encyclopedia of "20th century nostalgia"

>>"encyclopedia" top





青柳誠(あおやぎ・まこと)

 
音楽家。1961年3月17日生。京都府京都市出身。中学生の頃からジャズに傾倒し、大学在学中の1980年、フュージョンバンド「浪花エキスプレス」のピアノ兼サックスとしてレコードデビュー。
 その後は数多くのミュージシャンのサポートメンバーとしてコンサートやレコーディングに参加、またCMなどの楽曲製作を務めるかたわら、精力的にライブ活動を行う。
 「20世紀ノスタルジア」ではサウンドトラックの作曲・編曲家、プレイヤーとして参加。「
光のごちそう」を作・編曲、「ドリーミング」「チュンセ&ポウセ」「チュンセ&ポウセ(エンディング)」を編曲。「忘れちゃいやよ」でシンセ・アコーディオン、「チュンセ&ポウセ」「ドリーミング」などでキーボードを演奏している。
 現在は自己のバンド「トライフレーム」や「J-TRASH」、「ザ・ダブラーズ」で活躍中。
 青柳氏のオフィシャルサイトは
こちら



芦川ひろ子(あしかわ・ひろこ)

 キャスト・多田亜沙美桜木高校2年A組、放送部所属。の友人。桜木ニュースを編集していた杏のセリフから、乙女座(8/23〜9/22生)と思われる。
 何かとおせっかい焼きで勝ち気、そして短気。杏とは正反対の性格だが、だからこそウマがあうのだろう。彼氏を放送部の前で待ちぼうけさせるという荒業も披露するが、いざ二人っきりになると声のトーンまで変わっていた。女の子ってやっぱり怖い。実家は屋形船を営んでおり、忙繁期はひろ子も家業を手伝っている。ちなみに屋形船の掃除のバイトは時給1,000円。



アフレコ(あふれこ)

 アフター・レコーディングの略。映像だけを先に撮り、後でセリフや効果音を録音する手法。「20世紀ノスタルジア」もこの方法で撮影されていて、よく観てみると口の動きとセリフ回しがまるで違っているところが結構あったりする。「インフィニティ」では、セリフを間違えたにも関わらずOKが出て慌てた広末に、原監督が「大丈夫、アフレコだから分かんないよ」と爆弾発言(?)をするシーンも収められている。いいんかいなホントに。出来上がりは結構バレバレだったけど。



アボリジニ(あぼりじに)

 オーストラリア大陸の先住民。伝統的に自然崇拝を行い、ドリーミングと呼ばれる各部族もしくは個人独特の崇拝対象を持つ。最近では、シドニーオリンピック女子陸上で金メダルを獲得したキャシー・フリーマン(オーストラリア代表)が記憶に新しい。



杏(あんず)

 「遠山杏」の項参照。



一年生(いちねんせい)

 放送部所属。この一年生が放送事故を起こさなければ、杏は映画を完成させることもなく、トオルもきっとオーストラリアから戻って来なかった。杏はこの後輩と北村先生に感謝すべきである。



インフィニティ(いんふぃにてぃ)

 「20世紀ノスタルジア」の製作風景を、広末涼子を中心に追ったメイキングビデオ。正式名称は「インフィニティ 広末涼子 in 20世紀ノスタルジア CINE DOCUMENT」(長いな)。撮影日や撮影場所がテロップで出るため、どのシーンが同じ日に撮影されたのかがある程度特定できる。てっきり違う日に撮影されたと思っていたシーンが実は同日に撮影されていたり、その逆もあったりと、ちょっとだけ、夢が壊れる可能性あり(笑)。ロケ地巡りにも重宝する。



宇宙人(うちゅうじん)

 ポルックス第7惑星出身のチュンセと、チュンセから分裂して産まれたポウセのこと。単性生殖で増殖し、音と光を摂取する。エーテル体なので目には見えない。



宇宙人のキミへ(うちゅうじんのきみへ)

 サウンドトラックの1曲。作詞作曲・原将人、編曲・塩見光昭。清洲橋の出会いのシーンでトオルが突然「宇宙人のテーマ」と言って歌いだした曲。出会いの時点では1番しか存在しなかったが、冬になりひとりで編集を始めた杏がやはり清洲橋の上で2番を継ぎ足し、ミュージカルとして完成させた。小説ではシンセサイザーの伴奏は杏自身がつけたという設定になっている。杏曰く「時を超えたミュージカル」。



梅垣義明(うめがき・よしあき)

 俳優。WAHAHA本舗所属。本作品では工事現場から電源を拝借していたトオルを補導する警官役。「ろくでなし」を歌いながら鼻に詰めた豆を飛ばす、というギャグがあまりにも有名だが、最近では「川の流れのように」を歌いながら股間にセットしたノズルで水を撒く、という新しいネタも登場している。



エーテル(えーてる)

 かつて光や電磁波を媒介すると考えられていた物質。後の相対性理論の発見によってその存在が否定された。チュンセとポウセの身体はこの物質で出来ている。



越中島公園(えっちゅうじまこうえん)

 杏が「忘れちゃいやよ」を歌い踊った川沿いのシーン、そしてトオルのひとりごとを確かめに、夕暮れの中、学校へと走ったシーンのロケ地。隅田川西岸沿いに細長く伸びた公園で、上流方向には永代橋や中央大橋を望み、下流方向には大川端リバーシティがそびえ立つ屈指のロケーション。都営大江戸線月島駅から清澄通りを越中島方面へ、相生橋を渡ってすぐ左手にある。入り口の大きな錨が目印。



オーストラリア(おーすとらりあ)

 首都はキャンベラ。通貨はオーストラリア・ドル。トオルが突然旅立ってしまった場所。トオルの父親もここに在住。



大江戸線(おおえどせん)

 正式名称は都営地下鉄大江戸線。この映画のロケ地は大江戸線沿いに集中しているので、ロケ地巡りの際には大変重宝する。パスネット(もしくはTカード)は必需品。
 大江戸線を使って行けるロケ地の主なものとしては清洲橋中央大橋越中島公園晴海中学校東京タワーBOX東中野などが挙げられる。



大島蓉子(おおしま・ようこ)

 女優。トオルの母親役。1955年生、宮城県出身。劇団青年座を経て、舞台やテレビ、映画と多方面で活躍。役作りで体重を30kg変えることができるらしい…。
 本作以外では『リング』『サトラレ』などに出演。



お手つき(おてつき)

 『勝手にしやがれ』を観た後、トオルが和室でそれぞれの家庭環境を語り合うシーンで起こった(ように見える)こと。
 杏が話を聞きながらグラスに紅茶を注ぐのだが、トオルは杏がまだもうひとつのグラスに紅茶を注いでいるにも関わらず、待ちきれないかのように注ぎ終わったグラスに手を伸ばし、持ちかけたかと思うとすぐに手を引っ込めて、杏に「はい」と勧められて改めてグラスに手をつける。
 普通に見ればこれは圓島が演技の最中うっかり「お手つき」をしてしまったものがOKテイクになったものだと思っていたが、よく観直すとどうやら事実は違っていた。
 実は広末がふたつ目のグラスに紅茶を注いでいるとき、ポットが注ぎ終わったグラスに接触して、グラスが傾き倒れかかっているのだ。しかし広末は気付かないのかそのまま紅茶を注ぎ続ける。そこでそれに気付いた圓島が手を伸ばし、傾いたグラスを戻して再び手を引っ込めた、というわけだ。
 つまりこのシーンは圓島の「お手つき」というより、「ナイスフォロー」ということになる。



乙女座(おとめざ)

 ひろ子の星座と思われる。なお、ひろ子が編集機のモニターを消す直前に一瞬映る、杏が編集していた桜木ニュースの星占いの画面は、
『今まで片思いだった乙女座さんに絶好の告白チャンス。今月は、恋愛運が急上昇。カトレアを部屋に飾ればさらに運気上昇。』となっている。
 この文中にある「今月は」という表記からも、桜木ニュース(映像版)は月一回の放送であることが推測できる。(桜木ニュースの項参照)





片岡徹(かたおか・とおる)

 キャスト・圓島努。元・桜木高校2年A組(一学期で退学?)。清洲橋の出会いの時点で「17歳の男の子」と語っていることから、4月〜7月生まれだと思われる。
 ひろ子曰く、ニューヨーク帰りの天才ビデオアーティスト。海外赴任の多い父親の仕事のため、海外で暮らしていた経験が多く、外国語を得意とする。
 性格は繊細で、鋭敏な感受性と観察眼を持つが、どうやら人間と直接向き合うことを不得手としている。実際、と夏休みじゅう一緒に撮影していたにもかかわらず、トオルは出会いの場面以外で直接彼女の名を呼んだことがない。杏への呼びかけはすべて「ポウセ」で統一しており、それはつまりビデオカメラを通した間接的な接触でしかない。
 その意味でトオルはずっと、ビデオカメラを介さずに、人間として直接杏と向き合うことを怖れていたのかもしれない。そんな彼もラストシーンではしっかり、杏と向き合えるまでになる。
 なお、脚本執筆段階の初稿ではトオルは崖から転落死することになっていた。この展開も、それはそれで面白い作品になったかもしれないと、ビデオを通してのトオルの告白シーンあたりを見るたびに思ってしまう。



北村嘉代(きたむら・かよ)

 キャスト・新田聡子。桜木高校の新任教諭で担当は現代国語(小説版)。放送部の顧問でありながら桜木ニュース放送事故を観て他人事のように大笑いしたり、杏に映画を完成させるために学校の機材の個人使用を認めたり、渋る杏を来年度の予算をタテにゆすったりと、教師としてはかなりエキセントリック。現実にこんな教師がいたら、生徒にとても人気があるか、凄く嫌われるかのどちらかだろう。個人的にはこういう先生は大好きだけど。



清洲橋(きよすばし)

 狭義の「聖地」。昭和3年、関東大震災からの復興の一環として、ケルン市のライン川に掛かる橋を模して建造された。中心部分に建つ2本の橋脚から両側に吊りロープを渡して橋の自重を支える構造の吊橋。
 東京の玄関口のシンボルとして同時期に建造された永代橋とは一対として扱われており、永代橋は力強く男性的な、清洲橋は繊細で女性的なイメージを持ってデザインされている。
 この映画は清洲橋を見渡す隅田川テラスに定点カメラを設置し、薄暮、夕闇、夜、朝と時間によって移り変わる清洲橋の映像から幕を開けるのだが、これがラストシーンへの大きな(しかも、偶然に)伏線になっている。
 江東区清澄と中央区日本橋中洲を繋いでおり、このふたつの地名から一字ずつを取って清洲橋と名付けられた。
 最寄り駅は都営大江戸線・清澄白河駅だが、個人的には大江戸線・森下駅から隅田川テラスを行くルートの方がおすすめ。



清澄公園(きよすみこうえん)

 一度は放り出しかけた映画の編集を再開し、一段落させた杏が訪れた公園。杏はここで目に映るすべての風景に生命があり、呼吸し、それぞれに交信していることを感じ取り、これまでやってきたことについて彼女なりの答えを見つけた。そしてそれはトオルを苦しめていたものへの答えにもなるものでもあった。画面ではかなり広く見えるが、実際はそれほど広いわけではない。最寄り駅は都営大江戸線・清澄白河駅。





サウンドトラック(さうんどとらっく)

 「20世紀ノスタルジア」で使用されているほとんどの曲は原監督自らが手掛けており、4分の3拍子の曲があったり三連符の曲があったりとバラエティに富んでいる。このサウンドトラックは最初から通して聴くとしっかりストーリー性を保っており、これだけでも十分に「20世紀ノスタルジア」という作品世界を表現している。ワーナーミュージック・ジャパンから1997年7月25日に発売された。全11曲。3,059円。



桜木高校(さくらぎこうこう)

 杏、ひろ子が通う高校。トオルは2年の1学期のみ在籍していた。トオルが編入してきたということは都立なのだろうか。外観は晴海中学校、校内はつくば秀英高校、放送部は日本映画学校でそれぞれ撮影された。



桜木ニュース(さくらぎにゅーす)

 正式名称は「桜木高校ニュース!」。放送部が製作し、昼休みに校内テレビで流しているプログラム。ひろ子が教室から飛び出してくるシーンに映っている時計から、、正確な時間は12時30分だと思われる。
 劇中では『新東京百景「浅草界隈」』がメインとなっており、杏による浅草寺リポートが流れていた。他にも星占いのコーナーがある。
 なお、これは勝手な推測だが、本編で杏が桜木ニュースを編集しながら『今週中に終わらせないと間に合わないでしょ』と語っているところから、桜木ニュースは月1回ほどのペースで放送されていると思われる(もし週1のペースだとここのセリフは『今週中に』ではなく『今日中に』あたりになるはず)。あ、でもナレーションで『今週の桜木ニュースでは…』とか言ってるなぁ…うーん。もしかすると映像の放送が月イチで、残りの週は音声のみの放送なのかもしれない。



桜橋(さくらばし)

 杏と伸也がミュージカル「20世紀ノスタルジア」を撮影した橋。墨田区と台東区に分かれた隅田公園を繋ぐ、歩行者専用橋。1975年に隅田公園が東京都から墨田区と台東区に移管されたのをきっかけに建設が計画され、1985年に完成した。X型をした独特の形状と隅田川にかかる橋には珍しい黄色の塗装が目を引く。
 桜橋のすぐ側には陸上競技場や野球場があり、映画でも杏の背後に照明塔が映っている。また、桜橋のたもとには水上バス乗り場があり、これに乗れば清洲橋や越中島公園までは一直線。伸也ももしかしたら水上バスでここの待ち合わせ場所へ来たのかもしれない。
 アクセスは東武伊勢崎線、営団銀座線、都営浅草線の浅草駅から隅田川沿いを北上、徒歩15分ほど。もしくは浅草松屋前から都営バス「南千住」行きに乗り、「スポーツセンター」で下車。



佐藤正宏(さとう・まさひろ)

 俳優。WAHAHA本舗所属。本作品では桜木高校の教頭先生を演じた。



自己紹介(じこしょうかい)

  清洲橋での出会いで、トオルは自分のことを「実は僕、宇宙人なんだ」と自己紹介した。杏はそんなトオルに興味を抱くが、主演の広末涼子は『20世紀ノスタルジア撮影日記』で「広末としては『ヘンなやつ』と、思わず引いてしまいそう」と語っている。ま、普通はそうだ。
 2
 本編後半、物語を撮り足すことを決めた杏が、自分をアップで撮影しながら「遠山杏、地球のいきもの。ヒト。女性」と自己紹介した。これはつまり、自分の中にいるポウセ(イコール映画、と言い換えられる)に対し、正面から真剣に向き合っていこうという決心のあらわれと見て取れる。予告編で大林宣彦監督が寄せた「たおやかな覚悟」というコメントをまさに表現するシーンではないだろうか。



シナプス(しなぷす)

 ひとつのニューロンから他のニューロンや細胞に興奮を伝達するための接合部。



女優菩薩(じょゆうぼさつ)

 原監督広末涼子に贈った尊称。「20世紀ノスタルジア」製作発表で「広末涼子は女優菩薩である」と語ったことに由来する。広末の女優としての素質、姿勢を評価し、また当時弱冠16歳にして既に女優として生きていくことに迷いのないような姿を、悟りを開いて行を積んでいく菩薩になぞらえ、こう呼んだ。このことについて「インフィニティ」でも、原監督自身の言葉で少し語られている。
 なお広末自身はこの尊称に対し、「20世紀ノスタルジア撮影日記」の中で『も〜、ホントに褒めごろしってやつですね』と謙遜している。



水準原点観測所(すいじゅんげんてんかんそくじょ)

霊岸島水位観測所」の項参照。



隅田川テラス(すみだがわてらす)

 隅田川下流に続く、川沿いの遊歩道。オープニングの清洲橋、アコーディオンを弾くトオル、杏とひろ子の帰り道など、隅田川テラスのあちこちがロケ地になっている。



「セイ・アイアー」(「せい・あいあー」)

 地球レポートの中で、トオルが語った言葉。「星から来た」という意味で、ヒンズー語であると思われる。杏(小説版)曰く、『ヒンズー語かな、よくわからない』
 これについては小説版に詳しい記述がなされており、それによると、トオルが電源を借りた工事現場で出会ったインド人に教えられたものらしい。ひょっとするとその工事現場とは、後に電気の無断使用で補導されることになる現場なのかもしれない。
 「セイ」のところで下に向けた人差し指を頭の所に持っていき、「アイアー」で地面を指し示す。



聖地(せいち)

  聖なる場所。転じて、本作品のロケ地の総称。
  (限定的に)清洲橋



聖地巡り(せいちめぐり)

 ロケ地探訪の俗称。同義語に「聖地巡礼」などがある。



制服(せいふく)

 映画を観ていて気がついたのだが、桜木高校の制服にはまるで統一感がない。杏は常にチェックのプリーツスカートを履いている(トオルと下校するシーンのみ、グレイのプリーツなし)が、ひろ子のスカートはグレイのプリーツなし(後半は紺のプリーツなし)。他の生徒もてんでばらばらで、男子に至ってはネクタイを締めていたり、学ランだったりと、もうぐちゃぐちゃ。制服っぽかったら何でもよいのだろうか? 「制服を揃えるほどの制作費がなかった」っていうオトナの理由も思いついたけど、敢えて却下。





高瀬タバコ店(たかせたばこてん)

 父・伸也のマンションに泊まった翌日、杏がに電話をかけた場所。相生橋方面へ行く清澄通りから、一本奥に入った通りにある。



多田亜沙美(ただ・あさみ)

 女優。芦川ひろ子役。1980年5月10日生、東京都出身。O型。特技はピアノ。本作以外には『ケイゾク』等に出演している。



多摩川(たまがわ)

 ミュージカル「20世紀ノスタルジア」で杏と桃が撮影した場所。



単性生殖(たんせいせいしょく)

 単為生殖ともいう。生物が異性との交配なしで子孫を残すこと。なお、宇宙人は単性生殖と聞いて、杏はポウセの一人称を「」とするが、正確には単性生殖はメスのみで行われる生殖形態のため、トオル(チュンセ)が「あたし」という方が自然である。
 ちなみにトオルの言う「雌雄の違い」がない生殖形態を正しくは「無性生殖」といい、単性生殖とは異なる。



地球人文化レポート(ちきゅうじんぶんかれぽーと)

 トオルと杏が映画用に撮っていたビデオ素材の名称のひとつ。杏(ポウセ)が自らのビデオレターを「地球人レポート」と呼ぶのに対し、トオルはこの素材のことを一貫して「地球人文化レポート」、もしくは「地球レポート」と呼ぶ。つまり、杏はトオルをはじめとする「人」を中心にものを見ていたのに対し、トオルは建造物や都市機能を中心とした「文化」を通してものを見ていたということになる。この視点の違いが杏とトオルの作り上げたラストシーンの違いへと発展していったのだと思われる。



地球人レポート(ちきゅうじんれぽーと)

 杏がオーストラリアのトオルに送り続けたビデオの名前。全部で10本。本編前半の「ナンバー9」では、『今日は、遠山杏から片岡徹へのビデオレターです』と敢えて断っていることから、ビデオレター以外のものも送っていたと思われる。
 なお、本編後半、オーストラリアに引きこもったままのトオルを動かす力となった10本目「ポウセ発スペシャルエディション 〜遠山杏について〜」は「地球レポート」と題されているが、これはトオルが編集した「チュンセ発地球レポート・スペシャルエディション 〜滅亡まで〜」に対するアンサーとして、敢えてこう名付けられたものだと考えられる。



中央大橋(ちゅうおうおおはし)

 杏の通学路として度々登場する橋。トオルの編集した「滅亡まで」にも収められている。中央の白い橋脚が特徴的。中央区佃と中央区新川を繋いでいる。



中断期間(ちゅうだんきかん)

 「20世紀ノスタルジア」の撮影はまず1995年8月に一部が行われ、一年半の中断期間の後に1997年1月に再開された。この中断期間のうちに広末涼子は大ブレイクを果たす。
 この中断期間以前に撮影された15歳になりたての広末(「夏の杏」)はやはりどこかあどけなさが残っており、編集機の前に座る「冬の杏」とはやや、顔つきが違う。
 そしてそれが、モニターの中に映る、トオルと無邪気に映画を撮っていた「夏の自分」を見返す「冬の杏」のせつなさを効果的に表現しているように思われる。
 ちなみに中断期間以前に撮影されたと思われるシーンは、清洲橋の出会い、東京タワー(ミュージカルシーン含む)など、「夏の杏」に集中している。



チュンセ(ちゅんせ)

 トオル曰く、彼の体をボディジャックした宇宙人ポルックス第7惑星、宇宙生命文化研究所の調査員。タイムマシンで地球の滅亡を知った彼は、その原因を探る為に20世紀末の東京に降り立ったという設定。地球環境にうまく溶け込めず苦しむさまはまさにトオルが持つ悩みなどを具現化したもののようにも見える。なお、チュンセという名前は宮沢賢治の「双子の星」に由来している。



チュンセ&ポウセ(ちゅんせ・あんど・ぽうせ)

 サウンドトラックの1曲。作曲・原将人、編曲・青柳誠。本作品のメインテーマ。「20世紀ノスタルジア」はこの曲で幕を開け、この曲でエンディングを迎える。オープニングは木琴、ピアノ、ベースのトリオ編成、エンディングはピアノのみで演奏されている。静かでありながら印象的な旋律を持つ佳曲。



チュンセとポウセ(ちゅんせとぽうせ)

 杏とトオルが撮影した映画用ビデオ素材の名称のひとつ。『星の記憶』、『杏の家(トオル ひとりごと)』、『遺跡めぐり』などのサブタイトルが付された数本が確認できる。



ディデュリドゥー(でぃでゅりどぅー)

 オーストラリアの先住民アボリジニに伝わる民族楽器。全長は1〜1.5m程で、シロアリに中身を食べ尽くされたユーカリの木で作られる。発祥はオーストラリア大陸北部のノーザンテリトリーともキンバリーとも言われ、その歴史は古く世界最古の木管楽器と呼ばれる。なおノーザンテリトリーにはアボリジニの聖地エアーズロックがあり、トオルも「トオル ひとりごと」と題されたテープにおいてモノローグというかたちでそのことに触れている。



デジタル・ハンディカム(でじたる・はんでぃかむ)

 物語後半、映画と真正面から向き合うことを決意し、物語の続きを撮り足すことを決意した杏が放送部から持ち出した備品のビデオカメラ。SONY製。型式番号DCR-VX1000。トオルや杏のカメラと違いデジタルで撮影するタイプで、プロユースにも耐えるクオリティを持つ。現在は生産を終了している。詳しい商品情報はこちら



東京タワー(とうきょうたわー)

 正式名称・日本電波塔。全長333メートルはあまりにも有名。テレビやラジオの放送波送信所として機能しており、扱っている放送波は14。杏とトオルはここの展望台から見た夜の都市の輝きを神経回路に見立てて「ニューロンシティ」と呼び、駐車場で『ニューロンシティの夜』のミュージカルを撮影した。この映画で唯一と言ってよいかもしれないラブシーン(キスシーン寸前)もある。
 なお、冬に杏ひとりで東京タワーを訪れたシーンは、大展望台1Fの「代々木」案内板の真下あたりで撮影されたと思われる。
 最寄り駅は都営大江戸線・赤羽橋駅。2001年現在、入場料は大展望台までで820円(高校生以上)。



遠山杏(とおやま・あんず)

 キャスト・広末涼子桜木高校2年C組、放送部所属。本作品の主人公。全編を通して16歳の設定になっているようなので、晩秋〜3月生まれだと思われる。
 ジャーナリストの母・桃の影響なのか、好奇心旺盛な性格。自分勝手で突拍子もない行動を取りがちなトオルに対しても怒りをぶつけない優しさと寛大さ、忍耐強さを持ち合わせている。
 「じゃあ、昨日のスープをリゾットにする」という台詞から、杏はかなり料理の腕に覚えがあると思われる。母親が忙しいからだろうか。
 なお、薄いオレンジ色のことを「あんず色」というが、やはり杏の私服はオレンジ系がとても多い。ちなみにこのニューロンシティーズのイメージカラーであるオレンジとロイヤルブルーはそれぞれ杏とトオルをあらわしています…って、いらない情報ですね。



遠山伸也(とおやま・しんや)

 キャスト・根岸吉太郎。杏の父親。大手化粧品会社に勤め、バイオテクノロジー関連の研究を行っている。杏の母・とは離婚している。直接の原因は伸也が同僚の女性とふたりだけで研究旅行に行ったことらしいが、それまでにも鬱積したものがあったのだろう。



トオル(とおる)

 片岡徹の項参照。



ドリーミング(どりーみんぐ)

 サウンドトラックの1曲。作曲・原将人、編曲・青柳誠。本編では未使用。





20世紀ノスタルジア(にじゅっせいきのすたるじあ)

  1997年公開の映画。監督・原将人。製作・オフィス・シロウズ、配給・大映。
  サウンドトラックの1曲。作詞作曲・原将人、編曲・小谷栄邇。本編後半、一度は投げ出した映画の編集を再開した杏が、縁の深い人たちと歌いながらミュージカルを撮影した際の曲。
  本作品の小説版のタイトル。映画では語り尽くせなかった表現やセリフなどが織り込まれており、映画と見比べると新たな発見も多い。僕個人としては、ラストシーンは小説版のほうが気に入っている。著者・原将人、共同執筆・礼野兼行。発行・扶桑社、1,143円。



20世紀ノスタルジア撮影日記(にじゅっせいきのすたるじあ・さつえいにっき)

 正式名称は「20世紀ノスタルジア撮影日記 広末涼子から遠山杏へ」。「20世紀ノスタルジア」の撮影シーンやオフショットをまとめ、広末涼子のコメントを付した写真集。「インフィニティ」の写真集版といったところか。広末涼子と遠山杏の共著扱いになっている。発行・徳間書店、1500円。



20世紀ノスタルジアストーリーブック(にじゅっせいきのすたるじあすとーりーぶっく)

 正式名称は「20世紀ノスタルジアストーリー・ブック 広末涼子 in fantastic Love Story 」(やっぱり長いぞ)。
オフショットや撮影シーンを収めた「撮影日記」がいわば「インフィニティ」の写真集版であるのに対し、こちらは映画本編のショットと脚本の抜粋でストーリーを追っていく、映画本編の写真集版と言える。脚本・原将人・中島吾郎、撮影・中岡美樹。発行・徳間書店、1500円(税抜)。2001年12月現在、「撮影日記」「ストーリーブック」ともに店頭ではなかなか見つけづらいが、e-honなどのネット書店などでは容易に入手可能(筆者も先日、e-honで買いそびれていた「ストーリーブック」を購入しました)



新田聡子(にった・さとこ)

 女優。北村嘉代役。1973年9月5日生。宮城県出身。WAHAHA本舗所属(1997年当時、2000年に退団)。本作以外には『さすらいのトラブルバスター』等に出演。



ニューロン(にゅーろん)

 神経系の活動の基本的な単位で、樹状突起と軸索突起までを含めた神経細胞全体を指す。神経系の組織は興奮を伝える神経細胞とそれを支持する細胞によって出来ており、神経細胞の興奮は軸索突起を伝わってその先端の神経終末に達し、そこで次の神経細胞などに伝達される。トオルはこの神経系の興奮伝達を、夜の都市が光り輝く様に例えた。



ニューロンシティの夜(にゅーろんしてぃのよる)

  サウンドトラックの1曲。本映画を代表するメインテーマのひとつ。作詞作曲・原将人、編曲・塩見光昭。杏とトオルが出会った清洲橋のシーンで流れるインストゥルメンタル、東京タワー駐車場でのミュージカルとエンドロールで使用された杏&トオルバージョン、本編未使用でサウンドトラックだけに収録されている遠山杏ソロと、3つのバージョンがある。
  杏とトオルのミュージカルのひとつ。東京タワー駐車場で撮影された。ちなみにこのタイトルに落ち着く前はトオルの提案した『小さな爆発』という題名だった。(小説版)



根岸吉太郎(ねぎし・きちたろう)

 映画監督。遠山伸也役。1950年生。代表作は「探偵物語」「課長 島耕作」「乳房」「絆−きずな−」など。本作品で映画初出演。





パジャマ(ぱじゃま)

 「インフィニティ」には、広末が杏の家で、まるで風呂あがりのようなパジャマ姿でスタンバイしている映像が収録されている。ご丁寧にバスタオルを肩にかけ、髪もちゃんと生乾きの状態にセットされているのだが、映画本編で杏がこの格好で登場するシーンはない。
 ただ、トオルが突然「充電させてくんない?」と尋ねてきた玄関のシーンで、上半身バックショットの杏の肩にはバスタオルがかけられているから、おそらくこのシーンの杏は風呂あがりのパジャマ姿だったのだろう。それだけトオルの訪問が突然だった、ということを表現していたのかもしれない。
 もっとも、次のカットではもう黄色いTシャツと短パンに着替えてしまっているので、もしかしたらこのあたりに編集でカットされた未公開シーンがあるのでは、と勘繰ってしまう。



原将人(はら・まさと)

 「20世紀ノスタルジア」監督。1950年7月15日生。東京都目黒区出身。麻布学園高校在学中の1968年、「おかしさに彩られた悲しみのバラード」(16mm)で第一回フィルム・アート・フェスティバル東京のグランプリ、ATG賞を受賞。代表作として古事記をモチーフにしたロードムービー「初国知所之天皇」や、俳句を詠みながら『奥の細道』の道程を辿る軌跡を追った「百代の過客」などがある。「20世紀ノスタルジア」は原監督初の劇映画。現在は「原將人」名義でビデオで「原発通信」をリリースするなど、精力的に活動を続けている。
 原監督のオフィシャルサイトはこちら



晴海中学校(はるみちゅうがっこう)

 オープニングに登場する桜木高校の外観が撮影された場所。この学校は公立でありながら同じ建物内に老人ホーム、託児所なども併設している。都営地下鉄大江戸線・月島駅から晴海方面へ、朝潮橋を渡った右手にある。



ハンディカム(はんでぃかむ)

 トオルが使用していたビデオカメラ。SONY製。なお、SONYのサイトには詳しい過去の製品情報がなかったため、杏が使用していたハンディカムの型式番号までは不明。



光のごちそう(ひかりのごちそう)

 サウンドトラックの1曲。作曲編曲・青柳誠。本編では未使用。



ビューカム(びゅーかむ)

 杏が愛用していたビデオカメラ。SHARP製。元はがインタヴュー用に購入したものだが、今では完全に杏が使用している。ビューファインダーで覗くのではなく、液晶モニタを見ながら撮影するので、撮られるほうもあまり構えずに済む、というのが購入の決め手になった。一見ビデオカメラに見えない真四角のフォルムが特徴。
 なお、型式番号はVL-HL100。(bakuさんからの情報です。ありがとうございます!)



広末涼子(ひろすえ・りょうこ)

 女優。遠山杏役。本名・廣末涼子。1980年7月18日生。O型。高知県高知市出身。「第一回クレアラシルぴかぴかフェイスコンテスト」優勝をきっかけに芸能界入り。本作でスクリーンデヴューとなる。本作品のオーディション時(1995年)はまだそれほど知名度はなかったが、実に400名を超える応募者の中から杏役に抜擢される。1995年8月にクランクインした当時、彼女はまだ15歳になったばかり。高知の中学3年生で、仕事のたびに高知から上京してくるという状況だった。その後撮影は一年半の中断期間に入るが、その間に出演したポケベル(NTT Docomo)のCMやドラマ『木曜の怪談 -魔法のキモチ-』(CX系)などで彼女は大ブレイク。
 その天賦の才能、女優としての適性や姿勢は原監督をして『女優菩薩』と言わしめた。本作以外には『鉄道員(ぽっぽや)』、『秘密』等に出演。2002年にはジャン・レノと共演した仏映画『WASABI』の公開も予定されている。
 広末涼子のオフィシャルサイトはこちら



双子の星(ふたごのほし)

 宮沢賢治の代表的短編のひとつ。双子の星であるチュンセ童子とポウセ童子が繰り広げる自己犠牲の精神に則った物語。ちなみに宮沢賢治が友人に送った書簡によれば、チュンセとポウセの名前は賢治とその妹トシを暗示している。



ポウセ(ぽうせ)

 杏に乗り移った宇宙人チュンセから分裂して産まれた。単性生殖でありながら、宿主である杏の影響でやや女性化している。チュンセと違い地球生まれの為、排気ガスなど地球特有の環境に比較的強い…のだが、それはあくまでトオルの言い分。チュンセとポウセの個体差はそのままトオルと杏の性格の違いを投影したものと思われる。つまりトオル(チュンセ)の語った『楽観的だな。キミは地球産まれだから、地球の危機が見えてこないんだ』というセリフは、『キミは結局僕ではないから、やっぱり僕のことを理解することは出来ないんだ』と読み替えられるのではないだろうか。なお、ポウセという名前は宮沢賢治の「双子の星」に由来している。



放送事故(ほうそうじこ)

 昼休みに校内放送されていた「桜木ニュース」の音声が、本来流れるべきトラック(杏によるアフレコのナレーション)ではなく、裏トラック(現場で収録された杏とトオルの映画用音声)を放送してしまった事件。モニターを怠っていた放送部の一年生がミキサー卓に乗せた足先で音声フェーダーを動かしてしまったのが原因。この事件をきっかけに、杏の映画編集作業が始まることになる。



放送部(ほうそうぶ)

 ひろ子が所属する部。顧問は北村嘉代。機材は立派なものが揃っているが、部員は杏とひろ子、放送事故を起こした一年生以外登場しない(小説では一年生があとふたりほど登場する)。しかも杏があれだけ機材を個人的に使用しても部活にはあまり影響が出ていないようなので、部としての存続が心配。放送部のシーンは日本映画学校で撮影された。



僕(ぼく)

 杏がポウセとして発言している際の一人称。宇宙人は単性生殖で男女の違いがないという設定のために、自らのことをこう呼ぶ。ラストシーンで杏はポウセとして語っていながら『そこにいるのは私たちね』と語っていることから、この時点でポウセは杏とひとつになって性の分化が進み、『新しい生命体として生まれ変わった(遠山宅での杏のセリフより)』のだと思われる。



BOX東中野(ぼっくす・ひがしなかの)

 杏とトオルが映画の撮影中に立ち寄った、「勝手にしやがれ」を上演していた映画館。隅田川、浅草、お台場、東京タワーなど、リバーサイド地区もしくは山手線内を中心に動いていた「地球レポート」には珍しく、東京西部のロケ地。
 このシーンは夏の設定でありながら冬に撮影されているため、杏とトオルは半袖だが、よく観るとバックに映る東中野駅のホームにはコートを着た男性が多数確認できる。そう考えるととても寒そう。
 ちなみに『エイガって何だ?』と問い掛ける杏の背後を半袖シャツの男性が横切るが、これは夏のシーンであることを強調するため、演出上意図的に映りこませたものであると思われる。実際「インフィニティ」に収められているこのシーンの収録現場には、同一人物と思しき半袖シャツの男性が原監督の側で作業している姿が確認できる。(束ねた長髪と横顔から見て、助監督の押田興将氏ではないだろうか?)
 アクセスはJR総武線・東中野駅西口を出て、新宿方面へ徒歩0分。うっかりすると見落としてしまうほど目立たない佇まい。東中野駅のホームから看板がよく見える。



ポルックス第7惑星(ぽるっくすだいななわくせい)

 チュンセの母星。短縮形として「ポルックス星」とも呼ばれる。『星と繋がってるかな?』『星に報告してくる』のように、チュンセやポウセがただ単に「星」というときも、ほとんどはこのポルックス第7惑星を指していると思われる。
 ポルックスはふたご座ベータ星の一等星(1.1等級)。オレンジ色に輝く巨星。すぐ隣には青白く光るふたご座アルファ星カストル(二等星、1.6等級)がある。通常恒星は、星座を構成する星の明るい順からアルファ星、ベータ星、ガンマ星…と分類されるが、このカストルとポルックスに関してはそれが逆になっている。
 ポルックスに実際、7番目の惑星があるかはいまだ不明。ただポルックスは前述のとおり巨星化が進行している恒星のため、もし惑星があったとしても既に巨大化するポルックスに飲み込まれてしまっている可能性もある。
 ちなみに宮沢賢治「双子の星」に登場するチュンセとポウセがこのカストルとポルックスを指していると思われがちだが、『天の川の西の岸にすぎなの胞子ほどの小さな二つの星が見えます』という書き出しから見て、ふたご座を指しているわけではない。ふたご座は天の川の西方にはないのがその理由。





圓島努(まるしま・つとむ)

 アーティスト。片岡徹役。1977年7月29日生。東京都出身。原監督の分身とも見て取れ、ひとクセもふたクセもあるトオル役のオーディションはこれといった俳優に出会えず難航したが、美術学校を写したビデオに偶然写っていた彼を原監督が見つけ、「トオル役は彼しかいない」と直感したらしい。本編撮影時は武蔵野美術大学油絵学科の学生だった。



見切れる(みきれる)

 スタッフが意図せず画面に映ってしまうこと。本編後半の杏と伸也の「20世紀ノスタルジア」ミュージカルシーンは、広末根岸吉太郎が細かい振り付けなしでビデオカメラを渡し合いながら撮影されているため、周囲360度映りこんでしまう。そのためスタッフは指示を出しながら、常にカメラのファインダーから外れるように逃げ回らなければならないのだが、演者の予測できない動きの為に逃げ遅れたスタッフ2、3人が見事に映りこんでしまっている。「インフィニティ」でスタッフの逃げ回る様が収録されているが、これが面白い。特に黄色いジャンパーの人、バレバレ。
 他にも、杏が桃とケーキを作り食事をするシーンで、杏の背後にある食器棚のガラスにカメラを構えたスタッフと思われる影が映りこんでいたりする。



ミュージカル(みゅーじかる)

 「20世紀ノスタルジア」はストーリ−よりも先にまずサントラが出来たと、「インフィニティ」で西村隆氏(プロデューサー)が語っているように、音楽の占める割合が大きい。それを象徴するのがミュージカルシーンである。
 なお、収録されているミュージカルシーンは「忘れちゃいやよ」(杏ソロ)、「宇宙人のキミへ」(トオル&杏+杏ソロ)、「ニューロンシティの夜」(トオル&杏)、「20世紀ノスタルジア」(杏、伸也、桃、ひろ子、北村など)、の計4つ。



滅亡まで(めつぼうまで)

  サウンドトラックの1曲。作曲編曲・塩見光昭、小谷栄邇。本編では未使用。
  杏がトオルの部屋で見つけたビデオテープ。正式名称は「チュンセ発地球レポート・スペシャルエディション 〜滅亡まで〜」。





吉野桃(よしの・もも)

 キャスト・余貴美子。杏の母親。企業のPR誌から女性誌まで幅広く手掛けるフリージャーナリスト。女性誌に連載していた化粧品の記事(小説では『女の化粧』というタイトル)が一段落して、新しく水関係の取材を手掛け始めたところ。杏の父親・遠山伸也とは離婚している。



余貴美子(よ・きみこ)

 女優。吉野桃役。1956年5月12日生、神奈川県横浜市出身。女優の范文雀は従姉妹にあたる。本作以外には『居酒屋ゆうれい』、『学校の怪談』、『大統領のクリスマスツリー』などに出演。



予告編(よこくへん)

 「インフィニティ」の冒頭に収められている。大林宣彦監督のコメントで幕を開けるこの予告編はトオルの「滅亡まで」をベースにしたモノローグを中心に編集されており、本編より更にトオルの視点に添った仕上がりとなっている。





ラストシーン(らすとしーん)

  本作品のエンディングであり、同時に杏とトオルが作っていた映画のエンディング。杏とオーストラリアから戻ってきたトオルのふたりによって考えられた。ここで注目すべきは杏の一人称。杏は映画のラストシーンについて語っていながら、それまでのポウセの一人称「」ではなく「私」と言っている。
 これはこの時点で、ポウセは杏と同化してしまったのことを意味するのだろう。それはつまり、「この地球で生き続ける」と星に報告したチュンセとトオルも同様である。そう考えれば性の違いがない宇宙人から「双子の赤ちゃん」が産まれたことも納得できる(細胞分裂による増殖なら双子という概念は生まれない)。
 ここで初めて杏とトオルは「宇宙人」ではなく「ヒト」として向き合ったというわけだ。それはまさしく映画冒頭、不慮の放送事故で全校に流れてしまった浅草寺ロケで杏が語った『チュンセとポウセが地球人の男女に生まれ変わる』というストーリーと酷似するものだった。
 なお小説版では、トオルが「杏」と呼び捨てで語りかけて彼女の手を取るシーンが追加されており、そのことがより強調された仕上がりとなっている。夜明けの海岸に佇む杏とトオルのシルエットと静かなモノローグが幻想的。ロケ地はいわき永崎海岸。
  杏とトオルが作っていた映画で、トオルが勝手に製作したエンディング。突然『やっぱり地球は滅亡する』と語ったり、『オーストラリアに行って星に報告してくる』と言い残すなど終末的な、死のイメージに彩られた仕上がりで、それはあまりにも唐突で、杏の望むエンディングとはまるで異なっているものだった。このシーンの撮影を最後にトオルはオーストラリアへと旅立ち、杏の前から姿を消す。



霊岸島水位観測所(れいがんじますいいかんそくじょ)

 映画冒頭、予期せぬ放送事故によりトオルと撮っていた映画を完成させる羽目になってしまった杏が、ひろ子と通った帰宅ルートのひとつ。右手の坂を登り切るとすぐ左手の階段を降り、隅田川テラスに出るのだが、実は杏たちがやってきた右手の道の先は霊岸島水位観測所という施設の入り口に繋がっており、すぐに行き止まりになる。階段の向こうに見える、三角形状に組み合わされたポールに囲まれた鉄製の物体がそれ。一般に「水準原点観測所」と呼ばれたりするが、これはかつてこの観測所で計測された平均水位が日本の高さの基準(ちなみに、水準原点は千代田区永田町にある)と定められたからである。





ワーグナー(わーぐなー)

 「インフィニティ」で原監督は『僕は(この映画で)20世紀のワーグナーをやりたかった』『現在ワーグナーが生きていればやはり、映画を撮ったであろう』と語っている。
 このワーグナーとは、Wilhelm Richard Wagner(1813〜1883)。ドイツ・ロマン派の作曲家。代表作は「タンホイザー」「ローエングリン」「ニーベルングの指輪」など。従来のアリア偏重のオペラに対し、音楽・演劇・韻文の統一的融合による総合芸術を目指して楽劇を創始した。原監督が『(この映画で)僕が20世紀のワーグナー足りえるか』と語っているのはおそらくこの各要素の統一的融合を指していると思われる。



忘れちゃいやよ(わすれちゃいやよ)

 歌謡曲、サウンドトラックの1曲。作詞・最上洋、作曲・細野義勝、編曲・小谷栄邇。昭和15年、渡辺はま子という歌手によって歌われていたが、歌詞の一部が扇情的だという理由で発禁処分を受けた。桃の母親、つまり杏の祖母がよく歌っていたという設定。歌詞が今の自分にぴったりで気に入った杏は、清洲橋へ向かう途中、越中島公園のフェリー乗り場でこの歌を歌い踊った。ミュージカルのひとつ。ちなみに屋形船でのバイトのシーン直前で流れているものがオリジナルだと思われる。