The Chair - ザ・チェア - ★★1/2
The Chamber - ザ・チャンバー - ★★1/2

ザ・チェア
放送局: ABC
プレミア放送日: 1/15/02 (Tue) 20:00-21:00
製作: タッチダウンTV
製作総指揮: ジュリー・クリスティ、ダリル・マッケウェン、アンドリュー・ゴールダー
製作: ポール・ワーニック
監督: マイケル・サイモン
ホスト: ジョン・マッケンロー

内容: 椅子 (チェア) に座らされた解答者は、ホストのジョン・マッケンローが出題する7問の問題に答えなければならない。解答者は事前のテストで測定された自分の平均心拍数の160%を超えると、それを下回る値に心拍数が落ち着くまで解答することはできない。一問答える度に5%ずつ超えてはいけない心拍数の値が減らされるだけでなく、その数値より高い心拍数でいる間、それまでに正答して獲得した賞金も1秒単位で減っていく。 一問でも誤答したらその場で失格。賞金額は$5,000、$10,000、$15,000、$25,000、$40,000、$50,000、$100,000と一問ずつ上がっていく。最初の問題に正答するとボーナスとして5,000ドル加算されるため、全問正答した場合の最高賞金額は25万ドル。

ザ・チャンバー
放送局: FOX
プレミア放送日: 1/13/01 (Sun) 21:00-22:00
製作: ディック・クラーク・プロダクションズ
製作総指揮: ディック・クラーク、バリー・アデルマン、ドン・ウィーナー
製作: R. A. クラーク、シンディ・クラーク
監督: ドン・ウィーナー
ホスト: リック・シュワーツ

内容: まず最初に「チャンバー」に入る挑戦権を獲得するために、二人の解答者が1対1で質問に答え、2問早く正答した者がチャンバーに入る資格を得る。チャンバーは熱責めか氷責めかのどちらかで挑戦者を責め立てる。どちらになるかはコンピュータが決める。熱責めになった場合、周りに火がたかれ、チャンバー内は最高150K (約65℃) まで上がり、椅子は振動したり回転したりして解答者を責め立てる。氷責めになった場合、チャンバー内は0K (約-17℃) 以下まで落ちる。冷水が全身に浴びせられ、チャンバー内で瞬く間に氷となって頭上に堆積する。問題は7段階にわたって出題され、1段階クリアする毎に、より暑くなるか寒くなる。質問に正答すると掛け金が1,000ドルずつ上がっていく。2問続けて誤答すると失格。自分で責め苦に耐えられないと判断した場合も「ストップ・ザ・チャンバー」と叫んで途中で降りることもできる。また、ストレス・メーターによって、心拍数その他が事前に健康診断によって設定された数値を20秒以上超えた場合も、危険な状態と見なされてそこで挑戦は停止される。

The Chair 昨年の同時多発テロによって、基本的にアメリカのリアリティ・ショウは終焉を迎えたはずだった。実際、「サバイバー」は新シリーズに入る度に視聴率を落としており、2月末から始まった第4弾「サバイバー: マルケサス」は、いまだに根強いファンはいるが、以前ほど話題になっているわけではない。「フー・ウォンツ・トゥ・ビー・ア・ミリオネア」も同様。一番虚しいのが「誘惑の島」で、「誘惑の島パート2」は、内容は前回よりも面白くなっていると言われているのに、誰も見ていない。本当に誰も見ていないのだ。ここまで来ると、テロ以外に何か理由があるのではないか、CIAの陰謀か、なんて本当にまことしやかに囁かれている始末だ。

そういう状況なのに、それなのにまた新しいクイズ番組が編成されたということにまずびっくりする。でも、まあ、クイズ番組はリアリティ・ショウとはいえ歴史もあり、「サバイバー」に代表される勝ち抜き裏切りサバイバル・ゲーム型のリアリティ・ショウとは勝手が違うのは事実だ。いくら「ミリオネア」の人気が凋落したとはいえ、まだ7時台には「ジェパディ」と「ホイール・オブ・フォーチュン」というシンジケーションの長寿クイズ番組が健在であり、この分野が逆に不況に強いのもよく知られている事実である。その上、この種の番組は製作費が安く上がる。だからだろう、リアリティ・ショウは死んだと言われているのに、これからのネットワークの編成スケジュールを見ると、ちゃんとどこも一つはリアリティ・ショウの企画が上がっているのだ。それでもあまり当たり障りのないクイズ番組に目が向くのは、どちらかというと当然なのかも知れない。

しかし、今回ABCが編成した「チェア」とFOXの「チャンバー」は、また違う点で注目を集めることになった。実はこの二つの番組では、「チェア」の方が先に、1月15日にプレミア放送が予定されていた。「チャンバー」は5日遅れて1月20日にプレミア放送日が発表されていた。どちらも解答者に肉体的、精神的試練を与えながらクイズに答えさせるという、似たような番組が似たような日に編成されたというのが、なんとなくきな臭い匂いを発していた。

そしたら、やっぱりというか、まず、FOXが、いきなり放送日を1週間早め、1月13日にプレミアを持ってきた。似たような番組だし、早く放送を始めた方が有利だと考えたのがありありだ。多分ABCはそれが面白くなかったのだろう、FOXが自分らの番組のアイディアを盗んだとして訴えるという挙に出た。今度はいきなり裁判沙汰だ。まあ、ABCも黙っちゃいまいとは思ったけどね。実は「チェア」はABCで放送が決まる前にFOXにも企画が持ち込まれており、当然FOX首脳も「チェア」の基本的内容を知っていた。それを盗用されたというのだ。

そしたら今度は、FOXがABCを逆訴訟で訴えた。FOXの「チャンバー」収録スタジオに、「チェア」のプロデューサーが紛れ込んで番組の進行の模様を探っていたというのだ。こりゃあどっちもどっちだ。FOXが「チェア」からいくらかアイディアをいただいたのはほぼ間違いなさそうだし、ABCはだんまりを決め込んでいるが、実際にスパイをFOXのスタジオに送り込んだらしい。なんか、腰が砕けるような低レヴェルの争いを繰り広げているわけだが、結局、過程はどうでも最終的にヒット番組を確立した方が最後には笑うことになるわけだから、どちらもなりふり構っちゃいられないと、まあ、そういうわけだ。

内容の方を見ると、「チェア」の方が「チャンバー」より大分マイルドな仕上がりになっている。「チェア」では解答者は事前に自分の平均的な脈拍数をチェックし、ある一定の割合以上脈拍が上がると、質問に答えてはいけないという仕組み。質問自体はわりあい簡単なものばかりで、要するに興奮してドキドキする自分との戦いになるわけだ。途中チェアの周りに炎が巻き起こったり、頭上から蛇やワニが吊り降ろされたりして、解答者を脅かして鼓動を速めさせようとする。ホストは元テニス・プレイヤーのジョン・マッケンローで、あの、アメリカの恥とまで言われた悪童が、丸くなりましたね。

面白いのが、これでいい成績を上げるのは男性よりも女性の方が多いという事実だ。結構男性陣が、興奮して上がった心拍数を下げることができず、次の質問に答えられないという状況に陥りやすい。一人はなんと一問も答えることができずに失格となった。女性の方はとにかく自分を律して、クイズに間違えるまでは答え続けていたのに。それでも掛け金が段々上がっていくと、やはり興奮して自分自身を鎮めるのが難しくなってくる。段々段々会場が盛り上がっていくのに、逆に自分の心臓は抑えなければならない。なるほど、結構その場になってみると難しそうだ。

一方の「チャンバー」は、この種の番組ではえげつなさで知られており、いつも愚劣と陰口を叩かれるFOXらしく、派手だ。チャンバー内は150F (約65℃) 以上の灼熱地獄か0F (約-17℃) 以下の極寒地獄のどちらかが待っており、解答者はその責め苦に耐えながら質問に答えなければならない。「チェア」よろしくこちらも質問自体はわりかし簡単なものなのだが、なんといっても熱気で頭がぼうとなっていたり、寒さでがちがち震えながらだと、集中できなくて簡単な質問ですらうまく答えられない。

私が見た回では3人がチャンバーに挑戦したのだが、挑戦者は最初の二人が男、最後の挑戦者が女性になった。最初が熱責め、次が氷責めで、最後はまた熱責めになった。最初と最後の奴は熱気には耐えていたのだが、質問に2回連続して間違えて失格となった。真ん中の氷責めに晒された奴は、質問には正解を答え続けていたのだが、画面左上に表示されるストレス・メーターが許容範囲を超えて20秒以上下がらなかったため、やはり途中退場となった。

挑戦者は自分から進んで危険な状態に飛び込んでいくわけだから、少しくらいならやせ我慢して、大丈夫かと尋ねるホストに対し、チャンバーの中から、大丈夫、まだやれると叫ぶわけだが、これは確かに危険な気がする。チャンバーに入る前には、心拍数やら何やらを計るパッチを身体中に取りつけ、チャンバー内での状態が詳しくモニターされ、万一の場合はたとえ挑戦者が続けると言っても強制的にやめさせるわけだが、それでも危険なことには変わりない。

意外だったのは熱責めの場合、汗かきまくりになるかなと思ったのだが、そうでもなく、多分温度が無茶苦茶高すぎるためだろう、すぐに汗は乾いてしまう。周りに火が渦巻いていることや、120Kという現在温度が表示されるため温度が高いだろうというのは納得できるのだが、解答者自体は暑い暑いと言っているのにもかかわらず、汗の玉が見えないのでそんなに暑そうには見えない。汗というのが視覚的に何倍にも暑さを感じさせるんだなあと改めて思った。

氷責めの場合、冷水を浴びせかけられ、それが瞬く間に氷となって頭上と言わずどこと言わず身体中に堆積するので、これは見てるだけで寒い。これにやられた奴はたまたま頭髪が短い黒人だったので、ほとんどスキンヘッドに10センチも氷が積もっていて、ありゃあ凍えそうに違いない。唇もぶるぶると震えているので、答えがわかっていてもうまく喋れなかったりする。また、チャンバー内ではごうごうとすごい勢いで氷水が噴きかけられているので、イヤホンをしてホストとやりとりをしているのにもかかわらず質問が聞き取りにくいようで、何度ももう一度質問を繰り返してくれと叫んでいる。

「チャンバー」は、解答者が正答するたびに掛け金が1,000ドルずつ上がっていくのだが、それが解答者が手にする実際の金額ではなしに、解答者に与えられるのはその半分でしかない。だったら最初から500ドルずつ上げていけばいいものを、その辺のせこさ加減もやはりFOXという感じが濃厚だ。3人の解答者は全員10,000ドルくらいまでは頑張るのだが、結局手にするのは5,000ドルくらいにしかならない。「ミリオネア」で100万ドルの賞金を獲得した者を何人も見ている身としては、5,000ドルなんてはした金にしか見えない。しかもあれだけの責め苦を耐えて頑張ってたったそれだけか。これじゃあ解答者があまりにも可哀想だ。「チェア」ですら何人かは数万ドルは稼いでいたぞ。

私が挑戦者になるんだったら、熱責めと氷責めとどちらがいいかなあと考えた。熱責めの方がなんとはなしにまだ楽そうに見えるが、実際にはそうでもないに違いない。やはりどちらも嫌だ。その上閉所恐怖症みたいな人だと、まず耐えられないに違いない。ただでさえきつそうなのに、椅子にベルトで手足を縛りつけられて狭いチャンバーの中に閉じ込められるのだ。もうその瞬間から心臓がばくばくしそうだ。もし熱風を吹きつけられたり氷責めにあいながら、機械が故障して止まらなかったらいったいどうなるんだろう。そうなったら本当に死人が出てしまうかも。

実際、どんどんエスカレートしていく最近のアメリカのこの種のサヴァイヴァル系リアリティ・ショウを見ていると、いつかは本当に死人が出てしまいそうな気がする。その時が正真正銘リアリティ・ショウが終焉を迎える時になるんじゃないだろうか。「チャンバー」なんて基本的にクイズ番組であるにもかかわらず、解答者は生死をかけなければならない。こないだ、現在、やはり挑戦者にあらゆる肉体的精神的責め苦をあわせるのをセールス・ポイントとして人気を得ているNBCの「フィア・ファクター (Fear Factor)」を見ていて、これはやがて本当に死人が出そうだと思ったが、その確率は飛躍的に高まっているような気がする。

「フィア・ファクター」では参加者は様々な恐怖を味わうような体験を強制させられるのだが、私がたまたま見た回で参加者が挑戦させられたのは、水をたたえた特設プールの中の2段になった透明なプラスティック板に開けられた、ほとんどどこが開いているのかよくわからない穴を通ってプールの底まで潜り、何かをピックアップしてまた水面に戻るというものだった。これは危険である。水中で息が続かなくなって上に戻ろうとしても、プラスティックが透明なためどこに穴が開いているのかよく見えず、パニック状態に陥りやすい。 もちろんそういう危険は予期していて、ちゃんと水面下では酸素ボンベを背負ったダイヴァーが万が一を考えて待機しているのだが、それでも危ないのには変わりない。やはり参加者も怖じ気づき、プールに飛び込むことすらできずにリタイアしたのが二人もいた。

昨年、CBSの「アメイジング・レース」でも、砂漠の真ん中で参加者が行方不明になって、ほとんど日が暮れようとしているのに姿が見えず、本当にやばい状況になってプロデューサーが真っ青になったという状況があったらしいが、そういう世界各地を旅しながらの番組では、番組製作者の予想を超えた出来事が起こりやすい。しかも現在、アメリカ人はテロの標的である。万が一という事態に、いったいどこまで対処できるのか。「アメイジング・レース」は現在パート2の製作が終わっており、今後も続いていくようだが、ずっと事故が起こらないという保証はどこにもない。

で、話は「チェア」と「チャンバー」に戻るが、結局これらの番組がどうなったかというと、実は既に「チャンバー」の方は3回放送されただけで、いきなり視聴率低迷のため放送が止まっちゃっている。「チェア」の方も、続いてはいるがあまり芳しい成績は上げてない。大山鳴動してネズミ一匹みたいな結果しか上げられなかったわけで、訴訟沙汰にまでなった挙げ句がこんなものか、という感じである。「チャンバー」は話題だけですぐに飽きられ、どちらかと言うとじじばばが見ているマイルドな「チェア」の方が頑張っているが、それでもこちらも長くはないと見た。

いずれにしても、死に絶えたかのように見えてしぶとく製作され続けるリアリティ・ショウ、その最大の理由は、ドラマやシットコムよりも製作費が安く上がることにある。テロ事件以降、アメリカTV界の広告収入も大分減ったが、そのため、よけいに局関係者の目はリアリティ・ショウを向いており、いったんはこのジャンルは衰退したかのように見えて、今後もしぶとく続いていくことが今や明らかになった。ただし、それでも生き残るためには二番煎じでない、オリジナルの新鮮なリアリティ・ショウの登場が求められるだろう。今後まだ放送が予定されている、他のリアリティ・ショウに期待しよう。



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