■ 「T・E・ロレンス」登場人物 ■
この作品は、現実にあった出来事をもとに描かれた作品であり、 主要キャラクターも、実在の人物、あるいはそこから起こして創られたキャラクターが殆どです。
以下の説明は、「T・E・ロレンス」におけるキャラクター像であり、 実在の彼らについてではないですので、念のため。
T・E・ロレンス(トーマス・エドワード・ロレンス) <1888〜1935>
英国人。男爵家に生まれながら、お父さんが爵位を手放したところから、 人生の伴侶にお母さんを選んだところから、悲劇が始まった。
意識して描いている面もあるんでしょうが、アラブ服姿の彼は、はっとするほど実に凛々しく、 うつくしい。「彼のためにあつらえたような婚礼衣装が、この場を制する」というアリのご意見は、 ほんとにぴったりハマっています。
そんな具合で、とてもせつなく愛すべきキャラクターですが ……もし実際に自分の側にいたら、「あーもーやめてよー」と思わず両手をばたばたさせて、 言ってしまいそう。わたくし、極めて利己的な人間なんで…
(ちなみに作者の神坂さんは、「あんな男が側にいたら、わたし、恥ずかしくて死んでしまうと思う」 とコメントしてます。うーむ、そうか……)

ハムディ(シェイク・ハムディ)
シリア出身?
どこからともなく現れて、どこへともなく去っていった (まあ去っていった先はユーフラテスですけど。雰囲気の問題)謎のアラブ人。
年齢も不詳…第一次大戦時で30代かなあ。
高貴な「アラブ」を体現している、 とてもかっこいくて渋い男。いや〜もう、これで惚れなきゃ人間じゃないですよ。 ここまで頑強で魅力的なんですもん、ロレンスなんかイチコロで当然。
彼がいたばっかりに、 映画では二枚目だったアリが、この作品では格をひとつ下げられてしまった…

ダフーム(シーク・アーメド)
なんか、上のふたりに挟まれて、かわいそうな役どころとなってしまった… せめて最後に一面チューリップの中を走らせてやりたかった……。
実在の彼は美少年だったらしいですが、この作品では、むしろ子どものような印象が強いです。 いたいけな感じ。

アリ・イブン・エル・フセイン
どういうわけでか三つ編み男になってしまったアリ。映画「アラビアのロレンス」同様、ロレンスとは並列関係で作戦指揮に当たっています。
アラブ特有の、しなやかで強い明るさと一途さを持ち合わせたキャラクターとして描かれています。 ロレンスと知り合って、どんどん成長していく過程も楽しめる人物。
ただ、ハムディが去った後、(アリがアラブを具現して)最終的にロレンスを突き放すことも 可能なところまでいってしまったので、「あーあ」とため息をついてしまいました。
ハリト族の族長(シェリフ)。

エミール・ファイサル
メッカの太守であるハシム家の第三王子。
絵の話ですが、この人と、アウダ・アブ・タイの親父さん、実際の彼らの特徴をすごく掴んでると思いませんか? 実物のエミール・ファイサルって、他の兄弟王子達の誰よりも、ルックスがダントツでいいですよね。 細面でおしゃれなお髭、真実ほんもののアラブのエミールだ!
淡々と冷徹に王者らしく振る舞う大戦期から、 さらに苦難の20年代に入って、別の角度から上に立つ者たらんとする姿勢が描かれています。 その辺り興味深いです。

ジョン・ブルース
実在の彼は、このあとどうなったんでしょうか? すごく気になる…
どうやってフォローしたものか考えてしまうほど、 ダフームの身代わりでしかない……でもまあ露骨でも、なにかしら癒やされている& お互い必要としている以上、理屈なんて通用しないですね。 「そうはいっても…」的なものはあったにしろ。
そのために彼、孤独で無知なやさしい少年のままで話が終わってしまったです。 (外見も全然成長しなかった。どう見積もっても、30歳近くまでいっている計算になるんですけど)

ホーガス博士(デヴィット・ショージ・ホーガス)
ロレンスの本来の専門分野である考古学の先生。
常に教え子ロレンスを導き、 ロレンスがどんな道を辿っていこうとも、じっと見守っている。 よい先生の見本みたいなお方。
「彼には良心がありすぎる。あれは純粋すぎるのだ。 人の心には神もいれば悪魔もいる。正義も偽善も、高潔も不純も…… それぞれがどこかで戦いながら調和している事を、彼は許せないのだ」という博士のセリフに、 (作者の)優れたロレンス解釈の一面をうかがい知ることが出来ます。



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