ベルワルドの協奏曲

 

 ベルワルドは生涯に5曲の協奏作品を残した。これらのうち、1855年に作曲されたピアノ協奏曲を除いた大半は、彼の作曲活動の初期に作曲されている。なかでも、ヴァイオリンと管弦楽のための主題と変奏(1816年、20歳)と、2つのヴァイオリンのための協奏曲(1817年、21歳)は、彼の作品の中で最も早い時期に書かれた作品である。また、続く10年の間に、ヴァイオリン協奏曲(1820年、24歳)とファゴットのためのコンツェルトシュトゥック(1827年、31歳)が作曲されている。したがって、ピアノ協奏曲は、彼の協奏作品の中でも、独自の地位を獲得しているといっていいだろう。

 

 

 

 

1. ピアノ協奏曲 二長調

 ピアノ協奏曲は、彼の交響曲よりずっと後の、1855年、ベルワルドが59歳の時に作曲された。『ベルワルドらしさ』が確立された実り多い時期に、満を持して作曲された作品といっても過言ではないだろう。彼の夫人の日記によれば、この協奏曲は、ピアノの生徒だったヒルダ・ゼーゲルシュトレム(当時17歳)のために作曲されたようである。

 この曲は、彼の生前には日の目を見ず、彼の死後1872年に、彼の息子のヒャルマーによって、匿名でコンクールに応募された。ガーデ、リーツといった当時の審査員たちの好評を得たが、結局出版にはいたらず、初めて出版されたのはそれから100年以上が経過した1974年である。初演は、孫のアストリッド・ベルワルドによって、1908年に行われた。アストリッドは、これに先立ち、1904年にピアノ編曲版による初演も行っている。

 この協奏曲では、全曲通してピアノが演奏し続けるように作曲されているのが特徴的で、随所に華麗な装飾技巧が用いられ、ゴージャスできらびやかな作品に仕上げられている。全3楽章は、すべて続けて切れ目なく演奏される。

 

第1楽章、アレグロ・コン・ブリオ、ニ長調、4分の4拍子。提示部-展開部-再現部よりなるソナタ形式。

 短い序奏に引き続き、ピアノによって、力強く雄大な第1主題が提示される。第一主題が簡潔な確保されたのち、三連符、六連符を多用した優雅な第2主題がイ長調で提示される。提示部は、はっきりとした区切りのないまま展開部へと移行する。展開部では第2主題が中心となって展開されるが、"tempo ad lib.(自由なテンポで)"という指示が書き込まれ、装飾技法を駆使して自由な演奏がなされるように意図されている。

第2楽章、アンダンティーノ、ト短調、4分の3拍子、三部形式。

 散文的な美しさを持った、間奏曲風の中間楽章。中間部はト長調。記譜上、一時的に8分の9拍子を取るが、すぐに4分の3拍子に戻る。主部では、長いトリルや10連符などが使用されている。静寂を交えた、独白のような作風は、ベートーベンのピアノ協奏曲第4番などに由来するのかもしれない。

第3楽章、アレグロ・モルト、ニ長調、4分の4拍子。提示部-展開部-再現部-コーダからなるソナタ形式。

 生き生きとしたリズムと半音的な進行を持つ主題で開始される。この主題の後半には、彼の作品に特徴的な、力強いシンコペーションも取り入れられている。この後、第2主題らしき主題(第33小節〜)も提示され、流麗な流れを一時中断する役割を与えられているが、旋律的な要素は少なく、無機的で、全体としては単一主題のソナタ形式に近い書法が取られている。展開部で、第一主題が見事に変奏されているのは印象的である。再現部では第2主題は省略されている。コーダは比較的大規模なもの(44小節)で、音階的、あるいは、分散和音的な上行、下行を繰り返して、華やかに全曲を結ぶ。

 

 

 

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