第3回目(4/27)





内容の無い言葉の連なりが、マイクで増幅され、校庭に響き渡る
軍隊のように整列した生徒達の時間をかすめてゆく
(中隊規模の制服の整列の、どこにもひっかからない)
若い心に響かない校長の言葉は
私の、内容物の無い胃には、とても響いたのです
(それは、苦痛でした)







不意に、意識が薄れて
(ぐるりと地球が回転し)
こんなに大勢の人達が見ている中で
私は倒れてしまいました・・・










霞む目の前に、誰かが手を差し出していました
それなりに節くれ立っているけど、まだすべらかで柔らかい手

私に、食を恵むつもりなのでしょうか?





いいえ、そんな訳ありませんね
(ただ、助け起こそうと、手を差し伸べてくれただけなのです)












・・・でも、とてもひもじかったのです・・・








変な事(異常な事、変態的な事・・・)する前に
気を失って、本当に良かったと思います・・・































・・・気がつくと、そこは白い部屋でした
(消毒液と、古い建物のにおいの混じりあう)

私は、制服のまま寝台に寝かされていました
(胸元はゆるめられ、スカーフは外されて)








「気がついたのかい。」

部屋にはぞんざいな口調の、眼鏡をかけた白衣の年配の女性
あと一人、学生服の男の子

女の方は、この学校の保健医さんでしょう
(口さがない男の子達は”保健のおばさん”といいますね)
忙しく薬品棚のなかを探しながら、私に指突きつけて
(その指の皮膚はやや荒れ気味です)
矢継ぎ早に言葉を突き出します

「全く、ダイエットだか知らないけれど、いい加減にしなよ。」

「死んじまったら何にもならないんだからねえ。」

「大体あんたみたいなやせっぽちがそれ以上やせたらみっともないよ。」







いいえ、違います
それは違うのです!









でも、本当の事も、言えないのです・・・
(先生、私、もう何日もヒト食べていないのです・・・なんて言えます?)






だから私は小さく頭を下げて
小さな声で

「はい・・・すみません・・・」

と言うばかりでした・・








「では、特に異常はないのですね」

保健室に差し込む光に照らされて、男の子が問いました
今時頭を丸めているのは、厳しい運動部に入っているからでしょうか?
そういえば詰め襟もきちっと締めて、吊り気味の目は見据えるよう

「ああ、腹が減って倒れただけだよ」





・・・・恥ずかしい・・・・






「でも、まあ今日は休んだほうがいいね」
「そうですか」


男の子はそれを聞くと、私を見下ろして言いました
「お腹が減って・・」の下りを聞いても、まったく目は笑っていません
その真面目な目で、私を見下ろして、言いました
(その目は無感動ともいえ、非人間的とも思われました)
(でも冷たいともいえない、不思議な視線でした)
(その背はかがめられることもなく、真っ直ぐに伸びておりました)



「先生の方には、僕が報告しておきます。配布物などは、あとで届けますから。」



言葉は、その年頃の男の子とは思えないくらい、女性的なくらい、丁寧でした
(顔は、男の子らしいのに)

そして保健医の方に一礼して、

「ではこれで失礼します。お大事に」

と言って保健室を出て行きました・・・













後には、”保健のおばさん”と、私が残りました

彼女は「なんだい、いつも冷たい子だねえ・・・」などと
ぶつぶつ言っていましたが
私の方を向くと


「大丈夫?起きれる?」


と、訊いてきました






「はい・・・」と私が小さくうなずいて身を起こすと



「いちおう栄養剤打ったけどね、いいかい、消化のいいものを少しだけ食べな。」
「お粥かなんか、お母さんに作ってもらうといいよ。」

と言われました










家に帰っても、母はいません
(そして父なども、いません)
私の栄養は、煮た穀物なんかではないのです・・・









でも、私はやっぱり小さくうなずいて、

「はい・・分かりました・・・」

と言いました・・・



















私は、早く、この異常な飢えを満たさなければなりません・・・・!










何でもいいですから御感想などぜひ!(ここをクリックしてください)
メール宛先:hitomachi@geocities.co.jp


もどります