第7回目(6/17)






朝が、来ました

鳥の鳴き声、白い太陽に空は青く
それは<平穏>や<普通の>と呼ばれるに相応しい朝でした

(私は朝御飯を食べないので、普通の子より朝は遅いのです)






血の附いた冬服でなく、おろしたての夏用制服を着て外に出れば

あくまでも自然な光に明るく照らされた街には
夜の不穏さの跡や欠片もありません

(商店と小ビルの連なる並びは、私の通学路です)

あくまでも現実の朗らかとも言えるかもしれない朝でした


















教室
いつもの通りのざわめき
耳をすませると、今日の話題が聞こえます
それは、死体のことでした


「あそこに神社あっただろ」
「首がちぎられて・・・」
「ねえ、新聞見た?!」
「うちのお兄ちゃん警察官でしょ、それでね・・・」



誰の話題も、死体についてのものばかり


テレビの向こうにしかないはずの変死事件が
自分達の領域(と、思い込んでいる)に起こったのですから




他の何人かの男の子や女の子と話していた咲さんも
私を認めるや否や、挨拶抜きで死体のことを話し始めました

「ねえねえ、新聞読んだ?」

の勢い込んだ問いに

「いえ・・・」

と答えると、わっと、周りの人達が(普段全然話さないのに)話しかけてきます





読んだことや、聞いたこと、本当と噂とその尾鰭と、全部





「殺人だよ、殺人!」
「知ってる」
「首が切り取られてたんだって」
「最近多いよね」





私は、控えめに、驚いたふりをして、でも会話に肯いているだけでした
何もはなさず、口をつぐんでました
そして、それが不自然でないくらい、みんな話したがっていました






でも、クラス全体の声量はいつもと変わりません
結局は他人事だからでしょうか・・・




















昼休みも、やっぱり話題は死体関連のことが多かったです
でも、どちらかというと、食事のほうにもだいぶ比重がかかってました










私は、いつも、前の学校、そしてその前のところでも、 昼休みはいつも一人でぼおっとしていました

私は、普通の食事は取りませんから・・・










でも、ここでは一人になりきれません
咲さんが「お弁当食べよ」といって
私が佇んでいる、中庭フェンス裏の芝生までくるからです





「ううん、私、お昼は食べないの・・」
「え、今日も!」
「うん、食欲なくて・・」
「ええ〜、お弁当忘れたとかじゃなくて?私の半分あげようか?」
「ううん、いい。本当に、いいの。」
「でも、体に悪いよ、なんだかいつも顔色わるそうだし、保健室で見てもらわない?」
「いいから、食べて、昼休み、終わっちゃうよ・・・」
「ええっ、でも」
「いいから・・・」






仕方なしに咲さんは彼女のお弁当を食べ始めます
私は、特に見るものもないので、彼女の食べるのを見ています
ぼんやりと・・・










・・・・・










不意に咲さんが箸を止めました


私の方を見ます
私と目が合います



「なんだか、食べづらいよ」
「え、あの、ごめん・・・私、どこか行ってようか?」
「一人でこんなとこで、もっと食べづらい」
「・・・ごめんなさい」



「みずおさんも食べてよ」





そういって、咲さんは、弁当箱を私に差し出します
弁当箱のなかには、まだたくさんのおかずが残っています
唐揚げ、卵焼き、かまぼこ、レンコンの煮物、山菜・・・





「どれがい〜い?」





咲さんの表情は、にこやかですけど、有無を言わせないようです
そして私は、こういうのを断りきれない、そういう性格なのです






だから、仕方なく、いかにも練り物の赤いソーセージを指差しました




「これだね。はい、あーん」





咲さんはそのソーセージを箸でつかむと
嬉しそうに私の口の中に置きました








私は、胃が受け付けないのを知りながら
無理に微笑んで

「ありがとう」

と言って、咲さんが御飯を食べている間ずっと、
そのソーセージを食べていました・・・








そして、後で、見ていないところで吐いたのです・・・










(でも、嫌だったわけではないのです)
(むしろ、嬉しいような気持ちでした)
(どうして私のような子と付き合おうとするのか分かりませんが)
(なんだか嬉しい気がしました)







その桜色の指を食べさせてくれたら
もっと良かったんですけど・・・











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