第23回目(5/11)





柊ひふみさんは、挨拶が終ると、先生に指定された先に着きました

その、歩く物腰や座る動作は、初めての場所にしては、とても落ち着いていました
そして、とても・・・そう、優雅な感じがしました

授業中の澄ました顔は、あくまで上品で、清楚にみえました





それでも、わずかに血の匂いがするのです・・・



錆びた水道の水のような・・・






(その、学生らしからぬ落ち着きと上品さが・・彼女をとても年上に見せていました)












休み時間、柊さんはクラスの皆に取り囲まれて質問攻めにあっていました

何処から来たの?とか
趣味はなに?とか
彼氏はいるの?とか
(”いない”と答えたので、男の子は随分と盛り上がっていました)



それに答える内に、実は柊さんは、最初のすまし顔に反して、
かなり賑やかな性格をしていることが分かりました





いえ、下品だとか、そういうのではなく
今風の都会の若者言葉を話すわけではありません

あくまで上品な物の言い方をしますし
笑みもその小さな口に相応しく可憐なのですが





よく笑い、快活に話します
明るい、昼の太陽のようです

(そして、そうしているときの柊さんは、確かに、年相応の女の子に見えます)





だから、柊さんを囲む輪も大いに盛り上がります
初対面でも皆、彼女に惹かれているようです
(男の子も女の子も変りなく・・・)












でも、私は、そういう人込みの中に混じり
賑やかにしているというようなことは苦手なので
一人離れて、自分の席にいました





柊さんは、そんな私に気づかない様でした

(いえ、私は見た目もとても地味ですし
普通ならそれが当り前なのですが・・・)








そういえば、今日は咲ちゃんも来ていません・・・
どうしたのでしょう・・・?












昼休みになるころには、柊さんはすっかりクラスに溶け込んでいました

(それに引き換え、私は未だにクラスにも馴染めません
いえ、彼女が”うらやましい”訳ではありませんけれど・・・
でも、あんな風に、明るく生き生きと振る舞えたら生きるのも
楽しいだろうな・・・と思うことはあります)





あのね・・・
ハハハハ・・・
フフフ・・・
クスクス・・・
アハハハハ・・・
キャッキャッ・・・
だからね・・・





この長い休み時間に、咲ちゃんもいない私は、特にすることもないので、
そういう時にいつもしているように、図書室に本を読みに行きました
ちょうど、読み終えて返したいと思っていた本もありましたし・・・












長い木造廊下を、とたとたとたと・・・
古びた隅の一角に・・・












私は、図書室が好きです
少なくとも、学校の中では・・・


人のいる風景の中では、一番好ましいと感じます

(もちろん、人のいない風景のほうが私は安心するのですけど)






なぜなら、みんな本を読んでるからです



・・・当り前ですね






いえ、つまり、皆が自分の手元にだけ心を寄せているのに、私はほっとするのです

そこでなら、私はその他大勢の一人になれます

反対に、人と人が触れ合ってる場というのは、私にとって得体の知れない
なにかに取り囲まれて、一人世界に投げ出されている、そんな感じがするのです






さて、図書室に着いた私は、本を返却しにゆきます
古びた診療所から持ってきたという木製の受付カウンターの奥には
図書委員の、やはり学生の受付が本を読みながら座っています
彼らは曜日によって変るのですが、その内の何人かは私の顔を覚えているようで
今日座っている小柄でスポーツ刈りに無精髭(!!)の男の子も
私を認めると、挨拶代わりにか微笑みかけてくれます

「あの・・・返却、おねがいします」

私も、微笑んでみようと思うのですけど、名前も知らない人相手だと
どうしても、顔が強張ってひきつってしまいます・・・

きっと私、無愛想な、変な顔をしているのでしょうけど、
今日の受付の男の子は「はいはい」とか行って、愛想良く
図書カードや台帳への記入処理をすましてくれて
「はい、どうぞ」と微笑みながら差し出してくれます


「・・・どうも」



このように、単なる図書の借り出し・返却だけでも
私にとってはなかなか心に負担のかかることなのですが
今日は、もっと恥ずかしいことがありました







私が、お目当ての、続き物の続巻を取ろうと書架に手を伸ばすと
その手の前に、すっと、別の手が伸びてきました

私は、自分の手を止めようとしましたけど間に合わず
その人の手に、自分の手を重ねてしまいました


(生暖かい、肌に包まれ骨を包む肉の感触・・・)



私と、その手の持ち主は、顔を合わせました
それは、男の子でした








咲ちゃんが好きだって言っていた、あの男の子です!








しかも、その時に限って、私のお腹が鳴ったのです

”くぅ〜”って・・・














私はお腹が空いたのです・・・







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