
If These Walls Could Talk - スリーウイメン/この壁が話せたら- ★★1/2
放送局: HBO
プレミア放送日: 10/13/96 (Sun) 21:00-23:00
製作: ムーヴィング・ピクチャーズ・プロダクション/Moving Pictures Production、HBO NYC
製作総指揮: スザンヌ・トッド、デミ・ムーア
監督: ナンシー・サヴォカ(第1、2話)、シェール(第3話)
脚本: ナンシー・サヴォカ(第1-3話)、パメラ・ウォレス、アール・ウォレス(第1話)、スーザン・ナナス(第2話)、マーリーン・キング(第3話)
撮影: エレン・クラス(第1話)、ボビー・バコウスキ(第2話)、ジョン・ステインラー(第3話)
出演: 第1話: デミ・ムーア(クレア)、シャーリー・ナイト
第2話: シシー・スペイセク (バーバラ)
第3話: アン・ヘッチ (クリスティーン)、シェール (医師)
物語: 1952年。看護婦のクレアは夫を戦争で亡くし、その後一人で生活していたが、親身になって彼女の世話を焼いてくれた夫の弟と誤って関係し、身ごもってしまう。どうしても産むわけにはいかないため、クレアはあらゆる伝手を辿って違法の医者を探し出し、深夜訪れた堕胎医によって、ほとんど清潔な設備も適切な処置もなしに自宅のテーブルの上で中絶行為を行う。しかし満足な手当てもせずに医師が帰った後、彼女は大量の出血を見る‥‥
1974年。既に4人の子がいるバーバラ は一通り子育てが終わって、やっと長年の夢だった大学に通い始めるが、そこで思いもかけず妊娠してしまう。自分の夢を追い求めるため中絶を考えるが、夫は妊娠してしまったら産むのが当然と思っているため話し相手にならない。子供たちもまだ彼女を当てにしており、バーバラは自分の夢と現実の間で一人で思い悩む‥‥
1996年。指導を受ける大学教授の子供を身ごもってしまったクリスティーンは、教授から金を渡され、他にどうしようもなく、中絶する決心をする。しかしクリスティーンが訪れたクリニックの前では、妊娠中絶反対の活動家がデモを繰り広げていた。そしてクリスティーンが手術台に上って中絶行為を行っているその最中、中絶に反対する狂信的な男が拳銃を手に手術室に乱入してくる‥‥
アメリカにはカトリック教徒が多く、先進国ではあっても道徳的な面では多分に保守的な面がまだまだ色濃く残っている。カトリックでは妊娠中絶は禁じられているため、妊娠したら産むものと考えている者は多い。そういうこともあって、70年代前半まで中絶は違法行為であり、合法となった現在でもまた元のように法律を改定しようとする動きは根強い。そのため現在でも中絶の自由を標榜する「プロ・チョイス (Pro-Choice)」派と、中絶は人殺しと同罪であり、絶対反対の「プロ・ライフ (Pro-Life)」派がひっきりなしに衝突している。中絶を専門とするクリニックは時として狂信的原則主義者によって襲撃されたりするなど、妊娠中絶は依然として完全な解決は見ていないセンシティヴな問題である。「スリーウイメン/この壁が話せたら」は、デミ・ムーア、シシー・スペイセク、シェール、アン・ヘッチ等のハリウッドを代表する女優を集め、妊娠中絶という女性問題に正面から取り組んだ、3話から成るオムニバス作品である。ある一軒の家を舞台に、予期せぬ妊娠に直面して戸惑う3人の女性について描くもので、それぞれ時代は違っても同じ問題で悩む女性を主人公としている。
第1話(1952年)は中絶がまだ違法行為であった時代の話で、そのために自分の生命を危機に晒すことになる女性を描く。主人公クレアを演じるのはデミ・ムーア。現実の彼女はどうも強い女性のようだが、画面の上では何故かか弱い女性や悲劇的な運命の女性が似合う。面白いもんだ。ここでは自宅のテーブルの上で満足な医療機器もなしに中絶手術を行い、その後大量の出血を見て崩れ落ちるという役柄。ムーアは嫌なことがあったり、苛められたりして泣いたりしている時の表情が最もいい。そのためこう言っては何だが、実に不幸な役柄なのにもかかわらず、演技としては実に効果的で映える。
第2話(1974年)は中絶が合法化され、中絶行為に後ろめたさを感じる必要がなくなった時代でも、自分のキャリアの問題や夫の意見、家族の面倒見といった点からやはり思い悩む中年の女性バーバラを主人公としている。シシー・スペイセクがバーバラに扮し、三つの話の中で彼女だけが中絶せずに子供を産む決心をする。しかしスペイセクっていい役者だなあ。「キャリー」の時はただただ怖かったけど、歳とって余裕が出てきたみたいで、演技の幅も広がっただけでなく、前よりも奇麗になったようだ。10代で大人びた顔になるアメリカの女優で、歳とってからも奇麗になっていく女性ってほとんど見かけない。スペイセクは稀有の例である。
第3話(1996年)ではこの家は改造されて大学の女子寮となっており、主人公クリスティーンとその友人が2階に住んでいる。クリスティーンは学校の教授の子を身ごもってしまい、迷った挙げ句中絶を行なうクリニックに赴くのだが、なんと彼女が手術室の台上にいる時に、血迷った男が拳銃を片手に乱入、手術室は血の海に、という展開。クリニックの医師に扮しているのはシェールで、彼女はこのエピソードによって同時に監督デビューも果たしている。「ジューラー」でムーアと共演したアン・ヘッチは、私が結構気になっている役者の一人である。ムーアの家のヘルパーなのだが、潔く裸になり、結局殺されてしまう。私はヒロインのムーアよりもヘッチの方が印象に残った。このエピソードでも命が危険にさらされるやばい役で、どうもこういう系に抜擢されやすい顔立ちをしているらしい。これからが楽しみな女優である。
中絶問題を扱っているこの作品、中絶をする者も産む決心をする者もいるわけだが、言いたいことはもちろん、「女性に自分のことは自分で決めることのできる自由を!」ということであり、それはとりもなおさず「女性に中絶の自由を!」である。こういう番組が製作されること自体、中絶するということがまだどんな目で見られているかということがわかる。この番組、とにかく話題作りには大きく成功しており、これまでのHBOが放送したすべての映画を上回る視聴率を獲得している。
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