ジーザス・クライスト=スーパースター

         11月16日(金)  ソワレ    Q21

 

CAST

ジーザス=クライスト    柳瀬大輔    イスカリオテのユダ      芝清道

マグダラのマリア      坂本泰子    カヤパ(大司教)      佐川守正

アンナス(カヤパの義父)  明戸信吾    司祭1           松宮五郎

司祭2           藤田将範    司祭3           喜納建徳

ペテロ(使徒)       北澤裕輔    シモン(使徒)       吉原光夫

ピラト(ローマの総督)    村俊英    ヘロデ王          下村尊則

男性アンサンブル    松下雅博 田中裕悟 小川善太郎 島田邦人 赤瀬賢二 前川勝宏

   細井良晃 佐藤洋介 上田龍雄 羽山隆次 今井雄三 天野陽一 柴崎義則 岡本隆男

女性アンサンブル    礒津ひろみ 佐藤夏木 横山幸江 菅本烈子 鈴木智美 藤田晶子

   林浩代 藤井智子 上原法子 菅原梢 堀水菜子 李賀

 

 ジーザス・クライスト初観劇。噂のあの方やこの方をたっぷり堪能してまいりました。しかしアンサンブルのほう、チェックしたいのに難しいですね。

    オーヴァーチュア

 登場してきたユダを見て、初めて芝氏を「細いっ!?」と思ってしまいました。猫やユタの時のイメージからずいぶんがっしりした印象があったため思わず(芝氏随分痩せたんじゃ…?)などと失礼なことまで頭をよぎる始末(爆)。それから噂のダンスは確かにセクシーでしたがそこまで腰に眼は行かなかったです。しかし苦悩する男のダンスってなんというか色気ありますね。ただ自分これで見方大丈夫かどうかが謎…。

    彼らの心は天国に

 ところどころ絞り出すように聞こえる声がユダの不安の現れのようです。もう先が見えてしまっていて、流れが止まらないことも目は逸らしているけどどこかで気付いていて、それでも言わずにいられない。最後の“ジーザス…”という弱い呟くような声は泣きそうな心を圧し殺しているようでもありました。

    何が起こるのか教えたまえ〜不思議な出来事

 ユダ、ゆっくりマリアとジーザスに近づいて歌い出すとき一見穏やかそうに見えてまわりの空気がかなり怖いです。あれじゃあ女の人たち怯えるはず。そして言ってることはかなりきつく容赦なく、マリアにぐさぐさ突き刺さるようでした。固まってうつむいてしまうマリアが可哀想です。ジーザスに庇われて感極まったように彼の足に唇を押し当て、でもそれが精一杯だったようでまた踞ってしまいました。しかしユダ、そういって差別的態度をとってるってことはジーザスの攻撃した祭司たちと同じことをしているんじゃないかと思うんですがどうなんでしょうか。

    今宵安らかに

 マリアを責めるユダの声が地の底から響いてくるかのごとくドス利いてます。ジーザスが歌っている間にもピクとも動かないのがまた怖いです。っていうかいるだけでその一角だけずっしり暗いのが凄いです。うううう。

 やがてジーザスを中心にした一団とそれに背を向けた人々が舞台から去っていきますが、ひとりジーザスを囲む集団の後ろ端にいた民衆がおずおずとユダたちの後に2,3歩踏み出しそしてまたためらうようにジーザスたちの方へ走っていきました。この人はどちらに行くべきか迷っているのかなあと思っていたんですが後で戻ってきたことで司祭と知れます。…ユダたちの方を伺ってたのは分裂分子の様子見か?

    ジーザスは死すべし

 民衆の中に混じっていた司祭がひとりこっそりと戻ってくるとゆっくりと他の司祭たちがやってきました。しかしスパイがパリサイ人…で、司祭?というのはまあおいといて。群衆の声に様子見に走っていく明戸アンナス、小股でせこせこと走る姿がいかにも小物らしくていい感じです。高めをキープしている声も嫌味さをかき立ててくれるよう。喜納司祭もあさっての方に飛ぶ視線や微妙に丸まった背中に陰謀家らしいというか一筋縄でいかない存在感が溢れておりました。ところでカヤパの歌うまわりでクルクル走ってる司祭ーズ、妙に微笑ましいと思うのは何故なんでしょう。

    ホサナ

 ジーザスを囲んで降りてくる民衆に恐れをなしたように退く司祭たちが小悪党っぷり全開。スパイさんは即座にひれ伏して群衆にとけ込みました。しかしカヤパの“あの様子じゃ暴動が起きるぞ 気をつけろ〜”以下、角度次第でアンナスに喋りかけてるようにも見えます。さらに歌い終わってから下手へ行って司祭たちと合流するとこの走り方がなんとも一生懸命に見えて思わず笑いそうになったり。群衆たちは群衆たちでジーザス置いてきぼりにして盛り上がってました。“皆のために 戦いを!”なんてジーザスは思ってもいないのになぁ…。

    狂信者シモン〜哀れなエルサレム/ピラトの夢

 吉原シモン、体格がいいのとポーズのキメがぱきぱき綺麗に決まるのとでかなり目立つんですがこのナンバーではかなりはじけてました。しかし微妙な位置の手がなにか気になるんですが…それはギターでも抱えているんですか吉原さん?何かライブの舞台にでもいるような手つきのストップモーションがちょっとだけ違和感です。

 哀れなエルサレムのナンバー、ジーザス非常に淋しげで痛々しいのにどこか突き放したような雰囲気があります。多分勝手にジーザスを神の子に押し上げて彼の声を聞きつつ理解しようとしない民衆への本音なんでしょうがシモンたち使徒はかなりへこんでました。

    ジーザスの神殿

 神殿の物売りさんたち、下手最前に陣取っていた布売りさんが受難でした。客やら隣の物売りやらに売り物はかっさらわれるわお代は踏み倒されるわかと思うと誰も覗きにさえ来ないわ。ぶんぶんと手をふって客引きをする姿が微笑ましいというか可愛らしいというか。とりあえず同業者たちにはナメられていそうです。

 神殿で商人たちをけ散らしたジーザス、それだけで随分疲れてます。多分ずっと張りつめてたせいで精神的にかなりきてるのかと。それなのに“見て下さい…”と集まってくる病人たちは全くジーザスという個人のことなんて見えてないようで、ジーザスの手を求めて押し合いひしめき合い群れからはじき出されてもまた懸命に這いずっていく姿は背筋が寒くなるものがあります。ジーザスのシャウトは本当に悲鳴のよう。“自分で直せ!”と彼らを振り払ったあと自分で自分の行動にショックを受けてるさまがまた痛々しかったです。

    私はイエスがわからない

 疲れ果てたジーザスを迎えたマリア、声は凄く綺麗で好きなんですが…ジーザス置いて歌い出すのはどうかと。いえ、ジーザスもう寝てるしそういう演出だってのはいいんですけどあの状態のジーザスにはもう少し傍にいてあげた方がいいんじゃないかなーと思うんですが…。うしろの彼が妙に淋しげです。

    裏切り〜賞金

 ユダすごすぎです。彼の裏切りを誰も気付いてなくて誰も責めたりしないはずなのにひとり追いつめられたような眼と雰囲気で、さらにもう泣いてる?ってくらいに声が切ないです。受け取らされた賞金の袋を地面にたたきつけようと振り上げてできずに頽れる姿が弱さ全開でした。その後ろに登場したジーザスの静けさが崩れる一歩前で踏みとどまってるさまなのとは対照かな。

    最後の晩餐

 舞台前方ではユダとジーザスが万感の思いをこめて対峙しているというのに使徒たちのまわりだけは穏やかな西日が射しています。知らないってここまで平和で残酷なものなんだなぁ。“苦難も試練もみな 葡萄酒に沈んで〜”とこれまた長閑というか脳天気な彼らの歌がジーザスとユダの水面下の火花の上に被さってくるのもまたいい対照です。このシーンは痛いですね。

    ゲッセマネの園

 ぐーすか寝こけている使徒たちに呼びかけるジーザスの声の弱々しいこと。本当にひとりきりでやがて来る運命を見つめて、ついにジーザスも弱さ全開のナンバーでした。絞り出すような歌い方が彼の苦悩の現れのようです。ただ運命や神に対して、柳瀬ジーザスは怒りのような激しい感情をぶつけるのではなく哀しそうな切なそうな静かな感情をにじませて歌うのが脆そうで、ジーザスにじゃなくて神に“理解できない”と訊きたい気分になりました。

    逮捕〜ペテロの否認

 …だーかーらーペテロ、みんな起きてくるの遅いんだってば。せめてジーザスを逃がしたきゃもうちょっと早くさ…というのはともかく。ジーザスに“見捨てるのか”と言われたユダはずっと隅で顔を伏せてしまってました。そして群衆たち、昨日(?)までの熱狂ぶりが嘘のような嘲笑もあらわな態度です。こんなにも人間って変われるものなんだなぁと思えます。…怖いな、凄く。

 ペテロがジーザスを知らないと言う場面、引かれていくジーザスが舞台後方で見ていました。ジーザスにとって神の計画は変えられないことがわかっていながらも変わってほしいものであったろうに成就していくさまをユダもペテロも見せつけてしまっているんですよね。はっと気付いたペテロが崩れるのと同時にジーザスも連れて行かれてしまいます。表情は変わらなかったものの彼の目はずっと哀しい色を浮かべていたようでした。…そりゃマリアも“貴方のせいよ”と言いたくもなるか。

 ところでここでペテロを問いつめてたひとりの兵士、ソロのときの声からどうも赤瀬さんじゃないかと思うんですがどうでしょう。

    ピラトとジーザス

 “誰だ あの男は〜”とのピラトの声に応える兵士、さっきの人と同じです。…ってことはこれも赤瀬さん?ビデオなんかのピラトはこの辺ではジーザスをせせら笑うような表情を見せることもありましたが、村ピラトはこのシーンから真面目な総督さんです。しかし威厳たっぷりで格好良いなあ(惚)。“ヘロデに任せる”の言葉もことさらに声を張り上げないあたりに落ち着きが感じられました。…でもその分強気さとかパワーは控えめですね。

    ヘロデ王の歌

 演目きってのコメディナンバー。下村さんによる舞台ジャックのごとく舞台上に別世界が広がりました。ヘロデ王さま、…色々な意味で凄すぎます。まずは色っぽい。両側腿の上までスリット入った衣装で赤マント翻しつつ、しかも金ラメタイツの脚線美を見せつけるような仕草は目の毒といいますかなんというかもう。だいたい美人さん揃いなヘロデガールズ侍らせておいて、霞ませてどうするよ(大笑)。それでいて仕草や口調の端々で笑いをとっておいででした。最初の“〜出会えて満足ぢゃ”(って聞こえた…/笑)とか“〜いやなに 嘘ではないはずじゃ”のあからさまに怯んで退けた腰とか“どぉ〜おした?!”でのヘロデガールズすら怯えて逃げだす激昂ぶりとか、あとどこだったかで哀れな兵士ひとりとっつかまえてぺしぺし頬張ってたあたりとか楽しすぎますシモさま。仰け反ったシメのポーズまでみょ〜になんでした。最高!

    やりなおすことはできないのですか

 ペテロとマリア、本当に途方に暮れてます。が、やり直しができる時点では危うさに気付いてなかったことを再確認するだけになってしまってますね。ジーザスはもう神の計画が進んでいくのを諦観通り越して受け入れてしまったというのに。気付いていなかったからこそ彼らは諦められないんだろうと思います。

    ユダの自殺

 自分の裏切りを悔い、なんとかしてジーザスを助けたいと訴えるユダを鼻で笑ってのけた松宮司祭さまの冷たさがツボ。彼らからすればユダのこの苦悩も何を今更、でしかないのかなぁと思いました。“クライスト 貴方が望むことなら〜”と半ば狂気の色さえみせて慟哭するユダを置き捨ててハケていく司祭たちの気のなさがよかったです。

 神に何故、の問を繰り返しつつ死んでいくユダですがあの退場って何か死んでいくように見えません。前に見た時って転がりながら地面に引きずり込まれるように沈んでいってたと思ったんですが立ったままシューッと沈まれると…。静まりかえった舞台に響く天の声は相変わらず残酷で(神様って…)と思わされます。

    ピラトの裁判と鞭打ちの刑

 兵士たちと一緒に鞭打ち係のお兄さんが裁判所警備についてるんですが、彼鞭打ちの前と後で明らかに見物人への態度が違ってます。初めはあとから後から来る群衆を、多少の配慮はしつつ(どっこいしょ)という感じで押し返していたんですが、鞭打ちの間に彼の中の何かがささくれてしまったらしく後では一層邪険に突き返してました。民衆たちの狂乱ぶりにどうも嫌気がさしたのかな。格好良いですお兄さん。

    スーパースター

 視線がユダに固定してしまいジーザスの道行きも群衆も全く見てませんでした(汗)。…だってユダなんというか、あの衣装ガラ悪すぎです。しかも妙にそれが似合いまくってるし、頭の中を『世紀末』だの『現代文明の廃墟』だのがよぎるのはなにかなぁと。まあ衣装のことは横へ置いといて、ユダ目は確かに笑ってないと思うんですが口元にうすい笑みが浮かんでいるような気がしてなりません。あの表情はジーザスを皮肉ってるのか、それとも誰を嗤っているんでしょうね。

 

 

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