★★★☆(2000.6.10)
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『ストレイ・ブルース/ベック』 シングルBサイド楽曲集。 このCDは来日記念盤なので、先のベック来日公演(5月31日日本武道館)についてアレコレ…。 会場に入ってステージに吊されたミラーボールを見た瞬間に僕はベックの勝利を確信した。冒頭のファンキーなイントロダクションでソウルレビューを模倣してみせるベック。ステージ・コンセプトの明確なプレゼンテーション。 つまり、「これは楽しいソウルショーだから踊ってネ」、と。 ところがどっこい『ミッドナイト・ヴァルチャーズ』からの楽曲で僕は異変に気付く。 ベックの下手ッピなダンスに微笑んでいた僕は凍り付いた。武道館という特大フロアのダンスを観客と楽しみながら、あの男
とんでもないことを企んでやがった。 ミキシング・コンソールが楽器として機能していた! あの男、「武道館5.31MIX」を楽しんでやがったんだ。1つの楽曲中にイコライジングが変るような箇所もあった。 ベックは彼自身が初めて聴く“新しいミックス”に興奮して踊っていたんだ。(たった1日の公演で判断しています。ミキサーの反応に対してプログラミングされていない即興的な音響だなと感じた次第です) 心底、恐ろしいと思った。 中間のアコースティックセットでは弾き語りの独奏。ここでリセットボタンが押され、「新し過ぎるソウル」と「本能としてのブルース」という両極が強引に編集される。 ソウルレビューショーに対する愛情は充分にあるんだろうけど、ソウルをクールにコントロールし、やんわりと批評もしてみせる。堂々と「嘘」も混ぜてみせる。 ベックは「隙だらけの可愛い奴」を演じつつも、隙は皆無だった。 僕は幸福だ。ベックと同じ時代に同じ星の上に暮らす事実を幸福だと思う。 本作ではベックの「本能としてのブルース」が聴ける。 それは例によってイビツだ。
関連(1・2・3・4・5)
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★★★☆(2000.6.10)
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『インスタント・リプレイ/ダン・ハートマン』 1978年発売のアルバム。 個人的にその時代のディスコは最近ずいぶんと聴き続けた。ヴィレッジ・ピープルやボニーMまで聴いているからね、僕。 そんな耳で聴く本作は「うんうん、70年代終盤のディスコだよね」って感じ。 しかし、ジャミロクワイを聴いた耳で聴く本作は「おっと、音質さえ今風にしたら使えんじゃん!」って感じ。 ベックの解釈によるディスコも比較対象にして聴く本作は「何故、ここでこのシンセが鳴るわけ!?
アレンジもミックスも変っ!」って感じ。 僕が何を言いたいかと言うと、リスニングのポイントを移行すると印象が変るんだよ、本作。 つまり、ダン・ハートマンは気付いている。ディスコ楽曲が許容する情報量のマジックに。 そして、僕が狂ったようにディスコに執着する理由も同じだ。 ディスコビートを解析すると呆れるほどにシンプル。ベースラインもパターンさえ持続させればコードの自由度は高い。上モノは音数が多くなってもゴージャスな印象として情報処理される。 どう?
おいしいでしょ? 何をやってもOKって意味なんだよ。ポップでダンサブルでさえあれば、実験的であろうとも収束できるんだよ、ディスコは。 本作はテクノ、P−ファンク、フュージョンなどを飲み込んで、めまぐるしく展開する。 ダンス音楽としてのスペックさえ満たせば、音楽は作者の自由自在。 これが(良質な)ディスコの正体だ。 本作は時代を超越したモダン・ディスコだ。ジャミロクワイやベックの音楽のヒントが詰まっている。 ギッシリと、ね。
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★★★★(2000.6.18)
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『犬神家の一族/大野雄二』 空前のヒットとなった同名映画サントラ。個人的に大好きな映画だ。何が良いって“湿度”だね。 湖の辺りに建つ大型木造建築という環境に立ちこめる湿度。複雑な血縁関係と俗欲にドロドロと絡み付く湿度。 ビジュアルとシナリオが内包する狂おしいまでの湿度を微弱に加湿するのが大野雄二の音楽。ポイントは深くコーラス処理されたフレットレスベース。(ミック・カーン以上にブヨブヨ) 僕は何度も映画を見直したしアナログのサントラも愛聴したが、本作を聴いて多くの発見をした。テーマ曲がこれほどまでにニノ・ロータを意識していたとは!
オーケストレーションは露骨にポール・モーリア的だ。 しかし、これに70年代の空気と大野雄二の生理が加わることによってオリジナルの“湿度音楽”が完成する。ジャズフュージョン的なリズムアレンジやジャズ指向の対位法を多用したアレンジがそれにあたる。琵琶、ダルシマ、シンセサイザーの使用も刺激的。ギター中心の楽曲は“純日本ロック”(井上堯之や宇崎竜童など)を思わせる。 ライナーによると監督の市川昆は16トラックで完パケた楽曲をシーンに合わせて編集し直したという。 角川春樹の野心が全ての制作環境(主に資金)を整えたという幸福な状況であったにせよ、ここまで充分に神経を研ぎ澄ました映画音楽は邦画史上でも稀なケースだろう。そして、結果論としても本作は伊福部昭が残したゴジラ映画の音楽とともに映像を的確に刺激した音楽として稀なケースだと思う。(どちらもオルガンで主旋律を弾くような安易なサントラじゃないわけだね!) ジャケのデザインは気に入らないね、全然。
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★☆(2000.6.18)
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『フックト・オン・ブラウン/ジェームス・ブラウン』 驚いた。こんな録音物があったのね。 昔、『STARS ON』ってあったでしょ? ビートルズの楽曲をノンストップでメドレーにしたアレ。アレのJB版。ただし、本作は『STARS
ON』のような物真似上手の品評会ではなく、JB御大が歌唱。96年に制作された正真正銘の新録。JB自らが演じる“JBチャンチャカチャン”だ。バッカでぇ〜、と言うなかれ。JBのライブって非常に優秀な“チャンチャカチャン”であって、つまりライブにおけるメドレーの楽しみをスタジオで音盤に刻んだ、と。 意味ないじゃん、と言うなかれ。うーむ、やってみたかったんだろ、きっと。そうなのさ、僕にもフォローしてあげられないさ。意味ないじゃん! 収録された3バージョンにはダブリ曲が多いし、ハウスビートを意識したアレンジも中途半端で、強引にBPMを揃えているから気持ち悪い。老いたりとは言え、ライヴの方が良いや。若き日のステージ写真をジャケットにあしらうなんざ、JB親分の気合も満々なんだがハズしたな。OK、OK。JBがハズすってのは、ある意味「当り」だもんね。 さて、最強のメドレーバリエーションなんですが、きっとJBの死後に無数のライブバージョンで発売されることでしょう。 待ち遠しいけど、僕としては1日でもリリース日が先に延びることを祈る。まだまだ、アンタを失いたくはないんだよ。 全てのかけ声にまで翻訳をつけた対訳には笑った。(だって、コール&レスポンスの回数まで明記してんだぜ。プププ〜)
(関連)
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★★(2000.6.24)
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『each life each end/POLYSICS』 売れるんだってな、J-インディーズ。 「J-インディーズ」って言い方、ムカついた? けど、売れてるらしいぜ。メジャーレーベルのパンクは売れないけどインディーズのパンクは売れる、なんつう話を聞いた。 「メジャーとインディーズ論」なんざ展開する気は更々無い。あぁそうなんだ、てなもんで。 で、当コーナー2回目の登場となるポリシックスなんだが、本シングルはメジャーレーベルからのリリース。インディーズ時代の志を見事に継続。(僕はデビューシングル以来、一足飛びで聴いているので経過は知りませんが…) ポリシックスここに在り、っつうサウンドとテイスト。ベースの人が脱退したらしいけど、あんまり変化は感じなかった。いや、サウンドメイキングがスキルアップしたという意味では変ったか…。 紅一点のkayoちゃんをフューチャーしたのも新機軸。 あらら、僕、一生懸命に変更点を探してるなぁ。つまり、刺激が無かったんだよ、本作。 デビューシングル(←Click!!)の衝撃は継続によって薄まってしまった。通常テイクとカラオケバージョンが全く違う音で構成されていることに気付いても「なるほどネ」と思うが驚けない。 “衝撃一発のバンド”の宿命と言ってしまえばそれっきりなんだが、ステップアップに苦労しそうだな、ポリシックス。変化が無いとキツいぞ、テクノポップは。今更P-MODELとプラスチックスとB-52を学習されても困るぞ。 「インディーズ時代は良かったよねぇ」なんて言われるのはシャクだろ? スタートラインで「あがり」になってしまったバンドじゃ笑えない。インディーズで“あがった後”に全国流通してもなぁ。 僕はポリシックスには期待したいんだぜ。
(関連)
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★★★☆(2000.6.24)
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『Mars/テイ・トウワ』 今週は邦楽テクノポップ系が2本。テイ・トウワ(以下、TT)は本コーナーに3度目の登場。あまり意識していないつもりなんだが、僕はどうやら好きなんだな、TT…。 いや実際、改めて「好きなのかな?」と意識してみない限り、僕の中でTTの影は薄いんだよね。リリースされるといつもガーッと聴き込んでいるくせにネ。 新作を聴くたびに楽しみなのはジャケ(およびプロモーション用のビジュアル)とサウンド構成。 今回のビジュアルはウルトラセブン化したTT。セブン的な“決め”の模倣が無くても、はっきりとウルトラセブンと理解出来ちゃうのがおかしい。 サウンド構成は、またしてもアップデート。生のストリングスが導入され、スイートなくせに刺激的な音像を構成する。打ち込みによるチョッパーベースと生ストリングスの掛け合わせが生み出す異化作用にゾクゾクする。TTのリズム感覚には独特の癖があって、何と言うかツッカエるようなツンノメリのビートが良いなあ。淡泊だけれども存在感のある低音成分に漂う品格も気持ち良い。底冷えするようなクールなサウンドなんだが、なんだか心が温もる。ボーカルに起用されたハラダイクコ(クラムボン)の個性的な歌唱が低い体温ながら、確実な温もりを残すんだな。 田辺あゆみやチャラよりもTTとの相性は良いかも知れない。 2種類のリミックスも楽しかった。このビートが最近話題の2-ステップなんすかね? 気持ち良いね、これも。
(関連1・2)
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★★★(2000.7.01)
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『2STEP/V.A.』 ロンドン発のニュービーツ。 ロンドン・ビーツの標準はハウスに代表される“キック4つ打ちビート”であると認識する。そして、ある周期を経て反動が来るわけだな、ロンドンには。“ジャングル”がそうだったように。 さて、2ステップ。 キックは執拗に4つ打ちを避ける。意地でも均等感を作らない。拍頭にキックを打たなかったり、曲の展開に沿ってキックパターンが変化したり。 ところがスネアは2拍&4拍で均等に鳴り続けるなど、ヒネくれてる。 おかげでポッカリと空白が生まれてしまったりする英国サウンドらしからぬハプニングも面白い。 均等化を回避したビートが拍の中で片寄りを持つ構造に起因する妙なツンノメリ感も最初のうちは違和感を感じたが、馴染んでくるとなかなか快感。 ジャジーなエレピやソウル系の歌唱とは相性が良いようだ。 などと肯定的な意見を書かせていただきましたが、最後まで“理屈っぽさ”を拭えなかった。 なんつーか、せせこましいんだわ。これ、踊りにくいべ。 つまり、エレピやボーカルによる核が無ければ、結構キビしいかも。ソウルソウルがグラウンドビートを発明した際にキャロン・ウイラーの名唱を必要としたように、2ステップも付加価値に頼らねばならない脆弱さを否めない。 などと否定的な意見も付け加えさせていただきましたが、このビートは可能性があるネ! あるよ! 完全打ち込み型ビートであり、テンポが速い。しかもテクノじゃあない。 このクールな印象は買いでしょう。 完成までの期間は今から3ヵ月、と見たい。
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★★★★(2000.7.01)
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『“狂言メッセージ/DON'T
YOU”/BOAT』 一見、デキの悪いP−FUNKフォロワーを思わせるギンギラ、ギトギトのジャケ写。この手合いは中途半端なオフザケか、本気の音楽野郎か、どっちかなんだな。 その答えは1曲目の途中で判明。後者です、間違いなく。 バンドサウンドのダイナミズムを残しつつも、ザクザクしたローファイ感覚を自在に操り倒すアレンジとミックス。そして“マニアックの限界”ギリギリで寸止めするポップなセンス。 歌モノもインストも楽しかった。マリンバなんかも登場しちゃうモンド風インストを、突如ハードにヒズませまくる展開なんかはゾクゾクもん! ミクスチャーだね、これぞ。 しかも、理屈っぽくないところが良いんだ。歌詞も言葉遊びを入れつつ主張は崩さないというハイセンスっぷりにも関わらず、スノッブな匂いがしないんだな。 フザけているようには受け取れないんだが、明るくてチャーミングでファニー。 ディストーションでひしゃげたボーカルが下品にシャウトを決めた直後にキッチュな女の子コーラスが入るなど、ともかくバランス感覚に優れたクリエイトセンスに脱帽。 リスナーによって楽しみ方も十人十色だろう。 マーケティングなんてクソくらえだ! テメエの聴き方を主張しな! スポットライトを受けるクリエイターが試される時代から、リスナーが試される時代への転換。 それで良いんだ。 それでなければ救われないんだ!
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★★★☆(2000.7.10)
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『ユナイテッド/フェニックス』 フランス発の“優秀なポップバンド”。 最近、ポップが駄目でねぇ。 あー、つまり…、「ギターポップ」とか「ブリットポップ」のニオイがするとたちまち萎えちゃう。 不自然にヒネったコード進行とフニャフニャな歌唱…。うむ、ポップにゃ違いない。 だが、もういい! このアルバムもボーカルが登場した瞬間には気まずいムードが立ちこめた。 鼻にかかった細い声。欧州圏ポップの典型。特にフランスは、ね。 しかし、アルバムが展開するにつれ、僕は身を乗り出した。 巷では“80年代のエッセンス”などと評論されているが、僕には茶化した80年代パロディには聴こえなかった。スクリッティ・ポリッティとプリンス風ロックファンクネスの影響が感じられ、それは80年代には違いないのだが、しかし…。 フェニックスはアレンジ力も演奏力も作曲力も確かな実力を持っている。世界のダンスシーンやオルタナティヴシーンを解析した結果行き着いたのが80年代的アレンジだったのだろう。(打ち込みも含めた)リズム隊は低音に気配りを忘れないし、オルガンやクラヴィネットを多用した“いなたいサウンド”も骨太で好感が持てる。 惜しむらくはボーカル曲よりもインストゥルメンタル楽曲やバックトラックの方が楽しめたこと。ボーカルにボコーダー処理が加わると途端に聴き心地が向上。 ブヨブヨのボコーダーボイスでブルースをおちょくった挙句に80年代プリンス風のスクエアな打ち込みファンクに展開し9分間走り続けるラス前の曲がカッコ良かった。この曲には次の地平線が見えた。 フェニックス、もっと暴れろ!
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★★★☆(2000.7.10)
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『THEME FROM “GUTBUSTER”/ベントリー・リズム・エース』 ビッグビートの立役者、らしい。よく知らない。 そもそもビッグビートってプロディジーとかケミカルブラザーズみたいなデジタルロックのことだったよなぁ。 あれ? ファットボーイ・スリムは違うんだっけか? 調べるのも面倒臭いから迷わず進行する。 ベントリー・リズム・エース(以下、BRA)は端的に言って“サンプラーを駆使してロック的な肌触りを獲得したサウンド”。プロディジーよりはファットボーイ・スリムに近い印象。ゴツゴツと潰れて、ローファイ化した各パーツが“存在感は有るけれども自己主張はしすぎないバランス”でビートに寄り添う。 ベースとドラムのループに対して、ファニーなシンセフレーズや唐突なギターコードのループが“自己中心的なタイミング”で参加してはミュートされる。 ハッピーなサウンドだ。真剣にリスニングするよりも、気の合う仲間達とフロアやドライヴで音量上げて聴くのが良いね。もちろん、サンプラーの使い方は参考になるのでじっくり聴くも良し。 ボーナストラックとして収録されているプロモーション用のビデオクリップもハッピーだった。 氷に閉じ込められた白人2人(メンバー?)をエスキモーが救出。救出方法は狂ったようにダンスして、エネルギーを蓄え、火を吐く、と。 くだらないでしょ? でも、ハッピーサウンドをバックに見たらなんだか笑ってしまった。アメリカの短編アニメを見たような損も得も無い笑い。 ついつい気を良くして「どれ、もう1回」なんつって聴いてしまう。 これを「音楽」として評価することは不毛だと感じた。ハッピーアイテムでしかないんだもの。 結果を言えば、僕は、好き、です。
(関連)
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