文鳥様と私 今 市子著

あおば出版 ISBN4-87317-151-2

動物マンガっていつの間にこんなに増えたのでしょう。

ネコ、犬、ハムスター、ウサギ、はてはフェレットまで。「文鳥様と私」は「鳥っこ倶楽部」という鳥マンガを集めたアンソロジーに連載(?)されているそうです。小鳥を飼っているマンガ家が、小鳥との生活をマンガで楽しくレポートする実録ものなのだけれど(なんだと思う)、出版物リストを見てみると小鳥マンガはインコ単独のマンガも含めて数が多いので、結構需要は多そうです。

ところで、マンガ通の人には今市子というともっと違う存在だったりします。私にとっては「百鬼夜行抄」(朝日ソノラマ)をはじめとする、質の高いファンタジーや不思議な話をしっとりとした絵でつむぎだす、とても好きなマンガ家の一人です。確か今さん原作の読み切りマンガが、「世にも奇妙な物語」で放映されたこともありました(SMAPの稲垣君が主役だったはず)。

そして実はJune系(知らない人のために。女性向けの少年愛、男性の同性愛をテーマにしたマンガ、小説のジャンル)でも実力派です。あまりそっちの方は読まないのだけど、今さんのマンガは切なくて濃い短編小説のような透明感があります。絵柄は、昔の和物の萩尾望都のような繊細なイメージというとわかりやすいかな。

その今さんが文鳥マンガ。ああでも、繊細なマンガが描ける人の実録文鳥マンガはめちゃくちゃ面白かったのです!他の動物マンガは読んでいないので比べることはできないけれど、今さんのマンガが面白いのは冷静な視点で見ていることが大きいかもしれません。こういうのって、下手をすると「カワイイカワイイ」で親バカなものになりがちな気がするのですが、今さんは(もちろん親バカな一面もありますが)文鳥の激しい気性やそうした文鳥にふりまわされる飼い主の生活ぶりを、面白おかしくわかりやすく身近に描いています。だからこれは文鳥マンガであると同時に、今さんの生活マンガでもあります。ひぃー、とかギャーとか悲鳴をあげている今さんのあわてぶりが面白いのです。

例えば仕事(マンガを描く)をしている横で、放し飼いの文鳥が消しゴムカスを食べる、青鉛筆の芯を食べる(なのでフンは真っ青)、切手を食べる、マンガ本を食べる、液体ノリを吸う、薬用リップクリームまで食べてしまう。カラーインクを間違って飲んで、原稿の上に吐き出す。また、つがいのオスが別のオスとオス同士で交尾してしまったり、その愛人のオスがメスと不倫したり(ダブル不倫)、つがいのオスは別のメスと不倫したり(トリプル不倫・・・)、ユーモラスな文鳥の生態も面白いけれどその度に驚愕する今さんは、私達読者が感情移入するキャラとしてとてもよく描けています。

すごいなと思ったのが、卵からヒナを孵して成鳥にまで育てたエピソード。生まれたての文鳥のヒナって、体長2.5センチ程しかなくて、しかも干しアンズそっくりで、お腹の皮膚が薄くてピンクや緑の内臓や細い腸が透けて見えるそうな(だから名前はナイゾウ)。母親が子育て放棄したので、3日めからすりつぶしたえさを楊子で与えて育てたんだそうです。4日めから脳天に響く声で鳴いたらしい。2.5センチの生き物が鳴く(!)。驚異です。生命の神秘。

必ずしもカワイイキャラとして文鳥が描かれていない、シビアな作風が私はとても気に入りました。多分この本は、老若男女誰が読んでも面白いと思うでしょう。時間潰し、気晴らし、ほっとしたい時、電車の中、どんな時でも楽しめるとてもハートフル(だと思うな〜)な本です。

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