Moby Dick -モビー・ディック (白鯨)- ★★★
放送局: USA
プレミア放送日: 3/15/98 (Sun)、3/16/98 (Mon) 20:00-22:00
製作: ホエール/ナイン・ネットワーク・オーストラリア・プロダクションズ Whale/Nine Network Australia Productions
製作総指揮: ロバート・ハルミSr.、フランシス・フォード・コッポラ、フレッド・ヒュークス
製作/脚本/監督: フランク・ロダム
撮影: デイヴィッド・コネル
出演: パトリック・スチュワート(エイハブ船長)、ヘンリー・トーマス(イシュマエル)、グレゴリー・ペック(マップル神父)、ピリピ・ウェアティニ(クイクエグ)

物語: 青年イシュマエルは、自分の知らない世界を見てみようと教師の職を辞し、港町ナンタケットで船乗りを希望する。イシュマエルは宿屋で顔中に入れ墨を施したポリネシア人の銛打ちクイクエグと同じベッドに寝かされる羽目になり、イシュマエルはクイクエグのキセルの煙やいびきに悩まされながらも、二人は仲良くなる。翌日クイクエグの助けもあって無事エイハブ船長の船ペクオドに職を得たイシュマエルは、出航後早速新米としてこき使われる。しばらくしてイシュマエルは甲板に現われたエイハブ船長を目にする機会を得る。エイハブ船長は、自分の片足を食い千切った、モビー・ディックと呼ばれている白鯨に復讐することのみに命を捧げている、ほとんど正気か狂気かわからないカリスマ性を持った人物だった‥‥

Moby Dick チープなホラーやスリル/サスペンスもののオリジナル映画で知られていたベイシック・ケーブル局のUSAが、その印象を払拭しようと製作した大作ミニ・シリーズ。メルヴィルの古典「モビー・ディック (白鯨)」を、製作費2,000万ドル、宣伝費500万ドルというほとんど社の命運を賭けて製作した一大叙事詩である。

エイハブ船長に抜擢されたのは、TVシリーズ「スタートレック」のストイックなピカード船長役で親しまれているパトリック・スチュワート。通常なら尻込みしそうな大役を、一生に一度のチャンスとして熱演している。狂言回しのイシュマエルに扮するのは「E.T.」でエリオット少年を演じたヘンリー・トーマス。「E.T.」で共演したドリュー・バリモアの活躍ばかりが目立つ今日この頃だが、彼もうまく大人になった。子役としてデビューするとうまく大人の役に移行できず消えていく俳優が多い中で、こういう地味ながらも大役を射止めるのは大層難しいことだと思う。特別出演として、56年のジョン・ヒューストン監督「白鯨」でエイハブ船長に扮したグレゴリー・ペックが、その時はオーソン・ウェルズが演じたマップル神父役で登場し、民衆に説教を行なうという役どころを威厳たっぷりに演じている。

製作総指揮は、大作TV映画といえばもうこの人しかいない、ロバート・ハルミSr. 。プラス、フランシス・フォード・コッポラ、フレッド・ヒュークス(「ドンファン」)と、TV/映画界の大物が並んでいる。監督と共に共同製作/脚本も兼ねているフランク・ロダムは、カルト青春映画「さらば青春の光」が知られている。フル・オーケストラの雄大な音楽はクリストファー・ゴードン。特に後半、モビー・ディックを追い詰めるスペクタクルなシーンでの味付けは見事。製作はオーストラリア/英国/米国の3国が協同で当たり、オーストラリアのメルボルンで撮影された。

後半スペクタクルなシーンが用意されているとはいえ、TV映画でこういうやや暗い、地味な印象のある文芸大作を製作しようとしたのは、本当に賭けに近かっただろうと思うが、できは悪くない。惜しむらくはこういう作品はスクリーンの上で見たかった。家の32インチの画面では、まあ、TVとしては別に小さな画面だとは思わないが、こういう作品を見ると、やっぱり違うんだよな、これはこんな小さな画面で見るべき作品じゃあないんだよな、と思わざるを得ない。しかし4時間の「モビー・ディック」なんて劇場に客が入ると思えないし、これはこれでいいのか、とも思う。でも、暗い、雰囲気のある映像をうまく映し撮っているのに‥‥勿体ない、と私の心は千々に乱れるのであった。因みにこの作品はUSAの歴代第2位という高い視聴率を獲って、関係者を狂喜乱舞させた。


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