■ 完全版シルクロード・シリーズ(角川版)4・5・6 ■

<角川書店・完全版シルクロードシリーズ4>ウイグルの砂

シルクロード・巻き毛のカムシン
シルクロード・緑の王宮−カシュガル−
シルクロード・ヘディンの手帳
シルクロード・ソグディアナの娘
シルクロード・ヤグノブの谷
シルクロード・ウイグルの砂
シルクロード・雪の朝−ホワイトカングリー−
シルクロード・サーハスの鏡
シルクロード・王女の首飾り
シルクロード・百合の咲く谷
 シルクロード・白鳥(しらとり)伝説 (角川版のみ収録作品)
表紙:傷ついた詩織

登場人物:イティカ、カーシャ、イティカの父、カーシャの両親、詩織

◇コメント◇
詩織がラスト、白鳥に転じるシーン、彼女の体のラインといい翼の角度といい、素晴らしいです! 神坂さんは、イティカの父に次のような台詞を言わせています。
「神が常に人間を救うというのは、人間の思いこみです。時としてそれは、人生の岐路に現れて、 人間の心を問うこともあるように思いますよ」
(この状況下でこんなこと言うイティカの父も凄い人ですが)「神」というものが指標であり、 同時に人間の鏡でもある、というような解釈ができますね。そこには必ずしもコレといって 答えの出る訳でもなく(実際、イティカは最後まで疑問を抱いたまま、生涯を終えたでしょうし) 、ただ問いかけがあることに既に意義がある、というひとつのテーマ。
シルクロードの少数民族を題材にした神坂さんのこういう描き方、好きです。


シルクロード・湖面の月

<角川書店・完全版シルクロードシリーズ5>永遠を見る娘

シルクロード・聖者の泉−イシク・クル−
シルクロード・赤い山 白い神
 シルクロード・天より降りて (角川版のみ収録作品)
表紙:ミーニア

登場人物:ミーニア、オルハン、アフメト三世、サーハス(?ナイアードかも)

◇コメント◇
時代設定は、チューリップ時代(18世紀初期)のオスマントルコが舞台(「それから10年後、 アフメト三世はこの世を去り」と記述されているので、1720年前後と特定できます)。
これとほぼ同時期の物語を、神坂さんはもうひとつ描いています (「白いチューリップ」)。 でも、白いチューリップで、第一王子が第二王子に暗殺されているので、長じてスルタンの位を 継いだミーニアの息子は……え?この第二王子?それとも、第三王子か第四王子なのかな?? (ま、フィクションだとは思うんですけど、でも合わせて考えるとおもしろくって)
(ちなみに、後を継いだスルタンの公式ネームは、ムスタファ三世といいます)

 
シルクロード・金と銀の杯 (角川版のみ収録作品)

表紙:杯で占うリリア

登場人物:リリア、サリエ、ニフセ、ジェナー

◇コメント◇
ジェナーが活躍する話って少ないので、その意味で貴重な話かも。
恋が、自省の原動力になり、その一生を豊かにするというテーマ。こういうの、好きだ〜。 相手との物語を編み出すんじゃなくって、主人公自身が変転してゆく点が。

シルクロード・欠けたもの満ちるもの
シルクロード・マルゥの空ツヴィは砂色
シルクロード・金目のツヴィ
シルクロード・天と地の神
シルクロード・そしてカレーズ
カレーズ−星の井戸−
カレーズ−ペルシャ−
カレーズ−夢−
カレーズ−幻影−

<角川書店・完全版シルクロードシリーズ6>風の輪・時の和・砂の環

 シルクロード・緑の彼方へ (角川版のみ収録作品)
表紙:詩織

登場人物:イルマ、ラビア、イルマの両親、詩織、テングリ兄弟

◇コメント◇
「我々の紡ぐ綿が下界に飛び散って雪になると遊牧民は言うが、それは反対だね。 雪がくるので我々が綿を紡ぐのさ」
サーハスが冒頭にそんなことを言いますが、結局はその逆、つまりイルマたちに信じられている通り に、詩織、そしてテングリ兄弟は力を発揮してしまいます。
詩織が、片手に握った綿をぱっと散らし、紡ぎ車を回してブリザードを起こすシーン。 (なんとなく「風の輪時の和砂の環」でシバが糸車を回しているシーンを思い出します)
こういう見開きの描き方、間の取り方、ほんと心をぐっと掴まれちゃいます。

シルクロード・星の落ちる谷
シルクロード・月の宴
シルクロード・月の宴II
シルクロード・エンディング

 駱駝のイブン・サウド (角川版のみ収録作品)
表紙:ファラと駱駝たち

登場人物:ファラ、ナシュワ、ファラの祖父(サリム)、ファラの一族、アメル、ネーシブ

◇コメント◇
ワッバーフ派(現サウド家)政権サウジアラビアが舞台の、二連作。特にシルクロード・シリーズに関連した事やモノが登場していないので、 正確にはシリーズ作品ではありませんね。
厳しいその戒律下での、ナシュワとアメルの恋愛を軸に描いていますが、 あくまで第三者的立場の少年ファラの目を使っていることで、妙に引き立っているのが、祖父。 祖父のユーモラスさと厳しさ、暖かさ、様々な側面は、作品を、ただ悲恋の描写に終わらせていない と思うのです(次作「アッサラーム・アレイコム」も然り)。


 アッサラーム・アレイコム(角川版のみ収録作品)
表紙:ファラと駱駝

登場人物:ファラ、ファラの祖父サリム、ナシュワ、アメル、ネーシブ

◇コメント◇
前作「駱駝のイブン・サウド」の続き。
重いテーマを扱ってはいるんですけど、結局コミカルなタッチで仕上げてあります。 こういうのって、神坂作品の特色ですね!
祖父がさらにパワーアップしてて、その処世術には、思わず笑みがこぼれてしまいます。 この祖父のキャラクターは、アラブの生活文化の平均的で一番いい面を具現しているんでしょうね。


 風の伝説(角川版のみ収録作品)
表紙:バラの精霊

登場人物:バラの精霊、蜘蛛の魔女、昆虫の王子

◇コメント◇
これも、全然シルクロード・シリーズとは関係のない作品。
バラの花が咲く描写が、とってもファンタジックでユニーク。古典的な王子さまお姫様物語のワクを借りて、バラと蜘蛛と昆虫を描写している点は、 アイデア賞もの!一編の詩のような作品です。

風の輪・時の和・砂の環
  写真集・あとがき(角川版のみ収録作品)
写真集は、これまで神坂さんが旅行した各国のもの。

角川版のためのあとがきは、わずか2ページなのですが、読み応えある文章です。 「シルクロードシリーズ」の創造者・神坂さんが持っている、 シリーズ全体の構想観とも言うべき思想が、次のように表現されています。

「(前略)0は全てであり、そして0は無である」
この言葉にひかれて、天山の神々を10人にしました。(中略)それで一人書けたところから すべては動き出す……(後略)


かくしてシリーズは、永遠に始まりも終わりもなく、神坂さんの生み出した「環」に 組み込まれているのですね!


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