
ごめんなさい、ネタバレしまくりの上に、市村さんの舞台の観劇記にしては
珍しく辛口です。取り扱いに注意が必要な観劇記。
全体としては楽しめたんですけれど、「魚の小骨」がたくさんあったものですから…。
★フラッシュバック
何か…劇場が劇場だけに、市村さんの四季退団後の初舞台「おちもおちたり」を思い出してしまいました。
作品的には共通点のない、二つの舞台ですが、なぜか思い出してしまったのは、
多分、「市村さんの舞台を観て戸惑う」という、珍しい現象が共通していたからだと思います。
特に、一幕は作品や演出の意図するところが掴みきれず、オロオロしてしまいました。
「え?今の、何?」「笑っていいの?」「え?もう暗転?」などなど。
大きな戸惑いではないのですが、小さな戸惑いがいっぱい。随所で戸惑う(笑)。
★立ち回り@幕開き
幕開きに、少し立ち回りのシーンがあるのですが、
音楽らしい音楽もなく(だったと思う)、シーンとした中で行われている殺陣の、何と楽しくないことよ。
忠治が出て来て提灯がボワッと燃え尽きるあたりまではカッコ良かったんですけれどね…。
普通、歌舞伎や時代劇の立ち回りの時って、フッとかハッとか、気を合わせる呼吸なんかが聞こえてきたりして、
それがリズムを作り出していて、私なんかは大好きなんですけど、そういうのもなし。
立ち回りに関しての専門的知識はまったくありませんが、
歌舞伎・時代劇好きとしては、サラサラフワフワとした動きに思えて「何とメリハリのない立ち回り」と不満タラタラ。
既存の時代劇から離れようという意図があったのかもしれませんが…。
それにしても静かな、キメポーズの少ない立ち回りでした。
ただ、演じている人の眼圧は、非常識、といってもいいぐらいのすごさでして(笑)、
そういう意味ではとてつもなく迫力がありました。
真剣を構えて5分間睨み合い、という稽古をやったそうですが、確かにあの目は
人を殺せる刀をもったことのある人の目だったと思います。イッちまってます。
ヨダレ出しそうな顔の人もいましたし(笑)。
他の場面の立ち回りについてはまた別として、とにかくこの幕開きのやつが
一番ワクワクしませんでした。意外にも。
★スクリーン
最初に、舞台上部スクリーンが出てきまして、タイトルだとか作者の名前だとかがパッパッと映し出されました。
個人的に、スクリーンを使う舞台にあまり良い思い出がなかったりするので、嫌〜な予感はしていたのですが、
案の定、ナレーターが語っているセリフがそのまま映し出されました。ナレーターの立場ないッスよ、これじゃあ。
字幕が出ちゃってるわけですから。私がナレーターだったとしたら
「何だよ、俺のセリフだけじゃ聞き取れねぇってのかよ」って気分。
よく、沖縄とか、東北とかの、方言がきつい地方のお年寄りがテレビのインタビューに応える時に
横に字幕が出たりするじゃないですか、あれを思い出してしまいました(笑)。
その後も、状況を説明したりするのにこのスクリーンが使われました。
「レミゼ」のように「10年後」とだけ出るようなものではなくて、長文。
何で舞台を観に来てこんなにいっぱい文字を読まされなきゃなんないんだ…?と、戸惑いました。
それだったら家で本読むわ(笑)。
特に、子分衆の行く末を文字で説明されたのには参りました。
「死んだ」とか「行方不明」とか、「歯医者になった」とか。
あと、現在と過去があっちゃこっちゃするので、今演じている場所とか時間とかが
舞台脇の大道具に、映し出されるのですが、何だか「タナボタ…?」って感じでした(笑)。
★抽象?具体?
装置はかなり簡略化されていて、和風端切れのパッチワークのカーテンがシャーシャーと
あっちに行ったりこっちに行ったりすることによって、転換をしたり、場所が変わったことを示していました。
この抽象的な装置、まあ、「ありがち」ではありますが、これ自体は変ではありません。
しかし、そんな抽象的な装置がが出てくる舞台でホンマモンの鶏を出してきたとなると、
抽象なのか、リアルなのか、分類しきれず戸惑ってもしかたがないところでしょう。
鶏が、舞台に撒かれていると思われるエサをコツンコツンつついたり、
藤さんが大きな声を出すのに合わせてコケーーーーーッと鳴いたりするのに気をとられたとしても、
誰が一体私を責められるというのでしょうか、いや、誰もいない。反語。
結局、本物を出す必然性がまったくわからなかったので、「なぜ、ホンマモン?」と、
またもや戸惑ってしまいました。オロオロ。
所々、素材がすごくリアルな部分があるのに、アルミ素材みたいな部分もある。
シアターガイドで何だか言ってましたが、私は鈍いので「違和感」ばかりを感じてしまいました。
★戸惑う要素
ここまで書いてしまったらスッキリするまで、戸惑う原因になったものを吐き出してしまいましょう。
一幕にノリ切れなかった原因。もう一級戦犯モノ。
忠治を護送している役人(若いほう)のあまりの棒読みセリフ!
高校演劇を見慣れている私でさえもびっくり仰天の棒読み。
ねらって棒読みだとしたら、その意図がまったく掴めずに戸惑うでしょうし、
全力でやっての棒読みだとしたら、「なぜ、あなたが、ここに?」と戸惑うでしょう。
どちらにしても謎の多いセリフ回し(回してないけど・笑)でした。
もう一つ戸惑ったのが、賭場の場面で、サイコロが登場したのですが、
そのサイコロが「♪何が出るかな何が出るかな、略して国忠〜」みたいな大きいヤツ。
突然に上手袖からゴローンゴローンと出てきて、笑おうかと思った瞬間に、
まるで「臭いものにはフタ」といわんばかりの暗転(笑)。見せたくなかったのか?
だったら、いっそのこと、見せないでほしかった。
ここでも、比較的リアルな小道具と、抽象的な「何が出るかな」サイコロとの
ギャップに戸惑ってしまったから。
ここ以外でも、暗転が多くて、ノリ切れなかった原因の一つだと思います。
一分間以下の場面もいくつかあったのではないでしょうか。
一つ一つの暗転は驚くほどスピーディーなのですが、いかんせん、数が多かった。
★和風レ○ゼ
一幕の最後と、二幕の幕開き、武器などを手にした忠治とその仲間たちが
横一列に並んで、舞台の奥からこちらのほうへスローモーションで走ってきます。
「あ!レミ○だっ!」と思ったお客さん、結構いたんじゃないでしょうか(笑)。
そして舞台の客席ギリギリまで前に出てきてストップモーションになったところで(なってない人もいたけど・笑)
休憩を知らせるスクリーンの文字。今一瞬見た物は一体何だったのか、ここは帝劇か、
スクリーンに休憩って書いてあるけど立っていいのか…。
もう何もかもが戸惑いの連続の幕切れで、逃げるようにお手洗いに駆け込みました(笑)。
その他にも、「あ!ジーザスだっ!」という場面が二場面ほどありましたね。
★力技
幕間に、「この作品は笑ってもいいものなのか、どうなのか」を劇場で会ったあきちゃんと
ミーティング(笑)をしまして、「笑っても可ではなかろうかと思う」という結論に達して、
気が楽になったからかどうかはわかりませんが、二幕は一幕に比べて躊躇なく笑える場面が多かったように思います。
ただ、本当に推測なのですが、二幕は串田さんの演出よりも、市村さんのサービスが
勝ってて、それで楽しくなっているという感じでした。
串田演出の部分と市村演出(笑)のところの違いが何となくわかる…という感じ。
作品で「おやっ?」と思うものでも、力技を使ってでも楽しませようとしてしまうのが、
市村さんの長所でもあり、短所でもあると思うのですが、今回は久しぶりに
その力技を見ることができたという感じです。
なんというか、4人連続デッドボールで1点、みたいな勝ち方(笑)。
最近、力技を使わなくても楽しめる作品ばかり出てましたからねぇ…。
★ふ…不覚…(笑)
これまた、市村さんの長所&短所(私は純然たる長所だと思うけど)、「愛嬌」。
国定忠治も、よくおばあちゃんから聞かされた忠治よりかも、数段情っけない、でも
可愛気のある男として描かれている場面が多々ありました。
全体をこのキャラで貫いてくれたらよかったのに…。
本音を言えば、一般的に知られている忠治をやってもらいたかったりするけど、
それを言ってしまったら、この作品のコンセプトを根底からひっくり返してしまうので(笑)、もう言いません。
でも、忠治のキャラが統一されていないなーという感じはしました。
「色々な側面を持つ男だったのだよ」ということが言いたくて統一していないのではなくて、
「統一されてない」という感じ。私はカッコ良くなくても、チャーミングな忠治が気に入りました。大好きになりました。
それだけに、その忠治の最期、ほぼ一人ぼっちで死んで行くという姿に説得力がありませんでした。
あんなに魅力的な人物を放っておかないでしょ。
確かに、共に過ごしてきた仲間たちは皆死んだり、別の場所に行ったり、歯医者になったり(笑)しているんですけどね…。
その子分衆たちの行く末を、スクリーンの文字でしか見せてもらえなかったせいもあって、
あの人達は、忠治のことを正味のところ、どう思って死んでいったのだろう…とわからずじまいだったんですね。
もし、忠治が磔になっている時点で、子分達の大半が生きていたら、その場所に来るのだろうか、
それとも見捨てられるのだろうか…って。
「子分たち、生きてたら来るのかな〜…?」って考えていたら、忠治はグサッと刺されてしまいました。
そうしたら、その瞬間、何と、大音量で八木節(アップテンポ)がかかるではないですか。
この緊張感マックスの場面で、いきなり「♪はぁ〜あ〜〜ぁあ〜ぁあああ〜あ〜〜〜」(笑)。
あまりに突然起こった出来事に、もう少しで爆笑してしまうところでしたが、
パッと照明がついたら、そこに、忠治の仲間だった人たちが、これ以上ないっていうぐらい
幸福そうな顔で忠治を取り巻いて動く、踊る、暴れる!「♪皆あなたを愛します、あなたと神とを信じます」って感じ(笑)。
この光景が忠治の夢・希望なのか、極楽浄土なのかはわかりませんが、
「ああ、忠治〜良かったね〜一人じゃないね〜皆、見捨てたわけじゃなかったんだよ」と、不覚にも泣いてしまった(笑)。
「八木節」で泣いたのは初めての経験で、泣いてる自分が可笑しくて笑い泣きだったんですけどね。
…というわけで、一幕、そして二幕の一部で、終始戸惑っていた私は、この、苦しみも悲しみも何〜にもないかのような
この「八木節」シーンで、何故か浄化されてしまい、「ま、いっか」と思ってしまった。
市村さんの忠治と戸惑ったことしか書いてないよ…。この辺で、他のキャストのことを。
ええ〜、まだ書くの〜と言わずにお付き合いください。
★藤真利子さん@お徳/お町/お鶴
三役、大変そうですね…。
私は正妻のお鶴さん(多分)が好きですね。何しろ、忠治を最期まで見捨てなかった
ただ一人の女、ちゅーことで。
可愛いお町は、ちーとキツかったかも…。
鉄火のお徳さんも良かったですね。堪えていたものがプチッとキレた時の暴れぶりなんかが最高でした。
でも、藤さんのせいじゃないけど、早替わりはもっと早くできないものでしょうか。
あ、今着替えてるんだな〜と客に考えさせる間ができてしまったから。
★大川浩樹さん@栗須の五郎
「リチャードIII」のケイツビーも、異臭(笑)を放っていましたが、今回も何だかギラギラしてて
印象的でした。やー、こういうタイプの役者さんに弱いのよ…(^^;)。
敵方を抜けて忠治について、結局密告とかしちゃう男なんだけど、何か
いい感じの「哀しさ」がね、良かったです。風貌も特異なものがありますよね…。
★中嶋しゅうさん@日光の円蔵
何か、「忠治LOVE!」って感じがとっても良かったです。
★西川忠志さん@下植木の浅治
とにかくむさ苦しい男だらけの国定一家の中で、ちょっと異色の存在。
今までの西川さんのイメージからいったら驚くぐらいむさ苦しいんですけど、いかんせん、
周囲のむさ苦しさの度合いがケタ外れだった(笑)。
でも、その「浮いてる」感じが、子離れしてない母親を持つ男っていう感じで
すごく説得力がありました。叔父さんの首を持ってきた場面は、
松明だけの照明で雰囲気が出ていたせいもあって、メチャメチャ泣いてしまった…。
★堀米聰さん@書上の安五郎
うーむ…。何か無理矢理エピソードを入れたという感じのラブシーンでしたね。
もっと物語の進行に関わってくるかと思ったのに、割と単独の恋物語で。
★小西康久さん@境の清二郎
この方の眼圧に惚れました。
オンシアター自由劇場に所属していたということ以外はほとんど知りませんが、
もし何かご存知でしたら、ぜひぜひお教えくださいね。
特に、次の公演予定なぞを知りたく思っております(笑)。メールはココ。掲示板はココ