第12回目(9/17)



あまり人もこない、小さな森の中の四阿で

私は、時々こうして、八房君の話にお付き合いしています






あ、誤解しないでください
八房君と、”つきあっている”訳じゃないんです

(あの人は、そんな事なんて考えません、きっと)







私は、八房君の、恐らく私以外付き合う子なんていないような
そんな形而上学的な話に(抽象的といってもいいし、神学的といってもいいかもしれません)
付き合っているのです








ずっと、おとなしく話をきいて、聞かれれば答え、疑問があれば少しだけ、問います
本当の真実には、決して触れないようにしながら
(そして、触れさせないようにしながら・・・)





彼は、自分の家に伝わる伝説(それは真実でもあるのですが)から
いろいろな考えと説と論を広げ、それを述べます

それはあまりに現実離れしていて、だから形而上的なのです










例えば:




なぜ、食うのはヒトなのか?
ヒトの赤子なのか?


(危険を犯してまで食らいたいものなのだろうか?)


いわく、それは他の動物の肉に比べとても美味だから・・・それは、違うそうです
(昔、軍隊にいた八房君の祖父が体験したそうです)


いわく、宗教的なものを求めて・・・穢れなき血と肉を求めて・・・ありえそうな話です
(真実とは、違いますが・・・)
自分の肉体を、赤子の穢れない肉で置き換えるということでしょうか?



それとも、愉快犯の仕業でしょうか?
(赤マントのおじさんが・・・)



知らされていない、秘密の家の伝統でしょうか・・・?











:等々・・・




そういう変な話を、小さな森の四阿の中でするのです
明るい木漏れ陽の射す、森の中で、です・・・











どうしてこんな所でこっそりと話すのかというと
誰か、学校の子に見つかったら嫌だからです






(思春期の中にいる子は、どうしても付き合ってるの付き合ってないの
そういう観点から異性の人間関係を評価してしまいがちです)

(それは、その気の無い当事者にとってはとても嫌なものです)

(特に、八房君は、そういう事に興味のあるような人じゃありませんから・・・)








でも・・・




私は最近、彼に惹かれています・・・













いいえ、彼の話が面白いからではありません

(別に、彼と話すのが面白くないわけではありませんよ)
(それが惹かれる理由ではないだけです)


彼が、格好いいからでもありません

(顔は、どちらかというとハンサムさんのなかに入るかもしれませんが・・・)
(いえ、どうでしょう・・・雰囲気はとても威圧的ですし・・・)


一緒にいると安心するとか、頼れるとか、そういうのでもありません
(私はそういう、人に憧れたり、人恋しくなるという習慣がないのです)










・・・ええ、匂いです

惹かれるのは、匂い、です・・・


彼の、匂いです

肉の、匂いです

鼻腔の細胞が感じ取る、汗やその他の分泌物がもたらす物理的な匂いだけではなくて・・・

心で感じる、彼の匂いです・・・








それは始めは、かすかに香る程度だったのですが
ここ最近、特に「保護者」の話を聞いてから
明瞭に感じ取れるようになってきました




美味しそうな、匂いです
きっと、彼の体は、美味しいのです
だって、「保護者」が、何世代も交配を重ねて作った、特上の・・・








私は、彼の顔を、盗み見るように見ます

彼の眼は、揺るがずに、中空の、彼の考えが組み立てられているはずの空間を見ています
彼は、話すことと、考えることだけを考えています



私のように、やましいものが、その精神にはありません



私の食欲は、性欲のようでひどくやましく恥ずかしいのです・・・




(でも、そういう疚しいものが全くないというのが、彼のような年頃の子に有り得るでしょうか?)
(それが欠けていることの疚しさも、彼には感じないのです・・・)









肉の匂い・・・おいしそうな匂い・・・
私からも、それは漂っているそうです
いえ、とても、とても、きつく、匂うそうです

(昔、そう「保護者」に言われました)

なんども「食べてしまいたい」と言われました
なんど「食べてしまいたい」と言われたことでしょうか・・・









私は、彼の話が一旦途切れたのを見計らって、言いました

「あなたの、ご両親のことを、聞かせて欲しいの・・・」










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