデュティユルから逃げるように彼女は部屋に駆け込んでしまいました。…ふたりの間の壁はまだ抜けられていないということなのかな?

 そして裁判を受けに戻るデュティユルと見送る画家。佐野さんの画家はデュティユルといい友人といった感じですごく素敵です。ところでその跡取り出したイザベルの絵は一体…?彼女は画家にとっても憧れのひとだったということなんでしょうか。

 裁判所にまず登場したのは弁護士。…喜納さん,毎度ながらの情けなさが最高です。弁護自己弁護そして拝み倒し。自分の素人さなんてそう触れ回るもんじゃありません。っていうか人いないんですか弁護士協会。私にお慈悲を,彼に無罪をという主張(?)は何か裁判所での台詞じゃないです…それが楽しいんですが。

 対する検事,貴方もじゅうぶん感情論です。しかも法廷で証人を侮辱したり気持ちいいくらいひたすら悪党です。でも後ろでぎゃんぎゃんわめく娼婦さんが何か可愛いんですが。いつしか実況アナウンサーと化してちょこまか走り回る新聞売り君や妙に和気あいあいとしている弁護団もいい感じでした。それにしてもはっきりいって被告が一番落ち着いてるよなぁ…。

 最後は一幕最後に見つけた秘密書類を切り札に検事の旧悪を暴くという攻守逆転で裁判を終え,晴れてデュティユルはイザベルの元に向かいます。しかしどうもまだ自分に自信がないのかうじうじ迷う彼をけしかけ送り出す弁護団。非常に微笑ましくていい感じです。ほんとにいい人達だ…(しみじみ)

 翌朝(?)というか事後(…)のふたり。イザベル,ずいぶん情熱的になりましたね…。ここでははっきりいって彼女の方がデュティユルをリードしているようにさえ見えます。そしてその後,謎の頭痛に悩まされて医師にもらった薬を飲むデュティユルですがその彼の後ろにそっと登場する医師の存在が不気味です。

 そしてラスト。『壁抜け男』が壁に閉じこめられる…ということは聞いてはいましたが,その後のイザベルが壁に寄りそって入っていくシーンには何となくこれでもふたりは幸せになったのかな,と思わせられました。

 カーテンコールはさすがイベント公演,客席全体ノリが良くて“人生は素敵”コーラスも2回でした。しかし一人ずつボックスから登場しての挨拶,早変わりの方々駆け回ってらっしゃいましたね。まわりの方々も細かくて楽しかったです。

 

 

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