Things You Can Tell Just by Looking at Her - 彼女を見ればわかること - ★★★
放送局: ショウタイム
プレミア放送日: 3/11/01 (Sun) 20:00-22:00
製作総指揮: エリー・サマハ、アンドリュー・スティーヴンス
製作: ジョン・アヴネット
監督/脚本: ロドリゴ・ガルシア
撮影: エマニュエル・ルベスキ
音楽: エドワード・シェアマー
編集: エイミー・ダドルストン
美術: ジェリー・フレミング
出演: グレン・クロース(エレイン・キーナー)、カリスタ・フロックハート(クリスティン)、ホリー・ハンター(レベッカ)、グレゴリー・ハインズ(ロバート)、ペニー・アレン(ナンシー)、マット・クレイヴン(ウォルター)、キャシー・ベイカー(ローズ)、ノア・フレイス(ジェイ)、ダニー・ウッドバーン(アルバート)、ヴァレリア・ゴリノ(リリィ)、キャメロン・ディアス(キャロル)、エイミー・ブレネマン(キャシー)、ミゲル・サンドヴァル(サム)

物語: 第1話:「ドクター・キーナー (This Is Dr. Keener)」
婦人科医のエレインは年老いて惚けた母と一緒に暮らしていた。経済的には何不自由なくとも、一緒に喜びも悲しみも分かち合うもののいない生活は砂を噛むような毎日で、中年の今になって初めて、伴侶が欲しいと思うようになっていた。しかし何かにつけ慎重で新しいことに用心してしまうエレインは、どうしても次の一歩が踏み出せない。エレインはカード占い師のクリスティンを自宅に呼び、自分のことを占ってもらう。クリスティンは近々エレインは年下の若い男と会うことを予言する‥‥

第2話:「レベッカのファンタジー (Fantasies about Rebecca)」
銀行の支配人にまで上り詰めたレベッカは妻子あるロバートと不倫関係を結んでいた。ある日レベッカは自分が妊娠していることに気づき、即座に中絶の手配をする。レベッカは駐車場でホームレスのナンシーと会い、話を聞いているうちに彼女と親しくなる。ホームレスでも自分の考えを持っているナンシーとの会話は、レベッカに影響を与えるようになる。一方、忙しいロバートに会えないため、レベッカは部下のウォルターとも関係するようになる‥‥

第3話:「ローズに合ってる誰かさん (Someone for Rose)」
ティーンエイジャーの息子、ジェイと暮らす平凡なシングル・マザーのローズの家の前の空き家に、小人のアルバートが引っ越してくる。身長が極端に小さいため買い物にも苦労しているのを見かねたローズは、アルバートを車に乗せて手伝ってやったことから親しくなる。普通の男性とは異なるアルバートだったが、ローズは彼に隣人としての友情以上のものを感じ始める‥‥

第4話:「おやすみリリィ、おやすみクリスティン (Good Night, Lily, Good Night, Christine)」
クリスティンと一緒に暮らしているガール・フレンド、リリィは不治の病に臥せっており、もう余命幾ばくもなかった。クリスティンとリリィは毎日昔の楽しかったことなどを話し合って、残り僅かな二人一緒の日々を過ごすのだった‥‥

第5話:「恋はキャシーを待っている (Love Waits for Kathy)」
刑事のキャシーは盲目の妹、キャロルと共に暮らしていた。キャシーは高校時代の同級生が自殺した事件を担当するが、キャロルは他殺の可能性を示唆する。おくてのキャシーよりもキャロルの方が男性経験は多く、今日も杖を片手にデートに出かけていくが、いつも最後に傷つくのはキャロルの方だった。一方、キャシーも検屍官のサムと親しくなり‥‥

Things You Can Tell Just by Looking at Her ハリウッドを代表する女優が揃って出演する女性ドラマという、こないだの「ア・ガール・シング (A Girl Thing)」と似たようなオムニバスである。両方とも放送したのはペイTVのショウタイムであり、「ショウタイム・オリジナル・ムーヴィ」という同じバナーの下で放送されているが、放送までの経緯は大いに異なる。

「ア・ガール・シング」は最初からショウタイムでの放送が決まっていた本当のオリジナル番組だが (さもなければ4時間の番組なんて誰も考えまい)、「彼女を見ればわかること」の場合、元々は劇場公開を前提として製作された。MGM配給も決まっていた。しかしこれだけの有名ハリウッド・スターを揃えても、内容の地味さに人が入るか疑問に思ったMGMが、劇場公開を断念してショウタイムにプレミア放送権を売り渡したものである。

「彼女を見ればわかること」は、ノーベル文学賞受賞作家ガブリエル・ガルシア・マルケスの実子、ロドリゴ・ガルシアの初監督作である (作品の中で、キャメロン・ディアスが「百年の孤独」に言及するという楽屋オチ的ネタもある)。元々は撮影監督として、「ミ・ヴィダ・ロカ (Mi Vida Loca)」、「フォー・ルームス」等の作品をものにしているガルシアが、ロバート・レッドフォードの主宰するサンダンス・インスティチュートの「ライターズ・ラボ」という脚本の勉強をする部門で脚本を書き上げ、それが99年のサンダンス映画祭で、NHKインターナショナル・フィルムメイカース・アウォードを受賞、初めて書いた脚本を自分で監督するというまたとない機会を得た。

何人かの女性の生活を等身大の視点からとらえたこの脚本は、フェミニズム尊重の時流に乗ってハリウッドの多くの女優の興味を惹くものとなり、最終的にグレン・クロース、カリスタ・フロックハート、ホリー・ハンター、キャシー・ベイカー、キャメロン・ディアス、エイミー・ブレネマン等の錚々たる著名な女優が出演を快諾した。話はとんとん拍子に進み、撮影も無事終了し、ポスターも刷り上がり、あとは公開を待つばかりになった。しかし、そこで配給を請け負うことになっていたMGMが、たとえハリウッド・スターが大挙出演していようとも、地味な内容ということで公開に慎重になり始めたのが運の尽きである。結局MGMは、当初2000年4月に予定していた「彼女を見ればわかること」の公開日を7月に延期、さらに12月に延期した後、最終的にショウタイムに放送権を売り渡してしまったのだ。

まったく、いくら地味な内容だとはいえ、この面子で劇場公開されないのかとびっくりしてしまう。しかし、確かに地味な映画はマーケティングが難しい。ついこの間も、今人気絶頂のはずのキャメロン・ディアスが準主演の「姉のいた夏、いない夏 (The Invisible Circus)」が、公開したかと思う間もなく、気づいた時には既に劇場から消えていた。今回出演している者の中では、最もネーム・ヴァリューが高いと思われるディアスでさえ、彼女一人では客を呼べないのだ。MGMの不安もわからないではない。

ショウタイムはよく、このような、製作はしたけれども公開の見込みが立たない映画の放送権を買い取ってプレミア放送している。ここ数年の代表的が例が、エイドリアン・ラインが監督し、ジェレミー・アイアンズが主演した「ロリータ」である。この作品も劇場公開用として製作されたが、配給会社と劇場チェーンはチャイルド・ポルノに敏感な世論の反感を怖れ、公開の目処が立たなかった。結局、ショウタイムが推定400万ドルでTV放送権を獲得している。「ロリータ」はその後劇場でも公開されたため、まず初めにTVで放送し、その後劇場公開するという通常の作品とはまったく異なった筋道を辿った。「彼女を見ればわかること」も、だからまだ劇場公開の望みが残っていないわけではないが、しかしこれに限っては可能性は低いような気がする。昨年末に公開予定だった時には、出演者の演技のできが強力なために、オスカー狙いに行くとかなんとか囁かれていたんだけれども。

実際、見てみると皆いい演技をしていて見応えがあるが、本当に、いかんせん地味である。作品のレヴェルから言うと、「ア・ガール・シング」の200倍は上なんだが。特に、ただ異なる4つの話を繋いだだけの「ア・ガール・シング」に較べ、それぞれのエピソードに別のエピソードの人物を絡ませ、全体としての話を有機的に結合させた「彼女を見ればわかること」は、話自体も、その作り方も、格段に上である。

最初のエピソードでは、グレン・クロースが人生に慎重になり過ぎる中年の婦人科医エレインを演じているが、彼女はその次のホリー・ハンターが主人公となるエピソードで、ハンターの中絶を行う医師としても登場する。また、エレインに呼ばれてタロット占いをしに来る占い師のクリスティンを演じるカリスタ・フロックハートは、第4話の主人公でもある。第3話でキャシー・ベイツの恋人となるアルバートは、最終話でエイミー・ブレネマン演じる刑事が追う事件の関係者としてまた登場してくる。オムニバス作品は、こういう全体の有機的な繋がりというものが非常に大事だと思うのだが、その辺実にうまくさばいている。

それぞれのエピソードも甲乙つけがたいが、最も印象に残ったのは、キャメロン・ディアスが盲目の活動的な女性を演じる最終話である。ブレネマンは高校のクラスメイトの死亡事件を追っており、それが他殺の可能性もあるということで、ディアスがいわゆる安楽椅子探偵的な意見を述べる。そういうドラマティックな話の方が、やはり印象に残る。その上、ディアスが本当に盲目のようなうまい演技を見せる。彼女は「チャーリーズ・エンジェル」のようなハリウッド大作で見るとよくわからないが、結構演技もうまい。ブレネマンは「NYPDブルー」出身で、私は昔から応援しているのだが、CBSで主演している「ジャッジング・エイミー (Judging Amy)」が好評で、ついにそちらの方が代表作になってしまった。死んだ女性も、生きている時に通りすがりにせよ何にせよ、他のエピソードの登場人物ととにかく一瞬のすれ違いを演じていたりする。袖擦れ合うも多生の縁といったところだろうか。

次に印象に残ったのが、カリスタ・フロックハートが主演する第4話である。話としてはグレン・クロースが主演する第1話並みに地味なのだが、この中で彼女がする、昔カナリアを飼っていた時の話が面白かった。遊びに行くため手っ取り早く鳥かごの掃除をしなければならなくなったフロックハートが、時間を稼ごうと掃除機で汚れを吸い取ろうとして間違ってカナリアを吸い込んでしまうという話なのだが、 残酷な話の内容とは別に、その話をするフロックハートの顔は、実にチャーミングである。昨年、彼女が人殺しの役を演じた舞台中継の「バッシュ (Bash)」で、あまりにもやり過ぎのメイクのために幻滅していただけに、今回は逆に印象に残った。

第1話のグレン・クロースも悪くないのだが、話が地味すぎて動きがないために、それほど印象に残らない。第2話のホリー・ハンターも役にうまくはまっているが、彼女と対になるホームレスのナンシーが少し弱いため、結果的に話全体の印象が薄まってしまった。彼女と不倫しているグレゴリー・ハインズはいい。第3話のキャシー・ベイカーも嫌いな役者ではなく、特にこういう普通の家庭の主婦的な役だと実に無理なく役にはまる。それなのに小人と恋愛関係になってしまうという意外性もいい。

本当に貶すポイントが見つからないできのいい作品なんだが、劇場公開できなかったのは不運としか言い様がない。しかし確かに公開しても人が入ったかは疑問である。アメリカでは現在、映画を製作する場合、TVで放映する時の放映権がいくらくらいになるかまでを考えに入れて予算を組む。そのTV放映権というのは、通常、劇場公開時の興行成績の15%というのが慣例となっている。ヒットした映画ならいいが、ぽしゃってしまった映画の場合、TV放映権も安くで叩き売りしなければならなくなり、結果的に製作費を回収できない場合が往々にしてある。今回ショウタイムが製作者に支払った放映権は、推定150万ドルだと言われている。これはもし作品が劇場公開で失敗した時のことを考えるならば、非常に製作者側に有利な金額なのだ。少なくとも、このまま劇場公開に意固地になって作品自体の旬を逃して価値を薄めてしまうことよりも、この方が作品にとってはよかったのかも知れない。ガルシアには次頑張ってもらいたいと思う。


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