

↑Jap
TOHO−VHS
ECOLOGIA DEL DELITTO
(aka)
A Bay of Blood
Antefatto
Reazione a catena
Ecology of a Crime
Before the Fact
Twitch of the Death Nerve
Bloodbath
Carnage
Last House on the Left Part II
New House on the Left
1971年 イタリア映画 カラー 約90分 ヴィスタ(1.85:1)
監督:マリオ・バーヴァ
原案:ダルダノ・サシェッティ
フランコ・バルベーリ
脚本:マリオ・バーヴァ
ジュセッペ・ザッカリエーロ
フィリッポ・オットーニ
セルジョ・カネヴァーリ
撮影:マリオ・バーヴァ
キャメラ操作:アントニオ・ライナルディ
編集:カルロ・リアーリ
音楽:ステルヴィオ・チプリアーニ
出演:クローディーヌ・オージェ(レナータ)
ルイジ・ピスティレリ(アルベルト)
レオポルド・トリエステ(パオロ・ファッサッティ)
ラウラ・ベッティ(アンナ・ファッサッティ)
クラウディオ・ボロンテ(サイモン)
クリス・アヴラム(フランク・ヴェンチュラ)
アンナ・マリア・ロザッティ(ラウラ)
イザ・ミランダ(フェデリーカ伯爵夫人)
ブリジッテ・スカイ(ヘルガ)
パオラ・ルービンス(デニース)
グイド・ボッカッチーニ(ボビー)
ロベルト・ボナーニ(デューク)
ジョヴァンニ・ヌヴォレッタ(フィリッポ・ドナッティ)
ニコレッタ・エルミ(レナータの娘:クレジットなし)
バーヴァがキャリアの後半に発表した「血みどろの入江」は
「モデル連続殺人!」や「ファイブ・バンボーレ」と同様に
金や権力を巡る果てなき欲望から起きた残忍な殺人事件を
描いたジャーロ映画ではあるが、70年代という時代柄
その描写はかなり激しく、暴力的になっている。
しかし、ドナッティも謎の殺人者にナイフで背中をメッタ刺しにされて
息絶える。殺人者はドナッティに容疑がかかるように、
その死体を見海に投げ捨ててしまう。警察はその遺書から捜査を進め、
フェデリーカ伯爵夫人の死を自殺と判断するが
行方不明になっている夫のドナッティの消息に興味を持つ。
フェデリーカ伯爵夫人の死によって、彼女にしつこく入江の
リゾート開発計画を勧めていた企業家フランク・ヴェンチュラは、
彼の秘書で愛人でもある美女ラウラと共に伯爵夫人の実の息子
サイモンを言いくるめて、入江の権利を乗っ取る計画を立てる。
実はヴェンチュラこそが、ドナッティに伯爵夫人の殺害計画を
吹き込んだ張本人だったのだ。
ヴェンチュラはラウラの美貌を盾にドナッティを言いくるめ、
ラウラもドナッティに気がある振りをして彼に老妻を殺害させたのだ。
唯一ドナッティが知らなかったのは計画が成功したあかつきには、
彼自身も消されてしまう手はずになっていた事だった。
そのころ入江では、浜辺に小さなコテージを持つ昆虫学者の
パオロ・ファッサッティが虫取り網を手に、入江に生息する珍しい昆虫を
標本用にとらえようとしていた。入江沿いの林の中を歩き回るうちに、
ファサッティは粗末な掘っ立て小屋に住む伯爵夫人の息子サイモンと出会う。
サイモンは粗暴な性格で、あまり知能が高くない不気味な
容貌の男だった。彼は入江にいる魚やタコを捕獲して
自給自足の生活していた。
そんなサイモンには、虫を追い続けて悠々自適の生活をする
ファサッティが腑抜けた人間に見えているようで、
彼らの交わす会話にはどことなくお互いを見下した
雰囲気が感じてとれた。
しかしファサッティがフェデリーカ伯爵夫人は
自殺ではなく、他殺ではないかと口にした瞬間、
にやけていたサイモンの表情が一変し、
思ったことは何でも口にしてしまう無邪気な
ファサッティに向かい、恐ろしいくらいの表情で
「あれは自殺だったのだ!」と強調するのだった。
一方、ある若者グループが季節はずれのバカンスを楽しもうと、
車で入江に乗り付けつつあった。若くて悪びれない彼らは、
道すがら見つけたヴェンチュラのコテージに無断で侵入し、
レコードをかけて踊ったり、セックスをしたりして思い思いの時を過ごす。
しかし、そんな彼らの喧噪ぶりを物陰からジッと
見つめている悪意に充ちた眼があった。
ヴェンチュラの傀儡となってドナッティを殺害した
サイモンの神経は享楽的な若者達を見て異常興奮し、
巨大な鉈を手にすると、まるでゲームを楽しむかのように、
彼らを一人ずつ血の海に沈めていく。
ベッドでセックスしていたカップルは槍で串刺しにされて
血の海にのたうち、部屋で過ごしていた大人しい青年は、
突然顔面に鉈を叩きつけられ、
頭を真っ二つに割られて絶命する。
最後に生き残ったのはグラマーな金髪美女だった。
仲間達が残忍に殺害されていることを全く知らない
彼女は入江で一人、ちょっとした海水浴を楽しんでいた。
しかし自分のすぐ脇に浮かび上がってきた無惨な
ドナッティの水死体を発見し、悲鳴を上げて
逃げ回るうち、サイモンに襲われて鉈で首筋を
切りつけられて息絶える。
血しぶく凄惨な殺戮が終わり、サイモンはヴェンチュラから貰った
仕事金で田舎に逃げ、新しい生活を送る事になっていた。
全てはヴェンチュラの思い通りに進むように思えたが、
彼が唯一見逃していた完全犯罪の計画ミスはドナッティの実娘である
レナータも、入江が生み出す大金を狙っていた事だった。
ヴェンチュラはサイモンにレナータをも始末してしまうように命令する。
父親のドナッティと違って、頭の切れるタイプの美女
レナータは彼女の尻に敷かれているタイプの夫アルベルトと、
2人の幼い子供を連れキャンピング・カーで入江にやってくる。
大金を手に入れる為には殺人も辞さないレナータの態度に、
アルベルトは後込みするが彼女の言葉に焚き付けられて
渋々協力する事を承諾する。
まずは入江の近くにあるファッサッティ宅を訪れた
レナータ達は伯爵夫人の死や、父親の様子を
ファサッティに尋ねる。
ファサッティの妻で奇妙なカード占いに取り付かれた
中年女アンナは、この入江に死神がやってきているから
注意するようにとレナータに忠告する。
彼らの話しぶりから、恐らく伯爵夫人を殺害したのが
父親ドナッティであり、その父親が行方不明になっているのは
サイモンの仕業であろうと判断したレナータとアルベルトは、
サイモンの小屋を訪ね、そこで無惨な姿に変わり果てた
ドナッティの水死体を発見する。
ショックでその場から逃げ出したレナータは、ヴェンチュラの
コテージに辿り着くが、そこにもサイモンが虐殺した若者達の
死体が無造作に転がっていた。
後を追ってきたアルベルトにファサッティ宅に戻って
電話を借り、警察に連絡を入れるように指示したレナータは、
足音を忍ばせてやって来たヴェンチュラに襲われる。
格闘の末、手にしたハサミでヴェンチュラを刺し殺した
レナータの姿を今度はファサッティが目撃しており、
動転した彼は自宅に戻って警察に連絡をしようと
受話器を取り上げる・・・しかし背後にいたアルベルトは
反射的にファサッティの首を絞めあげ、彼は
もがき苦しんだ末に死んでしまう。
夫の行動を知ったレナータは、騒がしいアンナを襲い、
その首を斧で切り落として口封じをしてしまった。
ヴェンチュラを探して、万事がうまくいっていると思いこんだ
ラウラが入江に到着する。しかしサイモンの元を訪れた彼女は、
最愛の母親をドナッティに殺害させた事実を知って逆上した
サイモンに詰め寄られ、全ての計画を話してしまう。
怒りで我を失ったサイモンはラウラの首を絞めて窒息死させ、
レナータ達を探そうと鉈を手に小屋の外へ出てくる。
しかし、そこで待っていたのはアルベルトだった。
長い槍を構えた彼は、その切っ先をサイモンの腹めがけて
力任せに突き刺した。
ちょうど昆虫標本の虫のように壁に串刺しにされた
サイモンはアルベルトに切りつけようと、
鉈を振り回すが、次第に力つきていき、
ドロリとした血の固まりを吐き出すと首をうなだれて絶命した。
血で血を洗うような連続殺人が終わり、伯爵夫人の遺産として
入江の相続権を手に入れたレナータとアルベルトは
自宅へ帰って相続の手続きをしようと笑いながらキャンピング・
カーに戻ってくる。しかし、そこで待っていたのは、
両親からずっと放って置かれ、退屈しのぎに、
車にあったライフル銃を手にして遊ぶ子供達だった。
両親に照準を合わせた子供達のライフルが突然暴発し、
レナータとアルベルトは銃弾を受けて、その場に倒れ込んでしまう。
両親が死んだことに気づかない子供達は、太陽が輝く浜辺へ向けて
今度は自分達が楽しむ番だと言わんばかりに駆け出していくのだった。
「血みどろの入江」は同じ70年代初期にバーヴァによって作られた
「ファイブ・バンボーレ」と非常に良く似ている。しかし日本ではCDしか
リリースされていない「ファイブ・バンボーレ」とこの映画を見比べるのは
そう簡単な作業ではないが、基本的な設定はほぼ同一と言って良く、
大きな違いは一方が視覚的な血みどろ描写を重視した作りで、
もう一方がそれよりもストーリーや雰囲気を重視した作風に
なっている点である。
この映画の原案を担当したのは、後にダリオ・アルジェントと組んで
「フェノミナ」等を発表することになるダルダノ・サケッティ。
マリオとランベルトのバーヴァ親子、アルジェント、フルチら
イタリアン・ホラーの巨匠達と長年に渡ってコンビを組んでいる
彼の仕事ぶりは注目に価するが、この映画では主要な登場人物のうち
強欲なのは基本的に女性達で、彼女たちは夫や愛人となる男達を
自分の言いなりに操っているイメージがある。
同じジャーロでも愛する男のために殺人に手を染め、自滅していく
ヒロインが印象的だった「モデル連続殺人!」は、遙か昔の話という
ことになるのだろうか・・・。<女性が強い>という演出は
「ファイブ・バンボーレ」よりもこちらの映画の方がより顕著に
描かれており、こうした極端なキャラクター(特に悪に特化した)を
登場させることで、観客に(良くも悪くも)感情移入させ易くする
作りは「土曜ワイド劇場」と同じ手法だといえよう。
殆どのバーヴァ作品同様、この映画でも彼自身が撮影を担当、
オープニング、豪邸で繰り広げられるシーンはどこか
かつての優雅な画面作りを思い起こさせる仕上がりだが、
一転、本編はロケを中心にした現代的な雰囲気の画面になっている。
ズーム・アップ/バックを多用したキャメラ・ワークは
やや手抜き?の印象もあるが、基本的には巨匠が楽しんで
作ったようなムードが横溢する1本である。
以前、某出版社から出た映画本のアルジェントの項で、この映画の
「飛んでいるハエが突然、ポチャンと湖に落ちる」シーンに関する話題が
ちょっとだけ出ていて、そこでは余りの<意味なしぶり>がアルジェント的と
批判されていたのだけれど、海外にあるバーヴァ・サイトの評論では
このシーンの事を明らかに意味のないシーンと認めたうえで
「これは映画の主要な2つのテーマである<突然の死>と、
映画の登場人物達が汚物に集まる<うるさい蠅>のような
存在であることを示している」と批評しており、つくづく
批評ってそれを書く人間の文化的な背景が影響するのだなぁと
思わせてくれる出来事だった(墓穴掘ったかな??)。
さて、この映画一番の特徴(というか見どころ)と言えば、
ビデオ・パッケージの宣伝にも謳われているように
「あまりに過激で物議を醸し出したスプラッター度」に尽きる。
この映画で描かれる血みどろの惨劇は、斧での首切りに始まり
鉈によるメッタ切り、鋭利なハサミやナイフで一突きなど
血糊がいくらあっても足りないようなゴア場面をメインに、
ジャーロ映画の世界ではトラディッショナル?な絞殺や、
ライフル銃での射殺も出てくるなど、まさに残忍な死に様の
オンパレードといった趣き。
この中で、セックス中のカップルが槍で串刺しにされる場面や
鉈が顔面を真っ二つに割って食い込むシーン出てくるが、
一部のファンの間で、これが「13金」のオリジンと噂された事もあった。
確かにリゾートにやって来て、自由気ままな行動を満喫している
ティーン達が格好なえじきになる展開も、「13金」や数多の
スラッシャー映画と共通する設定なのだが、イタリア人はとかく
モラルにはそれ程うるさくはないようなので、これがアメリカ同様
妙な<ピューリタニズム>の副産物であるという事はなさそうだ。
彼らは淫らな(でもないか)セックスを楽しんでいたから
罰として殺人鬼に殺されてしまったのではなく、
単に周りに注意を払わなかったからに過ぎない。
それに実際に「13金」の関係者であるショーン・カニンガムや
ウェス・クレイヴンらが「血みどろの入江」を観ているのか、というと
それはかなり疑わしい。
でも、もし彼らが全くこの映画を知らずに「13金」的な
<殺しのカタログ映画>を撮ったのだとしたら、目に見えない
奇妙な影響関係が背後に存在しているようで、ちょっと不気味な感じだ。
こうした血みどろ描写が70年代の映画としては、かなり視覚的に、
またインパクトたっぷりに描かれているので、海外で「血みどろの入江」を
完全な形で観ることは長い間(そして一部では現在も)不可能だった。
イギリスのレデンプションから出ているビデオも残虐場面がカットされている。
日本で東宝から出ているビデオは(幸運にも)ノーカットなので、
我々日本人はまたしても、最も完全な形でこの映画を観られた
観客ということになる。う〜ん、幸せだなぁ〜。
出演陣もなかなか豪華。「エスカレーション」や「水の中の小さな太陽」で
年上の美しい女性を見事に演じたフランス女優、クローディーヌ・オージェが
その美しい顔の下に潜む強欲さで、我が手を血に染めるヒロインを
演じているほか、ジャーロ映画を初め、数々の娯楽作品に出演している
クリス・アヴラムが悪徳ブローカーのヴェンチュラを、ルイジ・ピスティレリが
ヒロインの夫に扮している。冒頭で殺されてしまう伯爵夫人には
やはりジャーロ物で良く顔を見るイザ・ミランダ、
手斧で首を切り落とされてしまうガミガミ女房には、パゾリーニ映画の
常連女優ラウラ・ベッティ。実生活でもかなり怖い女性らしい
ベッティはバーヴァの「クレイジー・キラー:悪魔の焼却炉」でも
口うるさく強欲な妻を演じていた。その後、フランコ・フェリーニの
監督デビュー作となった「白い肌に潜む罠」にも出演している。
クレジットの順番が下がって、小さな役になるが印象に残る
出演を果たしている女優さんを2人紹介しておこう。
一人は全裸で水泳を楽しんだ直後に、残虐な殺され方で
画面から消えるグラマー美女、ブリジッテ・スカイ。
彼女は海外のファンの間では妙に人気がある女優さん。
もう一人は、この映画のビックリ・エンディングで重要な鍵を握る
2人の子供のうち、赤毛の少女を演じているニコレッタ・エルミ。
ナタリー・ドロン、スーザン・ストラスバーグが共演した「姉妹」(69)で
スクリーン・デビューしたエルミは、アルジェントの75年のジャーロ
「サスペリア2」の不気味な少女役を頂点に、様々な映画で
<邪悪な子供>を演じており、マッシモ・ダラマーノの「Night Child」では
リチャード・ジョンソン、イヴリン・スチュアートらを相手に
初めて主演級の役柄にも挑戦、どこか不吉な印象を与える
独特の表情を最大限に活かした好演をみせている。
↑左側の少女がN・エルミ
彼女は1972年にバーヴァが撮った「処刑男爵」にもクレジットなしで
チラリと出演し、長いブランクの後、1985年に息子ランベルトの
「デモンズ」に映画館のもぎり嬢役で復帰を果たした。
「デモンズ」の撮影当時、実は30歳前半であったにも関わらず、
彼女は未だ<不吉>なチャーミングさが健在である事を示してくれたが
その後の出演作が全くないのは本当に寂しい限りである。
本人が言うには「エージェントを付けていないから依頼が来ない」
のだそうだが、「まだ特別女優をやりたい訳ではないし、時期が巡れば
自然に仕事という物はやって来る物よ」とも発言しているので、
今後にもわずかな期待が持てそうな気がする。