Law & Order: Criminal Intent - ロウ&オーダー: クリミナル・インテント - ★★★
放送局: NBC
プレミア放送日: 9/30/01 (Sun) 21:00-22:00
製作: ウルフ・フィルムス、ステュディオスUSA
製作総指揮: ディック・ウルフ、レネ・バルサー
共同製作総指揮: ジョフリー・ネイヤー、アーサー・フォーニー
製作: ジョン・ローマン、ロズ・ウェインマン、エリック・オーヴァーメイヤー
共同製作: マイケル・キューリー
監督: ジーン・デセゴンザック
脚本: レネ・バルサー
撮影: フランク・プリンチ
音楽: マイク・ポスト
出演: ヴィンセント・ドノフリオ (ロバート・ゴレン)、キャスリン・アービ (アレクサンドラ・イームス)、ジェイミー・シェリダン (ジェイムス・ディーキン)、コートニー・ヴァンス (ロン・カーヴァー)

物語: マンハッタンの貴金属店が金庫破りにやられ、ダイヤモンドがごっそりと盗まれる。強盗団は隣りのアパートの住人に懸賞に当たったという通知を送りつけ、老夫婦を週末旅行に追い出してから、壁をぶち抜いて金庫室に押し入ったのだ。しかしそこへ親がいないことをいいことに、寮住まいの娘がボーイ・フレンドを連れ込み、強盗団の一味と遭遇した結果、二人とも殺されてしまう。一味はコンピュータを使って金庫を開けた技術屋もその場で殺して現場を去る。ゴレン刑事とイームス刑事は殺された技術屋の顔写真や、一味の主犯と思われる男の似顔絵から徐々に捜査網を狭め、ついに主犯のカールの情婦ジアを捕えることに成功する。ゴレンはジアを騙し、カールを罠にかけるのを承諾させる‥‥

Law & Order: Criminal Intent NBCの「ロウ&オーダー」(一時「法と秩序」という邦題がついていたこともある) は既に放送が始まって12年目を迎える、現在放送されているドラマ・シリーズの中では最も息の長い番組である。人気があると永遠に放送を続けるアメリカのTVドラマの基準から見ても、大層な長寿番組だ。近年、ネットワークが辛抱する時間が年々短くなる傾向にあり、数回放送されただけでキャンセルされる番組が跡を絶たない現在では、特にその印象が強い。

内容を別にすると、この番組の最大の特色は、昔よりも今の方が人気が高いことにある。通常、人気のある番組というのは、ドラマの「ER」、シットコムの「フレンズ」等、番組の放送開始時から人気があるのが普通である。デイヴィッド・E・ケリーがABCで製作している「ザ・プラクティス」、FOXで製作している「アリーmyラブ」のように、最初は大した視聴率もとれなかったくせに、著名なプロデューサーが製作している番組だからと放送局が我慢して放送を続けたために、じりじりと人気を上げて今のようなヒット番組としての位置に収まった番組というのもないこともないが、非常に稀だ。

しかし、そういった場合でも、放送が始まって数年後に人気はピークを迎えるのが普通で、その後はその位置に安住するか、徐々に人気は落ちていくのが普通であり、何年も人気が上がり続けるというのはほとんど例がない。それが「ロウ&オーダー」の場合、放送が始まって11年目になる昨シーズンに、番組としては最高の視聴率をマークするという前人未到の偉業を成し遂げた。今シーズン、さらに記録を作るかもしれない。もちろん、10年以上も続いているくらいだから、それ以前に「ロウ&オーダー」はヒット番組としての位置を既に確立していた。しかし、それでも、それ以上人気が上がるというのは誰も予測していなかった。番組プロデューサーのディック・ウルフにとってすら予想外だったに違いない。

実際、最近の「ロウ&オーダー」の普遍的な人気は驚くほどで、この人気を受けてケーブル・チャンネルのUSA、A&E、TNTが「ロウ&オーダー」の再放送を開始している。今ではほとんど毎日、どこかのチャンネルが「ロウ&オーダー」を放送しており、放送のない日を探すことの方が難しい。一昨年にはNBCは「ロウ&オーダー」シリーズ第2弾、「ロウ&オーダー: スペシャル・ヴィクティムス・ユニット (Special Victims Unit)」の放送を開始、こちらも人気番組として既に定着している。これくらい普遍的な番組だから、パロディの対象になるのも当然で、昨年夏に少しだけ放送されたシットコムの「M.Y.O.B.」では、プレミアのオチが、主人公の二人が見ているTV番組が「ロウ&オーダー」で、あ、これ見たことある、と二人が同時に叫ぶシーンで終わっていた。もちろん、いつでもどこかで再放送されていることをおちょくっているわけだ。

「スペシャル・ヴィクティムス・ユニット (SVU)」は、基本的にオリジナルの「ロウ&オーダー」が確立したフォーマットをそのまま踏襲している。事件が起こり、容疑者が逮捕され、そして法廷で真実が明らかにされる、というのが基本で、たまさかその変化形が挟まることはあるが、この基本形は不変である。このフォーマット自体は「ロウ&オーダー」が確立したものでもなく、法廷ものというジャンルが確立しているアメリカTV/映画界の十八番のようなものであるが、これまでその手の番組は、「ペリー・メイスン」もののように、主人公の名裁きや活躍がポイントとなっていた。それを現在あるような、ストーリーそのものに重点を置き、出演俳優は単にその語り手に過ぎないという形に定着させたという点では、「ロウ&オーダー」の功績は多大なるものがある。

「SVU」は特に性犯罪を扱うという区分けをされており、主要登場人物のクリストファー・メロニとマリスカ・ハーギテイが「ロウ&オーダー」の登場人物と較べるとやや目立つかなという感じはあるが、それでもストーリーが主で、人物は脇という印象は変わらない。実際、「ロウ&オーダー」の主役のサム・ウォーターソンなんて、画面に映る時間の長さで主役とか脇役とかを決めるとしたら、脇役のさらに下、くらいの登場時間しか与えられていない。「ロウ&オーダー」シリーズにおいては、主役は事件・ストーリーそのものであり、主要登場人物は、その事件を明るみに出したり、新たな展開を見せるための触媒以上のものではないのだ。

この点が、「ロウ&オーダー」が、これまで何度も主要登場人物の交替を経験しながらも、ほとんど番組の人気自体には影響なく現在まで続いているという事実を説明している。マイケル・モリアーティやクリス・ノス、ベンジャミン・ブラット、ジル・ヘネシー等、それなりにメイジャーな役者が出演しては辞めているが、そのことが話題となった記憶なぞない。視聴者は役者に惹かれてこの番組を見ているのではないのだ。それが最新シリーズの「ロウ&オーダー: クリミナル・インテント (CI)」に至って初めて、このシリーズはヴィンセント・ドノフリオとキャスリン・アービという、はっきりとした主役を得た。ウルフは、「CI」を例えて言えば現代版シャーロック・ホームズと答えている。ホームズ役のゴレン刑事に扮するのがドノフリオ、ワトソン役のイームス刑事がアービだ。

実際、「CI」は、これまでの「ロウ&オーダー」のトレード・マークとも言えた、裁判で事件が終わる進行の形態をとっていない。ゴレン刑事とパートナーのイームス刑事が主役の、はっきりとした刑事ドラマである。例えば、プレミアでは金庫破りを追うゴレンとイームスの活躍が描かれるのだが、いかにも刑事ドラマといった感じの事件を扱っているため、「ロウ&オーダー」という感じはまったくしない。「ロウ&オーダー」では、いつも事件そのものよりもその回りの人間模様に重点が置かれ、しかもだいたいすぐ犯人が捕まって裁判になるので、「CI」のように、事件を追うといった感じの刑事ドラマにはならないからだ。

しかし、その内容を別にすれば、番組オープニングのテーマ音楽も、場面が変わる時のバンバンという、あの「ロウ&オーダー」お馴染みの効果音も不変である。個人的な意見を言わせてもらえれば、マイク・ポストによるテーマ音楽はスロウ過ぎるような気がして、ちと気が萎える。もうちょっとアップ・テンポでスリリングな感じの方が番組に合うような気がするんだが。ところで、あのバンバンというシーンが変わる時の効果音は、カチン (Ka-Ching) というのだそうだ。初めて知った。これって業界用語かなんかか知らん。いったいどういう語源を持っているのだろう。結構気になる。

一つ「CI」がやはり「ロウ&オーダー」のスピンオフであり、他の刑事ドラマと違う点を挙げるとすれば、主人公の私生活がまったく描かれない点を挙げることができるだろう。「CI」では、「ロウ&オーダー」、「SVU」同様、登場人物の私生活はまったく描かれない。これは同じニューヨークを舞台とした刑事ドラマの「NYPDブルー」で、主要登場人物の私生活の描写がキャラクターに重みと奥行きを与えているのとはまったく逆だ。「NYPDブルー」では、アル中に悩むアンディや、上下関係や人種問題に悩むファンシーがいることで、番組に真実味を与えている。それが「CI」では、やはり登場人物は、主役でも事件に関係するところ以外では出番を与えられていない。登場人物の扱いという点では、「CI」と「NYPDブルー」は、ニューヨークというまったく同じ場所を舞台に選びながら、天と地ほどの違いがある。つまり、結局「NYPDブルー」は人間に主眼を置いた刑事ドラマであり、「CI」は「ロウ&オーダー」同様、事件主導型の刑事ドラマと言うことができる。両者の善し悪しはともかく、同じ場所を舞台にしながら、まったく手触りの違う同ジャンルのドラマができ上がるところが面白い。

主役のゴレン刑事に扮するドノフリオは、結構いい味出している。このまま番組が続けば、彼の代表作になるような気がする。これまで実力のわりには陽が当たらなかったという印象がするため、番組には成功してもらいたい。「ザ・セル」では狂人だったのに、ここでは正義の味方の刑事だ。悪役だろうがなんだろうがこなせる演技力は高く評価されていい。ところでプレミア・エピソードでは、こないだ「マインド・オブ・ザ・メアリード・マン」で見たばかりのジェイク・ウェーバーが、カリスマを持つ強盗団一味のボス役として出演している。浮気者の新聞記者に扮している「メアリード・マン」とは大きな違いだ。

それよりも何よりも、ウェーバーも「ザ・セル」に出ていて、そこではウェーバーがFBIのエージェント役と、「CI」とは立場がまるで逆転している。それにしても何度も言うようだが、やっぱりウェーバーはティム・ロスに似ている。実は番組を見ていて、隣りで見ていた女房が、ウェーバーを見て、「リトル・オデッサ」の話をし出した時は思わずにやりとしてしまった。「リトル・オデッサ」に出ていたティム・ロスを思い出して、完璧に彼だと勘違いしたのだ。やはり誰でも間違えるくらいよく似ている。ウェーバーはこれまでの半生で少なくとも一万回くらいはロスに間違えられているに違いない。

番組クリエイターのディック・ウルフは、元々は「NYPDブルー」や「ヒル・ストリート・ブルース」等で知られるスティーヴン・ボチコの元で腕を磨いた。「ロウ&オーダー」の成功により、現在では押しも押されぬアメリカTV界を背負って立つプロデューサーである。ウルフは「ロウ&オーダー」の3つの番組の区分けを、「ロウ&オーダー」はブランドであり、コーク、ダイエット・コーク、チェリー・コークのようなものである、とインタヴュウで答えている。つまり、その味の違いがはっきりとしている限り、それぞれに存在意義があるということだ。しかし、チェリー・コークは失敗して、今では置いている店なぞ見かけないぞ。

「CI」も含め、3つの「ロウ&オーダー」シリーズの現在の最大の問題は、9月11日のテロリスト・アタックのせいでいまだに立ち入り禁止の場所が多く、ほとんどロウアー・マンハッタンでのロケーション撮影が不可能になったことである。3番組ともニューヨークを舞台とし、しかもロケーション撮影が多いことが特色で、それによる都会の息吹を感じさせることに重点を置いている。実際、よく映画やTVのロケーション撮影を目にするマンハッタンでもとりわけ目にする機会が多いのが「ロウ&オーダー」で、マンハッタンに住んでてこの番組の撮影現場を見たことがないというものは滅多にいないだろう。それなのに、特によく画面に登場するシティ・ホールはそれこそ世界貿易センター・ビルのすぐ目と鼻の先で、この辺りが事件によってオフ・リミットになり、バック・グラウンドとして使えないのは痛いに違いない。

これは「ロウ&オーダー」に限らず、同じくNBCの「サード・ウォッチ」、ABCの「NYPDブルー」やシットコムの「ジョブ」、HBOの「Sex and the City」にも言えることであるが、ニューヨークを舞台とする番組では、現地撮影の臨場感が番組の手触りに大きく影響している。ニューヨークという舞台が、ストーリーに信憑性を与えるのに不可欠なのだ。NBCの「フレンズ」が、ニューヨークのアッパー・ウエストが舞台といいながらも実際の撮影はLAのスタジオ・セットであったり、WBの「フェリシティの青春」が、主人公フェリシティがNYUの学生であっても実際の撮影がカナダのトロントであったり、ABCの「スピン・シティ」がニューヨークの市長オフィスを舞台としていても、ほとんどがスタジオ撮影であるのとはわけが違う。

実際に番組を見てみれば一目瞭然で、「フレンズ」、「フェリシティ」は舞台がニューヨークとはいっても、その背景にニューヨークの街頭が出てくることはあまりなく、「スピン・シティ」ですら、収録は実際ニューヨークなのだが、それでもスタジオ撮影であり、俳優が街頭に出ることはほとんどない。ニューヨークというのは、ただ、単にドラマの舞台として借用されているに過ぎない。実際にニューヨークの街頭で撮影を行っている「ロウ&オーダー」や「NYPDブルー」、「ザ・ジョブ」、「Sex and the City」と較べてみれば、その違いがよくわかる。これらの番組では、ニューヨークという街自体が番組の最も重要なキャラクターの一つなのだ。

それ以外にもテロ事件は番組製作に影響を与えている。現在の「ロウ&オーダー」人気に目をつけたNBCは、ウルフと共同で「ロウ&オーダー」のミニシリーズ製作を企画していた。普段のシリーズよりももっと金をかけた大がかりなものをということで考えられたのが、ニューヨークを恐怖のどん底に落とすバイオ・テロを題材にするというものだった。もちろん、この企画は本当にそういう事件が起こってしまったことで、即刻ボツになった。既にこういうテロに過敏になっているニューヨーク市民によけいいらぬ心配をかける番組を製作することなど、もってのほかだ。

ウルフは、当分「ロウ&オーダー」はロウアー・マンハッタンで撮影をせずに済ますしかないだろうと答えている。しかし、今シーズンの「サード・ウォッチ」が、逆にシーズン・プレミアのエピソードを事件で殉職した何千人ものNYPD (ニューヨーク警察) やFDNY (ニューヨーク消防署) の警官や消防士に捧げるとして、この事件を主題として番組を展開させたように、やがてニューヨークを舞台としている番組の多くが、事件を避けるのではなく、事件に真正面から目を向けて、主要な題材として扱うようになるだろう。「ロウ&オーダー」も遠からずそうなるのは間違いない。



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