デモンズ

Demons
(aka) : Demoni



1985年 イタリア映画 カラー ヴィスタサイズ
オールラッシュ(106分55秒)/第1次編集版(96分24秒)
完成オリジナル版(88分43秒)/カット版(84分24秒)

日本劇場公開86年4月(配給:東宝東和)
ビデオ(東芝<英語版>/カルチャア・パブリッシャーズ<伊語版>
LD(東芝<英語版>)/DVD(カルチャア・パブリッシャーズ<伊語版>)

製作会社:DACフィルムズ・プロ(+ティタヌス)
世界配給:イントラ・フィルム
製作・原案:ダリオ・アルジェント
監督:
ランベルト・バーヴァ
脚本:ダリオ・アルジェント/
ランベルト・バーヴァ
    ダルダーノ・サケッティ(原案も)/フランコ・フェリーニ
撮影:ジャンロレンツォ・バタグリア
編集:ピエロ・ボッザ/フランコ・フラティッチェリ
美術:デバイデ・バッサン
衣装:マリアーナ・マラヴァーシ/パトリツィア・マッサイア
プロダクション・マネージャー:エロス・ラフランコーニ
助監督:ミケーレ・ソアヴィ
現像ラボ:ルチアーノ・ヴィットーリ
特殊効果:セルジオ・スティヴァレッティ
特殊メイク:ロザリオ・プレストピーノ
音楽:クラウディオ・シモネッティ
挿入歌:ジ・アドヴェンチャーズ/ビリー・アイドル/
     モトリー・クルー/クラウディオ・シモネッティ/
     リック・スプリングフィールド
追加音楽:エドヴァルド・グレッグ
("Peer Gynt Suite: In the Hall of the Mountain King")

出演:
ナターシャ・ホーヴェイ(シェレル)/ウルバノ・バルベリーニ(ジョージ)/
カール・ジニー(ケン)/フィオーレ・アルジェント(ハンナ)/パオロ・コッツォ
(キャシー/ケイト)/
ファビオラ・トレード(カルメン)/ニコレッタ・エルミ
(イングリッド:案内嬢)/ステリオ・キャンデーリ(フランク)/ニコール・テッシアー(ルース)/
ゲレッタ・ジャンカルロ(ローズマリー)/
ボビー・ローデス(トニー)/グイド・バルディ(トミー)/
ベッティーナ・チャンポリーニ(リズ)/ジュセッペ・マウロ・クルシアーノ(ホットドッグ)/
サリー・デイ(カルラ)/エレーナ・ホッペ[エリアナ・ミリーオ](エディス:劇中劇)/
ジャスミン・マイモーネ(ナンシー:劇中劇)/マルチェロ・モドデューノ(ボブ:劇中劇)/
ペーター・ピッチ(バビー・ピッグ)/
パスクワリーノ・サレーメ(リッパー:パンクのリーダー)/
エンリカ・マリア・スクリヴァーノ(ニーナ)/アレックス・セッラ(ウェルナー氏)/
ミケーレ・ソアヴィ(
仮面の男/劇中映画の青年)/クラウディオ・スパダーロ(リズの恋人)/
ランベルト・バーヴァ(地下鉄の乗客)/セルジョ・スティヴァレッティ(犠牲者)/
ジョヴァンニ・フレッザ(ジープの少年カーク:クレジットなし)/
ゴッフェルド・アンガー(ジープの父親)/サミ・ハビー・アーメッド(アキロンの大王)

グリーンの名前は、クリックすると出演情報へ飛べます)





物語

ある日、音楽大学に通う美人学生シェレル(N・ホーヴェイ)は
同級生のキャシー(P・コッツィオ)との待ち合わせ場所に向かう途中、
地下鉄の駅で気味の悪いマスクをした男(M・ソアヴィ)から
題名の書かれていない映画の試写状を渡された。
そこにはメトロポールという初めて聞く名前の劇場と、
午後6時という開演時間だけが書かれていた。
ホラー映画だったらイヤだわ、というキャシーを半ば強引に誘い、
パーティー気分で開場した映画館に足を踏み入れるシェレル。
ロビーには招待状を受け取った様々な人達で賑わっている。
結婚記念日を迎えた中年夫婦、盲目の老人と付き添いの若い美女、
デートは初めてのような初々しい若いカップル、派手な女性2人を
連れた黒人男などなど。そのうちの黒人女性ローズマリーが
ロビーに飾られたバイクに乗った騎士人形の手に握られていた
銀の仮面をふざけて被るが、仮面を外すときに頬に小さな傷を
付けてしまう。そんな彼らを射るような視線で見つめる
映画館の受付嬢イングリッド(
N・エルミ)・・・。
何かが起きそうな不気味な空気が劇場に立ちこめ始める。


↑前作「ナイトチャイルド(未)」(75)から、
およそ10年を経て蘇った
エルミ


コインを入れたのにジュースが出てこない自販機の前で
口げんかを始めたシェレルとキャシーに、ハンサムなジョージ
(U・バルベリーニ)と、ワイルドなケン(K・ジニー)が声をかけ
ジュースを取り出してやった。お互いに惹かれあった彼らは
4人で一緒の席に座ることにする。
そして上映が始まった。

「理性がマヒするとデモンズが現れる・・・」。やはり映画はホラーだった。
スクリーンにはバイクに乗った2組の若い男女が、人里離れた場所に
うち捨てられた墓地にやってくるシーンが写し出される。
彼らは16世紀の預言者ノストラダムスの墓をあばきにやって来たのだ。
彼の墓に遺体はなく、その代わり悪疫を広げる<デモンズ>達に関する著書と、
それを付けるとデモンズになるという、埃を被った銀の仮面が入っていた。
一行のうちの若い男性(M・ソアヴィ2役)が面白半分に仮面を被り、
頬に小さな傷を作った。
客席では再び傷口から出血が始まったローズマリーが映画を中座し、
トイレに駆け込んで傷口を水道水で洗い流そうとする。
しかしまるで映画と呼応するかのように、彼女の傷口は脈打ち、
異様に膨らむと一気に破裂して大量の膿を吐き出した。
絶叫するローズマリー!劇中ではデモンズに感染した男が仲間を
次々ナイフで刺し殺す惨劇が始まっていた。

なかなか帰ってこないローズマリーの様子を見に来たもう一人の女性
カルメン(F・トレード)は、個室にうずくまるローズマリーを見つけるが、
その顔は既に恐ろしいデモンズに豹変していた。
悲鳴を上げて逃げ出すカルメンの首筋に、ローズマリーの鋭い
ツメが突き刺さり、耳障りな音を立てて皮膚が引き裂かれた。
出口を求めて劇場内を逃げまどううち、スクリーン裏に迷い込んだカルメンは
デモンズが画面をナイフで引き裂くのと同時に、銀幕を破って客席に
倒れ込む。慌てて駆け寄る彼女の連れの黒人男トニー(B・ローデス)。
しかし彼の目の前でカルメンのツメがグングン伸び、
煙草のヤニに汚れた歯が抜け落ちると鋭い牙が生えてきた。
彼女もデモンズに感染したのだ!

パニックになって逃げまどう観客達だが、どういう訳か映画館の入り口は
厚いコンクリートによって塗り固められてしまっており、逃げ出すことが出来ない。
そうするうち、一人また一人とデモンズの犠牲者になって命を落とした
観客達が、今度は見るもおぞましいデモンズとなって甦り始める。
その数は膨れ上がり、盲目の老人と連れの美女も、中年夫婦も
受付嬢のイングリッドまでもが次々にデモンズと化していった。
通風口に逃げ込んだ若いカップルは、デモンズの血を浴びた少女ハンナ
(F・アルジェント)の方が突然、怪物と化しBFに襲いかかる。
どうやら体にほんの少しでも傷を付けられたり、理性を失ってしまうと
デモンズに変身してしまうらしい。絶望的な状況の中でジョージ達は
必死の抵抗を試みるが・・・。

その頃、市街を車で走っていたパンク・グループの4人が、コカインを
吸っているところを警官に見つかり、映画館へと逃げ込んで来た。
彼らの後を追った警官の一人はパンク達と入れ違いに映画館から
さまよい出てきた盲目の老人=デモンズに襲われ負傷、慌てた相棒の
警官が地獄の咆哮を上げるデモンズを射殺した。

劇場内ではパンク達を救援隊と間違えた観客がバリケードを外した為に
ホールにデモンズ達がなだれ込み、辛うじて生き残っていた人々を
次々と襲っていった。床と椅子のバリケードの間に出来た狭い隙間をぬって
廊下へ出たシェレルたち。しかし余りのショックに理性を失ったキャシーが
デモンズと化し、ケンが彼女をメッタ打ちにすると、キャシーの背中から
小さな<アキロンの大王>と呼ばれるデモンズが飛び出し、
ケンの胸にツメを立てた。程なくしてケンもデモンズになり、
ジョージは胸の潰れる思いでロビーにバイク人形と一緒に飾ってあった
日本刀で、ケンの体を真っ二つに切り裂いた。
その惨状を見かねて劇場内に入ったシェレルに、今度はパンク達も加えた
デモンズ軍団が襲いかかる!
悲鳴を聞きつけたジョージはバイクにまたがり、日本刀を武器に
デモンズ達を次々に切って捨てていった。劇場の床や壁に飛び散る鮮血。

筆舌に尽くしがたい惨状の中、轟音と共に劇場の天井を突き破って
ヘリコプターが墜落してくる。頭上に空いた穴から命からがら脱出した
シェレルとジョージが見た物は、見慣れた町の景色ではなく、
デモンズ達が跋扈する地獄絵図だった。
ひたすら怪物達から逃れながら、息も絶え絶えになって絶望しかけた
2人の前にジープが止まった。そこに乗っているのは中年の男と
若い妻、そして幼い少年だった。楽園を探しに行く、という彼らの車に
飛び乗り、地獄と化した市街地を離れる2人。
車の家族は銃器の扱いにも慣れた様子で、表情一つ変えずに
道路に飛び出してくるデモンズ達を射殺して車を走らせる。
果たしてデモンズのいない楽園はどこまで行けば辿り着くのだろうか?
一行にふと不安がよぎった時、突然シェレルがデモンズに変身した!
唸り声を上げてジョージに襲いかかろうとするシェレルに向けられた
少年(G・フレッザ)の銃口が火を噴いた。もんどりうって道路に倒れるシェレル。
その無惨な死体を見つめるジョージの姿が次第に遠ざかっていく・・・。

 

<簡単な解説&撮影開始までのエピソード>

この映画は「ゾンビ」でも組んだアメリカの巨匠G・A・ロメロの新作、
「死霊のえじき」の企画から(恐らく資金面の都合で)抜けたアルジェントが、
新たにランベルト・バーヴァを監督に据えて自らのプロデュースで作り上げた
ロメロのゾンビ映画への、イタリア流の返答だと言えよう。

日本公開当時の宣伝には製作費6億リラ(当時の換算で
約15億円相当!)、その半分を500ものSFXに投入した
イタリア映画史上最大のショック映画!みたいな宣伝が打たれているが、
バブル真っ直中の話だし、どのくらい真実なのかはやや疑問。
また公開に合わせて、劇中のデモンズに妙なキャラクター名を
付けたりした宣伝が話題を呼んだが、今となっては
当時の宣伝プレスを読み返しても、もの悲しいばかり。
(多分「バタリアン」の路線で売ろうと思ったのかも・・・
N・ホーヴェイのデモンズは牙が自在に伸びるバルバトス、
F・トレードがグシオン、最初の黒人女デモンズがサタナキア・・・
そうそう、最後に出てくるデモンズは<アキロンの大王>でした:笑)


スクリーンからデモンズの侵略が始まる、というアイデアは
ウッディ・アレンの「カイロの紫のバラ」を見たバーヴァが
思いついた物とされるが、恐らく本人は既に忘れているだろう。
「暗闇の殺意」より3年前(つまり「首だけの情事」の頃?)、
バーヴァの頭にふと浮かんだアイデアを元に、
ダルダノ・サセッティと共同でわずか3ページ程度の
原案を書いたのが「デモンズ」の始まりだった。
当初の原案では3話からなるオムニバス物だったようだが、
アルジェントが企画に参加してからはゾンビ風の味付けを持った
内容へまとめられていった。悪魔の侵略というテーマは
アルジェントを魅了し、2ヶ月間で100ページにも及ぶ第1稿が
完成したという。脚本には最終的に「フェノミナ」の
フランコ・フェリーニも参加し、84年の9〜10月にかけて
内容を討論していったらしい。その当時の題名は「Demons' Heads
(デモンズの頭)」だったが、結局は「デモンズ」に落ち着いた。

アルジェントが脚本を書き進めるのと平行して、
特殊メイクや演出に関する討論が行われ、簡単な
絵コンテが制作されて行った。第2稿、第3稿を書く作業に
入る頃には、演出プランも固まってきたが、物語をシンプルにする為、
結局脚本は5回ほど手直しされたという。
映画の上映は試写会からレイト・ショーへ変更され、
舞台もロンドンから緊張感を孕んだベルリンに決定した。


キューブリック同様(あっはっは!)同時録音を好むバーヴァの意向で、
撮影は英語のセリフを話して行われた。

撮影は1985年の5〜6月にかけて、およそ7週間行われた。
そのうちベルリンでの撮影は実質的に10日程度で、
映画館の中をメインに特殊効果のシーンも含め、
残りの撮影はイタリアのデ・パリオス・スタジオで行われた。
(スタジオの所在地はローマの東にある町、クルビアセンシ?)
この年の夏も例年に負けず凄まじい猛暑だったが、
幸運にも?撮影場所が地下のホールばかりだったので、
それほど気候の問題は起こらなかった。

バーヴァは一日平均20カットのペースで仕事を進め、
うち3/4をOKテイクにする感覚で仕上げていったらしい。
特殊メイクを必要とする場面も、本編の撮影中に行われた。
本編終了後、ポスト・プロダクション期間を作り、
その間に特殊効果の場面をまとめ撮りする方法を採用すると、
つながり感が悪くなることをバーヴァが心配していたからだという。
スティヴァレッティらは迅速に作業を進め、メイク部分も
特にトラブルなくキャメラに収められていった。

役者達はスチームを浴びた後、暫くランニングしたりして
実際に汗をかき、撮影に望んだ。バーヴァは自然なリアクションが
出るまで何度となく同じ作業を繰り返し行わせ、
俳優のテンションを高めていったのだという。




<出演者たち>

主役グループの4人
のうち、N・ホーヴェイは日本では無名の若手女優だが、
本国ではそれなりに知名度のある人らしく、「デモンズ」は彼女が出演した
唯一のホラー映画だとのこと。主な活躍はコメディ映画らしい。
出演作として「Acqua e Sapone(水と石鹸)」が某誌に紹介されていた。
1967年レバノンのベイルート生まれ。

映画の後半で突如ランボーと化
すジョージを演じる・バルベリーニは、
1962年ローマ生まれ。D・アルジェント関連の「オペラ座/血の喝采」(88)、
「デモンズ6/最終戦争」(90)での好演が記憶に残る俳優。
その他に「タイムスリップ TO ゴア(V)」(87:続編も同じ年に制作された)、
「ミス・アリゾナ」(88)等の出演作がある。イタリアの名家(貴族?)出身で
彼の一族の名前を取った地下鉄の駅があるという。
ランベルト・バーヴァの「首だけの情事」(80)に出ていた子役の
ベロニカ・ジニーは彼の実妹にあたる。最近はちょっと老けちゃってガックリ?


↑「うふッ、来ちゃったッ!」「イイから帰れ!」みたいな状況の
U・バルベリーニ(もちろん左)

バーヴァはバルベリーニが大好きで、自分のTV映画でも一緒に
仕事しているという。彼はどちらかというと役者よりも、実生活通り
プリンスといった雰囲気で、バーヴァが子供の頃に見た
王子様(絵本か何かだろうか?)のイメージそのままなのだという。
映画のクライマックスで登場するハデなバイクのスタントも
バルベリーニ本人の運転によるもの(バイクスタントの達人、
M・ソアヴィが助監督なので、ソアヴィがやっているのかと思ったが・・・
少なくともバーヴァの弁によれば、映画館の階段をシェレルを
後部座席に乗せて駆け上がるショットはバルベリーニ本人らしい)


バルベリーニ扮するジョージの友達
ケン役を演じるのは
「デモンズキラー」、「
グレイブヤード」等のL・バーヴァ監督作品に
数本出演した
カール・ジニー(83年の「ザ・エクスキューター」にも出演)。
やはりこの俳優もバーヴァのお気に入りらしく、4,5本の映画で
一緒に仕事をしていると語っている。1964年生まれ。
母親は「エロチカ海賊'73」などに出ていた女優のヴィクトリア・ジニー。

バーヴァ自身に「最初で最後の映画出演なんじゃない?」と
コメントされてしまったキャシー役の
パオラ・コッツィオは、
実際にはフルチの「新・デモンズ」で妊娠した尼僧を演じているほか、
数本のエロティック映画に出ているようだ。

その他、「サスペリア2」の赤毛の悪魔っ娘、
N・エルミが、怪しげな
映画館の案内嬢イングリット役で、「墓地裏の家」のボブ少年こと
ジョヴァンニ・フレッザ(1972年ポテンザ出身)が主人公達を助け出す一家の
幼い少年カーク役で出演(因みにジープを運転しているのは「デモンズ」の
スタント・コーディネーター氏で、S・スティヴァレッティの監督作品
「肉の蝋人形」にも同じ役職で関わっている)しているのも話題に。





それ以外の出演者は大半が無名の若いスター達。彼らの中で
立つのはアルジェントの長女フィオーレ。「フェノミナ」(85)で演じた
最初の犠牲者(デンマークの旅行者少女役!)に続き、
今回はハンナというドイツ人少女の役で登場している。

映画の中盤から登場してくるパンクの一団で、リーダーに扮するのが
パスクワリーノ・サレーメ。この人はリーノ・サレーメとクレジット
されることが多いが、どういう訳か「デモンズ」では名前に
余計な文字が付いている。バーヴァの「
グレイブヤード」や
フルチの「ホラーハウス」などに出ているが、ワイルドな見かけによらず
監督としても活躍しているようで、コメディを手がけているとか。
この映画の続編の「デモンズ2」でもビルの警備員を演じている。


他に記憶に残るのが白スーツを決めて、リーダーぶる黒人男トニー。
この役を演じているのはイタリアの娯楽映画に良く顔を出している
ホビー・ローデス。彼はローマ生まれで英語が上手く話せず、
全編英語台詞の「デモンズ」の撮影現場は、彼のローマ訛の強い発音に、
スタッフ・キャスト共々失笑の嵐だったという。

トニーにくっついているケバイ美女2人のうち、カルメン役は
スペイン女優
ファビオラ・トレード。「暗闇の殺意」(83)では
浴室にいるところを殺人鬼に襲われ、掌にナイフを突き立てられる
ショッキングな場面を迫力タップリに演じた女優さんだ。
それ以外にもジョー・ダマートの「カリギュラ2」に出演。
ローラ・ジェムサーの親友ながら、カリギュラ皇帝に陵辱されてしまう
処女の役を演じている。もう一人、黒人娘ローズマリーを演じる女優は
ゲレッタ・ジャンカルロ。他にジャンナ・ライアンなどの変名で
「ラッツ」などに出演。撮影当時彼女はイタリアに住んでおり、
現在はロサンジェルスでダビング関係の仕事をしているという。

ローズマリーに喉を引き裂かれる小言親父フランクを演じているのは
「バンパイアの惑星」の
ステリオ・キャンデーリ
その奥さんルースが
ニコール・テッシアー
大した活躍はしないが、マスカラが流れた泣き顔が怖い。

以下は本当に不確かなのだが、劇中劇の出演者について。
お面を被る男と、試写状を配って回る男を演じているのは
この作品の助監督でもあり、後にバーヴァを裏切る?形で
「デモンズ3」の監督を務めた
ミケーレ・ソアヴィ
彼に同行するのが「白い道」(59)や「ベニスの出来事」(66)で
知られる俳優兼シンガー、ドメニコ・モドゥーニョの息子
マルチェロ・モドューニョ(もちろんクレジットなし。RoanのLDに
収録されたコメントで「彼はD・モドゥーニョの息子・・・マッシモ!」と
みんなが答えているのだが、IMDbにそういう名前の俳優はいない。
で、一番表記が近いのがマルチェロ・M。彼はデオダートの
「ダイヤル・ヘルプ」や、バーヴァの「
キャロルは真夜中に殺される
などにも出演している男優さんだ。)、
テントの中で刺し殺されるのが「デモンズ2」や「
キャロルは
真夜中に殺される」に出ているエレーナ・ホッペ。


監督の
L・バーヴァがヒロインと入れ違いに地下鉄から降りてくるおっさん、
特殊効果の
S・スティヴァレッティがデモンズの一人(主人公達が
映画館の屋上に上って、町を見回すと、向かいの建物の窓際に立っていて
爪をガラスに立てるのがスティヴァレッティ)で顔出ししているのもチェック。
若い頃はボディビルをやっていたスティヴァレッティのデモンズは
なんか、ちょっとムキムキ系でコワイ。


<特殊効果とスタッフたち>



「デモンズ」は15年以上前の映画だが、CG全盛の今見返しても
特定のシーンのアナログな特殊効果は極めて衝撃的で、
非常に気持ちの悪い効果を上げている。

映画が作られた80年代の中頃は、世界的にスプラッター物が
持てはやされていた時期であり、現在このような大量の血が
流れるような商業映画を作ることは不可能に近いらしい。
こうした血まみれ場面を撮っていた彼ら自身は、
「実際にはあり得ないことだし、ひとつのジョークとして
こういうシーンを撮影したんだ」と語っている。
(スティヴァレッティらは「デモンズの」過激なゴア場面に対して、
ボソッと「恥ずべきだ」と発言している:笑)

「フェノミナ」で初めて特殊効果の世界に足を踏み入れた
S・スティヴァレッティが、デモンズに付けるパーツを製作、
実際にそれを役者にメイクするのが、ジャネット・デ・ロッシの元で
修行を積んだツワモノ=R・プレストピーノ、
という役割分担になっていたらしい。

今ではすっかりその道の大家となり、フルチの死後、アルジェントから
「肉の蝋人形」の監督に抜擢されたスティヴァレッティだが、
様々な特殊効果が満載された「デモンズ」は、若かりし彼
(撮影当時は28歳?)にとって、一つのチャレンジであり、
自分のキャリアにおいても非常に重要な作品になったと、
彼自身がコメントしている。

映画のコンセプトとして、デモンズはメディアから発生し、
その姿はG・A・ロメロの「ゾンビ」シリーズに登場する
生ける死者のような姿にはしない、ということが
最初から決定されていた。このお約束はパート2では
テレビのブラウン管からデモンズの侵蝕が始まり、
パート3では本=文化・歴史から物語が始まる点を見ても
キッチリ守られていると言えよう。

その他、具体的なデモンズ変身シーンのメイクは
レナートとトニーノのコリドリ兄弟が担当。自社?スタジオを
使って、様々な地獄絵図を作り出すのに貢献を果たした。
また視覚SFX(というか照明?)をヤシント・ブレッティ
(マリオ・ブレッティとする資料もある。この映画の時点で
45年のキャリアを持つイタリア映画界屈指のベテラン照明マン
らしいが、ギャラが高いので「金食いマリオ」というあだ名があるらしい)、
ヘリコプターやバイク、デモンズの面など、劇中の大・小道具
製作にアンジェロ・マッティがクレジットされている。

舞台装置を手がけるデバイデ・バッサンは
アルジェント映画の常連。ついでに編集をスーパーヴァイズ
しているフランコ・フラッシェリもアルジェントの友人だという。

彼らが頑張った特殊メイクは血糊グッチョリで確かに見物だが、
映画の方の作りが大味な為、どうも真剣に怖くならないまま
怪物と血みどろの惨劇を羅列した印象が強い。
予算もかなりかかっているが、結局はバブル映画なんだろうか。


(音楽のC・シモネッティとかに関しては書かなくても良いですよね?)


<映画のロケ地>

舞台となっているのは、製作当時、東西の壁に隔てられていたドイツ、
西ドイツのベルリンが選ばれた。冒頭の駅のシーンは当然ベルリンだが、
電車の発着の騒音が凄まじく、バーヴァは肝を冷やしたと語っている。
このシーンはゲリラで撮影されたのか、電車の乗客が
カメラやN・ホーヴェイをジロジロ見ている様子が画面に
写ってしまっている。

また劇場の外観に使われた古い映画館は、ローマの中心街から
ほど近い場所にあった実在の劇場<アルク>が使われた。
普段は目立たないこの劇場も、撮影後は若い映画ファンが
訪れる観光スポットと化したらしい。
(現在では銀行になっているという)

映画館のホールには「四匹の蠅」や「メトロポリス」
ウェスタンやジャーロのポスターが飾られ、
「フェノミナ」も担当した音響マンのルチアーノ・アンゼロッティは
その場所を「20世紀の地獄の入り口」と呼んでいたとか。
また撮影用に血みどろのメイクされた役者達が
待ち時間を過ごす場所として、劇場横のバールが使われ、
人々はそこを<地獄の夜のバー>と名付けたらしい。
この劇場の名前である<メトロポール>は、どこか古くさい
イメージを出したいという意向で決まった。
もちろんホラー映画発祥の地であるドイツを代表する
サイレント映画の傑作「メトロポリス」からの引用も
含まれているに違いない。


アルジェントの活躍を追ったドキュメンタリー映画
「鮮血のイリュージョン」でも紹介されているが、
映画館に落ちてくるヘリコプターは本物。
なぜ唐突にヘリが墜落してくるのは謎だが、
バーヴァ曰く「ヘリの操縦士がデモンズと化しており、
外界でも既にパニックが広まっている事を示している」のだそう。
因みにこのヘリが「ゾンビ」のラストで、ピッツバーグの
モールを飛び立ったヘリと同一かどうなのかは不明。
(ま、普通に考えてアメリカからドイツへ飛んでこないよね?)


劇中劇のなかで、若者グループが探検に行く廃墟は
1740年に流行した疫病でうち捨てられた教会の建物で、
多くのイタリア映画でロケ地として用いられたという。
実際マリオ・バーヴァも「ブラック・サバス」の1編、
ボリス・カーロフが主演した「吸血鬼ウーダラグ」でこの場所を
使っているらしい。


<公開後の反応>

イタリアでは現在、特にバイオレンスやゴア描写が敬遠される
方向にあるが、それというのも映画プロデューサーの大半が
TV畑出身の人間だからだという。TVでは劇場と違って
暴力描写は極力ソフトにされる傾向にあり、「デモンズ」も
当初はポルノと同じ扱いの18歳未満は鑑賞禁止という
レーティングを受けた。それでは収益が大幅にダウンしてしまう為、
仕方なく幾つかのシーンをカットして「14歳未満は鑑賞禁止」まで
こぎ着けたのだという。なおTVで放映された時には、特殊効果の
ショットは全てカットになったそうだ(バーヴァ談)。

「デモンズ」は世界的なヒットとなったが、バーヴァ自身は
「大して儲からなかったよ。一番儲かったのは・・・
アルジェント、いや、映画のプロデューサーだったティタヌスの
(多分ゴッドフリー・)ロンバルドじゃないか?」と
笑い混じりにコメントしている。


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<無意味コラム「キュービック方式」>

「デモンズ」が公開されたとき、劇中の惨劇が映画を見ている客を襲い、
(それが振れ込みとしては)実際に映画館にいる観客にも波及する
構成を<キュービック方式>と呼んでいたが、この元ネタ?らしき
映画の宣伝を発見。それが立体映画「空飛ぶ十字剣」。

若い方はご存知ないかもしれないが(泣)、ある程度の
年齢以上の方なら名前を聞いた記憶が残っているであろう立体映画である。
この映画の宣伝が<ウルトラ・キュービック方式>。
これを「デモンズ」における恐怖の3次元波及効果に当てはめた?ようだ。

そもそも立体映画は(以下、映画雑誌の受け売り。サンクス、Drスクリーン!)
1935年にMGMが試作し、コロムビアの「恐怖の街(ジェットコースター暴走)」、
ユナイトの「ブワナの悪魔(ライオン暴走!)」、ワーナーの「肉の蝋人形
(ブロンソン暴走)」などで、一時期かなりの人気を呼んだギミック。
ヒッチコックの「ダイヤルMを廻せ(背中に突き刺さるハサミ!)」や
「裏窓」も立体で製作されたが、日本では通常版で上映された。
(ヒッチコック自身、立体効果があまり出なかったと後に述べている)

当時の立体映画は2台のカメラを並べて撮影、2台の映写機で
同時に上映するシステムで、画面が暗い、偏光メガネのせいで
目が疲れる、フィルムを掛け直す際に上映が中断するなどの
欠点が数多くあったらしい。故に同時に開発された巨大スクリーン、
シネスコ上映に人気を奪われてしまった。
(具体的に書かれていないけど、コレがいわゆる赤青メガネの3D?)

しかし立体映画は70年代に入ってアメリカで復活。
撮影にも1台のカメラを使用し、上映も映写機1台で済む新方式が開発された。
しかし、こうした特性を取り入れたのはキワモノのジャンルとされる作品ばかり。
ポルノ映画の「淫魔」「先天性露出狂」、そして英国ゴアの巨匠
P・ウォーカーの初期ポルノ「グレタの性生活」、更にはイタリアの
大御所プロデューサーの命で急遽立体映画化されたP・モリッシーの
「悪魔のはらわた」などがスクリーンを賑わした。

こうした映画では、撮影時に人間の目より少し離れた距離で
レンズを2つ置き、それぞれの像をプリズムを通して1つに結ばせ、
それを上下に分けたフィルムの1コマに同時に記録
(右の像を上、左を下に記録)。映写する際には映写機の先にプリズムを置き、
2つの映像をスクリーン上にダブらせて映写するシステム。

これを一定方向の光しか通さない偏光フィルターを用いた
メガネをかけて鑑賞すると、左右の眼に、それぞれ撮影時に
左右のレンズがとらえた映像が見えるため、結果的に映像が飛び出すわけ。

日本でも3Dがポルノに利用され(題名を忘れたが電球を突っ込んだりする映画)、
その後は香港・台湾へブームが飛び火、日本で3Dが忘れ去られた頃に
上陸したのが、巨大な十字の鉄板が宙を舞い、首を切り落とす
(そういう漫画もあったよねぇ:笑)「空飛ぶ十字剣」だった
(台湾の製作者がアメリカからカメラを借り、製作した映画だそうだ)。

立体映画はネタ切れに悩む現代のウィリアム・キャッスル達にも好評なようで、
80年の頭頃にアメリカでリバイバル・ヒット。チャールズ・バンドが
初期の映画群でさかんに用いた(デミ・ムーアが出ていた「パラサイト」も
立体仕立て→輸入版ビデオは3D仕様だった)。ブームはメジャーにも飛び火、
ちょうどシリーズ3本目を3Dと引っ掛けて製作する脳たりんパターンが激増、
「13日の金曜日part3-D」、「ジョーズ3-D」、「悪魔の棲む家3-D」
などが盛んに作られた(どこがメジャーかは聞かないで:涙)。

比較的最近だと「エルム街の悪夢6」(どこが最近?)のラスト部分が
赤青の立体上映だったのが記憶に残っている。
(輸入版LDは本編と別に立体仕様のラストを特別収録)
そろそろ立体映画復活の気配が感じられる、今日この頃だ。