だからと言って、とりわけ彼らのホームグラウンドが京都に定まっているわけでもない。
神出鬼没の上に、場を大切にするあまりライヴの回数はごく少なく、またたまにあったとしても
閉ざされた空間であることが多く、その情報が多くに伝わることはまずない。従って彼らを目に
する機会は極めて稀である。『天使の楽隊』という人をくった名前を持つこの謎のバンドは、実
はもうひとつの顔を持っている。彼らは皆、カオス*ヴォックスという国内でも珍しい中世ヨー
ロッパやケルトの旋律などを素材とするアコースティック・グループの中心メンバーなのだ。
その彼らが、より『聖なる』サウンドを求めて結成したのがこのバンド、というわけだ。しかし
ヴォーカル・ユキの美しく透明な声とヴァイオリンやレベック等の弓奏弦楽器、ギターやサズ、
ウード等の弾奏弦楽器の3ピースという相当シンプルな編成ながら、そのサウンドの幅広さたる
や驚くばかりである。ジャジーな雰囲気を醸し出していたかと思うと、アカペラの聖歌が続き、
気付くとアラブ風のビートに乗って聖母マリア賛歌が奏されていたりする。1時間のライヴなら
この調子でテンションを保ったまま、ノンストップで通してしまうというから、3人編成のバン
ドとしてはまさに脅威的なキャパシティ、というべきだろう。
いつも決まって白と黒のコスチュームで登場する彼らは、見るかぎり決して聖人君子というわけ
でもなさそうである。昨今流行りの感のある癒し系や胡散臭い祈りの音楽などとははっきりと一
線を画す彼らなりの気骨や哲学・美学というものすら感じさせる佇まいとサウンドなのだ。言葉
にすると難しくなってしまいそうだが、どうやら聖俗の際を危うく彷徨いながら聖なるものの真
の意味を探し出そうと試みている修行僧、そんなイメージだろうか…。俗が分からずして聖が分
かるか!とでもいった潔さが常に伴っている、不思議なセイクリッド・ミュージックである。
そんなエンジェルズ・ノイズはこれまでにも益子のギャラリー・スターネットや京都のリスン、
茂庵、バー・ティムティークなど小スペースでのライヴを中心に活動してきた。中でもユキとフ
ィドラーの佐武、2人の地元である京都での人気にはやはり根強いものがあるようだ。
そして今宵もまた、人知れず京都の街のどこかで妖しげなサウンドを奏でながら、人々の心を虜
にしているに違いない。(栗)                    
Angel's Noyze Photo Album
[Agnus Dei]
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