
Animal Farm -動物農場- ★★★★
放送局: TNT
プレミア放送日: 10/3/99 (Sun) 20:00-22:00
製作: ホールマーク・エンタテインメント Hallmark Entertainment
製作総指揮: ロバート・ハルミSr.
製作: グレッグ・スミス
監督: ジョン・スティーブンソン
脚本: アラン・ジェインズ、マーティン・バーク
撮影: ジャージー・ジーリンスキ
音楽: ウェンディ・ブラックストーン
出演: ピート・ポスルスウェイト (ジョーンズ)
声の出演: ケルシー・グラマー (スノウボール)、イアン・ホルム (スクイーラー)、ジュリア・ルイス・ドレイファス (モリー)、ジュリア・オーモン (ジェシー)、ポール・スコフィールド (ボクサー)、パトリック・スチュワート (ナポレオン)、ピーター・ユスチノフ (老大佐)
物語: いつも飲んだくれてばかりいる怠け者の農夫ジョーンズの農場では、面倒を見てもらえない家畜たちがいつも腹を空かせていた。そこで動物たちのリーダーである豚の老大佐は、納屋の中で団結と共闘を説く。しかしある夜、納屋が騒がしいのに気づいてライフルを抱えて様子を見に来たジョーンズが誤って発砲した銃弾がたまたま身体を貫き、老大佐は命を落とす。ジョーンズはそんなことも気にせず今日もまた飲みに行き、家畜にえさも与えず寝入ってしまう。しかも人間どもは死んだ老大佐を屠殺場で鉤からぶら下げ、解体し、余った肉を家畜のえさにしようとまでするのだ。怒った動物たちは遂に実力行使に出、乱戦の末、農場から人間を叩き出す。人間なき後、動物たちは老大佐の後継者である豚のスノウボールを中心に全員に平等な共同体建設に勤しむが、しかし、理想と現実のギャップは大きく、皆が平和でいつも腹が満ちているような生活は簡単には訪れない。結局は真面目一徹に働く者たちだけが馬鹿を見る目に遭うのだ。腹黒い豚のナポレオンは独自に水面下で動き始め、手下の豚のスクイーラーを操ってスノウボール更迭を成功させる。スノウボールなき後、ナポレオンは私腹を肥やし始め、あれほど憎んでいた人間の家で、人間の真似事をし始めるようになる。さらにナポレオンは農場のマインド・コントロールのためにプロパガンダ・フィルムまで撮り始めるが、人間どもはその裏で虎視眈々と巻き返しのチャンスを窺っていた‥‥
大作オリジナル映画、ミニ・シリーズ製作の重鎮、ロバート・ハルミSr.が贈る今年最大の話題作。登場するのはほとんど動物というジョージ・オーウェルの古典を、最新のアニマトロニクス技術を駆使して実写で製作、2時間もののTV映画としては破格の2,400万ドルという製作費をかけて完成させた。牧羊犬ジェシーの目から見た動物農場の盛衰を、彼女が過去を振り返るという形で描く。
動物たちのリーダー、豚の老大佐の声を担当しているのは、「ナイル殺人事件」等の名探偵ポワロ役でお馴染みのピーター・ユスティノフ。理想家肌の豚のスノウボールにNBCの人気シットコム「Frasier」のケルシー・グラマー。その他、「スタートレック」のパトリック・スチュワートが腹黒いナポレオン、「エイリアン」のイアン・ホルムがナポレオンの太鼓持ちスクイーラーの声を吹き替えている。番組の狂言廻しである犬のジェシーの声は、「サブリナ」のジュリア・オーモン。この、いずれの吹き替えも実に秀逸。英語の発声に合った動物たちの口の動きは、ただただ見事と言うしかない。「ベーブ」の世界は日増しに進化している。
生身の人間の側の主人公、農夫ジョーンズは、ピート・ポスルスウェイトが演じている。「ロミオ+ジュリエット」でのディカプリオを庇護する神父役や「ジュラシック・パーク:ロスト・ワールド」の狩猟隊の隊長役など実は色々な大作に出演しているが、最も印象的だったのは「ユージュアル・サスペクツ」でのカイザー・ソーゼーの執事役だったのではなかろうか。彼がまどろっこしい発音で「カイザー・ソーゼー」と言ったり、日本人の名前とかを発音すると、それだけで何か不穏な空気がそこかしこに発生するようで、ぞくぞくしたものだが。あの落ち窪んだ目、張った頬骨など、すごく印象に残る。この番組でのだらしない農夫役など実に似合っているのだが、本当はきっととても洒落者だという気がする。
特に話題となったアニマトロニクスは、ジム・ヘンソンズ・クリーチャー・ショップ (JHCS) が担当、JHCSは今年、Sci-FiチャンネルのSFシリーズ「ファースケイプ (Farscape)」でもクリーチャー造型を担当しており、現在この分野では他の追随を許さない。監督のジョン・スティーブンソンはJHCS出身であり、「ロスト・イン・スペース」や「フリントストーン」でクリーチャー・スーパーバイザーを務めていたが、実質上これが初監督作品。しかし特撮で鍛えた?演出の腕は既にこなれている。音楽は主としてヨーロッパで活躍しているリチャード・ハーヴィー。盛り上げるつぼを心得た音楽で、とにかくどこにでも音楽を入れたがるうざったいディズニー映画なんかよりよっぽどこっちの方が上手い。番組中動物たちが唱和するテーマ・ソング等、印象的なメロディが豊富で、この人は多分将来ハリウッドに招かれるなと思う(実はこのテーマ・ソングも彼の作曲かどうかは確信はないのだが) 。
実はこの番組、話題性の割りにはアメリカのマスコミ受けはそれほどよくはなかった。その第一の理由として、コミュニズム批判がその骨子となっている「動物農場」は、ソ連が解体した今、その存在理由を失っているというもので、現代に映像化する理由が見えないというものだった。しかし、私に言わせれば、そんなことどうでもいいじゃないか。単純にこの番組は面白い! 別にコミュニズム批判といった裏を見なくても、永遠の人間性批判としても充分通用するし、一つの作品としてよくできている。特にナポレオンがスノウボールを更迭した後、豚の支配階級がどんどん擬人化していき、眼鏡をかけたり音楽を聴いたり酒を飲んだり、終いには人 (獣?) 心画策を狙ってレニ・リーフェンシュタールの「意志の勝利」を彷彿とさせるプロパガンダ・フィルムを製作までしまうあたりは、腐敗していく支配階級の奢りがよくとらえられていて、痛烈な文明批判一般として一級の出来である。指もないのにそんな細かい仕事がよくできるなと言うことなかれ。そんなの気にしていたら「ベーブ」もSFもミュージカルもアニメーションも全部見れなくなってしまう。ただ、非常によくできているアニマトロニクスだが、流石に豚に梯子を上り下りさせるというのは非常に難しかったと見えて、このシーンだけはいきなり動作がぎこちなくなってしまうのでした。ま、これは愛嬌ということにしておこう。
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