今週のCDご紹介9

『Short Music for Short People/VA』 『アンプラグド/ドノヴァン』 
『ステレオタイプA/チボ・マット』 『カリフォルニケイション/レッド・ホット・チリ・ペッパーズ』
『トランジット・ラウンジ/DLプロジェクト』 『若大将トラックス/加山雄三』
『レ・リズム・ディジタル/ダーク・ダンサー』『100% HAPPY LATIN 3/VA』 
『フィラデルフォニック/G.Love & スペシャル・ソース』『ディス・タイム/ロス・ロボス』
評価は5段階です。(★が得点。☆はオマケ)

 

★★★

『Short Music for Short People/VA』 101バンド分のパンクソングを50分に詰め込んだアルバム(1曲が30秒以下!)。矢継早にガンガンと連射される“パンク砲”は快感。 ジューサーに直接口をつけて、次々と放り入れられる野菜や果物のジュースをグビグビと飲んでいるみたい。ジュースだから、ガンガン喉を通過。でも、ジューサーの蛇口に口をつけるのならば、もっと“冷や冷や”したいなあ。すっごく不味い素材とか、泥水や金属のネジが出てきて「ペッペ」なんてしてみたいよ。このアルバムは喉越し良く、リスクは皆無だ。 青汁やヨモギジュースに林檎を配合すると口当たりが格段に良くなるように、パンクロックという手法自体が安全すぎると思う。“冷や冷や”したいならば、サンプリング主体のダンスミュージックの方が適切だ。往年のGSをアットランダムに聴いた方が、よっぽど刺激的だろう。 パンクは安全パイに成り下がってしまった。当然か…、20年前の音楽なんだもん。 「1234!」のカウントで一瞬にしてピークに登りつめ、完結かつスピーディに世界を締めくくるパンクにとって、本作の“サンプル集”的な形式は最適だと思う。このアルバムは78年に企画されるべきだった。ロンドン中のパンクスを聴かせるサンプルがあったら、僕達はあんなに沢山の“駄目シングル”を買わずに済んだのに…。

 

★★★

『アンプラグド/ドノヴァン』 ドノヴァンはいつもアンプラグドでしょ、と思っていたけれど、改めて弾き語りを聴いて驚いた。「Jennifer Juniper」や「Sunshine Superman」からフルートやリズム隊を抜くと、こうまで違和感を感じるのか! 無くなって初めて理解できる不足感。オリジナルアレンジの完成度を実感。さらに、ボーカルの生々しさに驚く。加工されていないから、聴き慣れたモノとは違う。 そりゃそうだよな。ドノヴァンはビートルズが“録音芸術”やってた頃の英国ミュージシャンなわけで、スタジオワークは繊細だったんだもんな。 「Hurdy Gurdy Man」のイントロでレコードのまんま、声を震わせて♪ウ〜と入る瞬間はジ〜ンとしてしまった。おまけに間奏でギター弾きながら、当時のエピソードを語るのよ。話題はマハリシ・ヨギを訪問したキャンプ。ジョージ・ハリソンのネタが多いのが微笑ましい。マハリシのキャンプに参加したメンバーはビートルズ、ビーチ・ボーイズ、ローリング・ストーンズ、ドノヴァン等と言う黄金の顔合わせ。今、その話を真面目に扱う“語り部”はドノヴァンしかいない。 フワッとした印象でありながら、ストイックで求道的な姿勢を漂わせ続けるドノヴァンって、なんか良いなと思う。変らないことを許されるキャラだ。佐藤我次郎みたいなもんか。 例が悪いね…。

 

★★★★

『ステレオタイプA/チボ・マット』 飛ぶ鳥をバンバン落としている割には、まだ2枚目だったのね…。 新譜はロマンチックで、繊細で、太い。今やチボ・マットの準メンバーとなったショーン・レノンのデビュー作の欠点が明白になった。ショーンの「気の弱さ」だ。本田ユカの“仕切りの良さ”が本作の完成度を驚異的にアップしている。 何故、世界はチボ・マットにときめく? フランク・チキンズや少年ナイフの時とは論点が違うと思う。ショーンがチボ・マットの名を世界に知らしめたわけではなく、チボ・マットによってショーンのリスナーが決定した、と言っても間違いではないはず。ミチェル・フルーム&チャド・ブレイクにとって、チボ・マットは重要な「持ち駒」。でも、実態はチボ・マットが主役で、彼等が「周辺の人脈」である印象を受ける。世界がチボ・マットに恋している。ユカもミホも、代官山のカフェで不機嫌そうにコーヒーすすってる女の子のルックスなんだけどねえ。 ユカが音楽を仕切る能力は世界的に特出している。これほど能力のある国産音楽家を米国に貸し出したまま、僕等は指をくわえて見ているだけ? チボ・マットを本土返還する為の状況はニッポンに成熟していない。90年代もニッポンの音楽市場は変革できなかった。なあ皆、ユカの高らかな笑い声に耳を澄まそうよ!  関連

 

★★★

『カリフォルニケイション/レッド・ホット・チリ・ペッパーズ』 ドキドキしますねぇ。レッチリの新譜を聴く瞬間って。「また、すごいんだろうな」という期待と「そろそろ、駄作が出るんだろうなあ」という不安が入り混じってしまって、冷静ではいられません。“新しいスタイル”を提案&実践したミュージシャンの宿命とは言え、リスナーは残酷なもの。興奮させ続けてくれなければ、レッチリに価値は無い。そんなリスナーの期待に圧し潰されてしまったミュージシャンは多い。(最大の犠牲者はスライ・ストーンでしょう…) さて、レッチリの新譜。 僕は興奮出来なかった。レッチリの手法は多くの後輩に学習されてしまったわけだが、本作がレッチリから後輩への解答とは思い難い。むしろ、後輩と歩調を合わせているような印象を受ける。正直に言って収録曲のクオリティは高いです。捨て曲無し。気合いの入ったアルバムだと認める。でも、それだけじゃ駄目だろう、レッチリは。 「リズムからメロディへの転換」などと言ってケアーしてあげることは出来ない。 “新しくないプリンス”を誰もが許さなかったように、“新しくないレッチリ”は辛い。 興奮は出来なかったが、愛聴できるアルバムだ。 う〜む、レッチリ、つくづく悲劇のバンドだ。  関連

 

★★★☆

『トランジット・ラウンジ/DLプロジェクト』 10年前にリリースされた『マッドチャイナマン』というアルバムは、良くも悪くもニッポンの音楽産業の中での亜細亜ポップの在り方を定義した。ディック・リー(以下、DL)は「亜細亜人としてのアイデンティティに対して違和感を持つ西洋的センスの自分」を告白した。“バナナ”(外は黄色で中味が白)という表現がニッポン人にフィット。 この10年間、極東アメリカーナが住むニッポンと亜細亜音楽のギャップは埋らなかった。“バナナ”を肯定したわけだから、当然。DLは出来の悪い亜細亜幻想をバラまいた挙句、破綻。今は亜細亜ソニーの副社長だとさ。 大丈夫! 副社長業に徹してくれ。亜細亜音楽の未来は安心だ。フェイ・ウォンがいるからね。 DLは10年前に亜細亜を俯瞰で対象化してみせた。フェイ・ウォンは足場を不動のまま世界圏を狙い撃ちした。言うまでも無くDLの手法は頭でっかちで、スノビッシュで、効果は小さかった。 さて、久々の新作。タイトル通りラウンジ・ミュージック。これが素晴しい。10年前からスィートなサウンドを好んでいた人だから、この変化には驚かない。だけど、遂にDLは亜細亜人としての足場を確保した模様。僕はそこが嬉しい。亜細亜を俯瞰で眺める行為こそが西洋的であったわけで、足場さえ確立すればラウンジを亜細亜音楽として鳴らすことは可能だ。今作のジャケは御覧の通り、亜細亜的な民族衣装ではない。しかし、DLの作品中最も亜細亜的なデザインだと思う。これだ。これなんだよ、本質は!!

 

★★★

『若大将トラックス/加山雄三』 若大将映画のサウンドライブラリー集。正規リリースと異なる映画バージョンを収録。例えば『夜空の星』のテイクは、こんな具合だ。エレキインスト(寺内タケシでなく、田沼“若大将”雄一のソロなのでショボい)〜ドラムソロ(青大将がコンセントを抜いて、ドラム以外のサウンドが消えたシーン)〜歌(電源が復旧し、田沼がアドリブで歌い始める)。『エレキの若大将』の有名なシーンですね。僕は、この曲の正規バージョンが大好きなので、違和感で一杯。シナリオのある音は映像込みで聴かないとねぇ。『君といつまでも』は、あの有名な台詞が入っていないし、『若き旅人』はコーラスが入っていない。当時のコメディ映画には音楽シーンが多く、映画専用バージョンが制作されていた。クレイジーキャッツのバージョン違いなんてキリが無いし、『男はつらいよ』の主題歌って毎作違うよね。(尺も、歌い回しも違う!) 本作では、時代進行と密着したサウンド遍歴を確認できるのが楽しい。加山雄三(弾厚作)の作家としてのスタートがエルヴィス風ハワイアンで、70年代期にはサイケロックにまで挑戦している。でも、99年の感覚では、弾厚作って「癖メロ」に任せた“イージーな作家”に思える。時代が彼を救いあげたんだなあ。  関連

★★★☆

『レ・リズム・ディジタル/ダーク・ダンサー』 80年代+ディスコ。今は80年代の解釈を誤ると大恥をかく時期ですが、この人うまいです。「80年代」を何によって伝達するかが重要なポイントだと思うんだけど、耳を引くのはシンセベース。なんて言うのかなあ、FM音源ぽいって言うの? そう、DX-7的なんだな。チボ・マットの本田ユカも「DX-7の音を普及させたいから、使うようにしている。」なんて発言していたなあ。 ドラムマシーンはリンやTR-808&909だと思うのですが、これって90年代に鳴りすぎたので「80年代のアイコン」には成り得ない。リンの金属的なハンドクラップだけは80年代かもね、と思う。だからベースの音色で「80年代」を狙ったのは正解。 楽曲的に80年代ベッタリの曲は少ないし、上モノは90年代的にクールなダンスミュージック。賢いよ、こいつ。 bisと同様、80年代に物心をつけていなかった世代が80年代をチャーミングに対象化し始めた。「70年代の次は80年代でしょ!」ってなトレンドウォッチャー的視点では80年代をポップ&チャーミーなアイコンに再構成することは出来ない。80年代のサウンドに実感する“チャーム”を深く深く微分しないとね。 ここ暫くは、80年代解釈を誤る“駄目解釈”がタップリ見れそうだ。そんな“駄目クリエイター”に予め警告。ベースはFM音源だぜ。    ※掲載後、ダークダンサーの機材に関するインタビュー記事を読みました。リンとDX7は正解でしたが、TR-808&909は全面否定。TR-606と707を使っているそうです。本人の強いこだわりらしいので、追記しておきます。 まだまだ、甘いな、俺の耳…。

★★★

『100% HAPPY LATIN 3/VA』 おっと、メレンゲ関係のCDを紹介するのは初めてじゃないですか!! 毎年、初夏になると僕はメレンゲのCDを購入。単純ですね。1年毎の行事ゆえに、メレンゲの動向に関しては如実に把握できます。今年はどうやら“打ち込みメレンゲ”。“メレン・ハウス”って呼ぶの? 僕はミクスチャー音楽が好きで、しかも打ち込みモノは大好き。ワールド音楽もネイティヴより作り込んだものばかり聴いている。にも関わらず、ラテン音楽だけは打ち込みモノを避けて来ました。サルサ・ビートをループさせたモノとかで、カッコよかった試しが無いんだもの。 メレン・ハウスもCD屋で試聴するたびに不満足だった。だって、メレンゲの生演奏って凄いのよ。Percussion、Bass、Piano、Accordion、Sax、Trumpet、Trombone等で構成された大所帯のバンドが一糸乱れぬアンサンブルを決める。複雑なんだけど、軽々と決める。これに比べてループするパーカッションって単調すぎるんだ。 でも、本作がNYでのトレンドなんだってさ。ふ〜ん。 悔しいかな、僕の腰はちょっぴり動いたけどね…。 部屋で夜聴くメレンゲとしては失格だけど、昼にヘッドフォンやラジカセで聴いたら気持ち良いかも。ここでもリスニングとダンスの分離か…。

★★★★

『フィラデルフォニック/G.Love & スペシャル・ソース』 G.Loveのアルバムは毎作聴いている。でも、過剰な期待でリスニングに臨んだことは1回も無いし、結果が不満足だったことも無い。と言って大満足だったことも無い。一回聴いて放り出したことも無く、つまり良く聴く。 で、好きなアーティスト名を列挙しようとすると、間違い無くノミネートされず(ってより、見落とす)、かと言って嫌いなわけでは全然ない。 回りくどい書き方をしていますが、これが僕とG.Loveとの関係。デビュー作以来、ずっと関係は変わらない。変わらないまま、安定した関係。 ブルースやフォークをヒップホップスタイルのビートに乗せ、あまり過激とは言えないローファイサインドで固める。ボーカルは“小粋”だけれど線が細く、個性は有るのか無いのかよくわからない。G.Loveのスタイルやポジションも、いつも変わらない。 しかし、骨太な印象を残した好アルバムであった前作のセンスを受け継ぐ本作は、なんだかすごい。 サウンドの構築が極端に向上。であるにも関わらず、良い意味で肩の力が抜けている。徹底して作り込んだリズムトラックにユルユルのギターとアップライトベースが乗り、ボーカルは眠そうだったりする。これは“いなせ”で、“かっこいい”と思う。G.Loveが江戸っ子だったとは知らなかった。 僕とG.Loveの関係がやっと明確になった。僕はずっとこんな風に思っていたんだ。「この手の顔に悪い奴ぁいない」  関連

★★★★

『ディス・タイム/ロス・ロボス』 んー、良いペースですねぇ。副業ユニットであるLatin Playboysと連続リリースというインターバルは前作『コロッサル・ヘッド』と同様。『コロッサル・ヘッド』は好きだったなあ。これこそが20世紀最後のハードロックだ、と思った。(ブラジルロックは21世紀最初のロックだ!) ロックのスタイルにしがみついて、ロックを“伝統芸”にしているかのような白人ロッカーとは根本的に姿勢が違う。ロボスは、自分のポジションから始まる“新しい足場”を作っていくという志の在り方がロックだ。しかも、「ここから、足場を作ろうぜ」というメッセージ(提案)を伝えるわけではなく、「今、俺達が作った足場を見てくれ」という事後報告だ。男らしい。 それにしても、ミチェル・フルームとチャド・ブレイクのプロデュース作品って、向かうところ敵無しだな。全作が穏やかに爆発。本作も、1音1音が十分に太く、全ての音が並列に配置され、瞬間的に切り取っただけっつう感じのワイルドなプロダクション。(でも緻密!) そう、ポラロイドでバチッて写して「一丁あがりぃっ」って感じ。そのザラつき具合が気持ち良いんだな。 今作を聴きながら、もしLed Zeppelinが存命していたら、彼等にプロデュース依頼したんじゃないか、なんて思った。いや、待てよ。The Rolling Stonesなら、無い話でもないな…。  関連(

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