
The Shining -シャイニング- ★★★
放送局: ABC
プレミア放送日: 4/27/97 (Sun) 、4/28/97 (Mon) 、5/1/97 (Thu) 21:00-23:00
製作:レイクサイド・プロダクションズ/Lakeside Productions、ワーナー・ブラザース・テレヴィジョン/Warner Brothers Television
製作総指揮、原作、脚本: スティーブン・キング
製作:マーク・カーリナー
監督: ミック・ガリス
撮影: シェリー・ジョンソン
編集: パトリック・マクマホン
音楽: ニコラス・パイク
美術: クレイグ・スティームス
衣装: ウォーデン・ニール
出演: スティーブン・ウェーバー(ジャック)、レベッカ・デモーネイ(ウェンディ)、コートランド・ミード(デニー)、メルヴィン・ファン・ピーブルス(ハロラン)
物語: ジャック、ウェンディ、一人息子のデニーのトーランス一家は、冬の間営業を停止しているコロラドの山奥の高級リゾート・ホテルの管理人として赴任することになる。ジャックは飲酒と生徒への暴行が原因で教師を首になっており、また、作家を目指していることもあって、冬の間誰にも邪魔されずに著述に打ち込むことのできるこの仕事は好都合だった。しかし、このホテルは前管理人が一家を惨殺した上自殺しているという経歴を持ち、デニーはホテルに行く前から危険を感知していた。トーランス一家はホテルで、冬の間フロリダで過ごすコックのハロランと会うが、実はハロランも「シャイニング」の所有者であり、テレパシーでデニーと会話を交わし、必要ならいつでも呼んでいいと言い残して去る。そして冬が迫り、ホテルに残されたトーランス一家のまわりで次々と奇妙な出来事が起こり始める‥‥
ネットワークのABCがスティーブン・キング原作の「シャイニング」を、6時間をかけてミニ・シリーズ化。「シャイニング」といえば既にスタンリー・キューブリックが映画化した傑作があるが、キング自身はこの映像化に不満で、常々不服を訴えていた。キングの書くホラーは、キャラクターやシーンのディティールを書き込むことによって徐々に恐怖感を積み上げていくのが特色である。そのため、キングの著作は大部のものになるのが常である。しかし、映画では時間の制約上、主演のジャック・ニコルソンが狂気に至る過程が大分省かれており、そのために、キング作品に特有の徐々に高まってくる恐怖というものがない。従ってこれは私の書いた作品とは別物である、というのがキングの言い分であった。ただし、映画はキングの「シャイニング」ではないが、キューブリックの「シャイニング」として、別の意味で出来がいいことはキングも認めている。いずれにしても映画は146分と通常の映画と比べると大分長いため、公開当時は長すぎると評されていたほどで、それを書き込みが弱く、短いとしたキングの断言には作家の自信とエゴを目の当たりにする思いがする。
そのキングが、6時間という通常の概念からすると長過ぎるという時間をふんだんに使って、自分自身が製作総指揮となって製作したのが、この「シャイニング」である。もちろん今回の製作の最大のポイントは、6時間という時間をフルに活用してジャックが狂気に至る過程を緻密に書き上げ、徐々に恐怖を盛り上げていることにある。また、ホテルの庭の動物の形に刈り込まれた植え込みが生命を帯びたように動き出す、といった映画にはなかったシーンが最新のCGの助けを借りて映像化されているなど、ほぼ原作に忠実に撮られている。演出を担当したミック・ガリスは、以前にもキング原作のABCのミニ・シリーズ「ザ・スタンド」およびキング原作の映画「The Sleepwalkers (92)」を撮っており、キング作品専門の監督となった感がある。
ジャックに扮するスティーブン・ウェーバーは、米国ではシットコム「ウィングス」でお馴染みの役者である。コメディの顔と思っているウェーバーがジャック役に抜擢されたのは最初意外だったが、これがなかなかいい。お笑いの人が実は気が狂っていたという印象の落差が、劇的な効果を出している。彼がお笑いの人だとは知らないアメリカ以外の国の人が見ると、この効果は半減してしまうかも知れないが。ウェンディに扮するのは、「ゆりかごを揺らす手」のレベッカ・デモーネイ。ウェーバーもデモーネイも、どうしてもキューブリックのニコルソンとシェリー・デュヴァルのあの忘れられない顔と較べられてしまうため損していると思うが、二人ともなかなか好演しており、流石原作者が直々に選んだだけのことはある。特にデモーネイは結構ホラー向きの顔をしていると私は思う。一人息子のデニーに扮するコートランド・ミードは、はっきり言って印象薄い。こればかりはキューブリック版に出ていた少年を超えることはできなかったようだ。また、キング自身もホテルで夜開かれる亡霊たちのパーティのバンドリーダーとして特別出演している。
6時間をかけて、一人の男が気が狂っていく過程を緻密に描きだすのだ。こんなのつきあってられるかよ、と思っていたら、結構真面目に全部見てしまった。見終わった後に、なんだか凄く後悔した。番組が面白くなかったわけではない。面白かったこそ全部見たのだが、しかし、2時間半のキューブリック版と正味5時間のこの番組では、どちらが本当に怖いかというと、やはりキューブリック版の方に軍杯が上がる(もちろんキングが意図したのとは別の意味で)。それなのに5時間もTV番組を見るのに費やしてしまった。なんか知らないけど物凄く時間を損した気がするのである。5時間あれば、キングの原作を読んだ方がまだもっと怖かったのではないか。それに、クライマックスの、生命を与えられたように動き出す刈り込みの植木は、はっきり言って失敗である。あそこまで持っていって、最後に思い切り白けてしまった。あそこは原作を読みながら脳裏に描くと怖いのかも知れないが、見せちゃったら駄目だよ。どんなにCGが巧くても、本当に見せたら何も怖くない。あれは失敗だった。キューブリックの迷路の方が数段恐ろしい。悪くはないんだがな。キング作品の映像化は、キューブリックの「シャイニング」とデ・パルマの「キャリー」を除いて成功していると言えるものはほとんどないような気がする。書き込み型のキング作品は、実は本質的に時間に大きく左右される映画やTVには向いてないんじゃないだろうか。
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