第32回目(2/3)





今日は、なんだかそわそわとして落ち着きません
今朝は、あんなことがありましたし……

(もっとも、いつも私は、人の中では落ち着かないのですが……)





ひふみさんの笑い声が聞こえます
屈託のない、明るい笑顔です

それに追従する周りの女の子の笑い声にも、
いつもかすかにある緊張みたいなのがありません

ひふみさんが上機嫌だからでしょう



今日は一体どうしたのでしょう……?










一時間目は、何事もなく過ぎました
落ち着かない、平穏の時間です
けれど早速、呼び出しがかかりました



「三年四組柊ひふみ、すぐ生徒指導室に来なさい」



声は、あの先生と違います
幾分、おどおどとした感じすらある声です

でも、私はひふみさんの方を思わず振り返りました

ひふみさんは、席を立ちます
けどそのまま、机の上に座りこみます



「ひふみさん、行かなくていいの?」


周りの女の子が、流石に心配してききます



「あんな不味そうなのはごめんだわ。趣味じゃないもの」



ひふみさんはそう言って、私のほうをみてくすりと笑います



くすくす……


周りの皆も、幾分不安そうに、半分訳が分からない顔で笑います




「三年四組柊ひふみ、すぐ生徒指導室に来なさい……」












次の時間の休み時間には、ひふみさんは呼ばれませんでした
代わりに、八房君が呼ばれました

彼は、ひふみさんのように無視したりはしませんでした
険しい顔で席を立つと、すたすたと、教室の外に出てゆきました

そしてそのまま、三限目の開始を知らせるチャイムが校舎に鳴り響きます







……八房君は、戻ってきません
そして、担当の教諭も来ません
そして、廊下の向こうが騒がしいのです
救急車のサイレンが聞こえます

何事が起こったのでしょうか?


教室の何人かが、教室の外に出ます



「……なんだおい……」
「……まじかよ……」



切れ切れに聞こえる声に興味をそそられた
クラスメート達が、次々と教室の外に出ます



がやがやがや…



し…んゥbr>




……残っているのは、私と、ひふみさんと、
最初から机に突っ伏して寝ている男の子だけ


でもすぐに、ひふみさんの取り巻きの
女の子が二,三人戻ってきました

彼女たちは興奮した面もちで、ひふみさんに報告します



八房君が、を殴って重傷を負わせたと



「……あらあら、大変ね。あなた達もう
すこし様子をみてきてくれないかしら」



そう言ってひふみさんは席を立つと、私の隣に腰掛けました





「これは、争いになるわね」

「え……」

「この町はね、大体が大なり小なり姻戚関係にあるのよ。
いってみれば、同じ一族なの。商店地主からやくざまで
ね。八房は、その中の有力な家系よ。そしてあの教師、
あれは県を牛耳る別の一族の一人。そうね……彼の一族
がこの町を侵略する為の尖兵みたいなものかしら。教員
は余所からやってくる者が多いから入り易かったんでしょ
うね。県教育委員会も牛耳ってるみたいだし。だから、
八房……彼、停学は間違いないわね。退学かもしれない
し、警察沙汰になるかもね。でもそうなると、周りは黙っ
ていない。だからね……争いになるわよ。暗い戦いに」



ひふみさんは、どこでそのような情報を仕入れたのでしょう…
この町に来て、私より日が浅いはずなのに

そんな思いを見透かしたように、彼女は言いました


「いろいろと教えてくれるのよ、あの子達が。その
切れ端をつなぎ合わせると、今のような話になるの」



あの子達とは、ひふみさんの取り巻きの子達でしょう。
彼女はふふと笑います




「ねえ……」



ひふみさんは、妖しい、濡れたような瞳で私をみます。



「彼、とても美味しそうだわ。私、お腹が空いちゃった」



そしてまた、くすくすと笑います







怖いのは、私も同じように感じていたことです





……とても、お腹がすいたのです

















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