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法廷映画特集


Paul Newman in 「The Verdict」(邦題「評決」)1982年米

THE VERDICT
−評決−

 アメリカは訴訟社会だとよく言われます。階段で転んで怪我をしただけでも、簡単な訴訟で市や区などから賠償金を得られる。セクハラ裁判では、日本とは比べ物にならないくらいの賠償金が課される。大企業は超強力な弁護団に守られ、法的制裁を受けることなく甘い汁を吸いつづける。もっとも、負ければ会社がつぶれるほどの賠償金を課せられ、信用は一気に失墜しますが。良くも悪くも、アメリカは訴訟社会なのです。

 そんなわけで、映画でも何かと法廷が登場することが多いアメリカ。何十年も前から現在に至るまでも、弁護士や検事が法廷で丁々発止を繰り広げ、意外な証人の証言や、突然の新しい証拠の出現などスリリングな展開で観る者を引きこむ、といったサスペンス映画が数々作られています。また法廷での弁論によって、社会的なメッセージを送ったりと、深いドラマとして味わい深い作品も多く存在します。というわけでこの特集コーナーでは、そんな法廷を舞台にした作品を紹介させていただこうと思います。(下のタイトル表の各タイトルをクリックすると、その作品の紹介にジャンプします。製作年順に並んでいます)

「十二人の怒れる男」
「情婦」
「突撃」
「アラバマ物語」
「死刑台のメロディ」
「ジャスティス」
「評決」
「白と黒のナイフ」
「夜霧のマンハッタン」
「告発の行方」

「ミュージックボックス」
「運命の逆転」
「推定無罪」
「訴訟」
「ア・フュー・グッドメン」
「フィラデルフィア」
「告発」
「評決のとき」
「レインメーカー」
「英雄の条件」

追加分(1/22UP)

「裁きは終りぬ」

「ジャンヌ・ダルク裁判」

 

「十二人の怒れる男」(1957)

監督/シドニー・ルメット
出演/ヘンリー・フォンダ
リー・J・コッブ
E・G・マーシャル
ジャック・ウォーデン
マーティン・バルサム
ジョセフ・スウィーニー

 法廷映画を語る際、今まで一体何回この映画が引き合いに出されただろうか・・・法廷映画の古典的名作、密室劇の傑作。日本では「12人の優しい日本人」として三谷幸喜がリメイクしていて、この作品を見たことがある方も多いのではないかと思います。この映画については「骨太映画館」にて熱く語っていますので詳しいレビューはそちらをご覧になっていただくとして・・・
 まあ、何度も言うと言葉が段々色あせてきてしまって陳腐かもしれませんが、何度でも言いましょう。この映画はイイ!YE━━━━━━ d(゚∀゚)b ━━━━━━S!! はらはらドキドキのサスペンスもさることながら社会派映画の名匠として知られるシドニー・ルメット監督のドラマ構成が見事。舞台劇を思わせる演出も絶妙で、その後の法廷映画のお手本になるというのも納得。12人の陪審員たちはどれも個性的で、リー・J・コッブ演じる第二陪審員の野獣のような威圧感はお見事。おそらくこれがスタンダードな陪審員なんだろうな・・・と感じる第七陪審員を演じているのはジャック・ウォーデンで、この人は本作で注目を集めその後数々の名作に名脇役として出演することになります。このコーナーで取り上げている作品のいくつかにも出演しています。ヘンリー・フォンダはくさいなぁと思ってしまうほどの熱血正義感ぶりですが、それも本作の見所です。

 

「情婦」(1957)

監督/ビリー・ワイルダー
出演/チャールズ・ロートン
タイロン・パワー
マレーネ・ディートリッヒ
エルザ・ランチェスター

 これまた法廷サスペンスの古典中の古典、「情婦」。ストーリーテリングの神様ビリー・ワイルダーが、サスペンスの女王、アガサ・クリスティーの短編「検察側の証人」を映画化した作品です。
 とまあこれも「名画の世界」で紹介しているのでそちらをご参照いただいて・・・ってこの作品あまりにネバばれされた時のダメージが大きいのでストーリーになかなか触れられないのが難点。「キネマ旬報データベース」は、解説で映画のラストまで語っているのですが、この作品に関してはなんとその衝撃のラストを公表することを控えています。あの「ユージュアル・サスペクツ」ですらそのラストが明かされているのに!つまり逆に言えばそれだけすごいストーリーなので、見て損はありません。いや、見るべき!まだ見ていない方は、ぜひその衝撃のサスペンスを堪能し、しばらくの放心状態に陥ってください。
 なんと言ってもビリー・ワイルダー監督ですから、単なるスリラーではなく、娯楽映画としての完成度もピカイチ。老獪な弁護士を演じるチャールズ・ロートンはもとより、看護婦役のエルザ・ランチェスターを始めとする脇を固めるキャラクターの魅力で楽しませてくれます。

 

「突撃」(1957)

監督/スタンリー・キューブリック
出演/カーク・ダグラス
ラルフ・ミーカー
アドルフ・マンジュー
ジョージ・マクレディ

 数々の問題作を世に送り出しそのたびに物議をかもし出してきたスタンリー・キューブリック監督。そのキューブリックが、結構マジメに反戦を訴えた作品がこの「突撃」。まあ内容はかたくても、映像的にはこの頃から幾何学的構成を持ち始めており、キューブリック自身のターニングポイントであったと考えることもできます。この作品は名優カーク・ダグラスを通じて近代戦争の構造を批判した、軍事法廷ドラマです。
 これも「A Great Respect For Kubrick」で紹介していますから・・・ってそればっかりだなw この作品は、戦わない将校が、実際戦ってその上で作戦を失敗した兵卒を何の躊躇もなく見せしめとして刑に処するという無責任な軍上層部を批判したもので、短い作品ながら密度は濃く、カーク・ダグラスが臨時軍事法廷で繰り広げる将校とのやりとりが見所です。また、同時期に作られた軍事法廷ものに1954年の「ケイン号の叛乱」があります。管理人未見ですが・・・

 

「アラバマ物語」(1962)

監督/ロバート・マリガン
出演/グレゴリー・ペック
メアリー・バーダム
フィリップ・アルフォード
ジョン・メグナ
ロバート・デュヴァル

 アラバマ州のちいさな町で起こった強姦事件に絡む町の根強い黒人差別の不条理さを訴えた、心を揺さぶる法廷ドラマ・・・と言いたいところですが、実際は黒人を守ろうとする弁護側をやたら正義扱いするわけでもなく、客観的に裁判の進行を描いており、どういう感情を抱くかは見るものの判断に委ねているような構成。これが見事で、ラストの余韻もより感慨深いものになっています。製作を務めているのはアラン・J・パクラ。主演のグレゴリー・ペックはこの作品でアカデミー主演男優賞を獲得しています。
 そのグレゴリー・ペックの魅力が光る一本。普段は二枚目の役が多いペックですが、本作では髪はボサボサ、着ている服も、普通のおじさんと、ちょっといつもと違う雰囲気。でも子どもの成長を一番に考えるよき父親であり、正義感という炎を静かに燃やす弁護士。このペックの悲喜交交の絶妙な演技が見所です。裁判は、黒人差別がまさにあからさまに行われているもので、見ていてかなりつらいです。本当に勝てるのかこれ・・・とも思いました。かなり理不尽で正義感が強い人はとても画面に向って殴りかかる衝動を抑え切れないかも知れませんが、なんとか抑えて、最後までご覧ください。ぐっと心に来る幕切れです。また、本作はロバート・デュヴァルのデビュー作でもあり、実はこのデュヴァルの存在が、物語の感動に一際大きい貢献をしているんだなぁ、うん。

 

「死刑台のメロディ」(1971)

監督/ジュリアーノ・モンタルド
出演/ジャン・マリア・ヴォロンテ
リカルド・クッチョーラ
シリル・キューザック
ロザンナ・フラテッロ
ジェフリー・キーン

 アメリカの歴史の中でも、最大の汚点といわれることもしばしばの、「サッコ・ヴァンゼッティ事件」。「赤狩り」の風潮が高まる20世紀初頭のアメリカで、アナーキストというだけで強盗殺人事件の容疑者に仕立て上げられ、死刑台に送られたニコラス・サッコと、バルトロメオ・ヴァンゼッティ。この彼らの裁判を描いた作品です。音楽を担当するのはエンニオ・モリコーネで、この音楽がまた泣かせるんだわこれが・・・これについては「私的泣ける映画大全」でも紹介していますので、ご参考ください。
 彼らが死刑を宣告されたのが21年で、その後再審請求の活動が世界的規模で行われるのですが、27年に死刑が執行されてしまう。この映画が公開された1971年の段階ではまだ彼らの名誉は回復されておらず、77年になってやっとそれがなされるんです。もちろん、サッコもヴァンゼッティもすでにこの世になく、遅すぎる名誉回復ですが・・・さて、本作はこのサッコとヴァンゼッティを演じるリカルド・クッチョーラジャン・マリア・ヴォロンテと2人の俳優によるそれぞれの演技が見所。裁判の様子はもう、人種偏見、思想差別に満ちた見るに耐えられない理不尽さで、見ていて怒りが込み上げてきました。サッコ・ヴァンゼッティ事件に興味がある方は、是非ご覧になってください。

 

「ジャスティス」(1979)

監督/ノーマン・ジュイソン
出演/アル・パチーノ
ジャック・フォーデン
ジョン・フォーサイス
リー・ストラスバーグ

 アル・パチーノが熱血正義漢弁護士を演じる法廷ドラマです。共演にはジョン・フォーサイス、ジャック・ウォーデン、リー・ストラスバーグとクセ者的ベテラン俳優が揃っています。パチーノが熱血なのは毎度のことですが、この作品はパチーノの熱血ぶりに普段はついていけない人でも見られる娯楽作品に仕上がっています。監督は「シンシナティ・キッド」「華麗なる賭け」などスティーヴ・マックイーンとのコンビで知られるノーマン・ジュイソン
 娯楽作品に仕上がっている・・・と書きましたが、これは本当にパチーノだけが目だっている作品ではありません。法廷にいるヘンな人たちをコミカルに描いている点が面白い。自殺願望がある判事を演じているのはジャック・ウォーデン。法を絶対視し人間味のかけらもないフレミング判事を演じるのはジョン・フォーサイス。オカマの容疑者にスキンヘッドの弁護士、エトセトラ、エトセトラ、エトセトラ・・・そんでもってパチーノのじいさんを演じるのが「ゴッドファーザーPARTU」でハイマン・ロスを演じたリー・ストラスバーグ。脇をかためる俳優陣が魅力的です。「And Justice for All」という原題の通り、全ての人にとっての正義をと訴える作品でもありますが、やっぱりこの作品は娯楽作品として魅力的だと思います。あ、ノーマン・ジュイソン監督は、近年「ザ・ハリケーン」を撮ってます、デンゼル・ワシントン主演の。これもまた法廷ドラマの要素を持ってます。

 

「評決」(1982)

監督/シドニー・ルメット
出演/ポール・ニューマン
ジェームズ・メイソン
ジャック・ウォーデン
シャーロット・ランプリング
リンゼイ・クローズ

 これはホントにイイです。今回紹介させていただく作品の中で、一番お気に入りの法廷ドラマです。「十二人の怒れる男」のシドニー・ルメット監督、主演はポール・ニューマン。ポール・ニューマンの相手となる、冷酷で冷静な法律マシーン弁護士を演じるのはジェームズ・メイソン。そしてポール・ニューマンの親友役としてジャック・ウォーデン、謎の美女ローラを演じるのはシャーロット・ランプリング。どうでしょう、もうスタッフとキャストだけでも見たくなってしまうでしょう?いいですよこれは、フフフ・・・
 さて作品の紹介を。特に力入れちゃいますよこれには・・・昔は敏腕弁護士としてならしていたフランク・ギャルビン(ポール・ニューマン)は、先輩の不正行為に巻きこまれ、罪を着せられ逮捕されてしまう。当然事務所はクビ、妻には逃げられ、どん底に。そんな彼は次第に酒浸りになり、ボストンの厳しい冬には酒場でピンボールをするのが酒以外の唯一の気晴らし。弁護士稼業自体はやめておらず、しかしそれは事故で亡くなった家の葬式に訪れ、賠償請求訴訟を持ちかけるというもので、時には遺族の心象を悪くし、弁護士仲間からもつまはじきものになっていた・・・しかしある日、彼の唯一の理解者であるミッキー(ジャック・ウォーデン)が、病院の医療ミスで植物人間となってしまった女性の姉夫妻の依頼を紹介してくれる。当然これは示談を狙って少しでも示談金をつりあげるところだが、フランクは植物人間になった女性の姿を見て、ふつふつと怒りがこみ上げ、正義感を再び燃やし始める。そして示談ではなく法廷で決着をつけようと意気込むが、対する病院側の弁護士は、冷徹で正確な手腕で知られる大物弁護士コンキャノン(ジェームズ・メイソン)だった・・・
 とまあ序盤のあらすじはこんな感じです。全体を簡単にまとめると、つまりどうしようもなく落ちぶれた中年弁護士が、再び正義感に目覚め、復活をかけて巨大な敵と戦うというドラマなんです。この主人公を演じるポール・ニューマンがとにかく素晴らしい!まず序盤の落ちぶれた姿。ピンボールを打つときの尋常ではないさびしげな姿、葬式回りをするときのやるせなさ、これが本当につらい。そして植物人間になった女性の病室を訪ねるときのシーン。法廷で使う写真を撮影するために、カメラを彼女の方に向けてシャッターをきるんですが、シャッターを押すたびに、彼の中で段々と怒りが込み上げてきて、正義感に再び目覚めていくんです。この一見静かで、しかし内面は力強い演技!素晴らしいの一言に尽きます。しかし裁判で争うといっても、相手が強大である事実は覆せず、何度も落ちこみ、断念しそうになる。しかしそれでも意地を見せ、這いあがろうとするんですよ。そして終盤の最終弁論で覚える感動は、とても一言二言では言い表せません。どうも「ガルシアの首」同様、こういう落ちこぼれ→再起をはかるという構図に僕は弱いらしいw いやしかし、本当に素晴らしい演技でした。
 ついついニューマンに筆が向いてしまいましたが、共演陣にも是非触れさせてください。まずは病院側の弁護をするジェームズ・メイソン。この人も様々な作品に出演している名脇役ですが、この作品でのメイソンは、冷たすぎます。先ほどの「ジャスティス」のジョン・フォーサイスとはちょっと違って、メイソンの場合は、もうとにかく冷静冷酷冷徹、「冷」で形容し尽くせるキャラクター。だからものすごくコワイ。この役はハマリ役でした。この人無表情での演技が非常にうまい。そしてジャック・ウォーデンは緩急自在の役所をこころえ、非常にバランスがよく、作品に貢献。物語のキーパーソンとなる謎の美女ローラを演じるシャーロット・ランプリングもよかったです。
 さて、骨太社会派ドラマの名手シドニー・ルメット監督作品ですから、安易なハッピーエンドでは終わりません。ちょっとほろ苦いストーリーではありますが、それだけに感動もひとしお。寒々としたボストンの情景と、落ちぶれた主人公を重ね合わせる前半の構成、そして次第に心の中で炎を燃やしていく主人公の対比が見事。是非ご覧あれ!(てゆーか早くDVD出しやがれ・・・)

 

「白と黒のナイフ」(1985)

監督/リチャード・マーカンド
出演/グレン・クローズ
ジェフ・ブリッジス
ピーター・コヨーテ
ロバート・ロジア

 さてこちらは、キレイどころ、ハンサムどころが集まった法廷サスペンス、「白と黒のナイフ」です。大富豪の娘が殺され、遺産が転がり込むことになるその夫に容疑がかかり、その男を弁護する・・・とサスペンスにはありがちな設定ではありますが、それをロマンスを交え手堅くまとめた佳作です。主人公の女性弁護士を演じるのはグレン・クローズ。容疑がかかった男を演じるのが、若かりしジェフ・ブリッジス
 まあ彼らの掛合いが主軸なのですが、本作で僕が特に惹かれたのは、狡猾な検事を演じるピーター・コヨーテと、主人公をサポートする中年男のロバート・ロジアです。ピーター・コヨーテは、スティーヴン・ソダーバーグ監督の「エリン・ブロコビッチ」にも弁護士としてちょい役で出演していますけど、本作のコヨーテは、ハンサムなんだけど、むちゃくちゃムカツクやつですw きーー、なんだこいつ!と画面に飛びかかりたくなる権力を誇示する自信家タイプのイヤなやつw その反面、ロバート・ロジアは、堅実に主人公をサポートする探偵役を貫禄たっぷりに演じておりいいですよ。サスペンスとしても、意外な証人、意外な証拠品の登場で盛りあがるし娯楽作品。ちなみに邦題の「白と黒のナイフ」とは、凶器となる狩猟用ナイフのことです。

 

「夜霧のマンハッタン」(1986)

監督/アイヴァン・ライトマン
出演/ロバート・レッドフォード
デブラ・ウィンガー
ダリル・ハンナ
ジョン・マクマーティン
テレンス・スタンプ
ブライアン・デネヒー

 お次はちょっとコメディ仕立ての作品です。監督を見れば納得。「ゴーストバスターズ」のアイヴァン・ライトマンですもんね。ちょっと堅苦しいイメージのある法廷モノですが、本作は主演のロバート・レッドフォードデブラ・ウィンガー、そしてプッツン女優として有名なダリル・ハンナの見事なコラボレーションが魅力的な、気軽に楽しめる娯楽作品として仕上がった法廷サスペンスです。
 ロバート・レッドフォードは、地方検事補の椅子がもうすぐそこに見える敏腕検事役なんですが、弁護士のデブラ・ウィンガーが連れてきたダリル・ハンナの訴えをきっかけに、次第にトラブルに巻き込まれて行くんです。その過程がホントにおかしくて、ダリル・ハンナが前衛芸術(なのか?)を披露するシーンは爆笑でした。弁護士役のデブラ・ウィンガーは、地味な格好だしかなりおばさんチックなのですが、それでもどこか知性を備えた可愛らしい魅力があってイイ。灰色っぽいキャラクターを演じるテレンス・スタンプも存在感にあふれ、ブライアン・デネヒーもいい。忙しなく展開するストーリーはどこか荒唐無稽ですが、ライトマン監督らしいなぁと思うコミカルな内容です。

 

「告発の行方」(1988)

監督/ジョナサン・カプラン
出演/ジョディ・フォスター
ケリー・マクギリス
バーニー・カールソン
テリー・デヴィッド・ムリガン
レオ・ロッシ

 アメリカで社会問題になっている「レイプ」。被害にあった女性は、自分がどういう状況で強姦されたかを知られたくないため、泣き寝入りするケースも多いらしいですが、本作は勇気をもって告発に踏み切った一人の女性の姿を描いた法廷ドラマです。主演のジョディ・フォスターは文字通り体当たり演技でアカデミー主演女優賞を見事獲得しています。
 この映画を見れば分るように、レイプ裁判というのは非常にややこしくて、先ほど述べたように、まず女性が深く傷ついてしまうため泣き寝入りが多く、さらに状況を再現する論述がとても痛々しい。それにこの映画のように「和姦」を主張する相手がほとんどらしいし・・・いくら私が同じ男性と言ったって、いくら弁護のためと言ったって、おい被告の弁護士、お前には人間らしい心ってものがないのかごらぁ!と叫びたくなってしまいますよこの作品では・・・少しでもこの作品によって、レイプ犯罪の減少や、レイプ問題に対する意識の向上、女性への勇気付けがなされているといいなと思います。また、管理人未見ですが、同じような題材の映画として1976年の「リップスティック」があります。(広○涼子のドラマじゃないですよ・・・)

 

「ミュージックボックス」(1989)

監督/コンスタンチン・コスタ・ガブラス
出演/ジェシカ・ラング
アーミン・ミューラー・スタール
フレデリック・フォレスト
ドナルド・モファット
ルーカス・ハース

 法廷サスペンスには、裁判の状況が二転三転するというのはお約束。この作品は、それがとても上手く構成されており、役者の快演もあってとても味わい深い作品になっています。女性弁護士アンの父親は第二次大戦後ハンガリーからアメリカに移住し、そこで働き家庭を作った人物。それが突然、ハンガリー政府が彼をナチスの虐殺者としてアメリカに引渡しを求めてきたのでさあ大変。アンは自ら父の弁護をして誤認だと主張するのですが・・・
 さてこの作品、主演の二人がとにかく素晴らしい。弁護士アンを演じるのはアカデミー賞女優ジェシカ・ラング。そしてナチスの虐殺者だと告発された父親に「シャイン」のアーミン・ミューラー・スタール。父が本当に無実なのか?それとも本当に虐殺者だったのか?心の奥底では半信半疑になっている女性弁護士の心の揺れ動きが上手く表現されており緊張感たっぷり。そして父親役のアーミン・ミューラー・スタールも、自分が無実であると主張し、自分を陥れようとする回りの人間たちに愕然とする姿を熱演。さらにコスタ・ガブラス監督の演出はとてもスリリングでサスペンスとしても上質の仕上がり。タイトルの「ミュージックボックス」はこの事件の重要な鍵となるキーアイテムですが、それは見てからのお楽しみ・・・

 

「運命の逆転」(1990)

監督/バーベット・シュローダー
出演/ジェレミー・アイアンズ
グレン・クローズ
ロン・シルヴァー
アナベラ・シオラ

 この作品は、法廷サスペンス映画の中で唯一ネタばれが許される作品かもしれない・・・いや、大体その「ネタ」が白黒曖昧すぎるため、ばらすばらさないなど問題にならないような気も・・・
 ちょっと意味深な文章で始めてみました。さてこの作品、1980年に実際に起こった事件をもとに描かれています。上流階級のクラウス・フォン・ビューローは、妻サニーを殺害しようと企て、植物状態に至らしめたことで告発され、一審で有罪を宣告された。彼は二審で大学の法学教授ダーショビッツ(この映画の元になった裁判記録を記した人物)に弁護を依頼し、なんとか無罪を勝ち取ろうとするのですが・・・
 で、この問題のクラウス・フォン・ビューローを演じるのがジェレミー・アイアンズなのですが、この人神様でも乗り移ったんじゃないのか?と思ってしまうほどの絶妙な演技!法廷ものに限らず、普段サスペンス映画を見るとき、皆さん大体「こいつが怪しいな・・・」とか「これが伏線になっていそうだな?」とか、あれこれ予想してみることがほとんどじゃないでしょうか?で、この作品真っ先に疑ってかかられるのが間違いなくこのクラウスなんですけど、これが有罪なのか無罪なのか、彼がいい人間なのか狡猾な人間なのか、全く予想を立てることを許してくれないキャラクターなんです。つまり簡単に言ってしまうと「やったんだかやってないんだかはっきりしろーと言いたいくらいどっちだか分らない」んですよ。無表情だし、声の抑揚はないし・・・たまに子どもに優しいところを見せたり、冷たいところを見せたり・・・だから見ている間、彼の言葉にぞくっとしてしまったり、笑ってしまったりと、自分でもこの人を疑ってるんだか疑ってないんだかそのうち分らなくなってくるんです。なんとも摩訶不思議な体験・・・
 きっと弁護を引き受けたダーショヴィッツは、映画の中ではクラウスを無罪と信じて弁護したんでしょうが、その後自分でもわからなくなったんでしょうね・・・演じるロン・シルヴァーも、嘘偽りなく話すと言ったクラウス信じ、弁護したんでしょうけど、それでもどこかもやもやが残っているような演技でしたし。で、そこにさらに植物状態であるはずの妻サニーのモノローグが入ってくるんです。これは脚色によるものなんでしょうが・・・このサニーを演じるグレン・クローズのモノローグによって、作品がさらに「わかんねー」という状態になっていって、もう降参します・・・と言いたくなってしまうかもw
 ちなみに、クラウスは現在も生きており、サニーも植物状態のまま生きつづけているそうです。

 

「推定無罪」(1990)

監督/アラン・J・パクラ
出演/ハリソン・フォード
ブライアン・デネヒー
ラウル・ジュリア
グレタ・スカッキ
ジョン・スペンサー

 これは題名から分るとおり、スコット・トゥローが記した大ベストセラーミステリー「推定無罪」を映画化した作品です。監督は「大統領の陰謀」のアラン・J・パクラ。主演はハリソン・フォードブライアン・デネヒーです。
 まあこういったベストセラーの映画化というと原作との比較がとにかく取り沙汰されるものですが、この作品はパクラ監督が手堅くまとめたことで普通に楽しめる佳作となっていると思います。原作同様二転三転するサスペンスは緊張感にあふれ、問題の女性検事に扮するグレタ・スカッキの妖しい魅力は物語の面白みをひきたてています。アラン・J・パクラ監督は、これまたベストセラーの映画化となったジョン・グリシャムの「ペリカン文書」のときも監督を務め、こちらもジュリア・ロバーツデンゼル・ワシントンの共演が話題となりました。

 

「訴訟」(1991)

監督/マイケル・アプテッド
出演/ジーン・ハックマン
メアリー・エリザベス・マストラントニオ
ジョアンナ・マリーン
ローレンス・フィッシュバーン
コリン・フリールズ

 ジーン・ハックマンという俳優は、私勝手に「出ているだけでどんな映画も熱い映画に変えてしまう俳優」と思っていますw そんな彼が弁護士をやるとなれば、当然それは熱血弁護士役!とこの「訴訟」ではまさに彼が熱血弁護士を演じる法廷ドラマの佳作。競演は「アビス」のメアリー・エリザベス・マストラントニオ
 この作品は、法廷での丁々発止を楽しむというよりは、ジーン・ハックマンとマストラントニオの親子の関係を描いている部分での面白みの方が大きいかも。ジーン・ハックマンは弱者の味方、正義の弁護士。娘のマストラントニオの方は、大きな法律事務所に勤め、大企業が起こされた訴訟で弁護をする、エリート街道まっしぐらの弁護士。とまあ価値観の相違、また母親を巡っての意見の相違で親子関係がびみょー。しかし彼らが同じ法廷で対決することになってから、段々と和解(ってもちろん親子関係がですよ)に向って行く・・・その過程での見応えがあります。共演には「マトリックス」のローレンス・フィッシュバーン

 

「ア・フュー・グッドメン」(1992)

監督/ロブ・ライナー
出演/トム・クルーズ
ジャック・ニコルソン
デミ・ムーア
キーファー・サザーランド
ケビン・ベーコン
ケビン・ポラック

 さてこれまた軍事法廷モノです。これはもう、キャストを見れば一目瞭然ですが、豪華オールキャストによる娯楽大作。主演はトム・クルーズ。共演陣もジャック・ニコルソンを始めデミ・ムーアキーファー・サザーランドケビン・ベーコンケビン・ポラックJ・T・ウォルシュと超豪華。
 まあこれは言うまでもなくジャック・ニコルソンが一番すごいw コワイ、怖すぎる。ジャック・ニコルソンの怪演はこの作品に始まったことではありませんが、この作品でのにニコルソンの軍人ぶりにはもう本当にタジタジになってしまいます。彼の忠実な腹心であるキーファー・サザーランドも、オヤジさんの若かりし頃を彷彿させる威圧感。また、普段は脇でイヤミな悪役を演じることが多いJ・T・ウォルシュが、実はイイやつだったという意外なキャスティングも面白いw 法廷サスペンスとしてもなかなか楽しめますが、これは紛れもない役者映画。豪華キャストの魅力を存分に味わってください。

 

フィラデルフィア」(1993)

監督/ジョナサン・デミ
出演/トム・ハンクス
デンゼル・ワシントン
ジェイソン・ロバーズ
メアリー・スティーンバーシェン
アントニオ・バンデラス

 エイズ問題が撮り沙汰されるようになってから、この問題を取り上げて色々な映画が作られて来ました。「フィラデルフィア」は、その中の代表的作品。エイズの疑いがあるということで解雇されたと主張して大法律事務所とエイズ感染者が法廷で争う模様を描いた法廷ドラマです。
 これはアカデミー主演男優賞を獲得したトム・ハンクスの独壇場。やせ細って弱った姿で法廷に出席し、証言をする姿はとても痛々しく、共演のデンゼル・ワシントンの前で、マリア・カラスの歌うジョルダーノの「アンドレア・シェニエ 亡くなった母を」をにのせられ心情を明かしシーンは凄まじいです。しかし、ハンクスに負けていられないと熱演する共演陣も魅力的。彼の代理人に扮するデンゼル・ワシントンを始め、ハンクスの弁護士としての不適格性を容赦なく指摘する法律事務所側の女性弁護士に扮するメアリー・スティーンバーシェン、法律事務所の所長に扮するジェイソン・ロバーズ、さらにハンクスの恋人役として出演するアントニオ・バンデラスなど豪華豪華。エイズは今、単に接触しただけでは感染しないことが分っていますが、当時はまだエイズに関しての情報が希薄だった。情報の希薄による病気の偏見・差別の恐ろしさ、醜さを描き出した傑作です。

 

告発」(1994)

監督/マーク・ロッコ
出演/クリスチャン・スレーター
ケビン・ベーコン
ゲイリー・オールドマン
エンベス・デイヴィッツ
ウィリアム・H・メイシー
キーラ・セジウィック

 これは、映画「ザ・ロック」や「アルカトラズからの脱出」でおなじみの「脱走不可能の刑務所」アルカトラズ刑務所を閉鎖に追い込んだという実話を元にした作品。これ、法廷映画としてではなく刑務所モノとして認識している方が大部分だと思うのですが、法廷でのシーンが忘れられない印象を残してくれたので、こちらで紹介させていただきます。
 1930年代後半のアルカトラズ刑務所。そこにはヘンリー・ヤングという囚人がいた。彼は脱走に連座という形で拷問を受け、3年もの間独房に閉じ込められていた。そしてそこから出されたとき、彼をハメた囚人を殺してしまうのである・・・この殺人容疑で彼は告発され、その弁護に新人のジェームスがつく。しかしヘンリーはまるで死にたがるように事件の真相について話すのを拒む。ジェームスは刑務所の非人道的囚人の扱いが彼を極限状態に追いこんだと察し、逆にアルカトラズ刑務所を告発する・・・
 とまああらすじはざっとこんなところです。しかし、刑務所を告発って・・・途方もない話です。もちろん、勝ち目ナシ。一体どうやって勝つつもりなんだこいつは・・・と心配しながら楽しむのもまた一興。ですが、この作品の魅力はジェームスに扮するクリスチャン・スレーター、ヘンリーに扮するケビン・ベーコンの友情物語だと私は思います。自分の殻に閉じこもるヘンリーを、何とか励まそうとするジェームス。次第に心を開いていくヘンリー。それでも副所長(扮するはゲイリー・オールドマン。「レオン」に劣らぬ怪演!)による拷問の仕打ちの記憶が何度も蘇り、どうしても証言ができない・・・しかしそれをなんとかしようと奮闘する。この過程のドラマが見所です。私はこの作品、彼らの友情に涙しました。ケビン・ベーコンが終盤ゲイリー・オールドマンに吐き捨てるように言う台詞は、今でも印象深いです。
 また、この作品にはベーコンの妻であるキラ・セジウィックが意外と言えば意外な役で出演しています・・・

 

評決のとき」(1996)

監督/ジョエル・シューマカー
出演/マシュー・マコノヒー
サミュエル・L・ジャクソン
サンドラ・ブロック
ケビン・スペイシー
オリヴァー・プラット
ドナルド・サザーランド
キーファー・サザーランド
アシュレイ・ジャッド

 ジョン・グリシャムの小説はどれもベストセラーになり、どれも映画化権が高額で取引されるというから、いやはやグリシャムって人はすごいですねぇ・・・そんな彼の代表作である「評決のとき」の映画化がこれ。テーマとしては「アラバマ物語」と似ていますが、こちらは正義に燃える熱血弁護士を主体に描いた反差別映画であり、豪華オールキャストの共演が見所。
 黒人少女が白人青年二人に暴行を受け、逮捕される。しかしその父親は我慢ならず自らその二人を殺し裁きをくだす。当然この父親は逮捕され殺人罪として訴えられるのですが・・・それを弁護するのがマシュー・マコノヒー演じる主人公。それがいつしか白人の黒人差別主義者とそれに反対する白人、黒人の対立構造を軸に大きな問題に発展し、主人公はKKKに脅迫を受けるし、死にそうにもなります。しかしそれを乗り越えて、法廷にたち、最終弁論ではアメリカ中に訴えんというばかりの大演説をする。当時若手売りだし中のマシュー・マコノヒーを始め、サンドラ・ブロックサミュエル・L・ジャクソンケビン・スペイシーアシュレイ・ジャッドなど本当に魅力的なキャストが集まっています。またドナルド・サザーランドが主人公の師として、キーファー・サザーランドはKKKの一員として、と親子が反対の立場で出演しているというところも面白い。
 それにしても、この作品のサミュエル・L・ジャクソンはすごい。マコノヒーと彼の掛合いは、表面上は差別を憎み自然に接していると思ってはいても、実は黒人と白人の間には心の深い部分で溝があるんだと痛感させられます。
 ちなみに、黒人差別に関しては、奴隷船に乗る奴隷の人権を巡っての裁判を描いたスティーヴン・スピルバーグ監督の「アミスタッド」などもあります。

 

レインメーカー」(1997)

監督/フランシス・フォード・コッポラ
出演/マット・デイモン
クレア・デーンズ
ジョン・ヴォイト
ダニー・デヴィート
ダニー・グローバー
ミッキー・ローク
ロイ・シャイダー

 さて、続いてもジョン・グリシャム。これは90年代に入って監督作品が減っていたフランシス・フォード・コッポラ監督による映画化です。ロースクールを卒業し、正義の弁護士として活躍することを夢見る弁護士が、やくざな法律事務所に入り、病院で事故の倍賞請求を持ちかけるという日々の中、契約をした一人の白血病患者の保険金未払いに対する訴訟を手がけることになり、巨大な保険会社と対決する姿を描いた法廷ドラマ。主演は「グッド・ウィル・ハンティング」で注目を集めたマット・デイモン。ヒロイン役にはクレア・デーンズです。
 いやーしかしグリシャム作品の映画化って、絶対豪華なキャスト。「ザ・ファーム/法律事務所」「依頼人」「チェンバー 凍った絆」「相続人」、例外ナシ。(オールキャストと言えば「スリーパーズ」もオールキャストの法廷モノだなぁ デニーロがいいですよデニーロが)で、この「レインメーカー」もそうで、主演の若手二人以外にも、やくざな弁護士ブルーザーに扮するミッキー・ローク(これがホント見たまんまの悪徳弁護士w)、主人公の相棒にはダニー・デヴィート、判事役にダニー・グローヴァー、そして保険会社の大物弁護士ドラモンドにジョン・ヴォイト、ちょい役ではありますが保険会社のCEOにロイ・シャイダー。若手からベテランまでホントに豪華です。この作品は、彼らの魅力がそれぞれ遺憾なく発揮されている秀作。テーマはすごく重いんだけど(依頼人が残したメッセージビデオの時はもう涙ボロボロでした)、娯楽作品として楽しめちゃうんだからやっぱりグリシャムはすごい。ちなみにタイトルの「レインメーカー」とは、「札束の雨が降るごとく稼ぐ男」という意味。

 

「英雄の条件」(2000)

監督/ウィリアム・フリードキン
出演/トミー・リー・ジョーンズ
サミュエル・L・ジャクソン
ベン・キングスレー
ガイ・ピアース
ブルース・グリーンウッド

 「英雄の条件」は近年の軍事法廷もの。監督は「エクソシスト」「フレンチ・コネクション」のウィリアム・フリードキン(ホールデンではないw)。この監督、もともとドキュメンタリー番組の出身で、「フレンチ・コネクション」でもドキュメンタリータッチだったのですが、この「英雄の条件」は、かなり熱いドラマになってます。
 なんで軍事法廷が出てくるかというと、イエメンのアメリカ大使館が暴徒と化した民衆に襲われ、海兵隊が大使館員たちを救出しにいくのですが、指揮をとったサミュエル・L・ジャクソン扮する隊長が襲いかかる暴徒に向けて発砲命令を下し、その結果大量の民衆を死に至らしめてしまう。それが問題となってサミュエルが法廷の被告席に立たされてしまう。弁護するのは、彼の親友という設定のトミー・リー・ジョーンズ。対する検事役にガイ・ピアース。その他共演陣にブルース・グリーンウッドベン・キングスレーフィリップ・ベイカー・ホールなど豪華。
 で、公開時コピーにあるように「殺人者か、英雄か」と白黒はっきりさせるためにトミー・リーとガイ・ピアースが丁丁発止を繰り広げるんですが、殺人者、英雄、これはどちらも当てはまるというのは明白。英雄とされたからと言って殺人を行ったということは払拭できないし、人を殺したのだけれども、大使館の人々を救ったことは確かなんです。が、考えて見れば、軍隊ってどちらの性格も持っているのに、なんでそれを白黒はっきりさせなければならないのか?これはそんな矛盾を含んだ軍隊の構造に疑問を投げかけた作品として見ることができると思います。軍内部で、それぞれが足を引っ張りあっているようなものだし、その上で人道的だ非人道的だと彼らが言い合うなんてちゃんちゃらおかしいですもん。
 終盤、意外な人物が証人として出廷しますが、その人物にサミュエルが敬礼するシーンは、涙が出てきました。それはこの作品に感動した涙というより、軍人の哀しいサガに対する涙だったと思う。この問題、アメリカ以外の国だったらどう捉えるんでしょう。特に日本。心配だ・・・

以下追加です・・・

 

「裁きは終りぬ」(1950)

監督/アンドレ・カイヤット
出演/クロード・ノリエ
ミシェル・オークレール
ヴァランティーヌ・テシエ

 1950年、「十二人の怒れる男」よりも古いです。舞台はフランス、ヴェルサイユ。ガンに身体を蝕まれた男を、愛人である女医が安楽死させた。それを家族が告発。女医は法廷に被告として立つことになってしまう。安楽死について問題提起しつつ、陪審制に疑問を投げかけた社会派ドラマです。
 安楽死は今でも物議の対象となって各地で議論されています。安楽死に関する映画やテレビドラマもよく放送されています。苦痛に苛まれる人間は、自分から楽な死を望んではいけないのか?それを助けてはいけないのか?作品中で「死は神が決めることだ」という台詞がありましたが、本当にそうなのか?では、なぜ医者は長くない患者に延命治療を必死で施すのか?「ブラックジャック」でもありましたね・・・ドクターキリコ。それに本間先生も言ってました・・・「人間が生き物の生き死にを自由にしようなんておこがましくはないかね・・・」って。医者は患者の意志を尊重すべきではないのか?医者は何でもかんでも「生きている」ことを最重要視するけれども、それは正しいのか?などなど・・・色々な問題点を指摘しているようです。
 安楽死については、自分がそういう状況に置かれないと、判断ができないと思うのです・・・私の祖父は、末期のガンで一昨年亡くなりました。延命治療を施したところで数ヶ月しか違わないし、何よりも祖父が苦しむから、ということで痛み止めを打つ程度で、あとは寿命に任せました。入院して1ヶ月くらいで亡くなってしまったけど、それでよかったんだと思います。安楽死って、これの延長線上にあるんじゃないかな?何もせず放っておく、それはつまり医学的には延命を断念したことです。でも、医者はこれで罪に問われません。安楽死も、医学的に延命を断念したことでは同じ。そこに「殺人」という意味が付け加えられるけど、患者、家族が望むなら、それは「殺人」にならないのでは?もちろんこれは飽くまでも私の考えです。苦しむことは分っていても、延命治療を施したいというご家族だっていると思います。つまるところこれは法の不備が最大の問題であって、医者や家族を悩ませるこの問題を早く解決するには、速やかな法の改正が必要だと思います。
 また、映画に出てくる判事や検察官、陪審員らは、その死に行く者やその周りの人間の意志を慮らず、自分勝手な宗教観や哲学観で考えようとする人もいる。それって自己満足じゃないか?陪審員は、真剣に事件の背景を究明しようと考える人もいれば、差別的見地ですでに殺人だと断定している人もいる。仕事があるから、裁判なんてかまってられない・・・「裁判なんて」?それはまずいです。人の人生を左右する大きな問題なんだから。それにどんな陪審員だって100%白黒を決定できる能力はありません。大体初めて見る被告を何日間かで観察し得られる被告のイメージなんてたかが知れてるでしょう。どこかで予測に基づく判断を下さなければならない。相当な覚悟が必要です。そこが、陪審員制の難しいところだと思います。
 裁判の決着はもちろんつきますが、だからと言って問題を完結させているわけではありません。これから考えて行かなければならない色々な問題が山積みです。最後の、おそらく監督のモノローグにはぞっとさせられます。この作品は、今挙げた諸問題を浮き掘りにさせつつ、豊富なサスペンス性と様々な人間ドラマが織り込まれた傑作です。

 

「ジャンヌ・ダルク裁判」(1962)

監督/ロベール・ブレッソン
出演/フロランス・カレ
ジャン・クロード・フルノー
ロジェ・オーラ

 ジャンヌ・ダルク。英仏百年戦争の英雄。オルレアンにて包囲されるシャルル7世を助け、彼の戴冠式を進め、そして戦局をフランス有利に導いた少女。しかし王の側近たちにねたまれ、イギリス軍に身柄を拘束され、ルーアンにて異端審問の宗教裁判にかけられる。自らを神のお告げを得た者と吹聴したとして「魔女」の烙印を押され、火刑に処されてしまう。その25年後、世論の高まりのおかげでジャンヌの復権裁判が行われ、復権を果たす。今ではジャンヌが処刑された5月31日はフランスの「ジャンヌ祭」とされ、国民的英雄として奉られています。
 本作「ジャンヌ・ダルク裁判」は、ルーアンの裁判記録をもとに、ルーアンの裁判を最限した小品。監督はロベール・ブレッソン。ジャンヌが司教や異端審問官の前で常に堂々としている姿がとても印象的です。しかし、ひとたび牢屋に入り独りになると、絶望感に苛まれるジャンヌ。人前ではいくら毅然とし神の使いと振舞うものの、やはりジャンヌも人の子なのです。そして火刑に処される直前、よろよろとした足取りで刑場に向う不気味さと言ったら!この足しか撮らないシーンは、本当に緊張感たっぷりです。そして十字架にはりつけられ、火をたかれる。しかし磔にされてからは毅然とし、なんとも崇高なる死をジャンヌは迎えるのです。ジャンヌ・ダルクに興味がある方は是非どうぞ。ジャンヌ・ダルク裁判に関しては他にカール・ドライエルの「裁かるゝジャンヌ」などがあります。