
Annie -アニー- ★★★1/2
放送局: ABC
プレミア放送日: 11/7/99 (Sun) 19:00-21:00
製作: ストーリーライン・エンタテインメント、コロンビア/トライスターTV
製作総指揮: クレイグ・ゼイダン、ニール・メロン、クリス・モンタン
製作: ジョン・ホイットマン
監督: ロブ・マーシャル
脚本: アイリーン・メッチ
原作: ハロルド・グレイ
音楽 (曲): チャールズ・ストラウス
音楽 (詞): マーティン・チャーニン
撮影: ラルフ・ボーデ
編集: スコット・ヴィックリー
美術: スティーヴン・ヘンドリクソン
衣装: シェイ・カンリフ
出演: アリシア・モートン (アニー)、キャシー・ベイツ (アガサ・(アジー)・ハニガン夫人)、ヴィクター・ガーバー (オリヴァー・(ダディ)・ウォーバックス)、オードラ・マクドナルド (グレイス・ファレル)、クリスティン・チェノウェス (リリィ・セント・レジス)、アラン・カミング (ダニエル・フランシス・(ルースター)・ハニガン)
物語: 大恐慌時代のニューヨーク。10年前に孤児院の前に捨てられていたアニーは、両親がいつか迎えに来ることを信じながら孤児院の仲間たちと暮らしている。しかし院長のハニガン夫人は孤児らに厳しく、アニーは脱走の機会を伺っていた。ある日、アニーはシーツの取り換えに来たクリーニング屋の汚れ物の中に隠れてまんまと脱走するが、結局警官に捕まって孤児院に連れ戻されてしまう。そこへクリスマスに孤児に善行を施したいと考えている大富豪ウォーバックスの秘書グレイスが現われ、アニーをウォーバックス家の豪邸に連れて帰る。アニーの屈託のない姿勢に魅せられたウォーバックス家の当主オリヴァーはアニーを養子にすることを考え始めるが、アニーは自分の本当の両親のことが忘れられない。そのためオリヴァーはアニーの両親に賞金をかけ、ラジオを通じて全米に告知する。ウォーバックス家の庭はアニーの親だと自称する者たちで埋まるが、しかし誰もアニーに残したブローチと置き手紙のことを知っている者はなく、すべては贋者であった。しかしここにたった一人その事実を知っている者がいた。ハニガン夫人である。彼女はワルで知られる弟のルースターと共謀し、変装して懸賞金を受け取りにウォーバックス家に現われる‥‥
93年「ジプシー」(CBS)、97年「シンデレラ」(ABC)、今春の「ダブル・プラチナ」(ABC) と、いまやTVミュージカルの第一人者となった感のあるクレイグ・ゼイダンとニール・メロン製作による新TVミュージカル。「ジプシー」、「シンデレラ」と、クラシックのブロードウェイ・ヒットをリメイクした作品で成功を収め、その「シンデレラ」で主演したブランディを起用してオリジナル・ストーリーの「ダブル・プラチナ」を製作したが、こちらは視聴率の点で惨敗した。今回はリメイク路線に立ち戻って、心機一転して巻き戻しを図っている。
「アニー」はアメリカが恐慌に喘いでいた1930年代にデビューした新聞連載漫画である。原作者のハロルド・グレイは既に物故しているが、別の人が後だである。また、人気がある限り、たとえ作家が死去しても連載が続くというところは、人気がある限りオリジナルの登場人物が一人もいなくなってもどんどん続いていくアメリカのTV番組とまったく一緒である。作る人ではなく、結果がよければよいという、作家主義ではない現実主義のアメリカの面目躍如といったところか。その「アニー」のブロードウェイ版は、70年代に作られた。結構新しいクラシックである。歌詞マーティン・チャーニン、作曲チャールズ・ストラウスで製作されたこのミュージカルは、「トゥモロウ」等の劇中曲が大ヒットするなど、世界的に有名になった。82年にはジョン・ヒューストン監督で映画化もされている。
今回アニーに扮するのは、弱冠12歳のアリシア・モートン。ブロードウェイの「レ・ミゼラブル」で幼少のコゼットを演じていたところを抜擢された。アニーの住む孤児院の院長ハニガン夫人には、キャシー・ベイツ。大富豪のオリヴァー・(ダディ)・ウォーバックスに扮するのは、ブロードウェイのベテラン、ヴィクター・ガーバー。「ラグタイム」、「回転木馬」、「マスター・クラス」で3度トニー賞受賞の経歴を持つオードラ・マクドナルドがウォーバックスの秘書グレイスに扮している他、同じくトニー賞受賞経験者のアラン・カミングがハニガン夫人の弟ルースターに扮し、その彼女リリィ役のクリスティン・チェノウェスもやはりトニー賞受賞者と、近年の名だたるトニー賞受賞者が揃っている。また、20年前に舞台でアニーを演じたアンドレア・マッカードルが、番組中アニーたちがブロードウェイで見るミュージカルで主演しているという役どころでカメオ出演している。
監督のロブ・マーシャルは舞台出身で、昨年のブロードウェイ・ヒット「キャバレー」を監督している。因みに「キャバレー」の共同監督は、今年ハリウッドの最大の拾い物「アメリカン・ビューティ」を監督したサム・メンデスである。二人とも存分な才能を持っているようだ。「アニー」はマーシャルの初めてのTV番組の演出となる他、もちろん振り付けも行なっている。脚本のアイリーン・メッチは、「ライオン・キング」、「ノートルダムの鐘」等、ディズニーのお抱え脚本家。子供を楽しませるコツを心得ている。その他、30年代ニューヨークの街並みを再現した美術のスティーヴン・ヘンドリクソン は「ウォール街」、撮影のラルフ・ボーデは「殺しのドレス」、「告発の行方」、衣装のシェイ・カンリフ は「二十日鼠と人間」、「黙秘」と、ハリウッドで活躍している一線級を製作陣に揃えている。
番組の冒頭でディズニーの社長マイケル・アイスナーが紹介しているように、「アニー」は最初、男の子が主人公で、大恐慌時代のアメリカの低層階級の喘ぎ、上流階級の偽善を皮肉たっぷりに描く、いわば社会風刺漫画であった。それが現在巷に広まっているようなシンデレラ・ストーリーとなったのは、よくも悪くもブロードウェイ・ミュージカルのおかげである。そのミュージカルをお手本にしているこの番組が、わた飴のようなシンデレラ・ストーリーになったのは仕様がない。しかしいくらなんでもこれは無理がある、というのも幾つかある。
例えば、大富豪ウォーバックスはクリスマスにちょっとした善行をしようとしてアニーを孤児院から連れてくるのだが、なぜたった一人アニーだけなの、というのが一つ。どう考えてもここは孤児を全員連れて行くのが筋なんではなかろうか。彼女が主人公だからと言うなかれ。本当に上手に見せるなら視聴者はそんなことに気づきはしない。そのウォーバックスはアニーの天真爛漫さにほだされ、アニーを養子にとる決心をするのだが、ここでどうしても孤児院に残された他の孤児の境遇を慮ってしまう。それでいいの?たった一人幸せになっても後の者は皆ひもじいままなんだよ、これじゃアニーと他の孤児たちの間にしこりが残らない?
それに最後のシーンでハニガン夫人とルースターの悪巧みを暴きに来た孤児たちに、大統領!が皆がよい家に引き取って貰えるよう計らってあげると約束して、全員わーい!ということになるのだが、これは??いったい何なのだ??そりゃあ孤児たちはいつも孤児院でひもじい思いをしているよりは金持ちの家に引き取られておいしいごはんを毎日食っていられる方が幸せに決まっているだろうが、養子縁組がそううまくいくものでないことは現代の常識である。養子の話を出されたら、喜ぶよりもまず身構えるのが孤児たちの正常な反応だろう。大統領はむしろ皆においしいディナーでも約束してわーい!の方が無理がなかったと思うのだが。
舞台設定が70年も前のことであり、昔の子はもっと純粋に自分の幸運を喜んだだろうというのがその動機づけだと思うが、しかし、そう言ってしまったら、先月TNTから放送されて、あんなに素晴らしい出来なのに今はもうコミュニズムの時代ではないからといって批評家の不満を買ってしまった「動物農場」の立つ瀬がないではないか。しかも「動物農場」はちゃんと現代でも通じるように話がアレンジしてあった。私はやはり昔の子が今より純粋であったとは到底思えない。情報の不足で単に大人の言いなりになる馬鹿だったというならまだわかる。このあたりを上手く現代風にアレンジするのが本当のプロの技術というものだと思うんだがなあ。
しかし、こういったマイナーな欠点があっても、この番組は面白い。ハニガン夫人から罰を受けた孤児たちが「It's a hard knocked life!」と歌いながら部屋の雑巾がけをするシーンはとても楽しいし、孤児院を抜け出したアニーが、雪のちらつくニューヨークの片隅で腹を減らしながらも健気に明日を夢見て歌う「トゥモロウ」は確かに感動ものであり、これらはディズニー映画の最良の部分を継承している。それにアニーに扮するアリシア・モートンは申し分ないし、キャシー・ベイツがこれだけ歌えるのにもびっくりした。彼女はブロードウェイでも充分やっていける。トニー賞受賞者で固めた脇も文句のつけようがない。惜しむらくはよく知られた曲が固まる前半部の出来が出色で、後半やや失速してしまうことだが、それでも充分楽しめる番組であることには変わりない。
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