第10回目(7/26)






「水生ちゃんと次郎ちゃんね・・・」

咲ちゃんはくすくすと笑います

でも、彼女は多分、思い違いをしています・・・ええ・・・





咲ちゃんが八房君の従兄弟だったとは、意外でした
(でも、町の半分の人達は、どこかでつながっている親戚同士なのだそうです)
(そういえば、「八房」とついた商店をいくつも見かけます)
(私のクラスの中では「八房」は次郎丸君だけですけど・・・)






「次郎ちゃんて、学校じゃ全然しゃべらないでしょ」


ええ、あの日からも、八房君と学校で話したことはありません
無愛想(というよりは、完全に礼儀的な)挨拶を交わしたりするだけです

おはよう
さようなら


「昔からああなんだよね、人前じゃずっと無愛想なの。」

「咲ちゃんはよく話したりするの、八房君と。」

「そんなに仲いいってことは、ないわ。ちょっとだけ。」
「難しい話するでしょ、次郎ちゃん。」
「哲学的っていうのかな、私、そういうの苦手だから。」



「でもねえ・・・水生ちゃんだったら、お似合いじゃない。」




すごく嬉しそうに咲ちゃんは私を見ます
女の子って、こういう話好きですよね
(いえ、私も女の子ですけど・・・)




「ううん、そんなんじゃないよ・・・」


そう、きっとそういうのではありません



「・・・次郎ちゃん、嫌い?」

「そんなことはないけど・・・」




そういう問題では、ないんです
もっと、私の、根源的な・・・





「うーん、でも水生ちゃん男の子に人気あるからね、わざわざ次郎ちゃんじゃなくても・・・」



それは、初耳です
私は、驚いて・・・

ちいさくかすれた声を、洩らしてしまいました




「・・・うそ・・・」


「うそじゃないよ、男の子達言ってるよ、水生ちゃんいいよねって。」
「可愛くて、おとなしくて。ほら・・・君とか・・・君とかがさ」




私の中で名前と顔の一致しない人達が、挙がりました
きっと、その人達は誤解しているのです



私が、人の中に入って行かないから
私を知らなくて、
だから、遠くから見て、勝手に自分達の幻想を重ねあわせているのです



(だって、私は「おとなしく」ありません、暗いだけです・・・)
(鏡に映る顔も可愛くなんてありません、むしろ・・・)
(それに・・・私は・・・)







そして、よく知らない誰かが私を注視している・・・
そのことが、とても恐いのです






「あーあ、私なんかおしゃべりでやかましいだけだし、」

「そんな事無いよ・・」




そうです、咲ちゃんのほうが、明るくて、魅力的です
容姿だって、可愛いのは咲ちゃんのほうです
本当に、そう思います
(私は、・・・)






こうして試験勉強もしないままに、
昼休みを終える鐘がなって
私達のおしゃべりはいったん中止となりました・・・















リーンゴーンガーンゴーン・・・














ゴォーン・・・

































今日、家に帰ると、郵便受けに葉書が一枚入っていました

暑中見舞いです

それにしても、早い・・・

(今年は私は咲ちゃんに一枚書こうと思ってますけど、まだ書いていません)




一体誰でしょう?
覚えがありません

(私に今まで友人はいませんでしたし・・・あの子の訳はないし・・・)




でも、この達筆

差出人は・・・ああ、”保護者”です・・・
凶凶しい、名前



裏返すと、「暑中お見舞い申し上げます」の文字とと朝顔の絵が、
水彩風に印刷されていました
(ごく普通の、郵便局で売っているものです)







その余白に、お誘いの文句が書いてあります
お食事会への、誘いです

「ぜひ集られたし」

ご丁寧に、簡単な地図まで添えられています




吐き気と、矛盾する押え難い食欲への誘い・・・








夏の日は、あくまでも明るく輝いています・・・













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