レビュー

駒場の七つの迷宮


小森健太郎さんの長編ミステリーです。このミステリーは非常に読みやすいと感じました。その点でもかなりのお勧めです。東京大学を舞台にしたミステリーですが、門外漢の私にも非常に面白く読むことが出来ました。新興宗教の話が非常に興味深かったのですが、一つ間違いがあります。彼らの勧誘はここに書いている以上にかなり強引だと言うことです。一つがそうだから全部がそうだということは大変危険なのですが、昨今の情勢(ニュース)をみれば明らかなことですね。お勧め度★★★☆

『裏窓』殺人事件


今邑彩さんの長編ミステリーです。ちなみにサブタイトルがtの密室となっていて、最後まで読むとサブタイトルの意味がわかります。前半が短調であまり面白くないのですが、後半からやっと面白くなってきます。タイトルどおり、ヒッチコックの『裏窓』を意識した作品となっていますが、読了してみるとなるほどよく出来ているなって感じます。しかし、他の今邑作品同様のパターン(結末への向かい方)はどうにかしてほしいですね。いかに技巧的でも、何回も同じパターンがつづけば、私のような読者でも想像がつくというものです。お勧め度★★★


オリエント急行殺人旅行


斎藤栄氏の長編ミステリーです。88年にオリエント急行が日本に来たときに書かれたもので、ミステリーというよりTVドラマ用に書かれたもののような気がします。ということでトリックも、ストーリもたいしたものではありません。もちろん、かの有名なクリスティの『オリエント急行殺人事件』のネタバレを作中でしていますので、未読の方はご注意ください。お勧め度★☆


QED【六歌仙の暗号】


高田崇史氏の長編ミステリーです。QEDシリーズの2作目です。私の場合は1作目,3作目と読んでからこの本を読んだのですが、シリーズの流れに重点を置いているわけではないので違和感はほとんど感じませんでした。この作品はある意味、非常に面白いのですが、やはり事件と歴史の謎の融合に疑問が残ります。第1作でも感じたことなのですが、この第2作も中途半端な感じがします。第3作はこの点が良くなっています。いっそのこと、とってつけたような事件を廃し、鯨さんのように、歴史ミステリーとした方がすっきりすると思うのですがどうでしょうか?前半部の展開はかなり面白いのですが、後半が退屈になるのはどうにかならないのでしょうか。お勧め度★★★


木製の王子


麻耶氏の長編ミステリーです。設定的には一連の流れのシリーズ作品ですので、より良く楽しむためには、デビュー作『闇ある翼』より読み始めることをお勧め致します。これまでの麻耶作品が、いわゆるメタミステリーの典型であったことからすれば、今回の作品は極めて論理的に書いてあるのが特筆すべきところです。複雑な時系列が登場するので、パズルと考えても第一級の難しさと言えるかもしれません。しかし、この複雑な時系列にいささか辟易したのも事実で、実際にこれを読み解こうという人がいるのかどうかは疑問です。また、ストーリ全体が暗い印象なのでそれを覚悟して読んでください。お勧め度★★★


奇跡島の不思議


二階堂黎人氏の長編本格推理小説。一種の孤島ものでパズル性が強い作品である。蘭子シリーズではなく、後にシリーズ化される人物が探偵役となるのだが、それがどうも別人と思えてならない(笑)戦前に、ある孤島に建てられた搭のなかで女性が謎の死を遂げて以来、閉鎖された島に美術大学の面々とそのOBが渡ることになる。到着したそうそう、一人が事故で死ぬことになり、メンバーの中に亀裂が生じ始める。クリスティの『そして誰もいなくなった』のように人が死ぬごとに壊されるろう人形・・・こういう作品(パズルもの)はどうしてもじっくり時間をかけて読むのだが、なかなか難しい。自分の推理は50パーセント正解だったことにしよう。(笑)クローズド・サークルが好きな方にはお勧めである。お勧め度★★★★☆


和時計の館の殺人

芦辺拓氏の長編本格推理小説。芦部氏の作品を読むのは、これで2作目であるのだが、どちらかというと作者自身も認めているように『探偵小説』的な雰囲気をもっている。同じ方向の作品を出している二階堂氏の蘭子シリーズが昭和40年当たりの時代設定を使っているのに対し、こちらは現代という時代設定である。この設定(現代)は乱歩的、横溝的な雰囲気を出すには、結構難しい設定であると思うのだが、それらしい雰囲気は十分に感じられる。さて、本作であるが、自分にとっては少々つらいものになってしまった。前半部に書かれている時計やからくりの薀蓄にうんざりしてしまったからである。からくりをミステリーに取り入れたものはこの薀蓄がどのミステリーも長いのである。(苦笑)また、個人的には、ちょっと物足りない(横溝にみられるおどろおどろしさ)ような気がしたのであるが、あっさりめであるのも案外、いいかもしれない。 お勧め度★★★


点と線

松本清張氏の長編推理小説です。〜列車時刻表を駆使し、リアリスティックな状況設定により推理小説界にいわゆる“社会派”的な新風をもたらし、空前の推理小説ブームを呼んだ秀作〜(背表紙より)今でいう『アリバイ崩しもの』であるが、出版当時はかなり新しいものであったようである。今読んでも十分面白く、トリックもかなり斬新である。また、昨今のミステリーにありがちな無駄な薀蓄や余分なエピソードがなく、すっきり読めるのもうれしいものである。また、文庫で400円という価格もうれしいものである。お勧め度★★★☆


真っ黒な夜明け

第15回メフィスト賞を授賞した氷川透氏の本格推理小説である。途中で全てのデータは提示されたという例の読者への挑戦状がついているところなんかは、この手のロジック重視ものが好きな方にはたまらないものであろう。ただ、舞台が館ものに比べ、“地下鉄の駅”という地味な場所になってしまっているのが唯一のマイナスポイントかもしれない。ロジック(論理展開)が、永遠と地下鉄構内の話であるのは、少々うんざりするのが正直なところである。派手さはないが、実に堅実に作られた技巧さを感じる作品なので、ある意味、この作品が処女作であるのが不思議である。そんなところから、決して一発で終わる作家にはならないだろうし、また、次の作品が待ち遠しい作家の1人であるのも確かである。 お勧め度★★★


そして誰かいなくなった

夏樹静子女史の画期的本格推理長編(背表紙より)。題名からもわかるように1939年に発表されたアガサ・クリスティの『そして誰もいなくなった』の本歌取りともいえる作品で、設定は酷似している。その状況下で殺人が起き、最後に謎が解明されるのだが、残念ながらオリジナルを凌駕するどころかトリック自体にも疑問が残るものとなってしまっている。オリジナルを読んだ後に読み比べてみるのが面白いと思う。その結果、どちらに軍配を挙げるかは読んだ人にお任せしたい。お勧め度★★