2人目(5/29)



有機と無機質の結合

電気パルスの見る夢
シリコーンで出来た頭脳
窓から取り出した人格・・・





博士が次に作ったのは
「半電子計算機人間」です


名前は、”計”とつけられました




出来たばっかりで、作業台の上に裸で横たえられている
計ちゃんは、普通の女の子に見えます
滑らかな肌をしています
どこにも蓋とかネジとかはありません

だけど、その折角のきれいな肌に、博士はいろいろ描きこみます
油性のマジックで、きゅっきゅっと
四角や円の図形と、その相関と、短い言葉を・・・



これは、博士の為のメモなのです
計ちゃんとコミュニケーションを取るための・・・
(でもこれじゃあ、なにか怪しい儀式の生け贄みたいです)






さて、計ちゃんには尻尾があります
先っぽがコンセントの形をしています

・・・というより、コンセントなのです
そう、計ちゃんは電気で動くのです



さて、そのコンセント尻尾を博士が手に取ります
そして、部屋の片隅のソケットに差し込みます

計子ちゃんの体が、かすかに震えます・・・



でも、計ちゃんの瞼は閉じたままです

そう、まだ彼女は眠っているのです
彼女の人格OSを起動させるには、そのとおり、
彼女の身を起こしてやらなければならないのです



博士は彼女の背に手を差し入れ、起こします
よいしょっと


すると、彼女の目が開きました
非人間的な、感情のない冷たい瞳が前方の虚空を見据えます
その小さな口から、抑揚のない少女の声が洩れ出します

「・・・記憶野全領域確認、入出力端末甲から丙まで検査、動作確認・・・」

少女は、製作した博士にしか
理解できない宗教めいた独り言を
しばらく呟き続けます・・・



そして最後に「人格OS32始動します」といい終わると、
瞳に突然、感情が宿ります




半電子計算機人間計ちゃんの、真のお目覚めです




あらかじめ計ちゃんは、外部媒体によって知識をある程度与えられています

それでも、直に世界を見るのは初めてです
息をすることも初めてです
体験することが、初めてです


(ちなみに、心拍数や呼吸数とクロックは関係しません)


だからその、つぶらな瞳をこらして、雑然とした工房を見回します
興味津々です

目の前に立つ博士を見ます
あんまりに怪しいので、思わず身をひいてしまいます



でも、博士はそんな様子に構わず、計ちゃんの
小さいお顔に手を伸ばすと、そこに眼鏡をかけます

眼鏡は、計ちゃんの顔にかけられるなり、その縁に
小さく輝く図形や文字が浮かび上がります

これは、博士の為の補助ディスプレイなのです




では、メインのディスプレイはどこにあるのでしょう?
そもそも、計子ちゃんはどうやって入力や出力を行うのでしょう?

その体には、マウスもキーボードもないのに・・・
(当然、コントローラーやタブレットもありません)




そう、出力は口頭や、身振り手振り、あるいは筆記で行います


計子ちゃんのなかには書道5段フォントやペン字1級フォント、
あるいは女の子らしく、まる文字フォントなども入ってますから
ペン、筆、あるいは鉛筆出力などの紙出力は実に達筆です


万国共通の手旗信号や手話もインストールされて
いるので、聴覚障害者のお相手もばっちりです


声は、まだ棒読みのようですけど、そのうちに上手になるでしょう
言葉は主要26カ国に加え、Cやマシン語、BASICも話せます





では、入力はどうやってするのでしょう?


もちろん、一つは言葉です
一つは、することを書いたメモを渡すことです


そして・・・計子ちゃんに直接入力することです

どうやって?
直接?
そう、直接触れるのです
計ちゃんの体に
そして刺激を与えるのです!


囁きながら、体にふれる
これが計ちゃんにたいする、もっとも効率的な入力方法なのです


・・・って、なんだか怪しいですね
いえ、実際に怪しいのです




脅える計ちゃんに、博士の手がのびます
お腹をすいすいとたどります


「や!くすぐったいです!」
「じっとしていたまえ、君はコンピュータだろう」
「だって・・・」


今の操作で、博士は電波ネットをブラウズ
するアプリケーションを立ち上げました
計ちゃんは、世界に張り巡らされた電波を受信し始めます


「神のお告げ神のお告げ・・・世界は乱れている・・・これなんです?」
「変なところにアクセスしたな、とばそう、ほら」



つん!

博士は計ちゃんのちょっと危ないところをつつきます
計算機少女は身をよじります
博士はそれに構わず、計ちゃんに触れまわります
背中とかお腹とか腕だとか太股だとか脇の下だとか・・・
胸だとか・・・お尻とか・・・
ちょっと人には言えないあんなところまで・・・


「もう、やめてくだ、あっ、くすぐったい・・・メッセージは一通ですぅ・・・や!あ!」
「ええい、もう、紙媒体に出力だ、ほら鉛筆と紙」


さらさらさ・・・もみ!


「やあっ!アクセスしてる途中ですっちょっと待って下さい!」


むに、むにむに!


「はい分かりました混んでるんですよとばします次のリンク行きます、あ!」



こんな感じですから、長時間使用されると
計ちゃんはすっかり疲れてしまいます

使われているときはずっと立ちっぱなしですし









ですから、計ちゃんは、自分に対する入力方法に
欠陥が在るように思えてなりません



・・・直接入力はもちろん、昔のマウスによる入力よりは
ずっと高度に、ダイレクトに操作できるのは確かなのですが

(ネズミより人間の方がより高度な事が出来るのです)






やっぱり・・・計ちゃんとしては嫌なのです






でも、その入力方法を否定したら、
半電子計算機人間としての自分の(すでに在る)存在を
否定することになりそうなので、ずっと使用に耐えているのです・・・







もちろん皆さんは、女の子として拒否したらいいのに、と思うでしょうけど
計ちゃんはまだ、はっきりNO!と言えるまでに自我が成長していないのです



(計ちゃんの自立は、また別のお話になりそうです)








今はちょっと疲れたので、椅子にもたれて寝ています

すぅ・・・















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