第6回目(6/5)





外は、もう真っ暗です。
新月の夜ですから
押しつぶされそうな街灯の明かりの外は、真っ暗です









今日は、藤倉咲さんにつきあって遅くまで学校に居残ってました
いえ、ずっと、他愛のないことばかりおしゃべりしていただけなんですけど


でも私は、真剣な話しか(記憶にある限り)したことなくって
用件と意志だけ伝わればいいような話しかしたことなくて

だから、どうでもいいような、喋っているそのことに意義があるような
(喋っていたのはほとんど藤倉さんでしたけど)
そんな話をどこで打ち切ればいいのか分からなくて

でも藤倉さん全然話し止まなくって


だから、突然もうほとんど誰もいなくなった廊下に
普通の戦後式鉄筋校舎に不釣り合いに古めかしい大時計が鳴り響き
(窓も床も震えるのです)

私が驚いて「きゃっ」と小さく悲鳴を上げ

藤倉さんが「あら、もうこんな時間」と腕時計を見て

それで、ようやく私達は帰途につくことになったのです・・・










家が学校をはさんで反対側の私達は、校門で別れました










私は、一人、夜道を歩いています
とてもとても、恐いです。
つい長話などしてしまったのが悔やまれます






夜道で恐いのは、ヒトと物の怪です
闇は恐ろしくありません
(むしろ優しい闇です)



特に恐ろしいのはヒト・・・
襲ってくるからです!




いえ、それは杞憂ではありません
不安でもありません

ヒトの気配に気を配って
暗く人通りのないところでは
誰にも会わないよう願っていたのに・・・















誰かが走ってくる
走って、こちらにくる
暗い道で
細い路地で
街灯に照らされた顔は
青白く正気も失った悪鬼
(いえ、本当はジャージを着た体育系の大学生と思しき男)
私を捕らえようとして迫ってくる!





私は逃げた
精一杯に逃げた









夜、私をみると必ず襲い掛かってくるヒト達がいる
捕まったら、とても恐いから、私は逃げた・・・











細い路地裏を抜け、畦道を走り
でも男の方が早い!
わずかな丘に登る上りの石畳の坂道で
私は追いつかれそうになる










大きな手が私の体に伸びてきて・・!








その時、冷たい震えが走った
今いる所がどこか、私には分かった
昼でも、絶対に避けていたところ。
社の境内









の世に、神はいます
あるいは、大霊といったほうが近いのでしょうか?






封じられた、神
常世の神ならぬ、神
巨大な、古人の顔として現れました




「喰らおうか、喰らおうか
お前喰ろうて千年生きよか
もののけ喰ろうて千年生きよか」

無慈悲な神は、耳まで裂けた口でそう歌います







したきりと、古く美しい言葉だけに縛められる存在
(今はもう忘れられた知識)
彼を動かすのは古い感情です!
(そこには柔らかい心などありません!)






私は後ろも見ずに一心に逃げます
男は、振り返って神の姿を見ました・・・





遠く、本当はすぐ近くで、ぐしゃりと潰れる音がして
生暖かいものが私の首筋に撥ね

私はもう何も何も考えずに走り、

そのままずっと走って、自分の部屋までたどり着きました・・・
















あとから考えると、この暗いなか、よく知らない町、 迷わなかったのは奇跡的です・・・













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