第16回目(11/4)





青黒い闇に沈み行く教室で、二人は蒼褪めて立っていました




大きく逞しい、死体を前にして・・・












やがて、口を開いたのは、意外にも
(そう、とても意外なことに、私でした)






「死体を、隠さなきゃ・・・」









八房君は、返事をしません
視線は、ずっと死体に注がれたまま
その厳しい面は、強ばったまま





(無理もありません・・・)
(常人ならば、取り乱しても、全然おかしくないのです・・・)










「・・・隠すのに良い場所、知らない・・・?」










私は、驚くほど冷静でした


・・・いいえ、冷静というのとは違います

自分が自分でないみたい
自分の声を遠くで聞いています・・・

(私は、何かの操り人形のようでした)










「次郎丸君・・・」











私は、八房君の名前を呼びました

彼は、その声に、呪縛を解かれたかのようにはっと、私の方をみました・・





そして、幾分歯切れの悪い言葉で、答えを返してくれました・・・








「れ、歴史資料室がいい、あそこなら、年末の掃除まで、誰も・・・来ない・・・はず・・」






「じゃあ、そこまで運びましょう、手伝って」








「あ、ああ、ああ・・・」









私は、死体の口から血が流れ落ちないように
白いハンカチで詰め物をして

(それでも、尿糞は流されるまま)
(あとで拭かねばならないでしょう)



非力な私と
力強い彼は

大きな死体を引きずり運びました・・・


(宿直の先生の見回りに見つからなかったのは、不幸中のささいな幸運でした・・・























埃塗れの歴史資料室
そこは、資料室と言う名の、がらくた置き場です

(明治から続く、用無き品の墓場です)


今は月光が、高いところにある窓から一状の光を射していました
(舞い上がった埃が、光線の軌道をくっきりと表しています)






今はもう、夜になると肌寒い季節です
なのに、私達は、息を切らし、汗を浮かべています







「・・・だめだ、見つかる」








いきなり、八房君は言いだしました








「血も臭う、腐臭もする、ここの前だって、誰も通らない訳じゃない
、絶対誰かが気づく!神原君、やめよう、こういうことは・・・」









それに、私はこう答えました












「どうして?」














「どうしてって、死体なんてどうやっても隠せるもんじゃない、
ここからどこかに運ぶのだって、誰かに絶対見咎められる!」













「いいえ、死体はね、消えるのよ・・・」













そういって、私は少し、微笑みました
(いいえ、私ではない「私」が微笑んだのです)












「次郎ちゃんは、この部屋から、少し出ていて・・・・」

























私は、彼が教室から出て戸を閉めたのを確認すると
死体の服を剥ぎ、口をつけました・・・











私は口を血だらけにして・・・・











・・・そのうちに、骨だけになりました・・・・



























私は、からからと、教室の戸を開けました


八房君は、少し離れて、蒼褪めて立っていました
(夜の青さよりもっと白く・・・)











私の腹は、とても大きく膨れていたので、つい




「妊娠してるみたいだね」





と冗談をいい、少し笑みなど浮かべてしまいました・・・

(それに彼は、言葉も無く・・・)











「あとは、鞄に入るから大丈夫だよ・・・」



















そして、私達は、少し後片付け、拭き掃除などしてから
随分と遅くなりましたけど
いつものように家路につきました・・・・


















別れ際、私は彼にききました









「誰にも話したり、しないよね」










彼は、ゆっくりと、少し震えながら、厳しい目付きをしながらも、肯きました・・・


















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