DDT 98年12月16日 駒沢競技場


 相変わらず親切な団体だ。駅から会場までの道程にずっと「DDTプロレス 会場→」が張ってある。駒沢ってのは俺にとって冬になるとやってくる場所な んだよなあ。去年も一昨年も12月に駒沢へFMWを見に来た。初めて来たの は90年11月のFMW1周年記念興行で、あの時はリー・ガク・スーも出て いたわけである。
 割引券を家に忘れてしまったので、3500円で2F自由席を買う。客席は まばら。400人くらいか? その多くが見知った顔である。FMWでもない のに、とりわけ目立つ位置に「時代遅れのロックンロール野郎」山崎隊がいる。 アリーナではリーの永遠のライ バル・サンボ浅子がうろうろしていて、本部席にいるのは、この前USOでチ ケットを売っていた美しい女性。めちゃめちゃ好みだと思っていたんだけど。 え、あれがナオミ・スーザンだって? そりゃ素晴らしい。ナガサキと木村が リングでごちゃごちゃした後、試合開始である。


第1試合 佐野直 VS 高井憲吾
 ぽつんと1人の女子高生がなんとも
 

第2試合 西野勇喜、菊澤光信 VS 勇作、大作

 最初の2試合については正直言って、ちょっときついかな。佐野直なんて女 子レフェリーのグレースより小さいんだから。横の厚みもない。動きがいいわ けでもない。さらに悪いことに、貧乏くさい! DDTに詳しいともよしさん が見どころを教えてくれるけど、なんかため息出ちゃいそうである。日本初の 双子レスラーという勇作、大作はちょっと大きめか。基本的にレスラーは18 0pくらいタッパがないと感情移入しにくい。自分が大きいためかもしれない けど。
 会場の照明は天井の蛍光灯だけ。ただでさえ集中しにくい状況で、この辺の 選手では、ついついビール&唐揚げに傾いてしまう。横には真剣に見入ってい るヒロケンさん。この人は本当にプロレスという競技(?)自体が好きだ。プ ロレスと名の付くものなら、何でも追いかける。特定の選手にこだわる以上に 試合内容を見る。素晴らしい。一方、俺はプロレスよりプロレスラーが好き。 好きなレスラーだけに反応して、動いているのを見てにこにこ笑うミーハーフ ァンなんだよ。でも、こういう寒い会場の閑散とした空気が好きだ。 おいしくビールを飲むためにも選手達には動いていてもらわねば。がんばれ〜。


リー・ガク・スー&いんちきおやじのショー

 少し太ったかな。かつての研ぎ澄まされた雰囲気があまり伝わってこない。 あれから7年だものな。俺も君も変わったってことか。一方、いんちきおやじ(川本さ ん)。こいつは変わってない。あの頃の衝撃的発言が蘇ってくる。「俺は今で もリーより強いよ」「リーのおばあさんが亡くなりました!」
 リーの言葉をいんちきおやじが通訳。「今日はあまり入ってないですね。今 度はもっと入れます」メインイベンターの自覚がある! リーが怪我したとか で、残念ながら期待の石割りはなし。ヌンチャクを披露。さすがに見事である。 これだけでもうかなり満足した。

リー&いんちきおやじ演舞少し老けたか


第3試合 たにぐちゆういち、鴨居長太郎 VS ラブ・マッシーンなっ!、E・吉田

 「ラブ・マッシーンっな!」は今日唯一の外国人選手のようだ。背中のアメ リカ国旗、マスクから覗く金髪、そして見るからにアメリカンな雰囲気と、正 体は間違いなくアメリカ人だろう。最後の「っな!」は英語でどう表記するの か、ちょっとわからない。
 剰りにもステキなナオミさんが「ラブ・マッシーンっな!」を紹介すると、 「ラブ・マッシーンっな!」はマイクを取り上げて、自分の名前の発音を訂正。 日本人にとって英語の発音は本当に難しい。かなり英語ができると思われるナ オミさんですらこうなんだから、自分なんかは恥ずかしくて外人の前では喋れ ないだろう。ここまで完璧に英語を話す「ラブ・マッシーンっな!」。間違い なく生粋のアメリカ人である。
 で、試合だが、よく覚えていない。たにぐちがやたらでかかったことと、鴨 居がでっかいグローブ振り回していたこと。鴨居はパンタロンを脱がされ、ふ んどし一丁に。グレースは恥ずかしがって、レフェリングを放棄してしまう。 最後はたにぐちがなんだかの技で「ラブ・マッシーンっな!」をピン。

ラブマシーンっな!試合と無関係に弁当を売るオヤジパンタロンを脱がすとケツに「ラブ」


第4試合 ファントム船越、内藤恒仁 VS 黒影、タノムサク鳥羽

 どうでもいいや。西村修とカブり気味の船越が、ケンドー・カシンを小さく したような黒影をドラゴンスープレックスでフォール。休憩時間になる。いつ の間にかターザン後藤が我々の後方の席に腰かけていた。


ダブルメインイベント第1試合 ドラゴンマスター、リー・ガク・スー VS 木村浩一郎、佐々木貴

 はっきり言って、今日はリーがいなければ見に来なかった。それほどリーは 我々アーリーFMWファンの心を動かす存在である。あの時のセリフが蘇って くるではないか。「サンダーファイヤー4発ですよ! これからリーのところ に行ってきます!」「コリアNo.1!」
 なのに、大仁田厚はアーリーFMWの解釈を間違っていると断言しておこう。 彼はアーリーFMWに関して何かというと、パンディータや小人プロレスを持 ち出すが、そんなのはアーリーFMWのつまらない部分。アーリーFMWで我 々の心をもっとも捕らえたのは世界中から集められた未知の格闘技の強豪たち に他ならないであろう(笑)。アーリーFMWとはリー・ガク・スー&キム・ ヒュン・ハンであり、ソウル・キング&ゴールド・ウィリアムスであり、ボツ ワナ・ビーストのアフリカンデスマッチであり、ここに一緒にして並べるのは 失礼なグレゴリー・ベリチェフである。その中でも最高の人気を集めていた 「韓国のブルース・リー」リー・ガク・スー。そして、いんちきおやじ。それ が7年の歳月を経、満を持して復活するのである。パートナーは(アーリーF MWファンならこの名称)泣く子も黙るドラゴンマスター。かつてAWAライ トヘビー級選手権で、木村浩一郎の挑戦をKOで退けたリーがドラゴンとタッ グ結成となれば、DDTの命運など風前の灯火である(笑)。
 さて、試合。ものすごく強い選手というイメージのあった木村だが、ナガサ キを相手にすると、さすがに伝わってこない。木村が足を取りに行っても、ナ ガサキは余裕を持ってそれを受け止める。で、肝心のリーは木村相手ではちょ っと危なっかしい感じ。蹴りをかいくぐって捕まえられると、あっという間に 決められそうで、見ていてヒヤヒヤする。なりふりかまわぬ逃げるようなタッ チに場内失笑。逆に攻めていても、すぐにナガサキにタッチ。ま、長い間プロ レスやってなかったんだから、この辺のわかってなさは仕方ないだろう。
 場外乱闘では、ナガサキが暴力的にイスを振り回す横で、もうめちゃくちゃ に木村にやられちゃうリー。小さい体を面白いように客席に投げ込まれる。我 々の「リー」コールは彼に届いただろうか? しかし、佐々木相手にラッシュ。 蹴りは相変わらず鮮やかだが、かつて会場を沸かせていたチキ(踵落とし)の 出なかったことが不満。木村は安定した強さでナガサキにパワーボムを決めた が、最後は木村がリーを場外で痛めつけている間に、ナガサキのパワーボム、 パイルドライバーが佐々木に決まって3カウントフォール。
 面白い試合だった。いまいち食い足りない感もあるが、リーが入っているお 祭りカードだと思えばこんなもんだろう。やはり、リーはコリアNo.1。タ ーザン後藤はこの試合が終わるとそそくさ帰っていった。たぶん、後藤もリー を見に来たのに違いないのである。

リー、危うし蹴りで向かっていく木村、ナガサキにパワーボム


メインイベント第2試合 高木三四郎、三上恭平 VS 折原昌夫、小野武志

 高木三四郎関係と思われる女子高生軍団が色めき立つ。かわいい子が多いが、 その頭の悪そうな様子、見ているだけで腹たつ。何よりいけないのは、くっつ いてきた男ども。この世の中にいてほしくない人種。ただでさえトンパチ寄り の気持が、高木が普段こういうのに取り巻かれているのかと思うと、ますます トンパチを応援しようと思う。殺っちまいなさい!
 そう、我々の集団にはトカゲ屋ファンが多い。小野ちんはあまり評価高くな いが。ともに小さく細い2人だけど、やはり折原の方が小野よりもプロとして のキテレツ1歩も2歩も入っているためか。小野は素人みたいとか言われるこ とがあるけど、折原は絶対素人ではない。こんな素人いるわけがない。
 我々の声援を背に受けて、最初から相手に何もやらせないファイトに出たト ンパチ。金的が出ると大拍手である。トンパチの潰すファイトがプロレスとし て良いか悪いかはともかくとして、やられてばかりの高木と三上、かなりじれ ったい。女子高生軍団も高木が攻めるやいなや湧こうと待っているのに、本当 に高木の攻め手が回ってこないのだ。もちろんトンパチが回さないってことな んだけどさ。DDT側が反撃に出れば、即急所打ち。中盤は三上が捕まりっぱ なしだった。
 場外で2人がかりで三上を袋叩き。救出に向かった高木も、逆にやられてし まう。高木と折原のイスチャンバラは高木が勝った様子。リングに戻っては、 小野の串刺しニーアタックからスワンダイブ延髄ニーが三上に。替わった高木 にもタコ絡み。折原はみちドラで高木を叩き付け、トンパチ2人がかりのパワ ーボム。さらに2人でクローズラインから、小野がパワーボムを決める。小野 の珍しいスパイダージャーマンが高木に炸裂し、そこへ折原がムーンサルトで 飛んだ。
 もはやトンパチの楽勝と思われた試合だったが、高木は折原をラ・マヒスト ラルで揺さぶり、ブレーンバスター。三上がパワーボム。高木が全然説得力の ないSTOを決めると、唐突に3カウント入ってしまった。え?って感じ。 「なんだ、それは!」怒号を上げる周囲のトカゲ屋ファン。
 いかにもやる気なさそうに負けた折原も悪い。けれど、「折原が高木なんか に負けるはずがない」という我々の先入観を覆すような気迫を見せられなかっ た高木はもっと悪い。大仁田ですら健介にもう少しマシな勝ち方するんじゃな いだろうか(勝ったらの話だけど)。最後だけ譲ってもらったようなこの結末 が興行自体の印象をさらに下げたようだ。
「こんなの水で薄めたミルクだからね。おいしいと思っちゃダメだよ」
 誰か(誰?)の結論に頷き、駒沢公園を帰る。

トンパチの一方的試合高木の技はかたちが悪いスパイダージャーマン


 最近、観戦記を書くたびに腐しているようで心苦しいのだが。この前のUS Oをあれだけ貶しておいて、これを褒めるわけにはいかないのだ。USOは低 調だったものの、疑いもなくプロレスとしての重み、説得力を持っていたよう に思う。こっちはなんだかんだ言って、要するに、ドインディーじゃねえか。 体が小さい、動きにキレがない。たぶんこういうことを気にしながら見ている 客なんて俺以外にはほとんどいなかったろう。メジャーと比べること自体ヤボ か。身内的観客の暖かい空間ならば、それはそれでいい。でも、今日の出来が 平均点なら、上を狙える団体だとは、俺には思えない。イメージが先行して、 バトラーツのようなものを空想していた俺の勘違い。
 常連のファンの方から見れば、見当違いな意見かもしれないが、一見さんっ てのはこんなもん。そして、そうした一見さんを取り込めるかどうかがその団 体がメジャー化していくかどうかの分かれ道なんでは。今回は個人的に惹かれ るものが感じられませんでした。でも、またいつか見に来ます。っていうか、 またスーザン・ナオミが見たい。

おまけ スーザン・ナオミの世界


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