
新国立劇場オペラ研修所 研修公演 2003年3月23日(日)
新国立劇場オペラ研修所の研修公演で、モーツァルトの<フィガロの結婚>を 観てきました。 指揮はヴィンセント・デ・コルト、オケは新日本フィルのメンバー、合唱は新 国合唱団+二期会合唱団。そして、バルトロ役をデイヴィッド・マシュー・ベ ダードさん、マルチェリーナ役を林美智子さんが受け持つほかは、すべての役 が研修所の第3〜5期生で固められています。
軽快なテンポによる序曲から、ウキウキするような舞台を予感させてくれます。 ピットのなかをチェックした訳ではないけれど、コントラバスが3でしたから 弦[8,6,4,4,3]+2管編成だと思うのですが、充実した響きは さすが新日本 フィル! 幕が開くと、新居で使うベッドを担いでフィガロが登場です。フィガロ役は北 川辰彦さん。出だしは ちと緊張気味でしたし、(その後の)アンサンブルで は声量的に 他の歌い手に押され気味になってしまうことが多かったですが、 第1幕の「もう飛ぶまいぞ、この蝶々」や第4幕の「さあ目をあけろ」などの アリアでの歌唱は文句なしの出来だったと思います。あと第2幕フィナーレで 伯爵夫人、スザンナとともに伯爵をなんとかごまかそうとする場面で「窓から 飛び降りて捻挫しました。アイタタタ....」とわざとらしく言うところなど、 演技もなかなか良い感じでした。 スザンナ役は九嶋香奈枝さん。小柄で、くるくるとよく動き回る躍動感(?) あふれる元気いっぱいの演技で、アリアや重唱の終わりに「ハハハッ」と笑い 声が伴うのにも何の違和感もない、明るさ一杯のスザンナ。マルチェリーナと の嫌味の応酬(第1幕)や取っ組み合いのケンカ(第2幕)などでも、ポジテ ィブな印象は損なわれません。さらに、ポイント・ポイントで伏線を張り巡ら しながら ストーリー全体を動かすキーパーソンという役回りを見事に演じ切 っていたと思います。 伯爵夫人役は國光智子さん。美しい舞台姿と落ち着いたトーンの歌声、まさに この役にぴったりかも。設定からすると「若すぎる」かもしれませんが。 同じく、伯爵役の青山貴さんも 声はともかくとして、舞台姿が若すぎるのが ちと違和感ありました。まあ、これは本人の責任ではありませんが。 ケルビーノ役には清水華澄さん。「自分で自分がわからない」「恋とはどんな ものかしら」など、アリアで聴かせてくれた良く通る声は、(研修生の)ソリ ストのなかでもピカイチでした。あと、この喜劇のなかでの役回りもあってか 第1幕で隠れているところを伯爵に見つかって「あちゃー」と落胆する場面や、 第2幕で女装されられる(ズボン役なので、正確には女装ではないが・・・) ところでのスザンナとの面白おかしいやり取りなど、コミカルな演技で客席の 笑いをとっていました。 あと、吉本新喜劇の藤井隆みたいなノリで存在感を発揮していたバジーリオ役 の藤木大地さん、第2幕で酔っぱらって乱入して 舞台を大混乱に陥れるアン トーニオ役の与那城敬さんも良い感じでした。 そして、舞台の雰囲気をグッと引き締めていたのが賛助出演の二人、バルトロ 役のデイヴィッド・マシュー・ベダードさんとマルチェリーナ役の林美智子さ ん。落ち着き払った演技と歌唱はさすが!です。林さんは研修所1期生とのこ となので、世代的には 他の出演者と そんなに離れていないはずなんですが、 実際の舞台経験での「3〜5年」は決定的な距離なのかもしれません。 それにしても林さんがマルチェリーナとは! ケルビーノでも何の問題もない はずですが、そこは後輩に譲ったのかな? そして、ケルスティン・ワイスさんによる演出。白を基調とした舞台装置は大 掛かりなものではないのですが、小道具も含めて細部まで神経の行き届いてい ましたし、舞台を楽しむのに必要最小限のものが全て揃っていたと思います。いやはや、「研修公演」ということで油断してましたが、予想以上の素晴らし い舞台でした。 そして、今日 舞台に立った研修生の皆さんのなかから、ウィーンやベルリン、 ニューヨーク(もちろんトーキョーでも!)で活躍するスターが誕生するかも しれないと考えたら、わずか1,500円のチケット代は ほんと安い!

