第22回目(3/27)






「どちらの方ですか?」


唐突に、猫背の刑事は聞いてきました


「はっ・・・?」


面食らう私を、殆ど閉じたような細い目で見つめながら刑事さんは補足します


「家ですよ、貴方の帰り道、歩きながら話しましょう」


「あ、ええ、はい・・・」














私達は、何事かとこちらを見る生徒達の中を歩いて行きます

私のアパートの方に帰る人はまだ随分少ないのですが・・・・

それでも、下校時間なので何人もの生徒が歩いています
刑事さん連れで歩く私の方を、遠巻きに眺めています





ちなみに刑事さんは、もし刑事さんという事をしらなければ、かなり怪しい人に見えます

怪しい人といっても、薄汚れ色褪せた背広は、暴力系の人には見えません
薄く笑みを浮かべた(あるいは、もともとそういう造りになってる)
顔は、詐欺師にしては口と知恵が(悪知恵ですけど)まわらなそうです

・・・そう、家もなく地下街などで寝ている人達に見えます・・・






でも、ここは山間の小さな町です
大きな駅もなく、公園もなく、人口も多くありません
だから、そんな人はいません




それだけに、刑事さんの風体は異彩を放つものでした
私としては、こういう人とは歩きたくなかったです・・・







でも、私が嫌だと思うのは、怪しい人と歩いている、そのことだけではありません
もっと嫌な事があります

それは、彼が刑事だということを知っている人が、
私と同じ道を歩いている生徒達の中にいることです

彼は前にも学校に来て、色々と聞き込みをしていましたから・・・










私と刑事さんは、しばらく無言で歩いていました


息詰まる時間です
私は、ただでさえ人の苦手な性格なのに・・・







やがて、人のまばらになり、田園の中に通る道に差し掛かるころ、
ひょろひょろと道沿いに植えられた防風林がざわざわと鳴るのを耳にしながら
私は、(めずらしく私から)口を開きました


「・・・お話することはもう、ありませんよ。この前お話した、あれが全てです」


そういわれても、刑事さんは表情を変えませんでした
目は細いまま、口は薄く笑みを湛えているように曲がったまま・・・


そして、やがて口を開きました


「いいのですよ、今日は令状も何も持ってきてませんから。
だからですね、貴女に答える義務はないんですよ」



私は、立ち止まりました
刑事さんも、立ち止まりました
強い風が、道沿いの木の僅かな葉と枝を鳴らします
私の髪がなびき、目にかかろうとします


「では、なぜ・・・」


「確かめたかったのですよ・・・」



「・・・何を・・・」



「貴女からは、血の匂いがするのですよ・・・」









そのとき、刑事さんの胸ポケットから呼び出し音が鳴りました
ごそごそと内ポケットをまさぐって、携帯電話を取り出します
(その時に、ちらりと黒い銃把が見えて私は震えました)

「はい、弧雀・・・なに・・・分かった、すぐ戻る」


通話中、刑事さんの顔は薄笑いをやめていました
その顔は、とても厳めしいものでした

でも、電話を切ると途端に、笑みを浮かべた表情にもどります


「では、私は用事ができましたので、これで。すみませんでしたね、お騒がせして」


「・・・いえ・・・」







そして刑事さんは、いま来た道を頭を掻き掻き引き返してゆきました
がに股で、小走りに走りながら。
その姿は、あまり威厳のあるものではありませんでした
情けないともいえますし、滑稽だともいえるでしょう。






でも私には、とても怖かったのです・・・







(私は、これでも匂いには気をつけるし敏感な方です)
(血の付いた制服もすでに処理してあります)
(なのに・・・いえ、匂いといっても本当の匂いではないのでしょう・・・)
(そうではなくて・・・)


(もう、ここから離れなくてはいけないかも・・・)



(でも、せめて今の空腹を満たしてから・・・)












ここで、私がこの時点で知らなかった事を書きます
これは、後で知った事です

私が、この町で出ている新聞を購読していたらすぐにでも分かったのですが・・・



新たに私の学校の生徒が一人、2、3日前から行方不明になっていました
1年生の、女の子です (このことは、学校側は伏せていました)

その生徒の骨と併せて、前にいなくなった生徒の骨が見つかったのです
そう、私が食べてしまった、あの男の子のことです

でも骨は、私が隠したところから見つかったのではありません
それは、とある小さな山の中から見つかりました

散歩がてら山に分け入った飼い犬が見つけたのです
あまりに吠えて地面を引っかく飼い犬を不審に思った主人が
そこを掘り起こしたところ、ざくざくと、骨の山・・・



そのなかの数本には、野犬の歯の跡があったそうです・・・
















翌朝、学校で、教室の中でやはり私は、噂話をされていました

遠巻きに私を盗み見ながら、こそこそと・・・ひそひそと・・・



咲ちゃんは・・・来ていません
どうしたのでしょう?

でも、彼女は時々遅刻してくるので特に心配はしませんでした
(なんでも、低血圧だとか・・・私もそうですけど)







やがて、時間は過ぎ、始業を告げるベルが鳴りました

担任の黒ぶち眼鏡をかけた若い男の先生が入ってきます

長い、艶やかな黒髪の少女を連れて・・・



とても、奇麗な子です

白く、抜けるような肌に
頬はつやつやと薔薇色・・・









「みんな、転校生だ。今日から新しくこのクラスの一員になる」


「柊ひふみです、皆さん、よろしく」

そして彼女は、軽く一礼して微笑みました
黒い髪が揺れて、、蛍光燈の光を跳ね返して輝きました
清純で、美しい笑みでした
クラスの男の子達がどよめきました


でも、彼女からも、血の匂いがします・・・










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