
日本モーツァルト協会
2月例会(第一戒律の責務 K.35) 2003年2月28日(金)
日本モーツァルト協会のコンサートを聴きにいきました。確か去年、ボッセ/ 神戸市室内管弦楽団を聴いて以来です。 今夜の演目は、モーツァルトが10歳(!)の頃に作曲した歌劇(宗教的ジング シュピール)《第一戒律の責務》第1部です。第2部はミヒャエル・ハイドン、 第3部はアートン・アードルガッサーに委ねられたため、モーツァルトの作品 としては第1部で「全曲」ということになります。 演奏は、諸岡範澄指揮/オーケストラ・シンポシオン。ソリストは懸田奈緒子 (正義、ソプラノ)、松堂久美恵(慈愛、ソプラノ)、押見朋子(世俗の霊、 ソプラノ)、及川豊(キリスト信徒の霊、テノール)、野村和貴(キリスト信 徒、テノール)。 この曲、手持ちの音楽辞典では「歌劇」に分類されていますが、どちらかとい うとオラトリオに近いらしく、今夜もいわゆる「演奏会形式」での上演となり ます。
全曲聴いての感想は「ほんとうに10歳の子供が作った曲?」。実際には、父 親であるレオポルド・モーツァルトの加筆・修正があったようですが、曲の 構成やメロディの着想などは間違いなくモーツァルト自身によるもののよう です。後年の傑作たちに比べると多少の「ぎこちなさ」も感じられますが、 軽快なシンフォニア(序曲)から、長大なフィナーレ(三重唱)まで、充実 した音楽でした。 ちなみに、当時も本当に少年モーツァルトが作ったのかどうか疑われ、その 実力を証明するために、他には誰も入れない部屋で もう一曲作曲させられ たそうです(その作品は「聖墓の音楽 K.42」として残っている)。 ソリストたちのなかでは、「世俗の霊」役の押見さんが あらゆる意味で目 立っていました。この役のアリア(No.4「創造主がこの命を」)に、モーツ ァルトは技巧的なフレーズを割り当てているのですが、押見さんは豊かな声 量で見事に歌い切り、客席から盛大な拍手を受けました。 ただ、他のソリストに比べると声が「大きすぎ」という面も。バランスとい う意味では、レチタティーヴォなどでは 一人浮いていた・・・ともいえる。 「キリスト信徒」役の野村さんは、なかなかの芸達者。歌詞対訳がなく、ス トーリーがよく判りませんでしたが、レチタティーヴォでの「演技」が一番 上手かったように思います。 「キリスト信徒の霊」役の及川さんは、声量が今一つなのに加えて、何度も 声が裏返っていました。コンディションが悪かったんだろうか? 前半とフィナーレで活躍したのが「正義」役の懸田さんと「慈愛」役の松堂 さん。声量では押見さんには敵いませんが、バランスの取れた歌唱という意 味では、この二人(特に懸田さん)が抜きん出ていたように思います。 そして、チェロ兼指揮者の諸岡さんが率いる古楽オケ、オーケストラ・シン ポシオンは、バランスの取れた響きでソリストたちを支えていました。 特に目立ったのがトロンボーン。オリジナル楽器のトロンボーンは、音程が とても不安定なのですが、「キリスト信徒」のアリアの伴奏で大活躍。ある 意味ソリストよりも目立っていたかもしれません。

