1998年11月29日 後楽園ホール  大日本プロレス


 ついに大日本も実券500枚を切った。ガラガラの館内。2日のLLPWよ りもはるかに少ない入りだ。ここまで入っていない後楽園は俺は今まで見たこ とがない。
 今まで大日本、バトラーツ、みちのくの3団体は同格というイメージがあっ た。FMWに次ぐインディー中堅団体という感じ。しかし、ここに来て、各団 体の差がはっきり出てきたようだ。バトラーツはこのクラスでは圧倒的に飛び 抜けて、FMWのすぐ後ろくらいまで迫り、みちのくは低迷、大日本はもはや 崩壊の危機にある。誰とは言えないが、参加選手や業界関係者の口から「潰れ る」という断定的な言葉が出るのはよっぽどのことだ。
 小鹿社長がリングから挨拶。名前も出したくないと言いながら、彼らの離脱 について憤りを述べる。登坂レフェリーからゲームソフト「鉄拳3」がプレゼ ントされたのはシャレ。それほど暗い雰囲気もなく、試合が始まった。


第1試合 山川竜司 VS 葛西純

 葛西をラリアットで簡単に葬った後、登坂レフェリーともめる山川。登坂レ フェリーがマイクで叫ぶ。
「なあ、みんな。山川は大日本にいればいいよな。あいつ、大日本を辞めたい とか言うんだよ。頭でっかちになってんだ」
 ええー!、と声を上げる大日本フリーク。おお、のっけからステキな展 開じゃないか。


第2試合 中野知陽呂、マルセラ VS 市来貴代子、ラチョラ

 復活した市来。見るのは久しぶりだ。リングに上がる前の祈りも決して忘れ ない。技をうまく決められないと、相手のマルセラをはたいて八つ当たりする あたり、生来の身勝手さが戻っていて、本調子も近い。突然キレてエグい蹴り をマルセラの顔に叩き込んだり、ラチョラのアピールにじれて「そんなことい いから早くやれ」と怒鳴ってみたり、大怪我を経ても市来らしさは少しも損な われてはいない。果ては難しい技にトライしては危険な角度で落ちて客を冷や 冷やさせるあたり、ケガの教訓など知ったこっちゃない無鉄砲さで市来の魅力 全快ってとこか。へこたれないよねえ。いいぞ。
 試合は当然かみ合わなかった。これはいつものことなので特にどうこう言う ことではない。ただ、ルチャで育った選手が日本スタイルの中に入るのは本当 に難しい。おおらかに楽しみに来ているメヒコの観衆(行ったことないから知 らないけどさ)よりも、日本のマニアはずっと意地悪だ。ちょっとしたもたつ きやタイミングの悪さで即客が引いてしまうから。まして日本側の市来、中野 の技術もいまひとつとあっては、ルチャ・ドーラの2人も何をやったらいいか 途方に暮れるだろう。それとも、あまり考えちゃないか?
 ダブルインパクトでマルセラがラチョラをフォール。マルセラ、ややグラマ ーすぎるが、なかなかかわいいね。俺が日本語で写真撮らせてって頼んだら、 見るからに弱そうなファイティングポーズ決めてくれたのだ。それから市来。 皮肉も書いたけど、帰ってきてくれてやっぱり嬉しいな。より大きな舞台を得 たわけだし。FMW女子と言ったら、中山香里。IWA女子と言ったら、元川 恵美。大日本女子と言ったら…となれるようにケガしないでがんばってもらい たいもんだ。

機嫌悪そうですルチャドーラこの邪悪な表情こそ市来


第3試合 大黒坊弁慶、茂木正淑 VS 石川孝志、松崎駿馬

 ストリートファイトスタイルで登場した石川がすもう卍固めからスモーピオ ン+フィーバーも決めて奮戦したが、弁慶がボディープレスで松崎を圧殺。
「後楽園の皆さん、お久しぶりです。俺は大日本プロレス、グレート小鹿に協 力していきます。よろしくお願いします!」
 試合の方はあまりインパクトなし。


第4試合
流行中のキーロックリフト
ブラック・シャドウファンタスティック
星川尚浩 VS 藤田穣
薬師寺正人越後雪之丞

 ブラック・シャドウとファンタスティックの絡みはすばらしいの一言。コミ カルながらもキレのあるシャープなルチャなのだ。特にファンタスティックの ナチュラルなバネを生かした立体的ルチャ、完全に薬師寺を食ってしまったと いう感じ。彼が日本人なら大スターになっていたであろう素材なのである。終 わってみれば、ファンタスティックとブラック、この2人のための試合だった ような。
 ファンタスティクがキーロックを決めれば、ブラックが肩の上まで持ち上げ てみせる。これは流行か? しかし、ボブさんのように相手をそっとコーナー 上に置くことはせず、そのままパワーボムのように力任せに払い落としてくれ た。その容赦なさが何とも美しい。越後が薬師寺にジャーマンを決めると、間 違えて味方の技をカットしてしまうブラック。本人は悩んでいたが、ま、愛嬌 ね。最後は星川が背後から押さえた越後に薬師寺がミサイルキックをぶち込み、 そのまま星川はジャーマン。3カウントが入る。越後のやられっぷり、なかな か味があり。


相撲対抗戦

 <先鋒戦>ジェイソン・ザ・テリブル−ミスター源之助
 <次鋒戦>川畑輝鎮−ブラック・シャドウ
 <中堅戦>石川孝志−本間朋晃
 <副将戦>高木 功−大黒坊弁慶
 <大将戦>松永光弘−シャドウWX

 これが面白かった! いんちき大爆発!
 最初はジェイソンと源之助。アイスホッケーマスクをつけた力士というのも 相当なものながら、見合っている最中に相手の顔に塩を投げつける源之助。す かさず行司=小鹿に頭をはたかれる。待ったなし! ロープまで押し込まれる 源之助。寄り切りか? ここで小鹿の声。「ブレーク!」観客は即死。リング 上の源之助まで笑いが止まらない。
 これで源之助は気が抜けたか、(結果などもはやどうでもいいような気もす るが)ジェイソンがビンタからのはたき込みで勝ち。
 輝鎮が体型だけはすもうなブラックを倒した後、石川が黄金の右アームボン バーで本間に(すもうでの)格の違いを見せ、高木と弁慶の嵐対決は本物の迫 力を見せる。突っ張りからはたき込みで2代目が勝ち、本物の嵐はこちらだと いうことを証明して見せた。最後は松永がWXを浴びせ倒し、勝った瞬間に倒 れたままのWXに蹴りを叩き込む。これがすもうか。生まれて初めて生で見た のだが、楽しいものなんだねえ。

すもう!すもう!


 マルセラの写真を撮った後は相撲甚句がうるさすぎるので、ロビーをうろう ろする。  登坂レフェリーがリングでタッグベルトの返上を発表。
「さっき、山川と話し合ったのですが、本人の決意が固く…」
 突然、ウィンガー、弁慶、源之助らが現れ、登坂レフェリーに絡む。すると、 そこでライトが暗転。場内に流れたのは山川竜司のテーマ。今大流行中のテー マ曲付き乱入である。南側通路に姿を現した山川、マイクを持ってアピール。
「誰が大日本やめるって言った? 俺はやめたんじゃねえ。生まれ変わったん だよ!」
 観客、大喜び。山川はリングに飛び込んでシャドウ軍を蹴散らすと、締めの マイクを握る。
「俺は大日本が好きだ! デスマッチが好きだ!」

ポーズを取るマルセラテーマ曲付きが乱入の基本


セミファイナル 河原修、GK神風 VS 高木功、川畑輝鎮

 いきなり回転の鮮やかなケブラーダで飛ぶGK神風。しかし、何よりも観客 の目を奪ったのは高木の暴力的な強さ。ロープに詰めた川畑に重いチョップを 連発すると、川畑はただやられるだけである。高木とほぼ同じ大きさの河原に 迫力なんてものが最後まで感じ取れなかったことを思うに、サイズだけの問題 じゃない。高木、日本のトップレスラーになれるだけのものがあったのに。
 でも、その後は全然盛り上がらない試合。声援もまったく飛ぶことがない。 だらだらしたプロレス、俺は必ずしも嫌いではないよ。自分の思い入れのない 選手がやっている分にはのんびり見れて良い。しかし、これが団体存続の瀬戸 際で見せる試合なのか。所詮フリー・外様だから、どうでもいいのかな。
 最後はGK神風が川畑をカミカゼ・トルネードでピン。


メインイベント
松永光弘シャドウWX
ジェイソン・ザ・テリブル VS シャドウ・ウィンガー
本間朋晃ミスター源之助

松永はいまひとつ目立たなかった有刺鉄線バット付き合体殺法

 試合が始まった途端、すもうの復讐とばかり、ジェイソンが源之助の顔に塩 を投げつける。最初は低調だった会場の空気。いったん、こうなってしまった ものを盛り上げるのは並大抵ではない。まして、スウィングした技の攻防がで きるような組み合わせもないので、この試合はこのままだらだらと終わるもの だと思っていたのだが。
 1分ごとに2名の選手が登場し、通常の6人タッグストリートファイトにな る。次々に飛び出す、一線をとうに越してしまった凄惨なシーンの数々。観客 のどよめきが大きくなってゆく。南側通路、客のすぐ間近で蛍光灯で殴り合う WXと本間。ガラスが客に降りかかり、蛍光灯の爆発音が会場に響く。その間、 源之助はリングサイドでジェイソンの額に有刺鉄線バットを押し当ててゆく。 ウィンガーが南側最後部の階段の上から、プランチャで飛んだ。
 本間はWXにコーナーから飛んでの蛍光灯アタック。スワンダイブ式も。し かし、蛍光灯の破片を逆立てて飛んだ本間を待っていたのはWXの蛍光灯フルスウ ィング。ガラスの破片の中へ撃墜される。北側ステージでの攻防。WX、ドー ナツ型の蛍光灯で本間の首を絞めるも、蛍光灯が粉々に割れる。何かを確かめ 合うかのように互いに蛍光灯で殴り合う2人。果てはWXが蛍光灯ボードへ本 間をパワーボム葬。本間の背中一面が血で赤く染まる。W★ING名場面の再 現・松永の有刺鉄線バットスリーパーやホール仕切り板へのDDTなどが飛び 出した後、最後は松永の有刺鉄線バットを絡めたサソリ固めで源之助がタップ。 松永組が勝利。

本間の背中を見よ!これがフィニッシュ

 終わってみれば、会場が大きな大日本コールに包まれていた。大日本に思い 入れはないが、これだけのものを見せられたら、拍手するしかない。世紀末を たっぷり詰め込んだネガのプロレス。デスマッチを見続けてきた俺でさえ、こ れで良いのかという疑問が沸いてくる。しかしながら、この試合にそうした理 性すらをも越えた感動があったというのもまた事実なのだ。
 松永のマイク。「W★INGのデスマッチはこんなもんじゃないぞ」ウソつ け。W★INGだってこんなメチャクチャやったことは一度だってないぞ。W ★INGのデスマッチは半ば伝説化しているが、ビデオなどで見返すとけっこ うショボいものも多い。ま、それは置いとして、松永とジェイソンの呼びかけ でウィンガーと茂木が合体。W★ING同盟の復活宣言である。困った時のW ★ING頼みだろうか。しかし、より感動的だったのが、WXと本間の合体だ った。WXのマイク。「W★INGなんて何時の話だよ。俺たちが大日本を守 る」大きな拍手が起こる。大日本コールがW★INGコールを飲み込んでいっ た。本間も血塗れの背中を誇示しながら、叫ぶ。「お前らにはこんなことでき るか」デスマッチへのプライドを刺激するこの発言にキレた松永が本間 に襲いかかる。
 WXから共闘を呼びかけられた山川は「お前らとも戦う」と独自路線を表明。 WXが山川を場外へ放り出す。いよいよピンチの団体運営の中、見せた一筋の 光。小さいながらもそのまばゆさに目がくらみそうだった。

W★ING再結成大日本を守る!


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