Jackass   ジャックアス (ジャッカス)   ★★1/2
放送局: MTV
プレミア放送日: 10/1/00 (Sun) 21:00-21:30
製作: MTV
製作総指揮: ジェフ・トレメイン、スパイク・ジョーンズ、ジョニー・ノックスヴィル
出演: ジョニー・ノックスヴィル、バム・マーゲラ、クリス・ポンティアス、デイウ・イングランド、スティーヴO、ブランドン・ディカミロ、アーレン・マクゲーイ、ジェイソン「ウィー・マン」アキュナ、ライアン・ダン

内容: 出演者が街角で行う、ありとあらゆる常軌を逸したいたずら/悪ふざけに興じる姿を録画。
「セルフ・ディフェンス」
レッド・ペッパー・スプレイ、スタン・ガン、テイザー・ガン等の護身用武器を実際に試してみる。
「ダディ&ベイビー」
赤ん坊の人形を自転車の荷台に乗せ、わざと人前で大袈裟に転んで周りを驚かす。
「ショッピング・カート」
ショッピング・カートに人を乗せ、後ろから思い切り押してスピードを出し、植木に突っ込ませる。
「プー・カクテル」
中に人のいる簡易トイレをゴミ収集車を使って逆様に吊り上げる。

Jackass ついにここまで来たかという感じの、低年齢層化の進むMTVが放送する究極のおバカ番組。ストーリーも何もない。「どっきりカメラ」といえばわかりやすいだろうが、悪趣味度はその比ではなく、唖然とするようないたずら/悪ふざけをこれでもかという感じで繰り広げる。因みに番組タイトルの「ジャックアス」とは、馬鹿、間抜け、ど阿呆という意味の単語で、要するにまんまである。それにしてもMTVってMusic Televisionの略なのに、最近音楽関係の番組を見たことがないなあ。そろそろ本気でチャンネル名の変更を考えた方がいいんじゃないの。

番組の冒頭でのいたずらは、パンツの中に大人のおもちゃを装填した、メイン・キャラクターのジョニー・ノックスヴィルがパンツの前を盛り上げたままの格好でLAの街を闊歩するというものだが、街の人は無視するか距離を置くのかのどちらかになる。これが「どっきりカメラ」なら後で種を明かして皆で大笑いしてはい、おしまい、てなことになるのだろうが、「ジャックアス」ではそうはならない。相手を驚かしてそれで終わりなのである。要するに視聴者は驚く一般市民を見て笑うわけだ。うーん、性質が悪いけどこれが結構面白いんだ。

その他、「セルフ・ディフェンス」と題されたコーナーでは、ペッパー・スプレイ、スタン・ガン等の市販されている護身用武器を実際に自分自身で試してみるという、身体を張ったギャグ?を飛ばす。相手の目に振りかけるペッパー・スプレイやスタン・ガンなら知ってたけど、テイザー・ガンというのは私は初めて聞いた。いったん相手に矢じりのようなものを撃ち込み、それから電流を流すもののようで、見ただけでちょっと敬遠してみたくなるほど強烈っぽい。

普通そんなの自分で試すかと思うのだが、ノックスヴィルはそれをやってしまうのだ。なんでもこの番組、元々はノックスヴィルが自分で自分にスタン・ガンを当てるという技をヴィデオに撮り、それを見たMTVが興味を示したのがきっかけだったというから、このスタン・ガン・ギャグはノックスヴィルのいわば十八番みたいなものなのだろう。しかし、多分何度も経験があるのだろうが、実際にスプレイやスタン・ガンを試されるノックスヴィルは、やはり結構痛そうだ。そりゃあ当然だ。効かなけりゃ武器になるわけない。

しかし、それよりも来ていたのが、前出のテイザー・ガン。ノックスヴィルはこれをやられた後、地面でのたうち回っていた。おいおい、本当に大丈夫かよ、それ、心臓の悪い奴にやったら本当に死ぬぞ。ノックスヴィルはその後、「スプレイとスタン・ガンも強烈だったが、テイザー・ガンは来たな。ありゃ、やられた後暫くは動けなかったよ」と感心していたが、こりゃ、こいつ、底なしの阿呆だ。

それからもこの手のスーパー下らない超意味なしギャグ/悪ふざけが展開する。アメフトのユニフォームに身を包んだ出演者の一人が、ドライブ・スルーで客の注文したハンバーガーをタックルして横取りしたり、自転車に乗って人が入っている簡易トイレに突撃したりする。これはやる方も結構命懸けのギャグだ。プレイ中のゴルファーの中にただ意味もなく突っ込んでいって坂から転げ落ちてみたり、相撲取りのような着ぐるみの中に入ってスケートボードに乗ったりするなんてのもある。街角でオープン・カーの中から通行人に道を訊くと、突然後ろのトランクからほとんど素っ裸の上に猿ぐつわを噛まされて手錠をはめられた男が飛び出し、くぐもった叫び声を上げながら往来を走って逃げて行く、といういたずら行為を目にした一般人は、笑うというよりもほとんど脅えてしまっていた。

しかし、そういうのを見て思わず笑ってしまうというのは、やはり世紀末だからか。彼らのいたずらは、多分自分が当事者になるとまず笑えないと思うのだが、TVで見る分には結構笑えるのだ。くだらなねえー、こいつら本当に馬鹿なんじゃねーの、と言いながら思わずぷっと吹き出してしまう。その中でプレミアの回のばか騒ぎの極め付けは、最後の「プー・カクテル」である。「プー (poo)」というのは、要するに糞のことなのだが、糞が満タンになった簡易トイレの中にノックスヴィルがゴーグル装備で入り、それをゴミ収集車で持ち上げて上下逆様にしてしまうというとんでもない馬鹿ギャグなのだ。当然、ノックスヴィルは逆様になったトイレの中で糞まみれになる。題して「プー・カクテル」というわけだが、トイレの中に据え付けられたカメラが、段々傾いてきた便器から糞が溢れ出してくるのをとらえた瞬間、私は、わーっ、馬鹿ー、やめろー、と、思わずTV画面に向かって怒鳴っていた。こんなえげつないことを考える奴も考える奴だが、実際にやる奴は救いようのないど阿呆だ。あんた、今に病気になるよ。その後ノックスヴィルは外で素っ裸になって水ぶっかけられるのだが、その前に糞まみれになったままスタッフを追い回し、スタッフは全力で逃げ回っていた。そりゃあ当然だ。

「ジャックアス」はこういう底なしお間抜けギャグを連発するわけだが、こういう、まったく無目的に繰り広げる無能ギャグの連発は、時に笑うというよりも逆に感心してしまうこともある。その代表が、ショッピング・カートに人を乗せ、後ろから思い切り押してスピードを出して植木に突っ込ませるだけという「ショッピング・カート」ギャグである。このギャグ、別に意味なんかない。カートから飛んで転がり落ちる飛距離を競うとか、転び方の優劣を決めるとか、そんなことは一切なく、ただ延々と人をカートに乗せ、それを押して植木に突っ込ませるという、それだけを延々と繰り返すのだ。植木に突っ込ませるとはいえ、そのすぐ後ろにはコンクリートが敷かれていたり、植木に突っ込む前にカートごと倒れたりする。ヘルメットをかぶって頭を防御しているわけでもないから、結構本当にやばい、身体を張ったギャグなのだ。実際、何人かは頭を地面に打ち付けてうんうん唸っていた。

しかもこれなんか、見物人がいるわけでもない。そういう、なんのためでもない、ただいたずらに時間と体力を浪費するだけの、無目的なやりたいからやる、的なギャグは、実は私は結構好きなのである。このあいだ、「バトルボッツ」でも似たような印象を味わったが、こういう壮大な無駄をして平気でいられる国民は、やはりアメリカ人しかいない。私は結構呆気にとられながらも、このあまりにも無内容/無目的なギャグに、少なからず感動してしまった。ギャグに感動するというのも変な話だけど。しかし、これは危険なギャグである。これを見たティーンエイジャーが真似し始めたら危ないんじゃないの。怪我したら番組が責任取れなんて言われるんじゃないかなあ。

因みにこの番組、なんと今年これまでにケーブルTVが放送した新番組の中で、最も高い視聴率を獲得した番組なのである。また、も一つ意外なことに、番組の製作総指揮の一人に、スパイク・ジョーンズが加わっている。あまりにも意外で、これ、本当にあの「マルコヴィッチの穴」のスパイク・ジョーンズ? と思っていたら、本当に、正真正銘ジョーンズその人なのである。なんとノックスヴィルとジョーンズは高校の同級生なのだそうだ。ミュージック・ヴィデオ出身のジョーンズは、元々MTVとも縁が深い。それでノックスヴィルがジョーンズを抱き込んだというのが真相のようだ。でもジョーンズはインタヴューで「面白いじゃないか」と結構番組のことを擁護していた。いや、面白いは面白いですけどね、こういう番組が視聴率一番なんて話を聞くと、アメリカの将来に一抹の不安を感じないこともない。

追記 (2001年1月):
やっぱり。やっぱりだったよ。何がやっぱりだったかというと、やっぱりこの番組の真似をする大ばか者が現れたのだ。それもこの番組の中で最も危険な大技である、人間バーベキューと題された耐火服を着てガソリンをかぶり、火をつけるといった荒行に挑む大ばかなガキが現れたのだ。14歳のこのガキは結局全身に大やけどを負ってしまい、親は番組を告訴すると息巻いている。ほうらみろ、いわんこっちゃない。でも、もちろん私は番組の味方である。声を大にして言うが、こういうのは真似する方が悪い。そのくらいの判断も働かせきれないようなバカな奴は、怪我をして当然である。私が判事なら番組製作者は何のお咎めもなく無罪放免なんだがなあ。

追記 (2001年4月):
「ジャックアス」効果は4月になっても薄れず、なんと、実は私はこのスタントは番組で見たことはないのだが、走ってくる車めがけてジャンプするという、決死のスタントを真似する人間が現れた。当然こんな荒技がうまくいくわけがなく、このスタントに挑戦した若者は、はねられて瀕死の重態である。当然のごとくそのシーンをヴィデオに撮っていたため、はねられる瞬間が全米中のニュースに流れることになった。しかも車の中からもダブルで撮っていた。しかし、ハリウッドの特撮に慣れている一般的視聴者としては、はねられて空中に舞い上がった姿がまるで人形みたいで、はねられた奴には悪いが、これって実は人形を使った特撮じゃないかと疑ってしまう。しかしその後で地面に死んだように蹲っている姿も映していたし、ニュースのキャスターもそいつは病院に運ばれて危篤の状態だとか言っていたから、やっぱり本当なんだろう。瀕死の人間を見て、これってヤラセじゃないかと疑ってしまう視聴者って、やっぱり末世ですかね。

追記 (2001年8月):
とにかく問題がひっきりなしのこの番組、色んなところから非難の矢面に立たされたノックスヴィルは、ついにもうこれ以上「ジャックアス」は作らないと宣言した。MTVは表面上は番組を擁護する立場をとっており、追加エピソードの発注もしていたのだが、それでも世論を鑑みて、裏ではノックスヴィルにもうちょっと過激さを抑えるように要請していたらしい。番組を製作する放送局から見放されたと感じたノックスヴィルは、いきなり「ジャックアス」終了宣言を出した。まあ、ノックスヴィルの気持ちもわからないではない。しかし、私はノックスヴィルが番組を止めようと思った本当の理由は、この番組のおかげで有名人となったノックスヴィルに映画やなんかの誘いが殺到して、キャリアのステップ・アップによい機会と考えたからではないかと踏んでいる。マスコミから叩かれたまま悪者となって番組を作り続けるよりは、誰しもそっちの方をとるのではないか。大いにありそうな展開だと思うのだが。


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