
Bastard Out of Carolina -冷たい一瞬を抱いて- ★★★
放送局: ショウタイム
プレミア放送日: 12/15/96 (Sun) 21:00-23:00
製作:ゲイリー・ホフマン・プロダクション/Gary Hoffman Production
製作総指揮: ゲイリー・ホフマン
監督: アンジェリカ・ヒューストン
脚本: アン・メレディス
撮影: アンソニー・リッチモンド
編集: エヴァ・ガードス
音楽: ヴァン・ダイク・パークス
出演: ジェニファー・ジェイソン・リー(アニー)、ロン・エルダード(グレン)、ジェナ・マローン(ボーン)、マイケル・ルーカー(アール)
物語: 1950年代サウス・キャロライナ。男運の悪いアニーは私生児ルース・アン(ボーン)を産み、ウエイトレスとして働いていた時に知りあった男性と今度は幸せな結婚をしたと思ったのも束の間、彼は交通事故で逝ってしまう。その後アニーはアールの同僚グレンとつきあうようになる。今度こそ捕まえた幸せを逃したくないアニーは、グレンが実は酒癖が悪く、癇癪持ちで、怒ると何をするかわからなくなるということに気づいてからも、それを見て見ぬ振りをしていた。しかし、グレンは実はボーンに興味を持っていた。ある日、病院に入院しているアニーを見舞う途中の車の中で、グレンはボーンのスカートの中に手を忍ばせる‥‥
久し振りに非常に見応えのあるドラマが登場した。養父から殴られ、性的に虐待された女の子の物語に対して見応えもあるもないような気がするが、それが第一印象だからしょうがない。「冷たい一瞬を抱いて」は1992年、ドロシー・アリソンが発表した小説「バスタード・アウト・オブ・キャロライナ (Bastard out of Carolina)」を映像化した作品である。いくら家庭内暴力の先駆アメリカとはいえ、養父とはいえ近親相姦というタブーに触れ、しかも幼い女の子を殴り付けるというシーンを執拗にグラフィックに描いたこの作品は、一部でほとんどヒステリックとも言える反応を巻き起こした。この映像化権を買い取ったのが誰あろう巨匠ジョン・ヒューストンの娘アンジェリカ・ヒューストン。この番組はヒューストンが監督する初めての作品でもある。
ヒューストンは最初、この作品の企画をTNTに持っていった。TNTのオリジナル映画はHBOと並び、潤沢な予算を使ってハリウッド映画並みの質の高い作品を製作することで定評がある。しかしベイシック・チャンネルで、どちらかというと家族揃って見れるエンタテインメント作品に比重を置いていたTNTは脚本を見て尻込みし、ペイTVのショウタイムにお鉢が回ってきたものである。
とにかく暗く重い作品であるが、それを演じきった役者にまず頭が下がる。養父から虐待されるボーン(本当の名はルース・アン。ボーンは兄アールが彼女を呼ぶ時の愛称。骨(ボーン)と皮だけのように細いから)に扮するのは弱冠11歳のジェナ・マローン。11歳の女の子に父親から殴られ犯される役をやらせちゃうわけ、私がその子の親なら絶対嫌だね。この子の役者根性も大したものだが、そういう役をやらせた親は、根性あるというより、疑問である。いくら演技とはいっても将来夢に見てうなされないだろうか。実際、この子を犯す養父グレン役というまったく非人道的な役を仰せ付かったロン・エルダード(「E.R.」に準レギュラー出演中)は、自分が最低の人間のような気がしたと語っていた。いい年の大人ですらこういう役に扮すると立ち直るのに時間がかかるものなのである。それを11歳の女の子に‥‥うーん、まだ幼いから逆に役の重みがわかってなくていいのだろうか。でも、実際、この作品が成功しているのはひとえに彼女のおかげなのであるが‥‥
それと、ボーンの母親アニーに扮するジェニファー・ジェイソン・リーがまた、いつものように不幸そうな整った顔立ちで作品を引き立ててくれます。幸薄い系の役をやらせたら彼女の右に出るものはいない。再婚したグレンが自分が見てないところでボーンに何かしているのではないかという一抹の危惧を持ってはいるのだが、人を信用しないのはよいことじゃないという思い込みと、ここで彼に捨てられたら生活がどん底に落ちるという怖れのため、よく目を見開いてみれば気づくことを見て見ぬ振りをしている弱い女という役どころ。はまっています。この作品は成長したボーンの視点から語られるが、その声を担当しているのがローラ・ダーン。これまたどちらかというと薄幸系役者であり、同じショウタイムで昨年体当たり演技を演じた「ダウン・ケイム・ア・ブラックバード」の記憶も新しい。その他、一時ジュリア・ロバーツの旦那さんであったカントリー・シンガーのライル・ロヴェットや、「キャスパー」のクリスティーナ・リッチらがカメオ出演している。
ヒューストンは、もう‥‥ところどころこなれてないなというシーンはあるのだが、テーマの重さでそんなこと吹っ飛ばしているという感じである。レイプ・シーンなんてほとんど顔を背けたくなるような愚直とも言える真摯さ?で取り組んでいる。親父のジョン・ヒューストンならそういう場面に至るまでの過程の心理的なアクションに重点を置いても、レイプ・シーン自体はさらっと流しそうな気がするが、どうなんだろう。とにかく久し振りにずーんと来るものを見せてもらいました。
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