ちびキング by 海月 【〜Stepen King “Heart in Atlantis”〜】

 

監督:スコット・ヒックス
脚本:ウィリアム・ゴールドマン
製作総指揮:ブルース・バーマン,マイケル・フリン

出演:
  アンソニー・ホプキンス  (テッド・ブローティガン)
[「羊達の沈黙」「日の名残り」等に出演]
  ホープ・デイヴィス     (リズ・ガーフィールド)
  デヴィッド・モース      (ボビー・ガーフィールド)
  アントン・イェルチン    (ボビー・ガーフィールド/少年時代)
  ミカ・ブーレム       (キャロル・ガーバー)
  アラン・テュディック     (モンティ・マン)
  ウィル・ロスハー      (サリー=ジョン)
  

  母親と二人暮らしの少年の家に下宿人としてやってきた老人には不思議な力があった。少年と老人はやがて,お互いに心を許しあうのだが,,,

  原作は,次の5つの物語から構成されています。
 「1960年 黄色いコートの下衆男たち」
 「1966年 アトランティスのハーツ」
 「1983年 盲のウィリー」
 「1999年 なぜぼくらはヴェトナムにいるのか」
 「1999年 天国のような夜が降ってくる」

  このなかの「1960年 黄色いコートの下衆男たち」「1999年 天国のような夜が降ってくる」を基に映画化をしています。原作のそれぞれの話は,それぞれ絡み合っているものの,独立した話としてみることもできるため,基本的に映画のストーリーとして無理なところはないと思います。もちろん,そうはいっても完全に,とは言い切れませんが。

  私は映画を見た後,原作を読みました。どうしても原作の雰囲気や登場人物の心情などを映像化するのは難しいので,映画を見た後に原作を読むという順番の方が落胆することが少ないかなと思います。どうしても原作を読んでしまうと,その内容全てを映像化して欲しいと望んで(期待して)しまいますから。

  映画単体として見たとき,スコット・ヒックスのその映像感覚や手堅い演出,そしてアンソニー・ホプキンスの堅実な演技に輝く子役の演技と,そこそこの仕上がりです。特に,個人的にはボビーの彼女的なキャロルの役を演じたミカ・ブレームが素敵でした。向こうの女の子って,本当に小さい頃に女性としての魅力を身につけますよね。とても笑顔が素敵でした。

  ただ,原作と比べてしまうと,っていうところはありますね。まぁ,しょうがないといえばしょうがないのでしょうが,やはり原作を読んでしまうと深みに欠けるというか,どうしても表面的になぞっただけの作品となってしまったような印象が残ります。

  

  以下は,原作との比較(ネタバレ) 感想です。 注意してください。

  映像化するにあたって,やはり原作と違うところがあります。主な相違点といえば,,,

1.テッドを追いかける黄色いコートの下衆男達の正体

  原作はキングワールド(ザ・ダーク・タワーの世界)から来た男達(人間ではない別なもの)になっているのに,映画ではある機関に属する(現実の人間の)男達となっています。当然,テッドの役割というのも,原作の破壊者から単なる相手を見通す力を持つ男と異なるものとなっています。

  まぁ,映画において(他の作品との繋がりもある)キングワールドを表現するのには無理があるのでしょうがないとは思いますが,そこを現実の世界に置き換えることによって,話の中に釈然としない部分が発生してしまっています。

  結果して,ボビーがテッドを助けようとする部分の話しが抜けているため,若干屈折した話の展開となっている原作と比べ,映画は爽やかに終わってしまっています。

 

2.話の広がり

  映画化されるにあたり除かれている原作の3つの話は,無くても話としては繋がるものの,やはり原作「アトランティスのこころ」と比較すると,どうしても必要な話ではあります。最初の「1960年 黄色いコートの下衆男たち」から「1999年 天国のような夜が降ってくる」までを繋ぐ,大切な話だと思うんです。

 

3.サリー=ジョンの葬式にて

  映画ではサリー=ジョンの葬式に行って,昔を思い出す,,,っていう展開ですが,原作は昔から年が経っていくような構成をとっています。

  さらに,サリー=ジョンが持っていたというグローブについても,原作と映画は異なりますね。映画では,少年時代にサリー=ジョンが「いつかおまえにやるよ」みたいな約束をして,それを実現した,っていう風になってます。やはり,原作の方が深みがありますよね。

  そして,映画では既にキャロルは死んでおり,その娘に出会うようになっていますが,前作では生きていて再会しますし。

 

  原作と映画で共通しているんですが,,,

1.リズ・ガーフィールドの性格(?)

  読んでいて(見ていて)腹立たしいのが,ボビーの母親のリズの性格でしょうね。子供には,父親がどんなにひどかったかという事や,お金がないないという事ばっかり言っている。そのくせ,自分の服はどんどん買う。人の好き嫌いが激しいし,相手を思いやるという部分に欠けている女性。

  最高潮に達するのが,やはりテッドがキャロルを治療しているところに戻ってきて,勝手に勘違いするところ。そして,やつらにテッドを密告するところでしょうね。

  自分が一番可愛いっていう,この手の女性,嫌ですねぇ。結構,映画ではあっさり許しちゃっていますが,やっぱり原作くらい,捻くれてもらいたいとは思います。