レビュー5





ロートレック荘事件
筒井康隆氏の長編ミステリーです。筒井氏といえば断筆宣言をした作家さんとして有名ですが、物議をかもした差別問題はさておき、自分の主張は少々のことでは曲げないという姿勢は好感が持てます。いわゆるメタミステリーは今ではすっかり認知されていますが、この作品が出た頃はまだまだメタミスは少ないようで、当時この作品がかなりの話題になったのを記憶しています。そんな記憶があり、良く注意して読まなければならないということを事前に知っていたのですが、すっかり作者の術中にはまってしまいました。個人的にはフェアな作品と思いますが、まぁそれは読んだ方の個人の判断にゆだねることとしましょう。お勧め度★★★




puzzle
恩田陸さんの中編ミステリーで祥伝社の企画ものです。無人島で三人の男が奇妙な形で死亡したのをおなじみの春が推理していくのですが・・・読了した感じは少し違和感がありました。恩田さんの作品は論理的なパズルが売りで実際、この中編のタイトルもそうなのですが、この作品はちょっと論理が弱い気がします。年号に関する薀蓄などは一見の価値ありです(笑)お勧め度★★☆




生存者、一名
歌野晶午氏の中編ミステリーで祥伝社の企画ものです。無人島に難を逃れたテロリスト6人が徐々に何者かによって殺されていく、クローズド・サークルものです。そして、タイトルどおりになるのですが、結構面白いです。長編作品のようにじっくり推理するものではないので、その点は注意してください。中編っていうことでショーとショートにちかい感じがするかもしれません。400円という価格でこの作品はお得だと思います。お勧め度★★★☆




刑事コロンボ『殺人依頼』
生誕30周年を記念した長編オリジナル作で、この作品は原作のW・リンク/R・レビンソンのメモを元に、日本人の作家小鷹信光氏が手がけたものです。今回のコロンボの対決相手は、元全米アマチュアゴルフチャンピオン。あいかわらず粘っこいコロンボが登場します。原作の設定に極めて忠実なものですが、面白さは若干落ちるような気がします。よっぽどのファンで無い限りはハードカバーで手に入れるまでもないかもしれません。お勧め度★★☆




朱色の研究
有栖川有栖氏の長編ミステリーです。この作品は作家アリスシリーズの一作で、ハードカヴァで登場した際には表裏が朱色一色で一際めだつ装丁でした。また今回文庫化される際には、裏まで朱色とはいきませんでしたが、表はハードカヴァと同様に朱色となっています。肝心のストーリですが、心理的な描写が多いのは、個人的にあまり好きではない部類なので、読むのにも多大な労力と時間をかけることになってしまいました。前半に提示される謎は、どっかのクイズの本にもでてそうなもので、また伏線も弱いために後半にかけて展開されるだろう筋がよめてしまいます。そんなために、ミステリー慣れしている人には物足りないかもしれません。全体的に暗い雰囲気なのでその覚悟で読む必要もあります。お勧め度★★




魔剣天翔
森博嗣氏の長編ミステリーです。相変わらずのハイペースで出版されているので、今回の作品でVシリーズ5作目となります。今回はアクロバット飛行機の中で起きた殺人事件がメインとなっているのですが、本格ものとしては弱い気がします。ホームズでいう『まだらの紐』のような解決の仕方で、本来のあらゆる仮定をして残ったものを結論とする論理的なものとはかなり程遠いような気がします。ただし、ストーリは読みやすくまた面白いものとなっているのでその本格部分だけに目をつぶればいいのではないでしょうか(笑)お勧め度★★★




『夢見』の密室
小森健太郎氏の長編ミステリーです。サブタイトルにマヤ終末予言とあるように、新興宗教をテーマに書かれた作品です。新興宗教というと、昨今のいろいろな事件でその存在自体も、うさんくさいものとみがちでありますが、一回このようなミステリーでどういうものなのか知っておくのもいいでしょう。事件、トリックは普通ですが、新興宗教の知られさる一面がとても面白い作品です。お勧め度★★★★




紅蓮の密偵
楠木誠一郎氏の歴史長編ミステリーです。〜時代は明治、完成直後の帝国議事堂が謎の焼失をした。その謎を解明するために不敬罪で収監中の若きジャーナリスト宮武骸骨に極秘指令が下る。〜本格ものではなく、歴史ものの社会派推理といったようなものでしょうか?そうそう黒岩涙香など著名な作家なんかが登場するのもポイントです。お勧め度★★☆




イフからの手紙
湯川薫氏の長編ミステリーで、湯川幸四郎シリーズの3作目になります。私は、シリーズ最初から読んでいるわけではなく、たまたま買った本がちょうどこのシリーズ3作目になったのですが、非常に面白い作品でした。森ミステリーが理系ミステリーという言葉で呼ばれてから久しいですが、このシリーズもいわゆる理系ミスに所属するもので、設定も似ています。(笑)いわゆる二番煎じという問題や設定が酷似している問題は作家関係の問題であり、読者からすれば、面白い作品なら歓迎すべきでしょう。森ミステリーが好きな方なら面白く読めるでしょう。お勧め度★★★☆




ブルータスの心臓
東野圭吾氏の長編ミステリーです。巧みな文章と表現力はさすがで、疲れることなく読むことが出来ます。この作品もいわゆる東野色が色濃くでた作品の一つで結末がなんともいえません。人間のもつ嫌な部分をあつかわせると、東野氏はスゴイ才能を発揮するのですが、この作品でもいかんなく発揮されています。お勧め度★★★