第10回目(7/19)






ラポポおじさんは農夫です
大きな体をした農夫です
髪の長くて髭も長くてぼうぼうの、おじさんです





ラポポおじさんは農夫です
(今風に言えば農作業従事者ですか)

だから、耕します
作物を育て、収穫し、売ります













どこで?















この列車の中でです!




















ラポポおじさんは座席を耕します

節くれだった鋤鍬は
座席の木材を砕き
それは破片となって

更におじさんが耕せば
破片は粉になって

おじさんはもっと耕しますから
座席の上は、すっかり土になってしまうのです!






おじさんはそこに色々植えます



砂漠麦
蔦エンドウ
ウリカズラ
赤菜
その他よく知らない色々・・・

























ある日、ラポポおじさんは新しい座席を耕していました
私はずっとそれを見ていました
(力強く正確な打ち込みがなんだか面白くて)


すると、おじさんは言いました。

「どうだい、お嬢ちゃんもやってみるか?」


私はその勧めにしたがって、おじさんの鋤を手に取りました

おじさんの手のひらで長年磨かれた木の柄はつるつるで

私のちいさな手には余るくらい太くて長くて

それで、鍬そのものがとても重いのです!
(ええ、もちろん私は人一倍力はありませんよ、でも・・・)



それでもなんとか持って
それでもなんとか振り上げて





ふらふら〜ふらふらふらら〜







座席の畑に打ち下ろそうとすると







ふらふら〜ふらふらふらら〜








床や窓や、とても恐いことに別の席の人の頭を耕してしまいそうになります

いいえ、おじさんが支えてくれなかったら、きっとそうしてたと思います!
(考えてみたらすごく恐い!!)







私のそんなふらふらな様子をみて
おじさんは優しくでもいたずら気に笑っていましたが
馬鹿にして大笑いしてる奴が・・・入ってきた!





わはははは





向こうからやってくるのは、あの、弁当売りの男の子です!

(むぅ〜)



「わはははは、まったく、なんだよそのへっぴり腰は、宗教音頭か?」

「だって・・・重いんだもん!しょうがないじゃない、女なんだから!」

「まだ、半人前のな。そんなんじゃ、まだ殻かぶってるひよこちゃんだね。」

(むぅ〜)









でも、確かに農婦のおばさんなんかは、こういう鋤をちゃんと振りこなしてます
(時々見える窓の外の農場の風景)
外の世界で働いてる女の人って、みんなちゃんと仕事こなせるんです
(そして、弁当売りの少年は、明らかにそういう世界に属してました)




でも、でも・・・







その時、ロポポおじさんは言いました

「いやいや、お嬢ちゃんは一人前だよ」
「ほら、鋤を貸してみてごらん」


そして、鋤を振り上げ、おじさんは言いました

「お嬢ちゃんがこの前聞かせてくれた歌をもう一度歌ってみてご覧」





歌・・・ですか?
それは、おじさんが知ってた古い節に、私が詞をつけた歌です





私は歌いました・・・


「金の月・・・銀の月・・・砂の星・・・猫の目に涙・・・」


おじさんは、私の歌にあわせて鋤を振るいます
いつもより力強く




硬い座席はみるみる砕かれてゆきます
破片は、みるみる砂に、土になってゆきます



「どうだい、お嬢ちゃんが歌ったら二倍仕事が出来る。」」
「だから、差し引き一人分、十分に一人前だよ、お嬢ちゃんは」









・・・私は、なんだか嬉しかったです

(たとえそれが詭弁めいた慰めでも、まだ幼い子には救いになる・・・)






それについて、弁当売りの男の子は何か言いたそうですけど
(きっと相手が私なら言ってたと思いますけど)
でも、おじさんが相手なのでしぶしぶこう言っただけでした
(おじさんは色々な意味で立派な大人なので、素直に従わざるを得ないのです)



「まあ、そういうことにしといてやるよ」




















その時、客車の最後尾のドアが開いて・・・

「いかん、車掌だ、早く座席シートを畑に被せて・・・!]

「は、はい・・・!」







ドタバタドタ・・・・














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