第30回目(7/15)





季節は初夏を迎えていますが、私は風邪をひいてしまいました


…風邪だと思うのですが、別の病気かもしれません

とかく頭がくらくらします。 少し熱もあるようです。
私は体が弱いものですから、すぐに体調が悪くなるのです




無理すれば学校にいけないこともないのですが、
それほど行きたいわけではありません


むしろ、行きたくないといってもいいでしょう

慣れない、複雑な人の関係に巻き込まれようとしてる今は…
(世の常の人には、大して複雑ではないと思えるかもしれませんが、
私は人を処する方法をよく知らないのです。)








一応、担任の先生には電話で連絡して、
(私が休むことに対して全く何の感慨も感想も覚えていないようでした、助かります)

私は、敷き布団の上に下着のまま寝転がっていました





上になにか掛けた方が良いのですが、部屋のなかは蒸し暑くて…





頭がくらくらするので、動くのも億劫なのです…
眠りたくても、眠りは足りてるので眠れません




かすみながらも途切れることのない意識で、
天井とも何処ともつかないものを見ていました

あるいは、すでに読んでしまった文庫本を手元に引き寄せて数行読んで、
またそのまま投げ出してしまったり…
















こんこん




扉を叩く音

まさか誰も訪ねてくるはずもないと思いこんでいた
私の感覚は、それを瞬時に認識できませんでした






こんこん





次の音で、私は狼狽します


だ、誰?!

ぼうっとしていた意識が覚めます
それと同じくして、鋭い頭痛が突き抜けます



「…つぅ…」





こんこんこん





どうしましょう?
出るべきでしょうか?


でも私は髪は寝癖がつきっぱなしで下着のままでああどうしよう…







こんこん







私は一番無難な選択、黙っていることにしました
身じろぎもせず、音も立てないように







こんこん



し…ん



扉を叩く音は止みました
廊下を立ち去る音がします





こつこつ






誰だったのでしょう?

…実は宅配便か、小包か速達か書留か、
そういうものだったのかもしれません


















「あら、佐久君」



部屋の向こう、アパートの外で声がします

かすかに…

決して大声ではないけど、よく通る声
親しげなのに、冷たい声



「もしかして、あなたも水生さんのお見舞い?
あら、照れなくてもいいじゃない」



ひふみさんです

こんな状態で、あまり会いたくない人です




そして言葉から察するに、さっきの人は佐久君だったのです
(どこで私の住所知ったのでしょうか?)




彼の声は、あまり通りません
耳をすまさないと、よく聞こえません



「…でも、留守みたいです」
「あら、病気と聞いたのに、何処に行ったのかしら」



もしかしたら、ひふみさんは分かっていたのではないかと思います

私は、じっとして、物音を立てないようにしていました
こつこつと階段をあがる音が聞こえます
扉のノブから、音がします



「折角のお見舞いだしすぐ腐る品でもないから、ここに
置いとくわね。佐久君のお見舞いの品も入ってるから」




かさかさ

ビニール袋の音




そして立ち去る音がしました














しばらく時間が経ってから、私は外に出てみました

扉のノブに、ビニール袋が掛かっていて、そこには花束と、
なにかの小さな紙袋(病院で薬を入れてくれるようなあれです)
が入っていました。








花束は二束ありました

紙袋のなかには、粉薬の薬包と、手書きのメモが入っていました



「秘伝の薬です。これを飲んで早く良くなってね(はぁと)ひふみより」



薬は、黒い、すこし漢方薬のような臭いがしました

どうしようか迷った後、飲みませんでした
怪しすぎるのです



花だけは、すべて飾っておきました













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