第8回目(6/14)






家にいた時は、雨降りは嫌いでした

確かに、面白いこと、いつもと違う景色は見れるけれど
でも濡れるのはなんだか気持ち悪いし

服とか靴下とか靴とか汚れてしまうじゃないですか
(そして、汚れたままではいけないのが文明とか社会とかいうものなのです)





でも、こうやって列車に乗っている時は
雨は大歓迎です!

特に、こう蒸し暑くなってくる季節には








前の席の人が持ち込んだ、先祖代々伝わっているという
鉱石ラジオが雨の予報を告げています





と、見る間に窓の向こうがどんどん暗くなって、
やがて雨が窓硝子を打ち始め、
幾つもの筋になって斜め横に流れて・・・





慌てて私は洗面器にタオルを入れて替の下着を袋に入れて
<天然シャワー>専用車両へと向かいます・・・・





















<天然シャワー>室はもう満員になりかけています

いつもは体を拭くぐらいしかできない乗客の、折角の機会です
もう一年分風呂に入ってきた人以外はみんな来ます



みんな洗面器に今まで来ていた服や下着も持って入ります
自分の体だけじゃなくて、そういうものも洗わなくちゃならないからです
(クリーニング代って馬鹿にならないんですよ)


みんな女の人ですからかしまく喋りながら でも手を休めずに一斉にばしゃばしゃばしゃ・・・










あ、猫子さんがいる!

(はじめは男の子かと思ってちょっとびっくりしました)
(だって、あんまりにぺったんぺったんでお尻も平たいですから)











私も猫子さんとおしゃべりしながら、
彼女の持ってきた<猫石鹸>でまず体を洗います

ほんとはゆっくりと丁寧に洗いたいのですが
雨が止むまでに洗濯もしなくちゃいけませんから

ホント、手も口も大忙しです

(あ、別に口は忙しくなくてもいいですね)













と言う風に私は入浴(といっても冷たい雨ですけど)と洗濯にいそしんでいると・・・

ふと、天然シャワー室の戸口に誰か立っているのに気づきました
雨も浴びずに、赤い着物を着たまま・・・長くまっすぐな黒髪・・・


不機嫌そうな、でもきれいな顔したあの人は
たしか・・・からくり嬢です

(本当の名前は「からくり博士のお嬢さん」というそうですけど)


長い時を封じ込めたような、心を貫くような琥珀色の眼がちょっと恐くて
いつもは声なんかろくにかけたこともないんですけど

(猫子さんはその点全然平気ですね、誰にでも声かけます)






でも、




こんな折角の雨なのに、どうして浴びないのか
浴びないのに、どうしてそんなところにいて
雨なんか見てるのか



あまりに気になったものですから
つい聞いてしまいました






「あの、どうして入らないんですか?」






からくり嬢は、私に視線も向けず、ただ落ちてくる雨を見ながらいいました




「・・・私は、防水が完全ではないから、雨には当たれないの」





「・・・・」
じゃ、どうして?







「機械油の雨でも降ってないかと思ったのだけど・・・」













あまり、この世界は機械仕掛けの人にはむいていません














「それなら、服だけでも洗ったげようか?」

いつのまにか猫子さんが会話に入ってきています

「そうしたら、私はどうやって座席まで戻るの?濡れた服は着れないわ。」

うーんと猫子さんは考えます






「じゃあ、私のバスタオル貸したげるよ。」

え、それはバスタオル一つで客車を歩けということですか!?

でも、からくり嬢はそのとき初めてかすかに微笑みました

「そう、じゃ、お願いするわ。」

そういって、彼女は帯をほどきます
そらさらとした衣擦れの音は、雨と嬌声にかき消されて聞こえません





そして

「じゃあ、これお願いね」

といって猫子さんに着物を渡すからくり嬢の裸は・・・

その、とてもリアルというか、肉感的というか
(決して女性的なところが誇張されている訳じゃなくて、控えめなくらいなのですが)
その、生身の女の人より、なんというか、エッチです
(私はそんな趣味もってないのに顔があかくなって、嬢をまともにみれませんでした)
(もちろん、猫子さんは平気そうでした)

















バシャバシャジャブジャブ・・・・



















あ、いけません
ずっと向こうに、雲の切れ間が見えます
黄金の光が射し込んでいます
いそいで洗濯しなくちゃなりません

なにしろ、からくり嬢の着物も洗わなくちゃならないのですから















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