「KUSUさんのリポート」

一咀SHOWを見て
 
 「一咀SHOW」は、本当に「張達明のビックリ箱」でした。外国人も全く問題なく楽しめる英語劇のオープニングに始まり、随所に工夫がこらされ、スタンダップ・コメディとはまた違う、短いお芝居の一杯つまった劇を見たような感覚を受けました。

 演技の面でもまた、「新しい」張達明に出会えました。映像と生の演技で何人もの役を演じる場面では、思わず、 「共演者がいたんだ」と納得、一瞬後に「本人?!」と驚愕しました。力のある人とは知っていましたが、こんな役もできるとは・・・、という思いです。スクリーンに映るなり、爆笑をよんだ「女学生」(カワイイ)も、のど元が見えなければ、完全に少女でした。

 どの場面もそれぞれに面白いのですが、印象に残るものを三つあげます。

 まずは、「面接」。面接官のムチャな注文の動作を、次々こなして行く達明が本当に笑えます。言葉が全くわからなくても、ここは「眼」だけで満喫できる、と思います。最初に「〜みたいに」と指定した動作を、「もっとそれらしく」、 「もっともっと」と、段階を追って強調して表現するのも見事でした。(お手玉から相対性理論迄、何でもありの面接、・・・こんな芸達者、一日一回「速龍」で走ってもらうだけで、雇う価値がありそうです)
 次は、「子供時代の盗み食い」。小学生の頃、自分の家が貧乏だと知った彼は、貧しさを恐れ、さまざまな知恵を駆使して盗み食いを始めます。登場時は、結構年齢を感じさせる服や顔、と思っていたのに、話に入った途端、手や脚全体を動かし、眼や口を思い切り開けて話し・笑う、本当に子供の顔と動きになって、小学生に見えるのが凄いと思いました。貧しいことは怖いことじゃない、その中で創意を持てばいいんだ、ということで、お金のかからない遊びを考案、おなじみの指を使ったマジックを演じるのですが、その時の笑顔がもうたまらない、あまりに楽しそうな イイ顔なので、思わず指より、そちらに眼が行ってしまうのでした。

 最後は、「コマ回し」。糸で吊られた沢山のコマを回しながら、どんどん加速して引き返せない現代の世界を語ります。子供の頃は、速く回るコマを追って回りを走ったけれど、大人になってからは、だんだん遅くなっていくコマの様子も楽しむようになった。速くなるばかりのこの世界で、止まってゆっくり落ち着きを味わうのもいいのではないか、と。コマのまわりでゆるやかに手を回し、「コマよコマ、お前は本当に矛盾しているな。一体速く回転したいのか?それとも安定したいのか?」と語りかける時のいとおしむような表情が好きでした。君達がこのコマの美しさ(?)をみつけられたかどうかはわからない、というような事を言った後、「でも、僕は見つけた。それはここ、この劇場の中間だ」と言うセリフと共に、上がって行くコマの下、それをのせているかのように指を震わせるシーンがラストでした。
余韻にひたりつつ、舞台挨拶に拍手をして、さぁ・・・、というところでのお楽しみ企画・「芸術論」。このアイデアが素晴らしく、感服しました。

 他にも「愛について」「スターの立場に慣れなくて」「勇敢な香港人」「観客犠牲タイム」「ニュースの時間」等々(題は勝手につけました)、盛りだくさんの演目がありました。時間に追われる現代人の姿を速回し風に演じる演目は、見ているだけで消耗したものです。(質のいいCMになりそうでした)最も実験的だったのは、「トマト投げ」−香港で人々が今怒りを感じている出来事や人物に対して、観客と共にトマトを投げる−でした。初めて見た日は、少し鬼気迫った感じで怖かったのですが、二日めからは、観客のノリもよく、大勢の人が投げたトマトが宙を飛ぶのが花火のようで、明るい感じで楽しめました。(最終日には、オレンジを持参して投げたファンもいたそうです)

 張達明は、「怒りの火を放った」このSHOWで、ひたすら速度を追い求め、何かを失った現代の香港(と世界)を描き出しました。同時に、そこには彼の話に常にある(と思える)主題−「演じること」、「創り出すこと」、「自分であること」、が確かにあった、と思います。(私はこれらが大好きです)大胆な実験や挑戦と、創作への熱意にあふれた、張達明のマジック・ボックス、「一咀SHOW」、素晴らしい舞台でした。(KUSU)



「Ameiさんのリポート」
2月11日(初日)・12日に「一咀show」、行ってきました!

冒頭、「王子様ルック」(!)の達明に場内大爆笑。これに始まって、カラオケ屋? の小姐・セーラー服の女学生・校長先生・ニコラス(^_^;・けど上手い)・赤ん坊な どなど”達明百変化”が楽しめました。特に「香港のママ」が出色!
また、日常生活の様々な場面を早送りしたバック映像に合わせた達明の「人間早送 り」(巧い・・・)など、映像をうまく使った演出も面白かったです。その他、トー クあり、物まねあり、客いじりももちろんあります。「天に代わっておしおきよ!」 コーナーでは、日常の不満の対象(例えばいつも渋滞している海底トンネル)に、客 席にも配られたトマトがぶつけられていました。
公演前のインタビューなどで「このshowは”棟篤笑”じゃない」「香港人の日常生活 の事柄を題材にする」と語っていた達明。その言葉が、広東語の不自由な私にも見て いてよくわかりました。
そして公演後、出待ちしていた地元少女fansといっしょにちょこっと中に入れてもら いました。P小姐お手製の「ブライダルひげだるま」を貰ってうれしそうな達明の写 真が東方日報に載ったのは皆さんご存じですよね。サインや写真に気軽に応じてくれ た人柄の気さくさにも感激しました(^-^)。



「EMIさんのリポート」
1,一咀SHOW之蓄意縱火についての雑感

 
 2000年の香港芸術節の演目の一つてして、張達明”一咀SHOW之蓄意縱火” が2000年2月11−15日と17−21日の10日間香港芸術中心壽臣劇院にて 行われた。
会場は400人程のキャパで広すぎず狭すぎず、観客と演者の距離が最適 と思われる。
客層は鬚根くらいの年代が多く黄子華よりはやや年齢層は低いかもしれ ない。入りも10日間ほぼ毎日SOLD OUTだったようである。
「10年間待った」と本人が語っているように準備には4ヶ月をかけ年末年始の仕事もほとんど断っ てこのSHOWに賭けて来られただけあって、約2時間のSHOWはトークあり、英 語劇あり、パントマイムあり、お約束の観客いじりあり、またビデオ映像を効果的に 織り交ぜて一瞬たりとも観客を飽きさせないまとまりのあるステージに仕上がってい たと思う。
コーナーとコーナーのつなぎもスムーズであった。時事ネタが随所に織り 交ぜられており、ちょうど鄭中基が酔って飛行機の中であばれたという事件が新聞を にぎわせていたのだがそのネタも早速使われていた。いわゆる楝篤笑(トークのみの スタンダップコメディ)とは違いどちらかと言うと一人芝居的な要素が強かった。
ま ず最初に「ここにいる張達明は今までみんなの知ってるテレビや映画の張達明とは違 う。血も肉も有る本物だ。匂いも有るぞ(と言ってわきの下を指差す・笑)」と言っ て観客に今までのイメージを捨てるように促して、誰も見たことの無い本物の”表演 者”張達明を観客にさらけ出していた。
SHOWの内容は確かに言葉の壁は高かった が見て分かるものも多くあり、私たち外国人で広東語知識がさほど無い観客でもかな り楽しめたと思う。
 
 達明の人物観察の目は素晴らしく、一人で何役もこなしているのにすべてそれらし く見えてきてしまうのはさすがである。とくに「15歳の少女がトイレで子供を産ん だ」と言う実際にあったらしい事件に基づいたエピソードでは、その事件の関係者が 出てきてそれぞれの立場で言い分を話すのだが
1,福祉相談所のカウンセラー/ 2,学校の校長先生/ 3,少女の母/ 4,相手の不良少年/5,少女本人、の5役をすべて一人で次々演 じ、それがまたそれぞれに見えてしまうと言う全く素晴らしい達明の演技力をたっぷ り堪能できる。15歳の少女などはセーラー服にお下げ髪が可愛く薄化粧にミニス カートで本当にそこら辺にいても違和感が無いほどであった。
 また「就職面接を受ける」と言うエピソードでは面接官(監督の司徒慧棹さんの 声)の要求にこたえてジャグラーや縄跳び技、歌や物まねを見せてくれた。最初は 「声を出さずに礼節をもって挨拶しろ」だの「カッコ良くしてみろ(型D)」だの 「男らしくしてみろ(Men D)」だのヘンなことをさせられるのだが、だんだん 要求が高くなっていきさらに「劉徳華D」だの「張柏芝D」など物まねになって、し まいには「共産D(人目を気にしながら後ろ手にワイロを要求するしぐさ←危ねーっ (笑)こんなのやって大丈夫か?)」「立法会D(反対!反対!を連呼する)」「台湾 の民進党D(国語で粗口を叫びながら殴り合いをする)」などと言うかなりアブナイも のまで実に上手く演じてもちろん会場は大爆笑である。他にも何かできることをしな さいといわれて歌を唄ってみたりするのだが「もういい、自分の能力に見合わないこ とはやめなさい」と言われてじゃと次に縄跳びで二重跳びやX跳び後ろ跳びなどを披 露した後、「ではここで数学の問題です。」と相対性理論などを出されてまたまた爆 笑。このあとお約束の「ニワトリ」のまねや「(鬚根の)速龍」も出てきて観客は大 喜びなのだが面接官の声は冷たく「それはもう既に見た、観客は退屈している。何か 新しいものをやりなさい。」と言われてやったのが「イモリ」と「ドジョウ」で最終 日には「イモリとドジョウとコイとクラゲのマージャン」という特別バージョンまで やってくれた(爆笑)

 鬚根ニュースというのがあったが今回も「一咀SHOWニュース」と言うコーナー があり、そのアナウンサーのしゃべり方がTVBなどで見たことのあるアナウンサー 独特の語尾が上がるしゃべり方にそっくりで翌日TVでニュースを見てKusuさん と笑ってしまった。
ちなみにニュースの内容は「今日旺角で黎明のファンと郭富城の ファンがケンカになり流血事態になりました。事態を収めるために特別にプロマイド を配りましたが、さらにこじれて最後はサイン会を開催して事態を収拾しました」と いうものであった(笑)
 子供の頃のエピソードを話す所では子供のまねも実に上手く、ああこんな子いるい ると思わず納得である。鬚根の時「香港の学生に英語教育についてどう思うかインタ ビューする」と言うコーナーでも中学生を実にリアルに演じていて爆笑ものであった が、今回はさらに年齢が下がり小学1年生くらいになっていた。「女の子は嫌いだ、 すぐ泣くから。ちょっとたたいたら泣くし、おやつを取ってかじって返したら泣く し、境界線を区切ったら泣くし、じゃ笑いかけてみたら”せんせぇ、張達明が笑っ たぁ〜”と言って泣くし」(←ってそりゃ泣くだろうあんた・笑)多分体型が小柄で 細いからと言うのも大きい理由だろうが演技力の点でも子供や女性がこんなに違和感 無くに演じられるのは香港は達明が一番であろう。
 香港の「勇敢なママ」のエピソードでもこんなおばさんいるよという感じで非常に おかしかった。はたきを持って観客にお説教して回るのだが「ママ」がこっちに来た らどうしようと本気でビビってしまった(笑)

 SHOWの一番最後にたくさんの”コマ”をまわしながら語るのエピソードがあり 「子供の頃はよくコマで遊んだ。コマは早く回転している。いまの世の中もすごく早 く回転していて、情報やら交通やらパソコンやらなんでも変化が早過ぎる。でもそん なに急がずにもっとゆったり楽しくやってもいいんじゃないかな。」ということを 語って暗転してSHOWは終わる。
この最後の話を聞いて私は「なるほど達明が観客 に言いたかったのはこれなんだな」と思った。笑いというメディアを通して観客に2 時間夢を見せてくれ、もっと心の余裕を持って人生を楽しむよう訴えかけてくれたん だと思う。

   「蓄意縱火」というのは直訳すると「わざと火をつける」と言う意味であるがなぜ そういう題にしたのかをいくつかのインタビューで達明が語っていてそれらはSHO Wのテーマを端的にあらわしているように思う。
「最近の暴力があふれたニュースを 見ていて一体何が原因なのか突き詰めたい。(電影双周刊)」「大人になって子供の 頃のように無邪気に笑ったり泣いたりできなくなってしまった人たちに自分は役者と して劇の創作者として人を笑わせたり泣かせたりできる。泣くのは2週間に1度で十 分だけど笑いは違う。毎日笑えば気分は楽しくなるしそれに笑いは良いビジネスだと 思う。(パンフレットのあいさつ文)」
わざと過激なことを言って観客の問題意識に 火をつけ、同時にその問題は笑う心の余裕が無いから引き起こったものだとも訴えか けたかったのではないか。

 SHOWのネタは他にもオープニングのシェークスピア風英語劇や男女の仲がもつ れてナイフでさされて死にそうな男(死にそうにしてたくせになかなか死なないので 後ろの席の人が「未死得!(まだ死なない!)」と言っているのが聞こえてKusuさん と笑ってしまった)の死に方がオーバーで面白い。
またせりふの全く無いパントマイ ムで無声映画風の早回し芝居を生身で(!)やってみたり怒りをぶつけるコーナーで はトマトを観客に配って実際に怒りの対象(スクリーンの画像・環境問題や政治問題 など)に向かって実際に投げつけさせたり。かなり実験的なもの(=「一種の自由自 在的表演経験」パンフレットあいさつ文)も多く取り入れていて新鮮で面白かった。

 これらのSHOWの内容は私の乏しい語学力と記憶で書いているので実際には違う ことも多く順番もばらばらである。特に印象に残って理解できた所を取り上げてみ た。
内容については多くの部分をKusuさんに助けていただいた。多謝合作!
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請イ尓多多知教
Takeyama Emi
emitk@d1.dion.ne.jp

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