第19回目(12/31)





教室に一つ、埋まることのない席があります

私の殺した子の・・・席です







もっとも世間では彼はまだ、死人ではありません
”失踪”とされています



そして、その”失踪”に私が関わっている
というのがクラスの専らの噂でした

あまり、いい噂ではありません・・・
人は私に、前にもましてよそよそしく冷たくなりました・・・

(でもそれは真実なので、私は誰にも
恨み言を言う訳にもいかないのです)















ただ、咲ちゃんだけが一人、そんな噂知らぬ気に
明るく屈託なく私に接してくれました


(彼女は、優しくとても気を遣ってくれていたのかも知れません
あるいは、何も考えていなかったのかも知れませんけど・・・)





だから、いじめられるようなことはありませんでしたけど・・・















八房君とは、あれ以来、ろくにお話もしていません




いいえ、特に拒まれているのではありません
ただ、話し掛けてきてくれないのです・・・




そして、私は、人に話し掛けるのがとても苦手な性格ですから・・・



(やはり、嫌われて、怖がられているのでしょう・・・)
(それが何故か・・・怖いのです)
(どうして”怖い”なのでしょう・・・?)















私の今いる学校では、年の最後の授業の日に、大掃除をします

担任の先生が告げた私の学級の受け持ち区域には、
歴史資料室も含まれていました



そこは・・・私が殺し、そして食べたところです・・・




私は学級委員として、クラスメートの受け持ちを割り振ってゆきました
仲良し同士を組ませるように
無難なように



歴史資料室の担当には、私自身と八房君、
それに咲ちゃんを割り振りました





















「なんか臭くない、ここ?」




歴史資料室での咲ちゃんの何気ない一言は、私を少なからず動揺させました
さっきから無言で埃を払う八房君の手も一瞬、止まります



「そ、そう・・・」



でも、咲ちゃんはそれに気づいた様子はありません





「やっぱ古い物ばっかりだから何か腐ってるんじゃない、黴臭いし」



「・・・そ、そうね」




「きゃ!!」

「な、なに!?」

「なにこれ、死んでる、気持ち悪い!」



荷物の陰に、干からびたネズミの死体




「これだよきっと、臭かったの〜、次郎ちゃん早く捨ててきて!」


「・・・」









でも、本当に気づかれてもおかしくはなかったのです
僅かだけど、内臓の臭いが締め切った部屋の中に漂っていましたし・・・・
床にはかすかだけど拭い切れなかった血の跡もありました・・・・




よく、気づかれずにすんだものです・・・







すべてが咲ちゃんに知れたとき、そのことを考えると
寒気がして、私は、ぶるるっと、震えました


そのとき、お腹がきゅーと鳴ったのです
その音は、狭い静かな部屋でいやに鮮明に聞こえたのです






「ぷっ、くすくす」



咲ちゃんが笑いだしました



「くすくす、水生ちゃんたら、もうお腹すいちゃったの?」
「分かった、朝とか食べてないんでしょう」




「う、うん・・・」




「食欲ないとかいってもちゃんと食べなきゃ」
「ほら、お腹だって文句言うんだから、お腹すいたって」
「ほら、はやく掃除終わらせて一緒にお昼食べよーね」






「・・・そうだね・・・」




私は小さく、微笑みました・・・













でも、実の所、私はとても衝撃を受けていました
もう、お腹が空いてしまったことに・・・




人一人食べれば、しばらくはもつと思ってたのに・・・











そして、私のお腹が鳴ったこと・・・空腹の意味を、八房君は分かっていました

彼は、私を見つめながら、大きく眼を見開いていましたから・・・・








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