■ パンと懐剣 ■

神坂さんの最初の長編作品。この作品をこれから探し出すのは、現在かなり困難を極める と思いましたので、全巻分あらすじを付けました。
「パン」は西洋、「懐剣」は日本を象徴しており、懐剣は、最初から最後まで弥生の胸元にあって 彼女の魂として機能していますが、なぜ西洋の象徴として「パン」を選んだのか、ちょっと 不明……。
この作品は、のちの「小春びより」シリーズや「蒼のマハラジャ」に 繋がる原点ともいうべき要素で構成されています。初期作品なだけあって、登場人物や伏線が 生かしきれてなかったりする面もありますが、それも含めて、神坂さんの若いパワーが ぎっしり詰まっています。
主人公・弥生(マーチ)は、神坂キャラタイプを代表する、快活で 物怖じせず、実行力のある好感度100%の女の子です。


<原作について>
6巻の1/4コーナーのところで、この原作について、神坂さんが触れている箇所があります。
要約すると、原作は「武士の娘」筑摩書房・杉本鉞(えつ)著、だそうです (ただしコミックス初版時、79年の時点で既に絶版)。NHKFMで朗読されたこともある小説。しかし、だとすると、コミックスに記されている「原作・だてひろし」というのは???

■らぴすさんから、情報をいただきました。<00.2.27>
(ふたつに分かれていた文章を統合したのですが、なるべくらぴすさんの原文を壊さないようにしたつもりです。)

「武士の娘」から基本設定を作って後はかなり脚色されているようですね。
稲垣鉞子さん→桧垣弥生 杉本松雄さん→松村文四郎 と改名されている模様。長岡藩の家老の娘で縮れ毛・英語を学ぶ為に東京の女学校へ・結婚のために渡米・・・とここまでは同じです。
「パンと懐剣」の方では夫は貿易商といいながら実は売れない画学生だったということになっていますが、実際はちゃんと貿易商をやってらして、暮らし向きは楽のようです。
日本人はまだ市民権がとりにくい、という記述はありますが、差別されたというシーンはほとんど出てきません。
お嬢さんも花野ちゃんだけではなく、もう一人いて、それからご主人は亡くなったそうです。
ということで、パンと懐剣はモデルはいるけどあくまで創作と考えた方が良いでしょう。

杉本さんの「武士の娘」という本、私大好きで、よく友人に読め読め!!と無理矢理貸しまくった程なので、びっくりしてしまいました。こんなところで漫画化されていたなんて!
まぁ実際の杉本さんはお金持ち同士の結婚でアメリカではメイドさんも使って皆に親切にしてもらって幸せそうでしたけど。

「武士の娘」が79年に絶版になったとありますが、1994年にちくまから文庫版で復刻されましたので注文すれば手に入ると思います。ドイツ・フランス・デンマーク・スウェーデンなど7カ国語に翻訳されたそうです。日本女性のことを書いた本の中では日本人として誇りに思える一冊だと思いますのでオススメです。


登場人物は、基本的に名前のある人、それに準ずる人に限っています。

パンと懐剣 第一巻


パンと懐剣 第二巻
パンと懐剣 第三巻
パンと懐剣 第四巻
パンと懐剣 第五巻
パンと懐剣 第六巻

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