
NHK交響楽団
第1490回定期公演 2003年6月14日(土)
N響の定期公演を聴いてきました。N響とデュトワとのコンビも いよいよ 今シーズンでおしまいなんですが、音楽監督として最後となる定期公演の演 目が、なんとR.シュトラウスの<エレクトラ>。私の知る限り、デュトワ にはオペラの指揮経験は さほどないように思いますし、しかも彼が得意と するフランス・ロシアもの(という固定観念自体が古すぎる?)でもない、 なんで この選曲になったのかな? という疑問に、デュトワは見事にこた えてくれました! まずびっくりだったのが、「あの」NHKホールの席が完売となっていたこ と。ホール入り口前には「チケット譲ってください」という紙片を持った人 たちの姿がありました。何年か前にデュトワとアルゲリッチが共演したとき もそんな光景を目撃したけど。。。自由席もふくめてほぼ満席というのは、 ほんと凄いことです。
そして、いよいよ開演。NHKホールでの演奏会形式ってのは、1月のワー グナーのときもそうだったけど、歌手の声が届きにくいのが難点です。予算 の関係で3階席だったというのもあるでしょうが。 まあ、オケは100人以上は間違いなくいる4管編成、しかもクラリネット などは中央の4人以外に、横にはみだす形でバスクラ軍団を配するほど。 さらに後でプログラムノートを読んでいたら、ヴィオラパートの一部がヴァ イオリン持ち替え、というのもあったようです(気付かなかった!) この大編成オケが出す大音量の迫力ときたら! R.シュトラウスのゴージ ャス・サウンドに酔いしれました。そして、この公演がオケの定期であるこ とを改めて認識した次第(あんな大編成オケ、ピットには入りきらないって) それにしても。不協和音が咆えまくるこの曲は、当時の批評家から「憎悪を もよおすほど不快」と表されたそうですが、今聴いてみると シュトラウス の洗練されたオーケストレーションもあってか 全くの許容範囲内。時々現 れる叙情的な響き(この響きは、ばらの騎士以降の作品を想起させる)は、 前後とのコントラストもあって より鮮烈に印象付けられました。 歌い手たち:エレクトラ役のエリザベス・コンネルは、声も体格も超弩級の ソプラノ。指揮台の隅っこにエヴィアン?のペットボトルを置いて、歌の合 間に飲んでいたようですが、100分出ずっぱりというハードな役を見事に歌 い切ったと思います。 クリテムネストラ役のジェーン・ヘンシェルも老獪な感じの歌い手。この二 人の対決は火花が飛び散るような感じでした。 そして、クリソテミス役は 急きょ代役を務める事になったエファ・マリア ・ウェストブルックは、役柄的には「控えめで従順」なんですが、エレクト ラに向かって「私は女として生きたい」と訴える場面など、あちこちで存在 感たっぷりの歌を聴かせてくれました。 出てきたと思ったらすぐ殺されちゃうエギストを含めて、男声陣は やや影 が薄かった感じ。女官や召使役の日本人歌手たちも、特に声量の面で難あり です。 そして、音楽監督として指揮台に立つのは今日が最後となるシャルル・デュ トワ。100名を超えるオケを見事に統率し、重厚(鈍重)ではなく、クリ アで切れの良い(ん、ビールのキャッチコピーみたいだ?)響きをN響から 引き出すウデはさすが。これが、歌手もオケも絶叫系演奏をやっちゃったら ハチャメチャで収拾つかなくなっちゃうでしょうが、デュトワ/N響の演奏 は、ほんとストレスなく聴けました。 NHKホールを埋め尽くした聴衆も名残惜しいのか、拍手は鳴り止まずデュ トワさん、何度も呼び戻されました。あと、カーテンコールの途中でチェロ パートの方に花束が渡されました。定年の方かな? 最後は、デュトワさんが「サヨナラー」と両手を振りながら、舞台裏に消え て お開き。96年に就任して以来、7年間ですね。長い間お疲れ様でした! 後任の方のシェフとしてのウデがどうにも不安ですが、デュトワさんには これからも、ちょくちょく来日してN響を指揮してほしいところです。

