第15回目(10/23)





その日、私は遅くまで残っていました

学級委員長として、しなくてはならない雑務があったからです






(私が学級委員になったのは、ほんの数日前の事です) (もちろん立候補したわけでもなく、なりたかったわけでもありません)
(教室の皆をまとめたりするのに向いていたからでもありません)
(大人しくて、真面目な・・・消極的な優等生だったからでしょう)
(つまり、押し付けられたのです)









私が、担任の先生に報告をし、誠意のない謝意を聞き、教員室を辞して
夕日の射して黄金色に染まった廊下を抜けて
暗く沈んだ教室に入ったのは、もうかなり遅い時間でした
運動クラブの声も、もう途絶えていました













こんな遅い時間だったから、もう教室には誰もいないはず
日が暮れるまでに帰ろうと、私は自分の席の鞄をとって、そのまますぐ出ようとしました

だから、全然、周りなんかみていませんでした





人がいるなんて全然気づきませんでした
声をかけられた時は、心底驚きました!
(心臓が本当に飛び上がった感じでした)









「神原さん」









薄暗がりにいたのは、一人の、大きな男の子でした
よく見ると、同じクラスの男の子です

確か・・・ラグビー部に入っている子です
短く刈った頭に、太い腕に、大きな体・・・ごつごつとした、顔

その眼は、暗く思いつめていました









もし、ここで普通の女の子だったら(例えば、咲ちゃんだったら)

「練習、いま終わったの?」

というでしょう




「毎日大変ね、がんばってるね」

等と付け加えるかもしれません




そして、
「じゃあ、また明日ね」

といって、その場をうまく立ち去れたでしょう









だけど、私は、心の中で言えても、口がうまく動かない質ですから
だから、「あの・・・」とか言って、黒い姿の前に、立ちすくむだけでした・・・









「神原さん」








もう一度、ラグビー部の男の子は、私の名を呼びました






「・・・何・・・」

たったそれだけが言えました





「君、次郎丸と付き合ってるの?」

使い慣れなれてなさそうな二人称で彼は聞いてきます





「ううん・・・」


「じゃあ、他に付き合ってる奴、いる?」






私は、また首を横に振ります
そして、次の質問は、私でも簡単に想像がつきました













「じゃあ、その・・・俺と付き合ってくれないか」









彼は、嫌いではありませんでしたが、好きでもありませんでした
ラグビーで活躍する姿が格好良いという女の子もいましたが、私は興味がありませんでしたし

それに、私はもし他の誰に申し込まれても、断ったと思います
それが、たとえ八房君でも・・・





だって、私は・・・・











「あの・・・ごめんなさい」



私は、それだけ言って、すぐに立ち去ろうとしました
彼が、とても恐かったからです

(もう遅いですが、彼の名誉のために言っておきます)
(彼は普段、体育会系らしくその仕種や言葉は粗野な感じでしたけど)
(でも、決して、乱暴な振る舞いをしたりする人ではありませんでした)

















でも、まさか、いきなり抱き着いてくるなんて!



彼は、むしゃぶりつきながら、私を教室の後ろの壁に押しつけました
私は懸命にその羽交い締めを振りほどこうとしますけど
私の腰ほどもある太い腕は緩みません

彼の顔が、近づいてきます
荒い息が、顔にかかります

私は、彼を拒みました
その頭に手をかけ

でも、彼の顔の接近は停まりません
(私の細腕より、彼の逞しい僧坊筋の方が強いのです)



あと一息で・・・






















ええ、私は知っていました
死体を、いくつも見てきて、それを直にバラしたりもしていたのですから
だけど、結果については、その時は考えが及ばなかったのです・・・
(ただ、恐れと嫌悪感に突き動かされてやったのです)









私は、彼の頭にかけた手に力を込めました
押しもどすのではなく、横に転がすように








私の知識通り、彼の頚椎は、あっさりと外れ

彼は死にました








私が、殺したのです













その瞬間に、教室の扉が開いて
そこから八房君が現れたのは


思ってもみないことでした・・・




















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