
二期会オペラ「カルメン」
2003年2月22日(土)
二期会オペラ「カルメン」を観てきました。 主なキャストは、カルメン:板波利加、ホセ:大間知覚、ミカエラ:林正子、 エスカミリーオ:稲垣俊也、といったところです。指揮は飯森範親。
演出は実相寺昭雄。この人、「ウルトラマン」などを手掛けた映画監督なんで すね。まずは舞台装置。ほぼ正方形のセットが舞台中央にあり、ターンテーブ ルの上に乗っかっています。 (1/4) ↓ (3)→凹←(0) ↑ (2) 開演前は(0)の面が舞台に向いているんですが、前奏曲の演奏中にゴロゴロ回 転して(1/4)の面が正面を向きます。(1/4)が一番広くスペースを使っていて、 装置の奥に向かって上りの階段が付いています。第2幕は(2)の壁面に居酒屋 の小部屋があり、第3幕は(3)の壁面を城壁として使う。第4幕の前半は (0)〜(1/4)の角が正面に向き、ちょうど斜めに配置。後半は(1/4)の面(階段 がある部分)を再び使います。 なるほど、東京文化会館の狭い舞台+さほど充実していない舞台機構を前提 として4幕(4場)分の舞台装置をしつらえるとなると、これが効率的なレ イアウトということになりますね。 そして、舞台にはソリストと合唱のほかに「通行人」風の登場人物がたくさん 出てきます。第1幕でのミカエラとホセの二重唱の途中でも、後ろを旅人風 の人がうろうろしたりしますし、なんだか落ち着かないなあ。ここはビミョー なとこ(好みの違いもある?)ですが、実相寺さんとしてはドラマのリアリ ティを重視したってことでしょうか。確かに街のど真ん中で二人が話してい るときに周りに誰もいないなんてことはないはずですからね。 あと、ホンモノの犬(!)を連れている人が出てきたのにはびっくり。 さらに、舞台の床に問題があるのか、登場人物(特に合唱団と少年少女合唱 団、そして踊り手たち)が駆け抜けたりすると、ドタバタと足音がうるさい うるさい・・・これは異様に目立ちました。 さらに、喧嘩の場面では合唱団がキャーキャー叫び声をあげながら乱闘シー ンを展開したり、闘牛場の場面では口笛が盛んに吹かれたり、賑やかなこと! まあ、静かに純粋に音楽だけを聴きたいのなら、演奏会形式のコンサートを 聴け、ということでしょうか(確かに、足音とか舞台転換の音とかは、仕方 がない部分もあるので・・・)。 歌い手達のなかでは、ミカエラ役の林正子さんが抜きん出ていました。 第1幕冒頭、ホセを探しに町にやってきたところから存在感たっぷりでした し、2ヶ所の聴かせどころ、第1幕でのホセとの二重唱と第3幕でのアリア でも、リリカルな歌声と可憐な演技で聴衆を魅了していました(一部、ちょ っと力みが感じられた部分もあったけど・・・)。アリアの後の拍手とブラー ヴァは、タイトルロールの板波さんの時より熱狂的だったかもしれません。 ちなみに、第3幕のアリアでは「満天の星空」的な照明が舞台を埋め尽くし ました(まるで谷村新司が「すばる」を歌うときのような!)。なんだか やりすぎって印象もあるけど、演出家としては そこまでしてでも大切に表 現したいキャラクターってことなのかな。 エスカミリーオ役は稲垣俊也さん。第2幕の「闘牛士の歌」では、合唱とオ ケの大音量に飲み込まれてしまった感があります(声量が今一つ??)が、 第3幕のホセとの決闘シーンや第4幕の闘牛場でのシーンでは、伊達男って 演技を披露、舞台姿の立派さはなかなかのものです。 ホセ役には大間知覚さん。どちらかというと小柄で、少々丸みを帯びたホセ なんですが、かえって朴訥な感じが出ていて良かったかも? 第1幕でのミカエラとの二重唱や、第2幕の「花の歌」など、歌声は申し分 なし(「花の歌」では、オブリガードのホルンがよろめいて、ヒヤヒヤしま したが)。ただ、なぜか第3幕は声があまり届きませんでした。席が4階席 左側で、第3幕のホセは客席から見て右側のほう(反対側)を向いて歌うこ とが多かったからかな?? そしてタイトルロール、カルメン役は板波利加さん。二期会の会報に「大抜 擢」と書かれているように、今回が二期会デビューです。 最初の出番「恋は野の鳥」では、どことなく固さが感じられましたが、だん だんと調子を上げていったようで、第1幕のフィナーレでホセを翻弄するあ たりなどは、まさに「悪女」って感じの演技を展開。第2幕のフィナーレで 何度も「リベルテ(自由)!」と叫ぶところや、第4幕でのホセとの緊迫し た対決シーンで一歩も譲らないシンの強さを見せるところなど、舞台女優と しての資質も十分に感じられました。 歌声は(こんな表現がいいのか判らないけど)どっしりと腰が据わった太め の声で、「アクのあるカルメン」にはぴったりの声質だったかもしれません。 演奏は、飯森範親指揮/東京フィルハーモニー交響楽団。東京フィルは去年 6月には新国のピットに入ってましたし、手馴れた作品ともいえるでしょう。 飯森さんの指揮は、第1幕への前奏曲から とっても歯切れがよく、ポイン トポイントで雰囲気を盛り上げるツボもよく心得ているようで、まずまず満 足のいく演奏でした。それにしても、D席とはいえ4000円は安い! チラシを見ると、「2003年都民 芸術フェスティバル(東京都助成)参加公演」「平成14年度文化庁芸術団体重 点支援事業」と書いてありますので、文化庁と東京都のダブル助成が入ってい る結果なのでしょう。 マジメな納税者としては、こういう公演をドンドン聴いて 少しでもモトを取 らないとね!(笑)

